「2人共早く早く」
この日、私は日野美羽の案内で海神島のコアと会うこととなっていた。
「待ってよ美羽姉」
辿り着いたのは海神島のミール『アショーカ』の傍にある高台だった。
「こんにちは。ルヴィ」
日野美羽は小さな少女へ一目散に走って行った。
「こんにちは美羽。亮一も」
「ルヴィ姉さん。こんにちは」
「貴女ははじめましてですね。私はルヴィ・カーマ。この海神島のコアです」
「カンナ・メネスです。よろしくお願いします」
人の言葉を話すコアを私は初めて見た。そのことを悟ったのか、彼女は「驚きましたか」というような表情で微笑んでいた。
「さぁ。始めましょう美羽」
2人はお互いの額を重ね合わせ、祈るように瞳を閉じた。
「2人は何をしているんだ」
「クロッシングの力を使って総士の居場所を探しているんです」
「そんなことが出来るのか」
「高度なクロッシングが出来るエスペラントは出来るみたいで、美羽姉は海神島で一番高い能力を持つエスペラントだそうです」
「亮一は出来ないのか」
「…僕は美羽姉やルヴィ姉さんみたいなこと出来ないです」
「この島で探している『皆城総士』は2人と交信出来るということはエスペラントなのか」
「わかりません。僕は彼とよく遊んでましたけど、そんな素振り見せませんでした」
暫くして、二人が祈りの姿を止めた。
「どうだった」
「これまでと変わらず気配がありません」
「どうして、総士の存在を感じ取れないんだろう」
「考え方を改める必要があるかもしれません」
「どういうこと」
「これまで私達は人が生きられる場所で探していました。ですがそれ以外の場所に皆城総士が存在する場合。私達の方法では当然見つけることは出来ません」
「それ以外の場所とは」
「本来なら人が生きていくのが困難な場所…2人はどこを思い浮かべますか」
「海の中とか」
「確か総士はシャトルに乗せられて連れて行かれたんなら、宇宙とか…それこそ『赤い月』とかは」
(赤い月…マレスペロが3年前の戦いで失ったベイグラントのコアの残骸から再形成したゴルディアス結晶の塊だったか)
「そう。そのような考えの及ばない場所にいる可能性を考慮した方がよいかもしれません」
「でも、これまでの探索範囲に追加してそんないるかもわからない場所探すってその隙に移動されたりするかもしれないし美羽姉やルヴィ姉さんへの負担が大きすぎるよ」
「だとしても、やらねばなりません。この世界がマレスペロの手に堕ちてしまう前に」
「ほら、一騎さん達も探索してるんだし。せめてルヴィ姉さんが言う人が生きていくのが困難な場所に絞ってもいいんじゃない」
「でも、一刻でも早く総士を見つけなきゃ」
「美羽姉…」
「…確かに亮一の言うとおりかもしれません。これまで探っていた場所は3人に任せて、私達は人が生きていくことが困難な場所に絞りましょう」
「でもルヴィ」
「広範囲で探して見落とすよりは、集中して力を使った方がいいでしょう」
「…わかった。ありがとう亮一。私達を心配してくれて」
日野美羽に頭を撫でられ亮一の顔は真っ赤になった。
「少し休んでから再開しましょう」
「じゃあ亮一、総士を探しに行った時の話しの続きを聞かせて」
「えっ。そうだねどこまで話したっけ」
世界の行く末を決めかねない任務から一時的に解放された少女達のその表情は、無邪気に遊ぶ子どもの笑顔そのものであった。