蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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遺されしを伝え
第四十四話「偉大な功績」


先の戦いで亡くなられた人達を弔う合同葬儀が執り行われた。

 

「恵さんはいないのか?」

 

参列後、総士がこちらに会いにきた。

 

「まだ式場の中だよ、どう真矢さんや美羽姉は?」

 

「どうもこうもあるかよ、辛気臭いから帰る途中だったけど抜け出してきた。」

 

「2人についててあげなよ」

 

「美羽はともかく、遠見さんなら大丈夫だ。彼女は感情を制御出来る人だからな」

 

「そういうことではないぞ皆城総士。彼女の立場上下手に人前で自分の弱った姿を見せられないのであろう。家族であるお前が支えてやれ、ただでさえ実の母親を亡くしたんだ。そのショックは計り知れないであろう」

 

「と言われてもどうやって励ますんだよ。あんたはどう乗り越えたのさ」

 

「私か?」

 

「こういった経験はこの島の人よりあんたの方が多いんじゃないのか?」

 

「どうだろうな、この島の人達も沢山の辛い経験はされているはずだ。ただ言えるのは私の場合は仲間の存在が大きかった」

 

「仲間の存在?」

 

「幼き日に両親を亡くした時も、引き取ってくれた第2の親を亡くした時も、義兄弟との別れも………信頼出来る仲間達が何も言わなくとも傍にいてくれた。そして今は自分のことのように私を心配してくれる亮一と恵さんがいてくれる」

 

「カンナさん………」

 

「だからこそ、今2人の支えになることが大事だと私は思うぞ皆城総士」

 

「支えて癒すか・・・なにか違う気がする」

 

「なにが気になるのさ」

 

「わからない。けどそれは‘‘正しい‘‘とは思うけれど‘‘正解‘‘ではないと思う」

 

「どういう意味?」

 

「だから、わからないと言っているだろ。ちゃんと聞けよ」

 

「総士が分けのわからないこと言うからだろ」

 

「二人ともそこまでだ、皆城総士。迷いがあるのなら先ずは動いてみてはどうだ?自分の‘‘正しい‘‘と思ったことを」

 

「確かに、それもそうだな・・・」

 

「・・・総士?」

 

「すまない。直前の千鶴さんのことを思い出して」

 

首を傾げる僕とカンナさんに総士はある時の出来事を語り始めた。

 

「きっかけは些細な事だったんだ。美羽が千鶴さんのことを‘‘ママ‘‘と呼ぶことに疑問を感じて何故‘‘ママ‘‘と呼ぶのか聞いたんだ。」

 

「?なにかおかしい?」

 

「おかしいだろ、美羽にとって彼女は自分の母親の母親・・・つまり‘‘祖母‘‘だ」

 

「そういえばそうだね。美羽姉がずっとそう呼んでるし別に変だなと思わなかったから気にしてなかった」

 

「これだから亮一は・・・まあいい。その過程で千鶴さんが行ってきたことを知った。亮一にわかりやすく説明すると、『フェストムに対抗出来る人間を作り出す』って感じか」

 

「えっ・・・それって」

 

「端的に分かりやすく伝えたから語弊があるかもしれないが、勘違いするなよ。フェストゥムが出現した時当初の人類にはヤツらの『同化現象』に対抗する手段が無かった。」

 

「・・・。」

 

「そこで千鶴さんは『フェストゥムから子ども達を守る為に』研究を重ねた。そして誕生したのが、真壁一騎や遠見さん、近藤さん達の世代・・・そしてそういった者達がフェストゥムに対抗する為に造られたのが『ファフナー』だ」

 

「そうなんだ・・・」

 

「・・・君の場合は『メモリージング』とやらで知ってるんじゃないのか?」

 

「亮一はお義母さんと亮介さんとの‘‘自然受胎‘‘で生まれたと聞いた。もしかしたらその『メモリージング』とやらは当てはまらないのではないか?」

 

「そうか・・・美羽も‘‘自然受胎‘‘だと聞いているしその可能性もあるのか」

 

「う~ん。カンナさんはどうやってファフナーに乗れるようになったの?人類軍の人達も今ファフナーに乗れるけど」

 

「私達の場合は昔、竜宮島に技術提供された『マカベ因子』を注入することでファフナーに乗れるようになった。」

 

「・・・話が逸れてしまった。その時千鶴さんは『自分の‘‘罪‘‘が清算される日が来ることを覚悟している』と言っていたんだ」

 

「千鶴さんの‘‘罪‘‘とは」

 

「研究の為にその当時あらゆる禁忌とされていた技術を使ったそうだ‘‘遺伝子操作‘‘とか」

 

「でも!そのお陰で今の僕達があるんでしょ?」

 

「その通りだ。僕も千鶴さんの研究のお陰で今、力を持てていることに感謝していると伝えた。でも千鶴さんの中には‘‘子ども達を兵器にしてしまった‘‘という意識が拭えなかったようなんだ。ずっと」

 

「私は千鶴さんの医者としての一面しか知らないから皆に分け隔てなく優しい方だという印象しか持たなかったがそのような苦悩を抱え過ごされていたのか」

 

「僕も母さんが仕事で一人になる時に一緒に遊んでくれた‘‘お母さん‘‘って印象しかなかった」

 

「僕もさ、この島に連れて来られて最初から受け入れてくれたのは美羽と・・・千鶴さんだった。2人が反発する僕をずっと受け入れてくれたから僕は・・・こうしてここにいる。」

 

珍しく総士の頬に雫が流れていた。

 

「だから僕は千鶴さんが遺してくれたモノを決して無かったことにしたくない」

 

「僕もだ」

 

「あぁ、私もだ」

 

「2人とも・・・・・!?そうか分かったぞ」

 

「総士?」

 

「2人ともありがとう。お陰で僕の中の‘‘正解‘‘がわかった」

 

そういうと総士は足早にその場を後にした。

 

「千鶴さんの遺してくれたモノか・・・・」

 

「母さん。」

 

「私達がいつまでも下を向いてたら千鶴さんが浮かばれないね」

 

「お義母さん。」

 

「さあ帰るよ2人とも」

 

 

 

 

 

貴女の遺した衝撃は凄まじいものがあった。あの光景は今でも目に焼き付き思い出すたびに胸が締め付けられ自然と涙が溢れてくる。しかしそれ以上に貴女は多くのモノをこの世界に遺してくれた。

 

 

 

 

 

我々は貴女と貴女の功績を決して忘れない。

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