第二十話「見知らぬ世界」
「カンナさん、僕だよ。解る」
目が覚めると、亮一が涙を浮かべながら嬉しそうにこちらを見ていた。
「亮一…ここは」
「遠見先生。カンナさんが目を覚ましました」
「おい。亮一…痛」
身体は思うように動かせない。
「カンナ・メネスさん。初めまして、Alvisアルベリヒド機関研究主任の遠見千鶴です。ここはAlvisのメディカルルームよ」
「Alvis…ということは」
「はい、僕の暮らす海神島です。カンナさん」
「ここが…海神島」
「あと3日程は安静にした方がいいわ」
「お前達の任務はどうなったのだ」
「一時中断して、島に戻りました。一騎さんと甲洋さんとクルスは一旦一緒に戻って、すぐに出発しましたけどね」
「お前は良かったのか。亮一」
「…このままでは3人の足でまといになりそうでしたし、カンナさんが心配だったので」
「そうか。ありがとう」
顔を真っ赤にする亮一。その表情が愛おしく想えた。
「亮一くん。そろそろお家に帰りなさい、お母さんが心配してるわよきっと」
「わかりました。じゃあまた来ますねカンナさん。おやすみなさい」
「おやすみ」
私が病室から出る許可が出るまでの3日間。亮一は決まった時間に毎日会いにやって来てくれた。
退院早々、私はAlvisの司令官に呼び出された。
「こうしてしっかりと話すのは初めてだな。Alvis司令真壁史彦だ。大方溝口から話しは聞いている。我々の同胞を守ってくれてありがとう」
「元人類軍北ヨーロッパ方面守備軍第08ファフナー部隊所属カンナ・メネス少尉だ。こちらこそ部外者でありながら治療をして頂き感謝する」
「君は今後どうする」
「…」
「身寄りがあるならば、我々からコンタクトを取り君をそちらまで送るが」
「人類軍で私は既に死んだ身の人間だ。身寄りはない」
「そうか。君が望むならこの島に留まることも出来る」
「いいのか」
「ここには元は人類軍側だった者も大勢いる。誰であろうとこの島にいることを望む者であれば歓迎するよ」
「そうか。ではやっかいになろうと思う」
「わかった。これからよろしく頼む。カンナ君」
海神島に滞在することとなり手続きを始めると亮一が声をかけてきた。
「どうした。亮一」
「早くカンナさんを案内したいなって思って」
「それは楽しみだ」
「カンナさん。服どうします」
「服がどうかしたのか」
「Alvisの制服ありますけど、カンナさんが抵抗あるならその格好でも」
「そうか…今は暫くこっちを身に着けるとするよ」
「カンナ・メネスさん。次はお住まいになる場所についてなのですが」
「住む場所か…」
「僕の家に来ますか、カンナさん」
「いいのか」
「僕は大歓迎です」
「お前のご両親は」
「今から聞いてみます」
側にあった電話機を手に取り自宅に確認を取る亮一。
「母さんもいいって」
「そんなのでいいのか」
「カンナさんがよろしいのでしたら、こちらは問題ありませんよ。あくまでここに上げた候補は提案ですので」
「どうしたの。カンナさん」
「いや、ここまで個人の意思を尊重されたことは人類軍では無かったから。戸惑っている」
「そうなんですね」
「軍隊はそういうところだから致し方ないことではあるがな」
「手続きは完了しました」
「やった。行こカンナさん」
上機嫌な亮一に手を引っ張られ、私は彼の家に居候することとなった。