第一話「初陣」
鳴り響く警報音、迫り来る敵、それを予測していたかのように迅速に動く人々
「第3及び第4ベルシールド展開、バトルフィールドスタンバイ完了」
「よし、ファフナー発進スタンバイ」
目の前にそびえ立つファフナー、遂に訪れた瞬間。不安げな母の視線を背中で遮り前に進む。
指輪に手を通して広がる景色、ありとあらゆるものが小さく見える。
「敵は3体」
「エスペラントやコアのお陰で予想よりかなり少なくなってはいるが、その分憎悪に満ちているそうだ。ジークフリードシステムの支援もなく、ファフナーはお前1機初陣だというのにすまない。」
「大丈夫ですよ、訓練通りやればこのくらいのフェストム、僕だけでも倒せます。」
「無理難題なことを言わせてもらう…死ぬなよ。」
「了解!!」
「よし、ファフナー発進」
水中のなかを加速する愛機、勢いを維持したまま海上に飛び出す。
「これが、僕のいる島…」
目の前に広がる島。僕は今、戦士になった。
「あなたはそこにいますか。」
僕に気がついた黄金の敵は思ったよりも綺麗だった。
「僕はここにいるよ、君はここにいるの。」
敵はなにも答えてくれない
「彼らに同じ問を返すとは、やはり面白い子ね。亮一。」
「…ルヴィ姉さん、また僕をからかったな。」
ルヴィ姉さん、いやルヴィ・カーマ様と呼ぶべき人か、僕の住む海神島のコアとして皆に崇められている存在。
「初めての貴方を厳しい状況に巻き込んでしまいました。ごめんなさい。」
「ルヴィ姉さんやエスペラントの皆が敵が来るのを防いでくれていたのは知ってるよ。だから謝らないで。」
「ありがとう亮一。」
「それに、美羽姉や真壁司令達は大丈夫だと判断したからあの子をAlvisのほぼ全戦力を持って連れ戻す作戦に行ったんだ。僕は皆の期待に応えるよ。」
「私が最大限サポートします。行きなさい亮一」
「わかった。」
僕達は目の前にいる敵へ向かい歩み始めた。
「ファフナーエンゲージ」
「亮一、誰かと話してなかったか。」
「コアのクロッシングを確認しています。」
「なるほどな、よしこちらも最大限バックアップする。」
敵に向かい飛んでゆくミサイル、しかし敵には効いていない。
「CDCからの援護射撃…やっぱり効かないよね。」
「亮一」
気がつくと3体の敵に囲まれていた。
「しまった」
とっさに目の前の敵に攻撃するが防がれ、集中放火を浴びる。
「落ち着いて、その攻撃から脱け出して」
「そう言われても…ウワー」
僕の身体から緑色の結晶が出てくる。
「亮一」
「マークノイン改『フレイヤ』にて同化現象が発生」
「なに、亮一しっかりしろ。飲まれるなよ」
痛みともに敵が僕の心に入ってくる。
「あなたはそこにいますか」
「僕は…ここに…いるよ。君は…ここに…いるの。…答えてくれないんだね…」
「じゃあ、僕から答えを聞きにいくよ」
「〜〜〜〜〜〜!!」
「どうやら同化現象に耐えきったようです。」
安堵する大人達
「敵の一体が他の二体を攻撃し始めました。」
「なんだと」
「『フレイヤ』のアクセラレーターが起動。SDPを発動を確認」
「初陣でSDPを発動かよ、しかもこれは…」
「よろしくね、一緒に頑張ろう。」
「〜〜〜〜〜!!」
「亮一貴方。」
「大丈夫だよ。ルヴィ姉さん、行くよ。」
僕は一体にルガーランスを突き刺す。暴れる敵
「ごめんよ。」
ルガーランスから出る電磁砲で一体が消滅、もう一体も彼が倒してくれた。
「さてと、君ともさよならだ。」
激しい憎悪を向けて彼は僕に向かってきた。
「君の存在、確かに感じたよ。」
彼に刺さるルガーランスから電磁砲が放たれ、彼の存在は消滅した。
「フェストム消滅を確認。」
重苦しい沈黙がCDCを包み込む。
「俺達を救ってくれた戦士を温かく迎え入れよう。」
「お疲れ様亮一。」
「ありがとう。ルヴィ姉さん。どう僕の初陣は。」
