「母さんただいま」
亮一の家は花屋だった。一束一束丁寧に心を込めて手入れされた綺麗な花の数々。
「おかえりなさい」
声とともに女性が顔を見せた。
「貴女がカンナさんね、霧島恵。亮一の母です。息子を助けてくださったと聞きました。ありがとうございました」
「カンナ・メネスです。いえいえ亮一くんには私もたくさん助けてもらいました。それに見ず知らずの私を受け入れてくださり。ありがとうございます」
「亮一が凄くそれを強く望んでました。それなら断る理由がありません」
「やめてよ母さん」
「フフ…照れちゃって…」
「あの…なにか」
「いえ、ごめんなさい。貴女を見てると昔の仲間を思い出しちゃって」
「…昔の仲間ですか」
「貴女に似た子がいたんです。まだ赤子だった亮一がとても懐いていた人で私も彼女とは凄く仲良しでした」
「今はもういないのですか」
「ええ。島の未来の為に命懸けで戦ってくれました。その人に雰囲気が似てるなと。だからなんだか亮一が貴女を気にするのが、納得いきました」
「もう。母さんったらこれから一緒に暮らすんだからそんなに他人行儀にしないでよ」
「あのね亮一、こういったことには段階があるの。これからよろしくねカンナさん」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
その日は霧島家に慣れる為に外出はやめ、この島での暮らしのイロハを恵さんから教えて頂いた。
家の中を案内してもらい、休憩がてらリビングの椅子に座ると飾られた家族写真が気になった。
「この方が旦那様ですか」
「うん。幼なじみでねずっと一緒にいて結婚して、亮一を授かったわ」
「ご存命では…ないのですか」
「生きてるわ。ただ訳あってずっと離ればなれなの」
「彼はお父さんに会ったことは」
「生まれたばかりの頃しか一緒に暮らしたことがないから。覚えてないんじゃないかな。カンナさんはご家族は」
「両親は幼い頃にフェストゥムにやられました。孤児として育ち。気がつけば人類軍の兵士としてファフナーに乗って戦場にいました」
「そっか、大変だったのね。あの子と会った時衝撃じゃなかった」
「正直。このご時世で平和ボケしたガキがなんでこんなところにいるんだと思いました」
「そうよね。カンナさんの環境で育ったら」
「すみません。…ただ約1年一緒に行動しこちらの文化や思想にも触れることが出来。まだ世界に希望はあるんだなと。亮一くんを見て思えることが出来ました」
「それは良かった。明日はどうする」
「亮一くんが島を案内してくれると言ってくれたので外を歩こうと思います」
「母さんお腹空いた」
「今作るは…どうしたの」
「すみません。意外と甘えん坊なんだなと、任務中はしっかりしている印象だったのでなんだか意外で」
「あの子もファフナーに乗って戦いに出たとはいえ、本当ならもっと無邪気に遊んでいて欲しい年頃なのよね」
「…。大丈夫です彼は強い、それにいざとなれば私が彼を守ります」
「ありがとう。でもいなくなってはダメだよ、たとえ亮一が助かっても貴女がいなくなっては意味の無いことになるから」
「はい」
「よし。しんみりとした話しはおしまい。カンナさんこ御飯作るの手伝ってくれる」
「はい。喜んで」
3人で囲む食卓。笑顔の絶えないその光景に私はまるで別の世界にいるような気分であった。