「亮一と総士くんが初めて遊んだのは、確か…」
それは、恵がまだAlvisで仕事をしていた頃。亮一を迎えに行き家に帰る途中であった。
「お母さん、美羽お姉ちゃん凄いんだ。僕の考えてること全部わかっちゃうからトランプいっつも美羽お姉ちゃんが勝つの」
「そっか。美羽お姉ちゃん凄いね」
「僕も美羽お姉ちゃんみたいにお姉ちゃんの考えてることズバズバ当ててみたいな」
「亮一ならきっと大きくなったら出来るわ」
「本当に」
「自分を信じなさい」
「うん。お母さん今日も海見に行くの」
「…ちょっとだけいい」
「いいよ。あそこ僕大好きだから」
「そう。良かったわ」
恵は海神島に移り住んで以来、海を眺めることが習慣となっていた。
「椎名先輩」
いつものように海を眺めていると、制服を着た男が恵に話しかけてきた。
「一騎くんどうしたの」
「こんにちわ。亮一君」
「お兄さん。誰」
「真壁一騎さん。お母さんのお友達よ」
亮一は照れくさそうに挨拶をした。
「実は任務で数日島を離れることになるので、この子を預かってほしいんです。遠見も任務に参加するので預かり手を探してまして」
「私でいいの」
「そろそろ年の近い子達と関わらせたいとも考えていたので。お願いします」
「私達でよければ」
「ありがとうございます。総士ご挨拶だ」
「…」
「あらあら、照れ屋さんなのね」
少年は一騎の後ろに隠れたままなかなか顔を見せようとしなかった。
「ほら、総士」
「あっ」
一騎が背中を押すとようやく姿を見せた。
「大きくなったわね総士くんも、こんにちわ」
「こっ、こんにちわ」
「いいか総士。俺は暫くお仕事で一緒にいられない。代わりに恵さんと息子の亮一くんが一緒にいてくれるから。いい子で待っていてくれ」
「やだ。離れたくない」
ズボンの裾を掴み少年は一騎をジッと見た。
「総士…」
「痛い。イタタタ」
「亮一。なにしてるの」
少年の後ろから亮一は頬っぺたをつねっていた。
「何をするんだよ」
「悔しかったら僕を捕まえて追いかけてみろ」
浜辺を走る亮一。少年は必死に後を追った。
「…大丈夫そうね」
「総士をよろしくお願いします」
「わかったわ。必ず戻って来なきゃダメだよ。一騎くん」
「はい。あっ」
浜辺を走り回ったことの無かった総士は足を捕られ転けた。
「別に痛くないだろ、泣くなよ」
「泣いてない」
手を差し出す亮一。
「霧島亮一。よろしく」
「皆城総士」
手をとって起き上がった総士はその勢いで亮一を押し倒した。
「何するんだ」
「さっきつねったお返しだ」
「やったな」
浜辺を走り回る2人。これが2人の出会いであった。