「かなり危険な初陣でした。もし力が使えなかったら。貴方は確実に消滅していました。」
「うん。危なかった。もっと訓練しなきゃ。」
「でも、貴方に皆が救われたのは確かです。ありがとう。」
「皆がサポートしてくれたおかげだよ。」
「ゆっくり休みなさい。あと早く貴方の顔を見せて上げなさい。心配し過ぎて今にも倒れそうよ。」
「わかった。ありがとうルヴィ姉さん。」
(…うん、なんとか護れたよ。…そうだね。護るよ絶対、だから信じて待ってて。)
「どうしましたか。亮一」
「なんでもないよ、後で会いに行くよルヴィ姉さん。」
「わかりました。待ってますね。」
(…美羽。)
ファフナーを降りると皆が僕の無事を喜んでくれた。
ハイタッチをしてくれる人、握手をしてくれる人、手荒い祝福をしてくれる人と人によって様々だ。
そんな中、ただ一人だけ僕を見て抑えていた涙をこれでもかと流す人がいた。
「ただいま、母さん。」
「おかえりなさい。よく無事に戻ってきてくれたわ。」
「恵さん、亮一くんが戻ってくるまでずっとここで待ってましたもんね。あまり心配かけちゃダメだよ亮一くん」
「そう言われましても、戦いなのでどうしても心配はかけちゃいますよ。」
「気分は悪くない。」
「大丈夫だよ、母さん」
「そう。余り遅くならないように帰ってらっしゃい。」
母さんはそう言ってブルグを去った。
(こちらは亮一のおかげで無事です。…ごめんなさい。私達の力不足で想定よりも早く送り出してしまいました。そちらは…そうですか。わかりました。次の策を考えましょう。貴女達の無事の帰還を待っています。)
「ルヴィ姉さんどうしたの。」
海神島のミール『アショーカ』の前で祈りを捧げるルヴィ姉さんを見つけた。
「亮一。美羽とお話をしてました。作戦が終り帰還するようです。」
「美羽姉達帰ってくるんだ。作戦はどうなったの」
黙ってこちらを見続けるルヴィ姉さん。
「そうか…連れ戻すことは出来なかったか。」
「そのようです。」
「美羽姉達は大丈夫なの。」
「いなくなった方はいないようです。ただ、真壁一騎が途中離脱したことによりファフナー1機を奪われました。」
真壁一騎。僕らファフナーパイロットの英雄、母さんからは1つ下の世代で母さんたちが子どもの頃からファフナーのエースパイロットとして戦い続けている人だと聞いている。
「一騎さんやられたの。」
「いえ、力を使い過ぎたため眠りにつきました。彼は世界の傷を塞ぎ調和をもたらす存在。いなくなることは、まずありません。あとはアマテラス、スサノオ、ツクヨミが大破、直せないことはないですがここ最近では一番酷いやられ方だということです。」
「彗さん達がそんなにも…」
「アズライールのパイロットが敵の同化現象で目を失い」
「そんな、真矢さんが。」
遠見真矢。彼女も真壁一騎と共に母さんが子どもの頃から戦っているファフナーパイロットだと聞いていた。
「彼女の目は私達の力で治るわ、安心しなさい。あとは彼らの管理者も深刻な同化に晒されたようね。彼は今の立場からは今後は離れるべきね。そして一番深刻なのは…」
「まだあるの。」
「イザナミが消滅した。」
「パイロットは。」
「アマテラスの力で身体は回収、けど意識は戻ってないようね。」
聞いている限りでは大損害だ、作戦も失敗。自分の『夢』が遠退いて行った気がした。
「今日はここまでにしましょう。」
「ルヴィ姉さん、でもまだ」
「しっかりと休みなさい。また今度お話しましょう」
僕は彼女と話したいことを話せぬまま、帰路についた。
「お帰りなさい。思っていたより早いわね。」
「ただいま。うん、姉さんにしっかり休めって言われた。」
「そう、夕飯出来てるわ、手を洗ってきなさい。」
「うん、いつもありがとう母さん。」
手を洗い、食卓につく前にとある写真を眺める。その写真には若い頃の母さんと男の人が写っている。
(…おやすみなさい。)