「誰だお前。なんで僕のこと知ってる。」
久しぶりに話す総士との第一声に、僕は戸惑いを隠せなかった。
「なに言ってるんだ総士。亮一だよ、霧島亮一。」
「だからお前のことなんて知らないって言ってるだろ。なんでここの連中は僕のことを知ってる風な顔で話しかけてくるんだ。」
「本当に覚えてないの総士?小さい頃美和と総士と亮一でいっぱい遊んだんだよ。」
「しつこいな。知らないって言ってるだろ、赤の他人の癖に馴れ馴れしく話しかけてくるな。」
「亮一!」
僕はその状況に耐えきれず、急いでその場を離れた。
「大丈夫ですか?亮一。」
僕が向かった先に暫くするとルヴィ姉さんが現れた。
「なんで総士は僕の事を忘れてしまったの?」
「貴方だけではありません。ベノンによってこの島で過ごした記憶を全て忘れてしまっています。」
「どうしてそんな事に」
「恐らく、純粋な『憎しみ』によって我々を攻撃させようとしたのでしょう。思い出は確かに人に『力』を与えますが、時として『足枷』にもなります。」
「思い出が足枷ってどういうこと」
「例えば、亮一は私と戦うことが出来ますか?」
「!?。そんなこと出来る訳ないじゃん」
「私が貴方の敵だとしてもですか?」
「そんなの想像出来ないよ。」
「そうですか…。では今の総士はどうですか?」
「えっ」
「今の総士は間違い無く貴方となんの躊躇いも無く戦うでしょう。亮一はどうですか?島を護る為に総士と戦うことが出来ますか?」
「それは…」
「亮一がそこで躊躇うのは、総士との大切な思い出があるから。違いますか?」
返す言葉も無かった。
「別にそのことを責めているのではありません。亮一の思っていることは間違いではありません。思い出が足枷というのはそういうことです。…貴方の総士に対する想いに偽りが無いのなら、また一から築き上げるばいいのです。総士との関係を」
「一から築き上げる…。」
「貴方なら出来ると私は信じています。亮一」
「ルヴィ姉さん。ありがとう」
「さぁ、帰りなさい。御家族が心配してますよ」
「うん。」
「亮一~」
声のする方向を向くと、カンナさんがこちらに走ってきていた。ルヴィ姉さんは瞬間でこの場から立ち去った。
「千鶴先生から、急に何処かに走り去ってしまったと聞いたから心配したぞ」
「ごめんなさい。」
「大丈夫か?総士にキツいことを言われたと聞いたが」
「もう大丈夫です。ここで初めて会ったんです総士に」
「ここがそうだったのか」
「総士の奴そのこと忘れているんです。酷いですよ全く」
「亮一…」
「だから…僕達は一からやり直すんです。今日から、その決意を固めてました。」
「そうか。また仲良く出来るといいな皆城総士と」
「はい」
僕はまだ知らなかった。『皆城総士』が世界に及ぼす影響を、そして僕とはかけ離れた存在だということを…。