蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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第三十四話「児戯の覚え」

「それで総士くんとよく遊ぶようになったわね」

 

立ち話もなんだと場所を食堂に移した5人はご飯を食べながら話しの続きをしていた。

 

「なに亮一。総士くんいじめたの」

 

「違いますよ、ちょっとからかっただけです。その後仕返しされましたし」

 

「あの頃の亮一は自分に弟が出来た気持ちだったんだと思います。総士くんと遊べるのが凄く楽しみだったみたいで、前日はなかなか寝付けなくなったりした日もあって」

 

「へぇー」

 

「やめてよ母さん。そんな昔の話」

 

「恥ずかしがることはない亮一君」

 

「陣内さんまで」

 

「はい鶏の唐揚げお待ちどうさま」

 

「おじさん。ありがとう」

 

「そういえばあの写真ある」

 

「写真」

 

「亮一と総士くんを御輿の前で撮ったやつ」

 

「あー。ちょっと待って…これね」

 

母さんが取り出した1枚の写真。

 

そこには御輿に乗った僕と総士、美和姉とマリスも写っていた。

 

「楽しそうですね」

 

「カンナは初めてだったわね。亮一の隣で一緒に御輿に乗ってるのが総士くん」

 

「この子が皆城総士」

 

「で美和姉の隣で僕達を見守ってるのがマリス」

 

「マリス・エクセルシア…この男が」

 

「この写真の私好きなのよ」

 

「あぁ。いい写真だ」

 

「そうですね。この写真はどのような時に撮られたのですか」

 

「確か亮一が3歳になった時だから…」

 

 

 

それは、僕と総士が出会って1年くらいが過ぎた盆祭りの時であった。

 

盆祭り。

 

母さん達が住んでいた『竜宮島』で夏の時期に行われていた「お盆」の習慣を引き継いだお祭りだそうだ。楽しく賑やかなお祭りではあるが

 

このお祭りでは、亡くなった人達の名前を書いた灯籠を海に流し成仏する風習がある。

 

僕の家では顔も知らないお爺ちゃんとお婆ちゃんの灯籠を流していた。

 

「総士~」

 

「亮一。遅いぞ」

 

「ゴメンゴメン。母さんが支度するのに手間取ってさ」

 

「誰のせいで手間取ったと思ってるの。わざわざ前日に浴衣着て汚してくれちゃってさ」

 

「あっ、あれは」

 

「なんだ亮一。そんなにこの祭り楽しみだったのか?」

 

「それは…」

 

「僕より年上なのにお子ちゃまだな~」

 

「なんだと」

 

「はいはい、こんばんは総士くん。一騎君は」

 

「こっ、こんばんは。お兄ちゃんは恵おばさんが一緒なら安心だから好きなように遊んでこいって何処かに行っちゃった」

 

「もう。一騎君ったら、じゃあ総士くん。勝手に離れちゃダメよ」

 

「はっ、はい!」

 

「なんで母さんに緊張してるんだ総士」

 

「うっ、うるさいな」

 

「ほらほら、2人共行くよ」

 

輪投げや金魚すくい、わたあめ作り…母さんに見守られながら2人で遊び尽くした。暫くすると美和姉とマリスに会った。

 

「こんばんは。総士、亮一」

 

「こんばんは」

 

「こっ、こんばんは」

 

「どうした亮一。モゾモゾして」

 

「なっなんでもないよ。」

 

首を傾げる総士、後ろでは母さんがクスクスと笑っていた。

 

「2人とも楽しんでる?」

 

「うん。輪投げは亮一より僕の方が上手だったね」

 

「金魚すくいは僕の方が総士より沢山集めたもんね」

 

「…楽しんでるね」

 

「亮一。そろそろ時間だから私はあっちに行くけど、美和ちゃん達とお祭り楽しむ?」

 

「えっ、いいの母さん!」

 

「美和ちゃん。マリス君、2人に任せてもいいかしら?」

 

「恵お姉ちゃん。美和も灯籠流しするから、一緒に行くよ。ねっ、マリス」

 

「…あぁ、そうだね」

 

「マリス…?」

 

「灯籠流しって何?」

 

「亡くなった人の名前が書いた小舟を海に流して弔うことなんだってさ」

 

「ふ~ん。そうなんだ」

 

「一緒に行こ総士も」

 

「なんだかつまらなそう」

 

「お子ちゃまだな~総士は」

 

「なんだと、亮一は楽しいのかよ。その灯籠流しとやらに参加して」

 

「そっそれは…」

 

「灯籠流しはね。皆の大切な人達が無事に過ごせますようにってお祈りをする年に1回の機会なの、折角だから総士くんもやってみる?」

 

「うっうん。…そのごめんなさい。」

 

「いいのよ。そのうち総士くんにもわかるわ」

 

5人で灯籠流しをする浜辺に向かうと多くの大人が集まっていた。

 

