「で、俺が何で呼び止めたか分かるな?」
「……はい」
呼び止められた灰怒は暗い表情をしながら答える。
「勝手に属性と能力を解放した事ですよね?」
「いや、違う」
返って来た言葉に灰怒は「え?」と、驚いた表情と疑問符を上げた。そんな表情を浮かべる灰怒に夜天は溜め息混じりに
「属性と能力は後でどうとでも出来るから問題は無い。俺が呼び止めたのは『ルリム・シャイコース』と契約した事だ」
「!何で……それを……」
驚愕に満ちた表情を浮かべる灰怒。すると辺りの温度がみるみる内に下がりら自身を軸に霜が現れ夜天の足を凍らせ始めた為、灰怒は凍結させている犯人に急いで止める様に促す。
「止めろ!『ルリム』!!この人は敵じゃない!」
『え~でも、折角解除した能力を封印する気満々みたいだよ~?』
しかし肝心の『ルリム・シャイコース』はそんな言葉どこ吹く風と言わんばかりに止めようとせず寧ろ勢いを増していく。
ピキピキ、パキパキ
「やれやれ、仕方ありませんね」ビリッ
氷が上半身にまで迫っている最中だと言うのに余裕の態度を崩さない夜天は、閉じていた右目を開眼させながら溜め息を吐いた。
──食堂側side──
「なんか……?寒くないか?」ブルッ
身震いをしながら焔が言うと他の蛇女子メンバーも確かにと呟く。龍導メンバー達も気温の低さに気付いたらしくそれぞれが呟くが
「北国よりはマシだろ?」
「イヤ、お前の基準で比べられても……」
蘇芳は自身の居た環境よりは普通だと語った。それにツッコミを入れる白堊。その話を聞いた詠は蘇芳に
「そう言えば、貴方も貧民街に住まいになっていましたわね?どのような環境……生活だったかお聞きになっても宜しいでしょうか?」
同じ貧民街出身との事で話がしたいと申し出るが、蘇芳は首に手を当てながら
「…………食事中にするような話じゃないんだが……食事が終わった後とかでもいいか?」
「私ったら、不躾申し出をしてしまいましたわ……申し訳ございません」
詠は蘇芳の長い(とはいっても数秒だが)沈黙に何かしらの嫌な出来事があったのだろうと感じ取り、謝罪した。それに対して蘇芳は
「気にすんな」ポンポン
「~~~////」
滅赤にした様に頭を優しく叩く。それに対して顔を赤らめる詠。そんな様子を見た光牙を除いた蛇女メンバーは
ジトーーーーッ
物凄いジト目で此方を見ていた。その視線に気付いた詠は急いで距離を置き話題を変えた。
「そ、そう言えば朝食を作ると仰っていた方、確か夜天さん?は選抜部屋に灰怒さんと仰る方と残ったままですが……どう作るのでしょうか?」
「あ、確かに……」
先程まで詠をジト目で見ていた焔が思い出したように言うと
「あぁ、それなら問題無いぞ」ニョキ
「ホワァ!?」「何変な声だし、ファっ!?」
壁からまるで生えて来たかの如く、夜天が現れた為思わず変な声を上げた焔とソレにツッコミを入れた白堊も変な声を出した。
それ以外のメンバーも目を丸くしていた。
「予め、影分身をして置いたから朝食の心配は無いぞ?じゃあ作っている途中だから戻るから」
そう言いながら夜天はまたも壁をすり抜けながら戻って行った。それを見たメンバー達は
「……すり抜け術?習得したら無敵なのでは?」
誰かは分からないが、その呟きにコクコク一人除いて頷き
「後ででもいいからやり方とか習得方法を教えて貰おうかな……」
「あ!ズリィぞ!だったら、オレも」
「お前はまずは遁術からだろ」
「う"」
そんな他愛ない会話をしながら食堂へと向かう一行だったが。
「…………」「………おい」
輪廻と光牙だけは立ち止まり天井を見上げていた。二人同時に先程まで自分達の居た部屋に得体の知れない何かがいる事を察知したらしく、冷や汗を流していた。
「?どうかしたの?」
そんな二人の様子に気付いた春花は声を掛けるがポンと白銅に肩を叩かれながら
「聞いた所で意味はない。準備の手伝いがあるかもしれない早く行こう」
「え?別にいいけど……(準備する必要あるかしら)」
促された春花は多少ではあるが、もやもやを抱えつつも食堂へと向かって行った。
