智慧を与えましょう   作:ねこです89

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(上天の悪魔じゃ)ないです


悪魔との接触

真夜中の丑三つ時に近い時間。兵藤一誠は自転車を漕いでいた。

ジャコジャコと歯車を足で回し自転車を動かす。

依頼者の自宅まであと少しだ。

しかし彼は今、依頼者の事を考えておらず、自分の夢について考えていた。

そう、ハーレム王の事である。その煩悩に塗れたピンク色の脳内から弾き出された答えはやはり地道にやって行くしかない事だった。

 

「(下僕を持つには、上級悪魔にならなきゃならない…。最初から上級悪魔の部長とは違って俺たち転生者は力を認められて昇格しなければならない…。だが俺は『兵士』。最弱の駒、捨て駒じゃねーか)」

 

ため息をついて「ハーレム王への道は遠いな〜」とぼやく。

坂道を下ってどんどんとスピードが上がって行く自転車とは反比例して一誠のテンションは下がって行く一方だ。

町の街灯が一誠を見送るように照らす。

そして依頼者の自宅に一誠は辿り着いた。

自転車を塀に立てかけ、玄関のインターフォンを押す。

数秒たっても返答がない。何度か押してみるがいまだに返答がなかった。

いないのかと思って一誠は扉のレバーハンドルを握って外側に引く。

すると鍵がかかっていなかったのか簡単に扉は開いた。

開けっ放しなんて不用心だなと一誠が思いながらも中にいるはずの依頼者に声をかける。

やはり返答がない。

一誠は訝しげに土足で上がり込んだその瞬間に、悪魔の勘が止まれと叫んだ。

嫌な予感がする。戻ったほうがいいかもしれない。

しかしこのまま帰ってしまったらいよいよ部長に合わせる顔がない。

一誠は覚悟を決め、開けた扉を閉めて依頼者の家に上り込む。

お邪魔しますよと挨拶をして廊下を歩く。

真っ暗な廊下ではあるが奥にリビングがあるようでそこから光が漏れていた。

もしかしたら玄関のカメラに自分が映っていたから居留守を決め込んでいたのかもしれないと一誠は考えた。

廊下を通り、リビングへとやってくる。

リビングは薄暗く、雰囲気がある。

一誠は雰囲気作っちゃってと悪魔がやってくるという事を楽しみにしていたのだろうなと笑いながらリビングを歩こうとする。

しかし何か液体を踏んでしまったようでようやく自分が土足で入っていた事を一誠は理解した。

靴に付着した液体を拭き取ろうと触った時妙に粘着力があると一誠は思い、触った手を見た。

それは赤黒い液体だった。鉄臭い独特の匂いが鼻をつく。

それが血だと確信するのに一誠は数秒かかってしまった。

そしてその血が溢れ出ている元へと目線を向けて行く。

そこにあったのは、バラバラにサイコロステーキのように切断された人間だったものだ。

辛うじて残った頭部や顎に短く切られた髪や青い髭が生えてるのを確認してそれが男だという事を理解する。

とても人間が行うとは思えない行為。

そこにある人間サイコロステーキに血のソースがふんだんにかけられている様子を一誠の精神は耐えられなかった。

胃が逆流して吐き気がこみ上げる。

しかし彼を正気に戻したのは、少年の声だった。

 

「悪い人は、お仕置きよ…って、聖なるお方の言葉を借りて…みましたァ」

 

どこかのアニメで聞いたような言葉とともに先ほどまで目の前の死体に目を取られて気づかなかったが横にあるソファに白髪の神父服を着た少年が座っていた。

彼は一誠を馬鹿にしたように顔だけ一誠の方へ向けて舌を出して醜悪に笑う。

一誠は瞬時にこの少年が犯人だと確信して後退る。

神父はソファから間延びをした声とともに立ち上がり、一誠の方へ身体を向けた。

 

「これはこれは、悪魔くんではあ〜りませんかァ〜」

 

間延びした口調が胡散臭さを感じさせる。

丁寧にその白髪の少年神父は一誠に頭を下げる。

 

「俺の名前はフリードセルゼン。とある悪魔祓い組織に所属している少年神父でござんす!」

 

変なダンスを披露しながら彼は自己紹介を行なった。

一誠は目の前の少年神父が変人でありながら精神破綻者だという事を知った。

フリードは一誠を殺意の眼差しで睨みつけた。

 

「まぁ、悪魔みたいなクソじゃないのは確かですが…」

 

「お前がやったのか!?」

 

一誠はサイコロステーキになった死体を指差し、フリードに問う。

フリードはチラリと死体を見る。

 