「この人達。皆誰か大切な人を亡くしてるの?」

 

「そうね。亡くなった理由はいろいろだけれど、大切な人だったからこそ、皆こうして見送っているの」

 

「亮一は誰を見送るんだ?」

 

「わからない。お爺ちゃんとお婆ちゃんみたいだけど、会ったことないし」

 

「お父さんは?いつもいないけど?」

 

「父さんは死んでない。きっと何処かで生きてるんだ。ねぇ、母さん」

 

「えぇ…きっと生きてるわ」

 

母さんの表情を見て総士はまたやってしまったと俯いた。

 

「ねえ、美和とマリスは誰を見送ってるの?」

 

「私達はお父さんとお母さんかな」

 

「そうなんだ…」

 

「気にするな、総士。お前のせいで俺達の親がいない訳じゃない」

 

「うん…」

 

「いた。探したよ美和ちゃん」

 

「真矢お姉ちゃんと千鶴ママ、探してたって」

 

「1人でふらっと家を出てから全然戻って来ないから、心配したよ…恵先輩と亮一くんと一緒だったんだ。こんばんは」

 

「こんばんは。真矢さん」

 

「あれ、総士?一騎くんと一緒じゃ…」

 

「私に預けて何処かへ行っちゃった」

 

「そっか…」

 

「どうしたの真矢お姉ちゃん」

 

「一緒にお姉ちゃんの灯籠見送ろうと思って」

 

「…僕はお邪魔かな、またあとでね美和」

 

「いいじゃない。マリス君も一緒に、皆で見送ってあげましょ」

 

「千鶴さん。ありがとうございます」

 

灯籠を見送る7人、静かな刻が流れた。

 

「パパとママにちゃんと届くかな?」

 

「届いたわ、きっと」

 

「終わった?早く行こ亮一」

 

「そうだな総士。行こう」

 

「もう、2人ったら」

 

「恵先輩。良かったら変わりましょうか」

 

「えっ」

 

「まだ…ここに居たいのかなと思って」

 

「…折角だしお言葉に甘えようかしら」

 

「母さんどうしたの?」

 

「もう少しここで眺めていたいなって」

 

「そっか…じゃあ行ってくるね」

 

「私もついて行こうかしら」

 

「お母さんはあっち」

 

「えっ、…そうね。そうさせてもらおうかな」

 

母さんはその場に残り、千鶴さんは遠くで海を眺めるあの方の元へと向かった。

 

母さんその代わりに真矢さんを交えて再び5人はお祭りを見て回った。

 

 

 

「当っり~、これ景品な」

 

「総士やったね」

 

「マリスが手伝ってくれたお陰だよ」

 

「マリス、僕も」

 

「いいよ、亮一」

 

4人の遊ぶ姿を真矢は懐かしげな表情で見守っていた。

 

「一緒にやらないのか?遠見」

 

「一騎くん…遅い」

 

「ごめん。」

 

「…いいの、これで。さっきまで射的やってたんだけど懐かしいなって思って。覚えてる?一騎くん。皆城くんと3人で射的した事」

 

「あぁ。俺と総士が落とせなかった景品を遠見が一発で落としたっけ」

 

「うん。」

 

「景品が銃で結局、俺達と一緒のハズレのりんご飴にしてたっけ」

 

「よかった。ちゃんと覚えてた。4人の姿見てたらあの頃を思い出しちゃった。無知で無垢なあの頃の私達を」

 

「でも。あの頃があるから今の俺達がいる…だろ遠見」

 

「うん。」

 

「総士は?」

 

「あそこで亮一くんと踊ってる」

 

「楽しんでるみたいだな、よかった。」

 

「真矢お姉ちゃ~ん」

 

(またな、遠見)

 

「えっ…一騎くん」

 

「あれ今一騎お兄ちゃん居なかった?」

 

「ついさっきまでね。どうしたの美和ちゃん」

 

「御神輿に総士と亮一くんが乗せてもらったの、写真撮って」

 

「いいよ。美和ちゃんも入りなよ」

 

「うん。」

 

真矢は微笑ましそうにシャッターを切った。

 

 

 

 

「真矢ちゃんからは、そう聞いてます。この写真が撮れた経緯」

 

「亮一は皆城総士と喧嘩ばかりだったのですか?」

 

「お互いに意識しあっていたのよ、きっと」

 

「喧嘩する程仲が良いってやつだな」

 

「この写真見るとなんでマリスくんが総士くんを連れ去ったのかわからないのよね」

 

沈黙する一同。すると凄い衝撃で建物が揺れた。

 

「なに、この揺れ」

 

すぐに鳴り響く警報。

 

「はい、将陵です。」

 

「すぐに警戒態勢に入いれ」

 

「なにがあったんですか?おやっさん」

 

「封印していた【例の機体】が復活した。」

 

それは、これから始まる試練の序章に過ぎなかった。

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