「(すまない、ハク)じゃあ、私達も行くか」「そうだな」
輪廻は心中で白銅に謝罪しながら光牙と共に向かって行った。
「………」ギリァ
その際に悪鬼の如く、光牙を睨み付ける転生が居る事には誰も気付かなかったらしい。
戻って選抜部屋では
「はぁ、はぁ」
「フゥー」
顔を青くし、瞳を恐怖に染めながら床に座り込む灰怒と開いた眼を右手で抑えながらゆっくりと息を吐く夜天。
そのまま夜天はスーツの内側のポケットから眼帯を取り出し、右目側に掛け灰怒に向き直ると、灰怒に手を差し出す。
「ほら手掴め、腰抜けてんだろ?」スッ
「え?あ、あ!だだ……大丈夫でです!ですよ!」
ワタワタと慌てふためきながらも立ち上がる灰怒に苦笑する夜天は
「本当に相性良いな、お前らは……」
飽きれとも、感心とも取れる物言いで語る夜天に灰怒は申し訳無さそうに謝ろうとするが、突然辺りが暗闇に覆われると共に大きな声で
『すいませんでした!』
「え??え?」
と灰怒の中にいる筈の『ルリム・シャイコース』が具現化し、夜天に土下座と謝罪をし始めた為に困惑する灰怒。それを見た夜天は灰怒に
「灰怒、そう困惑する事でもない。コイツが謝罪している相手はオレじゃなくてお前が腰抜かす程びびった
「あまり持ち出さないでください
眼帯を着けた右目を指しながら語る夜天に、灰怒は腰を抜かした事を顔を赤らめ恥ずかしそうに語る。そんな中『ルリム・シャイコース』は
『え~と、お話し中悪いんですが……私が謝った相手は……◼️◼️◼️……ではなく、
「「………」」
そう語った。暫く沈黙が続いたが、夜天は腕を組ながらその理由を聞く事にした。
「それは何故か聞いても良いか?……あ、出来れば
夜天の問い掛けに対して『ルリム・シャイコース』はコクコクと頷くと同時に辺り一面が輝く空間になると共に謝罪した事について話し始めた。
『私が貴方に対して謝ったのはですね、貴方の右眼に潜む◼️◼️◼️の事も勿論ですが……一番はそれを封印する際に貴方が◼️◼️◼️を一度
「別にそんな事しないけど?」
『あ、そうなんですか?良かっ……』
「
そう言われた『ルリム・シャイコース』は「う"」っとした気まずそうな声を出し視線を反らした。
「何だ言えない事情でもあるのか?」
『そ、それはッ……』
中々に口を開かない『ルリム・シャイコース』を訝しむ表情で見ていた夜天だったが、段々と表情が険しくなっていく。その表情を見て先程まで蚊帳の外であった灰怒が名乗り出た。
「あ、説明は僕がします実は───」
───少年説明中──
「成程、力を貸す代わりにとある魔術師を倒して欲しいって訳か……」
コクコク
夜天が灰怒から説明された内容を語ると『ルリム・シャイコース』は頷く。それを見た夜天は額に指を当てながら理解したと言った表情を作った為、これを見た『ルリム・シャイコース』と灰怒は安堵の息を洩らした。
「だが、能力封印の件は別だからな?」
「……はい」『あ、はい』
しかしながら、了承なく能力を解放した事は別らしく、その件は再度封印し直す事となった
「しっかし、大分な量を解放したな……んじゃ取り敢えず、属性は『闇』と『冥腐蝕』以外を封印して能力は、『天眼』『治癒能力』残して同じく封印……と、良し!これでOKダネ」
「え?(もう完了?て言うか……)」
割りとあっさり能力を封印した夜天に本当に封印出来たのか疑問の声を上げようとした灰怒だったが、それ以前に属性の『闇属性』と『冥腐蝕』を残してそれ以外を封印した事を疑問に思った為、夜天に問い質すと理由に加え『能力』の解説も加えて説明し始めた。
「属性の内『闇属性』と『冥腐蝕』以外を封じた理由は簡単だ。お前はその二つ以外はほぼ完全に使いこなせているが、前者二つはてんで駄目だ。それに使用した際『闇』に平たく言えば『負の感情』に呑まれただろ?それら二つを克服しない限り成長の見込みが無いからな、お前は……後、能力についてだが──
「……(言いすぎだろ……)」
『(でも彼の言う事も一理あると思うよ?)』
「(お前はどっちの味方何だ……)」
『(実際「負の感情」に呑まれてたじゃん?)』
