「まだ目覚めません」
「あれから、未だに目覚めないのは心配だな」
「…」
「そう、落ち込むな見えてきたぞ俺達の島が」
甲板に上がりここを出発して以来の海神島を眺める。
ここまでの出来事が一瞬甦るように思い出し、僕はうっすら涙を浮かべていた。
「任務ご苦労であった。負傷したという人類軍のパイロットは」
「来主が傷口は塞いだから大事に至ることはねぇーとは思うが、しっかりと診た方がいいだろう」
「溝口さん、お疲れ様です。報告にあった彼女はどこですか」
「こっちです。遠見先生」
すぐに遠見千鶴先生が駆けつけ。状態を確認する。
「傷口を塞いだとはいえ予断は許さない状況ね。ストラクチャーを早く」
「千鶴さん。頼みます」
「はい。お任せください」
「先生。僕も付き添っていいですか」
「貴方はまずお家に帰りなさい。待ってる人がいるでしょ、それからお見舞いにいらっしゃい」
「わかりました。よろしくお願いします」
ストラクチャーに乗せられたカンナさんは、急いでメディカルルームに運ばれた。
「亮一君。ご苦労であった、ゆっくりと休むがいい」
「真壁司令」
「お母さんも心配している。遠見先生が仰ったように早く元気な顔を見せて挙げなさい」
「わかりました。失礼します」
「お前達もよく無事で戻った」
「ただいま。父さん、保さんいる」
「保か、なんの用だ」
「機体のことで相談が…」
「そうか、わかった話しを通しておこう。お前達もゆっくり休むといい」
「いや俺達は…」
僕の足取りは重かった。どんな顔で母さんに会えばいいのかわからなかった
「あー。亮一兄ちゃんだ」
小さい男の子と女の子が僕に近寄って来た。
「衛一郎、フェイ。ただいま」
「外はどうだった」
僕は一瞬躊躇った。
「すごいところだったよ…」
「わー。いいなー僕も早く見てみたいな」
「大きくなったら見れるさ」
「衛一郎、フェイ。いらっしゃい」
「ママが呼んでる。じゃあね亮一兄ちゃん」
「じゃあね」
入れ替わるように剣司さんが声をかけてくれた。
「よく無事で戻ったな」
「剣司さん。マークアハトのお陰です」
「どうだった、初めての外は」
「この島の素晴らしさが良くわかりました」
「そうか。母ちゃんが心配してる。早く帰ってやりな」
「はい。それではまた」
「おう。またな」
「もしかしたら。衛一郎達も戦場に立つのかな」
「どうだろうな」
「…今なら母さん達の気持ちが少し解るよ。こんなにも…胸が裂けそうな気持ちをずっと母さん達は抱えてたんだ」
「させねー。そうなる前にこの戦いを終わらせるんだ」
「剣司…」
「俺も咲良ももうファフナーには乗れねーけど。俺達にはまだ出来ることがある。今はやれることをしっかりとやろう」
「そうだね」
遂に家の前に立つ。変わらない花達が優しく出迎えてくれた。
カランカラン
「いらっしゃいませ…」
「ただいま…母さん」
すぐに駆け寄り母さんは僕を強く抱きしめた。
「お帰り。お帰りなさい」
「ただいま母さん。…怖かった。怖かったよ」
自然と大粒の涙と弱音が溢れ出てきた。
「ありがとう。無事に帰って来てくれて」
「うん…うん。あのね母さん」
「どうしたの」
「カレーが食べたい」
「わかったわ。じゃあご飯食べながらいっぱい聞かせてね」
「うん」
僕の初めての任務は特に成果を挙げれられなかった。でも不思議と悔しさは湧いてこず僕の1年にも及ぶ初任務はこうして幕を閉じた。
「…とこれが今回調査した島の記録だ」
「ご苦労だったな」
「俺達の技術がその遠因になってるってのが…くそ」
「彼らの葛藤と生きたいと思う意思が今日の我々の機体の発展に繋がっていると信じよう」
「また背負うものが増えちまったな。真壁」
「…そうだな」