蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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第三十話「恩師へ向ける刃」

人が町で賑わう頃に僕達はサラエボに到着し町の中に紛れた。

 

「やたら軍服が目立つな、こんな状態でやるのか」

 

「次の被害者が出る前に一刻も早く壊滅させねばならない」

 

(…ハリー)

 

「木島姉。どうした」

 

(あいつは…)

 

「すまん。どうにも見られているような気がしてしまい、思わず顔をうつ向いてしまった」

 

「はっ、自信過剰もいいとこだぜ。知り合いがいるわけでもあるまい。痛」

 

思わず男の踵を軽く蹴った。

 

「このガキ。なにしやがる」

 

「騒ぐな。ガウルン」

 

「でもよこのガキ」

 

「この男が気にさわる発言をしたのなら変わって謝罪する。だが今は任務中だ。感情的な行動は控えてもらいたい」

 

「ごめんなさい」

 

「よし。1500までにこの町及びスクラーベの本拠地の実態を把握。2000から作戦を決行する」

 

 

 

そして2000作戦が実行された。

 

「こちらフェネクス2、敷地内に侵入。ポイント4-7だ」

 

「フェネクス2、確認したそのままそのルートを直進300m先に階段だ」

 

「ラジャー」

 

「フェネクス4よりフェネクス1へ、その曲がり角に警備兵がいるポイント6-1まで後退し、5秒待てその警備兵が通過する」

 

「了解だ」

 

「こちらフェネクス3。ターゲットを確認ポイント7にある大広間に入っていった」

 

「フェネクス4よりフェネクス3へ10m後ろに脇道があるそこから大広間の声をジャミングしてくれ」

 

「フェネクス3了解」

 

「あの…僕はいつまで待機ですか」

 

「まだだ、ここまでは順調だ。予定では15分後に出番が来る」

 

「わかりました」

 

(やはりこの建物似ている…ということは、あの人は)

 

「こちらフェネクス3。この大広間が例の施設だという証拠となりうる音声を探知した」

 

無線に流れる人々の声。そこにはあの時カンナが聞いた音と声が響き渡っていた。

 

「マジかよ、これ…」

 

「…これで俺達の正統性を立証出来る」

 

「…最低」

 

「…フォックス1と2はフォックス3に合流を」

 

「了解」

 

「あの…急にフォックス4と連絡が取れなくなったのですが、原因わかりますか」

 

「なんだと…確かに」

 

「あの女。どこ行きやがった」

 

「裏切り」

 

「姉はそんな人じゃありません」

 

「落ち着け。フォックス5これから俺達は突入をかける。俺が合図を出したらファフナーを起動し陽動を頼む」

 

「これ、本当に大丈夫なんですよね」

 

「俺が前にいた部隊で使っていたファフナーの機体コードを誤魔化すジャミング装置だ。性能は保証する」

 

「わかりました」

 

「よし。行くぞ」

 

 

 

その頃カンナは地下にあるとある部屋に足を運んでいた。

 

「まさか…生きていたとはねカンナ」

 

「お久しぶりです。ピクルス教官」

 

「卒業しても君だけは変わらず教官と呼んでいたね。私を」

 

「そうですね。私にとって貴方は部隊の隊長よりも、教官としての思い出の方がありますので」

 

「その教官に君は何を向けているのか。わかっているのかね」

 

「はい。その為にここに来ました」

 

「よくここがわかったな」

 

「教官は人が大勢集まる場所を嫌ってましたから、見取り図を見た時。似てると直感しました」

 

「似てるとは」

 

「私達の学校の見取り図にです」

 

「ふむ。そうであろうなあの学校はこの建物を参考に建っているからな」

 

「…お認めになるのですか」

 

「認める…何をだい」

 

「スクラーベの存在と組織の実権を貴方が握っていることです」

 

「君はどう見る」

 

「私は、今も教官がそのようなことをするとは思えないと思っています。ですがこの状況と我々が手にした情報。それに学校で立っていたある噂で検証すると事実は…」

 

「噂とはなんだね」

 

「学校内で行方不明になっていた女性達が学校長の部屋にいるという噂です」

 

「なるほど、一理ある考察だ」

 

「ハッキリとしてください。出来れば貴方に引き金を引きたくない」

 

「そのいざというときの甘さも変わらずだなカンナ」

 

突然部屋の扉が空き、慌てて入ってきたハリー。

 

「ピクルス大将。ご無事で、独立人類軍と思われる部隊の奇襲です…」

 

バーン…1発の銃砲が鳴り響く。

 

「これが答えだよ。カンナ」

 

「ハリー」

 

「…なぜです。ピクルス大将」

 

「2度目無いと言ったはずだこの無能が」

 

カンナはハリーの身体を受け止めた。

 

「あれ…なんでここにいるの…そうか夢か…ここにいるはずないもんな」

 

「ハリー…いるぞ。私はここにいるぞ」

 

「…これより任務に戻り奇襲部隊の迎撃に向かいます…教官」

 

彼の目から光が消えた。

 

「なぜ…なぜですか教官。なぜハリーを」

 

「なんだね。自分を売った身内の為に涙するのかね」

 

「…なぜそれを」

 

「なぜ。それを命令したのが私だからだ」

 

「なんですって」

 

「参謀本部より異動が命じられ、君が私のもとを去った時私は涙したよ。君は私のお気に入りの娘だったからね。だから驚いたよ生死不明となっていた君が現れたと聞いた時は、同時にもう二度と私の手から離さないと決めた。そしてそこの無能に命令した」

 

「無能だと」

 

「そこの無能はな、一族の復興の為に私に協力すれば地位と名声をくれてやると言ったすぐに私の僕として動く犬になったよ。兄テリーや君を失い、自分が一族の主となっても君ら二人の後ろについてゆくだけの金魚のフンの姿勢は変わらなかった。あの頃から軍人として役に立たないポンコツだと思っていたがね君達二人の心を安定させる存在だったようだから。致し方無く、君達と一緒に行動させたよ」

 

「…」

 

「私のもとに君を【仕上げて】連れてくるように命令したが、失敗し命かながら生き延び。君はまた行方不明となった。私は器の広い人間だ。チャンスを挙げたよそこの無能に、だが今日、組織の存在を敵に知られ、奇襲を招いた。取り返しのつかない失敗をしたんだその無能は」

 

「それ以上。ハリーを馬鹿にするな」

 

カンナ腕に力が入りピクルスの額を捉えた。

 

「さあ、今の真実を聞いてどうする。私を殺るのか、それとも亡き弟に詫び私のもとへ来るか。君があの時大人しく私のもとにこれていれば、大切な身内は今ここで死なずに済んだのだからな」

 

「ピクルスーーーっ」

 

あの頃の思い出と共に再び銃声が響いた。

 

倒れたのはピクルス…しかしカンナは引き金を引いた実感が無かった。後ろを振り向くと彼がいた。

 

「ターゲットを撃つのになにを躊躇っている。フォックス4」

 

「フォックス1…」

 

「Dアイランドの人間は人を殺さないと噂で聞いたことがあるが。それでか」

 

「そうかもしれんな…」

 

「まあいい。急げ陽動をしているフォックス5が危ない」

 

「そうだな」

 

過去を清算したカンナは、急いで今いる家族を助けに向かった。

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