蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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第十話「手掛かり」

「これが現状の報告だ真壁」

 

「うむ。わかった我々の極秘行動の件は此方で人類軍に説明しておく。君達はそのまま任務を続行してくれたまえ」

 

「勿論そのつもりだ。そっちはどうだ」

 

「全機。修理が終わりいつでも行動出来る状態は整った。追加の派遣部隊を送ることも出来るぞ」

 

「大丈夫、この任務は俺達だけでやる」

 

「そうか…。無理はするなよ」

 

「わかった」

 

「美羽くんとコアが探り当てた情報を送る。参考にしてくれ」

 

「ありがとう。父さん」

 

「では、お前達の無事の帰還と吉報を待っている」

 

「おう。それまではゆっくりしてな真壁」

 

総士捜索任務開始から1ヶ月。手掛かりが無いまま時間だけが過ぎていた。

 

「あの『黒烏の牙』から目をつけられたのは、やはり厄介ですね」

 

「『黒烏の牙』…」

 

「あの時亮一が遭遇したパイロット『リベラル・イェーガー』の通り名です。クロウ小隊のエースパイロットで確実にそして忠実に任務を遂行することから、バーンズ将軍が最も信頼しているファフナーパイロットの1人です」

 

「でもクロウ小隊はあの時の戦いでアイツ以外全滅したんじゃ」

 

「特殊部隊ですからね…彼を中心に再編成される可能性があります」

 

「あの甲洋さん。一騎さんはあの時何故突然消えたんですか。『眠り』についたとはどういう意味です」

 

「一騎は無数のクロッシングと『同化』をすることで、相手の『痛み』や『傷』を背負うんだ。その代償で身体が許容範囲を越えると身体を休める為に眠りに就かなければいけない。そうしないと一騎自身が持たないからね」

 

「一騎はなんでもかんでも『痛み』を背負い過ぎなんだよ。敵の『痛み』まで全て引き受けてさ」

 

「俺達は『世界を調和に導く存在』。世界の『痛み』を背負うことは俺達の責務なんだ」

 

「このままじゃ一騎は『空を綺麗だと』思わなくなっちゃう」

 

「どういうことですか」

 

「『人としての感情』が無くなってしまうかもしれないんだ」

 

「そんな…どうにかならないんですか」

 

「それが俺達の力だ。力にはそれ相応の代償が伴う」

 

「一騎さん…」

 

「あーやめだやめだ。辛気臭い雰囲気は終わりだ。海神島からの情報で次の目的地が決まった」

 

「次の目的地ってどこなんです」

 

「『第2Alvis』跡地だ」

 

「『第2Alvis』跡地って…『蓬莱島』ですよね」

 

「あぁ、それらしき島の跡が大西洋で見つかった」

 

「大西洋ですか…新国連と独立人類軍が睨みを利かす厳しい場所ですね」

 

「なんでも、『マリス・エクセルシア』がその島に上陸した気配がするってことだ」

 

「『マリス・エクセルシア』とは誰です」

 

「僕達の暮らす海神島の元島民です。エスペラントとして凄い力を持っていたんですけど、今僕達が探している皆城総士や数名のファフナーパイロット候補生を連れて『ベノン』に寝返ったんです」

 

「成る程。そのマリスという人物が今回の件の元凶なんですね」

 

「うん…」

 

「どうしたのです。亮一」

 

「マリスは亮一の遊び相手になってた時期があったからな」

 

「そうでしたか…」

 

「なんで、島を出ていったのかが気になるなら本人に聞くしかねー。行くぞ手掛かりの場所へ」

 

ようやく掴んだ手掛かりに望みを託し、僕らは前に進んだ。


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