第二十六話「動き出す刻」
「行ってきます」
「気をつけてね亮一」
「はーい。カンナさん今日こそ一本取りますからね」
「期待せず待ってるよ。しっかりと勉強してくるんだぞ」
「じゃあまた道場で」
「あぁ。先に行って待っている」
総士を探索に初めて外の世界を見てから2年が経った。僕は母さんとカンナさんの3人でこの世界で唯一の『平和』を謳歌していた。
「おはよう亮一」
学校に行く途中、美羽姉に会った。
「亮一学校終わったら用事ある」
「カンナさんと修行に行くよ」
「そっか…」
「どうしたの」
「美羽も行っていい」
「いいけど…どうしたの美羽姉にしては珍しい」
「亮一と話しておきたいことがあったの。出来れば2人の時に」
「今なら聞けるよ」
「そうだね…あー遅刻しちゃう」
「えっ、まずい急ごう美羽姉」
学校目指して必死に走る2人。
「おは…よう…ござ…います」
「おはよう。2人ともギリギリだね」
「間に合って良かった」
「ほら、朝礼始まるよ急いだ急いだ」
「じゃあ後でね亮一」
「うん」
「…ははーん。デートか亮一」
「えっ、そんなのじゃないですよ近藤先生」
「照れるな照れるな。いゃー青春だね」
「もう。近藤先生」
「ほら、早くしないと遅れるよ」
「あっ、待ってください先生」
この何気ない日常。僕は2年前の事もあってかこの日々をこれまで以上に感謝しながら過ごしていた。
あれからAlvisとしての任務はしていない。
学校帰り、美羽姉と道場に向かっていると
「おっ、亮一と美羽ちゃん」
「佐喜さん陣内さん。こんにちは」
「どうした2人揃って」
「これから道場で修行しに行きます」
「美羽ちゃんも。珍しい」
「私は見学だけどね」
「お2人はどちらに」
「お前の家。母ちゃん泣かしてないか」
「ちゃんとお手伝いしてますよ」
「そうか、偉い偉い」
「もう…子ども扱いして」
「俺達からしたら、亮一はまだ世話の妬けるお子ちゃまなんだよ」
「それは別として、亮一のお母さん誘って堂馬食堂で夕飯でも食べようかなって」
「えー。いいな」
「まぁ、亮一は修行頑張ってこい」
「…にしてもお前の義姉ちゃん。凄いな」
「カンナさんがですか」
「流石に実戦慣れしてるからか、訓練でも常にトップクラスの評価を受けてる」
「…そうですか」
「どうしたの亮一」
「まだ、納得いかないって顔だな」
それは半年前。カンナさんは海神島での生活に慣れ島の人達とも打ち解けていた。
(どうしたのカンナ。私達に話があるって)
その日、僕ら親子はカンナさんに呼ばれリビングで座っていた。
(お話ししたい事が2つ。まず1つ目は例の話を受けさせて頂こうと思います)
(そう。良かったわね亮一)
(うん)
(これからは『霧島カンナ』としてよろしくお願いします)
(じゃあお互い呼び方をもう少し家族っぽくしないとね)
(母さんどういうこと)
(だってカンナは私のこと『さん』づけじゃない。亮一は亮一でカンナのこと『さん』づけだし)
(…。)
(折角家族になるんだものこれを気に家族っぽく呼び合いましょ)
(そうですね。なるべくそう呼べるよう努めます)
(僕も)
(まぁ焦ることはないわ、タイミングもあるし。ところでカンナもう1つの話しって)
(はい。第一種任務を私は溝口さんの元で働こうと思います)
(そんなカンナさんなんで)
(…)
(私がこの島ですぐに役に立てることは人類軍にいた時の経験値です。もちろんファフナーパイロットとしての経験も)
(そんなに焦らなくていいんじゃない)
(勿論。第二種任務でこの家で働きます。しかしどうも私はただ平和に過ごすだけというのが性に合わないみたいです)
(カンナさん…)
(わかったわ。嫌になったらいつでもいいなさい。私も出来る限り助力するから)
(ありがとうございます。…お義母さん)
(っもう。照れちゃって)
「僕はカンナさんにはもっと安全な場所で暮らして欲しいんです」
「それは、きっとカンナも亮一に想っているし、貴方のお母さんもそう想ってる。皆大切な人にはそうして欲しいと想っているわ」
「そうですね…」
「そう落ち込むな。溝口のおやっさんのお墨付きだ、彼女はそうそうやられないさ」
「そうですよね」
「ねぇ、亮一いいの時間」
「あっ。佐喜さん陣内さんそれじゃあまた」
「おう。カンナによろしくな」
急ぎ道場に向かう。
道場の目の前で美羽姉は急に立ち止まった。
「どうしたの。美羽姉」
「…亮一。急な用事が出来た 。また今度」
「えっ。美羽姉大事な話しがあるんじゃ」
「また、時間作るからまたね亮一」
そう言い残し足早に美羽姉は立ち去った。
「遅れてすみません」
「おう。亮一」
「零央さん。こんばんわ」
「遅いぞ、何していた」
「佐喜さん達と偶然会って立ち話してました」
「私はいつでもいけるぞ」
「今日こそ、カンナさんから一本取ります」
「その意気だ。行け亮一」
「はい。ウオオオオオー」
こんな日常がいつまでも続けばいいのに…その思いは日に日に増していた。
そんなのは幻想だ
世界は僕の願いを受け止めてはくれなかった。
「すまんね。美羽くん」
美羽はルヴィに呼ばれAlvisをを訪れていた。
「真矢お姉ちゃんに、剣司お兄ちゃん…」
呼ばれた場所にはAlvisの主要メンバーが揃っていた。制服を身に纏い…
「ルヴィどうしたの」
「彼が戻りました」
「こんばんわ。美羽ちゃん」
「甲洋お兄ちゃん。どうしたの、一騎お兄ちゃんと来主は」
「2人には先に手筈を整えてもらってる」
「手筈…」
「総士を見つけた」
止まっていた歯車が動き出した。