蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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第二十四話「重みを知る者」

あくる日。私達はとある家を訪ねてた。

 

「はーい。亮一だ珍しいね亮一が家を訪ねて来るなんて」

 

「こんにちは美羽姉。そうだね今日は用事があって来たんだ」

 

「貴女は、校門の前でお会いした」

 

「カンナ・メネスです」

 

「貴女がカンナさん、日野美羽です。…呼んできますね」

 

「…私の用事がわかるのか」

 

「真矢お姉ちゃんですよね。すぐに呼んできますね」

 

「あっあぁ…」

 

(彼女はエスパーか)

 

(美羽姉は『エスペラント』なんです。次世代の担い手として島の皆から期待されています)

 

『エスペラント』。『希望』という意味を持つミールと対話できる能力者で資料によれば、ミールとクロッシングができ、人の心を読んだり。高度かつ複雑と言われるミール及びフェストゥムと感覚的に対話出来る者達らしい。私は実在する人間を初めてみた。

 

(ここは『遠見家』ではないのか)

 

(美羽姉のお母さんがこれから会う。『遠見真矢』さんのお姉さんなんです。ご両親は既に亡くなられているので遠見家が引き取ったと聞いています)

 

「貴女がカンナさんね」

 

奥から、1人の女性が姿を見せた。

 

「こんにちは。真矢さん」

 

「こんにちは。私に用事なんだって」

 

「はい」

 

「上がって」

 

「出来れば外の方が…」

 

「構わない。別に人がいても」

 

「では…お邪魔します」

 

(彼女もエスペラントか)

 

(いえ、違うと思いますけど)

 

リビングにお邪魔すると知っている顔の2人がいた。

 

「亮一くん。カンナさんいらっしゃい」

 

「お邪魔します」

 

「遠見千鶴先生と…真壁司令」

 

「どうだね。島には慣れたかね」

 

「えぇ…何故真壁司令が遠見家に」

 

「今、家で1人になることが多くてね。足の調子が悪くなってから医者である遠見先生に勧めてもらい。此方に居候している」

 

「そうでしたか」

 

「私が初めて人を殺したのは…」

 

あまりの唐突過ぎる出だしに私は【聞きたかった】ことではあったが驚きを隠せなかった。

 

「どうしたの」

 

「あっ、いや。まさかこんなにもいきなりそちらからお話し頂けると思わなかったので…」

 

「別に聞いて困ることではないわ。…3年前Alvisで『島外派遣』と呼ばれるエリアシュリーナガルから約2,500kmにある人類軍のダッカ基地におよそ22,000人の生存者を避難させ、その後に戦力を整えて摘出した今の海神島のコア『アショーカ』を移植して再び成長させてアルタイルとの対話を実行する為に約2週間の予定行程で行われた作戦に私はAlvisの派遣部隊の一員として参加した。派遣部隊とペルセウス中隊の戦力を合わせて1機のファフナーで車に乗りこんだ500人の民間人を護衛しながら移動する、過酷なミッションだった。ベイグラント…今のマレスペロによって誘導されてきたアビエイター群の襲撃を受け更にダッカ基地がアルゴス小隊に乗っ取られたことで私達は『交戦規定アルファ』の対象となったわ。その際に私は人類軍の爆撃機が難民キャンプを爆撃しようとしている所を目撃して…その爆撃機を撃ち落とした。それが私の【初めて】」

 

あまりの生々しい話しに沈黙する周囲をよそに真矢さんは淡々とした口調で話しを続けた。

 

「交戦規定アルファによってダッカ基地への合流が不可能となった私達は第二次移動を決断した。北西へ転進し、「トリプルプラン」の一つ「シャッター作戦」により作られたフェストゥムの密集地を通り、さらに大陸消滅後のモンゴル海峡を経由してハバロフスク・エリアから「希望の地」へ向かう。その「希望の地」こそこの第三Alvis『海神島』だったわ。シュリーナガルからダッカ基地までの道のりの4倍を超える1万km以上の距離を移動する上に、輸送機半数の損失と物資を消費した状態でのさらに過酷な状況での移動だった。ダッカ基地までの移動で消費した物資を放棄された基地で確保すると共に、アショーカの力でフェストゥムのコアを燃料に変化させて移動する。しかし、攻撃を受けた翌日に荒れ地を経由するこの移動と人類軍からの攻撃に絶望した市民の多くが命を絶ち、引き返そうとする市民の説得に1日を要したために、移動の開始はダッカ基地部隊の攻撃を受けた2日後となった。「シャッター作戦」の壁を越えようとしていた頃よ。アルゴス小隊から送り込まれたスパイによって私達の仲間が殺されそうになった。そして私は再び引き金を引いたわ」

 

ここにいる誰もがその過酷な状況を想像し、言葉を失った。

 

「あの…心境の変化はありましたか。私は正直『人と戦うこと』に慣れてしまってその事に対して感情が既に湧かないんです」

 

「カンナさん…」

 

「不思議と何も感じ無かったわ」

 

その答えは意外だった。

 

「撃ったことに対してその時は何も思わなかった」

 

「そんなの嘘だよ」

 

突然、日野美羽が立ち上がった。

 

「【あの時】から真矢お姉ちゃんがずっと思い悩んで苦しんでいたこと美羽は知ってるよ。でも皆に心配かけないようにいつもの真矢お姉ちゃんでいようと振る舞ってた。そうやって自分を苦しめないで真矢お姉ちゃん」

 

「ありがとう、美羽ちゃん。私は大丈夫だよ。それにその事が私に新しい戦う理由を持たせてくれた」

 

「戦う理由…」

 

「うん。もう誰も島の人達に私と同じ経験をさせない。そしてその為なら私はまた引き金を引く。誰が相手だろうと」

 

「真矢お姉ちゃん…」

 

「真矢…」

 

「だから、亮一くんが島の外で同じ経験をしなくて済んだって溝口さんから聞いた時はホッとしたわ。ありがとう2人共【その道】を選らばないでくれて」

 

「君はどうかねカンナ君」

 

「どう。といいますと」

 

「報告では亮一君達と出会った頃は所々で垣間見える。この島の方針に異議を唱えていたと聞く。人類軍に入れば、我々の方針に違和感を抱くのは当然のことだ」

 

「…」

 

「今の君にはどう見える」

 

「あの頃に比べれば、この島の方針に理解出来るようになったと思います」

 

「出来れば君が今後その手を汚すことが無いことを願っている」

 

彼女の抱き続けた想いを聞き、初めて【その道】を取った時の感情を久しぶりに抱いた。

 

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