「悪魔に頼るなんて人として終わった証拠…、エンドですよエンド!」

 

フリードは物言わぬ肉塊になった住人から漏れ出た血液を思い切り踏み、小さな水たまりが弾けたような音を立てた。

一誠の恐怖する顔を見ながらフリードは顔を歪める。

 

「だから殺してあげたんですぅ!クソ悪魔とクソに魅入られたクソ以下を退治するのが、俺様のお仕事なんでェ」

 

そうフリードは一誠に吐き捨て神父服に隠し持っていた拳銃と光の剣を取り出す。

その真っ白で眩い光は悪魔にとっては有害である事を一誠は悪魔の本能から理解した。

フリードは光の剣を一誠に向ける。

 

「今からお前のハートにこの刃をおったてて、このイカす銃でお前のドタマに必殺必中フォーリンラブ、しちゃいます!」

 

そうフリードが一誠に叫ぶと同時に彼は地面から飛び上がりその光の剣を振り下ろす。

空気を引き裂き一誠の制服を切り裂く。

一誠はなんとか肉体が切られることは回避しながらゴロゴロと転がる。

しかし即座に拳銃を一誠に向けたフリードはバキュンと擬音を声に出しながら拳銃に引き金を引く。

薬莢が弾ける音と共に放たれた銃弾は一誠の脹脛を貫く。

その貫通した脹脛から血液が止めどなく溢れ、激痛に一誠は悶える。

 

祓魔師(エクソシスト)謹製、祓魔弾…、お味はいかがっすか〜?」

 

心底馬鹿にしたような口ぶりで一誠を煽る。

その態度が癪に触った一誠は左手を構えて神器(セイクリッド・ギア)を発現させる。

光と共に赤い龍を模した籠手が一誠の腕に出現した。

フリードは抵抗を示した一誠を嗤う。

 

「おぉ、まさに悪!その方が私も悪魔祓いの気分がでますなぁ〜」

 

そう言って油断をしているフリードに一誠は大振りに左手を振り上げ叫びながら殴りかかる。

だが、フリードは掛け声と共にその拳を避けて光の剣を振り下ろす。

背中を抉られた一誠が床に倒れる。

その様子をフリードは見ながら見掛け倒しなのが1番ムカつくざんすとふざけた言葉遣いと共に立ち上がろうとした一誠の首を刈り取ろうと、構えていた光の剣を振り下ろそうとする。

しかしその光の剣は少女の悲鳴で遮られた。

一誠が振り向くとそこには今日であったシスターの少女…、アーシアがバラバラに細切れにされた死体を見ながら腰を抜かしていた。

何故こんなところにと一誠は目を見開いた。

 

「おんや〜?助手のアーシアちゃん?結界は張り終わったのかなぁ〜?」

 

フリードはアーシアに出していた命令を行なったのか声をかける。

しかしアーシアは目の前の死体に気を取られており、この状況に混乱していた。

フリードは少し考える仕草と共に頭の上の豆電球が光った。

 

「そっかそっか〜!君はビギナーでしたなぁ〜?これが俺らの仕事。悪魔に魅入られたダメ人間をこうして始末するんす」

 

アーシアはその言葉に驚き、そんなと声を上げる。

彼女はフリードの方を向くと共に傷だらけの一誠を発見する。

 

「なになに?君たちお知り合い?」

 

フリードが揶揄うように2人に問い、アーシアがどうしてここにいるのかと一誠に聞いた。

一誠はアーシアから目を背け、謝罪と共に自分が悪魔だと告げる。

その言葉にアーシアはさらに驚く。

一誠はアーシアの方を振り向く。

 

「騙したんじゃない!だから君とは会わない方がいいって…決めてたのに…!」

 

そんなとアーシアは口に手を当てて涙を溜める。

自分の恩人が悪魔だと知ったその事実はアーシアの心を大きく揺さぶった。

フリードはアーシアに嫌味ったらしく残念だけど悪魔と人間は相容れないと耳元で囁く。

追い討ちをかけるように自分たちは堕天使の加護がなければ生きていけない半端者だと囁いた。

一誠はその言葉を聞き流すことなく彼らのバックについているのが堕天使だということを知る。

フリードはアーシアを説得したと思い、一誠を殺すためにその光の剣を首に当てる。

 

「覚悟はok?なくてもいきます!」

 

そうフリードが一誠に向けて一方的に話し返事を待たずに光の剣を振り下ろそうとする。

しかしアーシアが一誠の目の前に立ち庇い立てる。

そのような行為に及んだアーシアをゴミを見る目で見て、自分の肩をトントンと光の剣で叩く。

 