「(……ムグッ……)」
──て訳だが……オイ、話し聞いてたか?」
「あ、えっと……すいません」
『ルリム・シャイコース』との心中会話を行っており『能力』の説明を全く聞いていなかった為、顔を俯けながら正直に謝った。そんな灰怒を見た夜天は腕を組みながら簡単に説明する事にした。
「姉さんソックリだな……ハァ……まず最初に《
「成程、大体分かりました。しかし何故、僕が《天眼》を開眼した事が分かったのですか?」
説明が終わった後に灰怒は気掛かりになっていた自分が《天眼》を開眼している事を何故夜天が知っているかを聞くと、夜天は少し間を空け左目を一旦閉じた後、開いたすると
「あ……成程、そうゆう事ですか……」
開いた夜天の目を見て、灰怒は納得した。何故ならば夜天の瞳に赤紫の小さい三角形の模様が三つピラミッド状になっていた為であった。
「そうゆう事だ、まぁ『過去』しか見れない劣化だがな……取り敢えず。契約した事と能力の封印はしたんだ。コレ持って、とっと飯食いに行きな」ヒョイ
「わっと!……分かりました(何だろ?コレ?……ぇ)」
夜天から投げ渡された木箱をキャッチした灰怒は木箱を見ながら、食堂へと向かって行った。
──灰怒side──
『いや~大して怒られなくて良かったね~?』
「………」ジッーー
部屋から出るなり『ルリム・シャイコース』はそう言いながら灰怒に語り掛けて来たが、渡された木箱を見つめたまま返事を返さない灰怒。
『おぅ~い、聞いてる?ねぇ?』
「…………………」ジッーー
『……………(=`ェ´=)』ムカ
問いかけても、聞く耳すら持たずに木箱を見つめる灰怒に多少とはいえ頭にきた『ルリム』は心中ではあるが大きく息を吸い込み
『私の話し聞いてますか!?』
大声で語りかけた。心中とはいえ常人……否、例えそうでなかろうと怯み驚くであろう声にも関わらず灰怒は
「……ん?……あ、うん、良かったネ」ジッーー
適当な返事をしたまま、またも木箱を見つめたため『ルリム』は諦めて溜め息を吐きながら話題を木箱に変える事にした。
『彼から渡された木箱だよね、ソレ?中身何なの?』
聞かれた灰怒は嬉しそうな笑みを作りながら、箱を空け中身を取り出す。中身に入っていたのは一振りの太刀だった。
『……日本刀?ってヤツかい?』
「あぁ、そうだよ。でも只の日本刀じゃない」
『?』
灰怒の言葉に疑問を抱く『ルリム』に灰怒は笑顔を作りながらイキイキと語り始めた。
「フフフ、この刀の名は『
『……国宝って……国の宝だよね?偽物じゃないの?』
「いや、それはないよ」
『……何故そう言い切れるんだ?』
『ルリム』は国の宝ともされる物を一個人である夜天が持てるわけがないため、彼が造った模造品または贋作ではないのか?と問いかけたが灰怒はそれをバッサリと切り捨て「本物」と言い切った。理由を問われた灰怒は
「"見える"んだよね」
『……何?』
「だから、《見える》んだよこの刀を造った人や使って来た人達が」
『ふ~ん、さいですか』
「何その!?適当な返事」
灰怒の返答に適当な相槌を返す『ルリム』だったが適当な返事とは裏腹にある一つの仮説を考えていた。
『まぁそんな事より、早く食事に向かいましょう?』
「……釈然としないが、待たせてるしそうするけど」
『(彼自身が気付いているかは不明ですが、恐らく『天眼』の能力である『過去』を見る能力でしょうね。しかし私の考えはあくまで仮説……しかしそれが事実なら……彼の言ったように戦略に有効ですね)』
不機嫌な顔で場へ向かう灰怒とその心中で色々と思考を巡らせ自身の仮説が事実だった場合どう灰怒の戦いに有効に成るか考える『ルリム』そんな彼を見る人影が……
─────「何やら、あやつは一人でぶつぶつと呟いていたが……まさか!友達が居らんのか!?ふふふ、ならば我が神の眷属として我の僕として勧誘してやろう!」───
と物陰から灰怒を見る蛇女子学園次期選抜候補の一人『芦屋』が見ていた……
「……(何か、後ろからぶつぶつ聞こえてんなぁ……)」
灰怒は天を仰ぎながら心中で呟いた。