「オイオイ、まじですか?」

 

「フリード神父!お願いです!この方をお許しください!どうかお見逃しを!」

 

そう言ってアーシアはフリードに懇願する。

フリードは苛立つように今何をやっているのか分かっているのかとアーシアに威圧的に話す。

 

「たとえ悪魔だとしても…、一誠さんはいい人です!それにこんなこと…、ナイ神父が貴方を庇ったというのにあんまりです!」

 

「ハァイ?いやいや、君さぁ、あの人の事知らないの?」

 

フリードははぁ?と疑問をアーシアに向ける。

アーシアはその返事に対してさらに疑問の目をフリードに向けた。

 

「あぁ、知らないんだ!そうかそうか、君ってそういえばあの人のお気に入りだもんね。そりゃ知らねえわ〜」

 

フリードが肩をすくめながらそう話す。

そう話した瞬間にガッとアーシアを掴み壁に押し付ける。

フリードは嗜虐的な笑みを浮かべる。

そして彼は真実を教えてやるよとアーシアに言った。

アーシアはえ?と困惑したがその反応を無視して彼は喋り出す。

 

「あの人はさ、テメェを外なら神々の神官にしようとしてんだよ。光栄な事だろう?お前みたいなどこにも居場所がない魔女が真実の神に奉仕することができるのはよぉ」

 

彼は何を言っているのだとアーシアは理解を拒んだ。

そんなことを自分を拾ってくれたあの優しい人がそのような悪魔に私を売るような真似をするわけがない。とアーシアはそう思った。

しかしフリードはさらに追撃をする。

 

「あの方はテメェを計画に組み込んでらっしゃるんだよ。お前にも利益がある。お前が信じていた神じゃあねえけど神の如き方々がお前に褒美を与えてくれるさ。どんなものでもくれると思うぜ?例えばテメェが欲しかった…「愛」とかよォ…」

 

フリードはそうアーシアに告げた。

アーシアはそのような言葉を聞いて渾身の力でフリードの鳩尾に蹴りを入れた。

フリードはいきなりの反撃と激痛により掴んでいたアーシアの服を離してしまう。

そしてアーシアは叫んだ。

 

「あの人は、ナイ神父はそんなことをする人じゃありません!」

 

先ほどの反撃に加えて否定をされたフリードは苛立ち交じりにガリガリと頭を掻き毟り舌打ちと共にアーシアの頬を大きく振りかぶった拳で殴った。

アーシアの軽い身体がフリードに殴られた方向へと飛ぶ。

 

「テメェ如きの矮小なる存在があの方のことを勝手に決めつけてんじゃねえボケ!頭に蛆が湧いてんじゃあねえのか?アァ!?」

 

そう言ってアーシアの方へと向かい、フリードはうつ伏せになったアーシアの身体を足で強引に仰向けにさせる。

そして思い切り腹を蹴り上げる。

その暴行は一度では終わらず何度も何度も繰り返される。

フリードは狂ったようにアーシアに暴言を吐き、脇腹に蹴りを入れる。

アーシアに振るわれる暴力はどんどんと強くなっていき、アーシアは血を流しながら頭に涙する。

それを見ていた一誠はやめろ!と叫んで激痛に耐えながら立ち上がる。

フリードは一誠の方を向き、睨みつける。

 

「アーシアを…、離せ!」

 

「今さぁ、こいつにお仕置きしてんの。分かる?空気読めクソ悪魔!テメェ如き悪魔の紛い物がウダウダ言ってんじゃねえぞ!」

 

そう言って光の剣を構えて一誠に向ける。

濃縮された殺意を向けられた一誠は全身に針が刺されているような感覚に陥る。

しかし一誠には後に引けない思いがあった。

勝ち目もないし死ぬ可能性の方が圧倒的に高い。

しかし自分を庇ってくれた女の子を見捨てて逃げるほど彼は腐っていなかった。

射抜かれた脹脛からは絶え間なく血が溢れる。

しかし、一誠は叫びながらその痛みに耐えて左腕を振り上げフリードの顔面に叩き込む。

重いストレートがフリードの左頬を殴りぬき、吹き飛んだ。

殴られたフリードは口内を切ったようで血混じりの唾を床に吐き捨て、立ち上がり光の剣を構える。

 

「あァ、ホンッットテメェクソクソクソ鬱陶しいんだよクソが!クソ悪魔が!テメェは関係ねえだろうがよォォ…!!!!」

 

そう一誠に呪詛を吐き、もう片方の足を拳銃で3発撃ちぬく、かなりの射撃能力を持っているようで太ももが大きく抉られる。

その激痛により一誠は倒れ、フリードは苛立った表情で大きく振りかぶった光の剣を振り下ろした。

一誠はここで死を悟った。

次の瞬間赤い魔法陣が目の前に出現し、そこから高速で飛び出した金髪の少年が振り下ろした光の剣を受け流した。

一誠は目を見開き、やってきた少年に声をかけた。

 

「木場…!」

 

「兵藤くん、助けに来たよ」

 

木場が魔法陣からは現れ、一誠の命を刈り取る一撃を受け流した。

突如現れた木場に驚きながらもフリードは冷静に新たな敵の致命的な部位を斬り裂こうと剣を振るうが全て受け流される。

高速で振られた剣の摩擦と魔力によって火花が散る。

フリードは後ろに飛び、この民家に悪魔の団体がやってきたのを理解した。

 

魔法陣からは続々とリアスの下僕たちが姿を現わす。

木場祐斗に姫島朱乃、塔城子猫がこの民家に姿を現した。

彼らはフリードを見て、あらあらと呟いたり祓魔師(エクソシスト)…と敵意を向けたりする。

 

「みんな…!」

 

一誠はそう呟いで自分が助かったことを理解した。

 

「悪いね、彼は僕らの仲間なんだ」

 

そう木場がフリードに言い放つとフリードは下品な言葉を並べ立て木場を煽るが木場は神父とは思えない下品な物言いだとフリードに言い放つと。

上品ぶるなよとフリードは苛立ち交じりにそう返した。

フリードと木場たちが軽口を叩きあいながらもフリードは気絶したアーシアを米を担ぐように持つ。

 

「逃げる気か!そうはさせない!」

「逃げちゃ…、ダメです!」

 

木場がフリードにそう言うと共に剣を振り下ろす。

子猫は机やテレビを投げ、フリードは片手しか使えない状態で受け流しながら廊下へ向かう。

その瞬間、赤い魔法陣から滅びの魔力が放射される。

その魔力を間一髪でフリードは避け、そこから現れた存在を見る。

 

「当てるつもりだったのだけど、小回りが利くわね」

 

そこに現れたのはリアス・グレモリーだった。リアスが放った滅びの魔力により地面は抉れ、フリードも体勢を崩す。

これを好機だと見た木場と子猫はフリードに追撃を仕掛けるために廊下で倒れているフリードに剣と拳の一撃を入れようとした瞬間、フリードが神父服に隠していた閃光手榴弾を取り出す。

その閃光手榴弾は悪魔に対して、ノックバックさせる祓魔師(エクソシスト)謹製の品物だ。

 

「そっちとこっちじゃ戦力差が半端ねぇんだよクソが!」

 

そうセリフを吐き、フリードは閃光手榴弾のピンを抜く。

閃光手榴弾から発せられた光が木場たちの目を焼く。

フリードは舌を出しながら木場たちに言う。

 

「逃げるんじゃなくて時間稼ぎだよバーカ、形勢逆転っすなァ!」

 

フリードの上に堕天使のゲートが見える。

それを見たリアスはここは撤退が先決と考える。

 

「朱乃、ジャンプの用意を。子猫は一誠を頼むわ」

 

姫島と子猫がはいと返事をして姫島は魔法陣、子猫はフリードに机を投げつける。

フリードは机を光の剣で受け流そうとするがアーシアを抱えているせいかバランスを崩して頭にぶつけてしまう。

アーシアはフリードの肩から落とされる。

一誠はボロ雑巾のようになったアーシアを見てリアスに叫ぶ。

 

「部長!あの子も一緒に!

 

「それは無理よ、この魔法陣は私と眷属しかジャンプできないの」

 

一誠の懇願を切り捨て、リアスの魔法陣が活性化する。

目を閉じたアーシアに一誠は手を伸ばし、アーシアの名前を呼ぶ。

その声にアーシアは気がついたが時はすでに遅く、アーシアはボロボロの体に鞭を打ち一誠に言う。

 

「一誠さん…、またいつか、どこかで」

 

そうアーシアは微笑んだ。

一誠はアーシアの名前を叫び、子猫から離れようとする。

しかし『戦車』の駒の特性を持つ子猫に叶うことはなく、そのまま魔法陣の力が作動し、一誠たちはこの部室へと戻ることとなった。

 




サイコロステーキ好きか?好きです。
たまに気が向いた時に後書きとかに小説内で出た組織とかを大まかに書いたりします。
お気に入り50超えありがとうございます!
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