へぇ・・・君、ここに干渉出来るんだ。驚いたな探したんだよ君のこと。
(誰この女の人。マリスは知っているみたいだけど)
それで、君の言う僕の考えが間違っているとはどういうこと?
だって、そもそもその時点で君や彼女が生を受けるかなんてわからないじゃない。
………。
今君がそこにいるのは、この世界が今の時間を辿ったからであってもし今の時間を辿らなかったら君や貴方、もちろん私も生きているかわからないじゃない。
随分人間らしくなったね。
ありがと。この数年間沢山の事を見て、学んできたつもりだからね。
(人間らしく?)
じゃあ君はこの現状を、誰かの犠牲の上で成り立つ世界を肯定するのか?
肯定か…確かに犠牲は無いに越したことは無いけど。それは果たして『犠牲』なのかな?
どういう意味ですか?
だってその『犠牲』という感覚はあくまで私達から見た感覚でしょ。貴方が『犠牲』になったと感じる人は、皆『生きる為に』自分自身でその選択をしたのであって他者から強制された訳ではないと思うよ。それをその人達が私達の『犠牲』になったと思うのなら、それは『犠牲』になったでいいと思うけど、私達の感覚で『犠牲』になったと決定付けるのは、その人達の『生きる為の』選択を冒涜することになるんじゃないかな。
それはへ理屈に過ぎないな。奴らを正当化する理由としては説得力に欠ける。
別に私達は彼等を擁護したいわけじゃないよ。私達は『可能性』を示したいだけ。
『可能性』・・・ですか。
うん。貴方のようにこの世界の流れを『犠牲の積み重ね』と捉えて見る未来も、貴方のように『願いの積み重ね』と捉える未来も一つの『可能性』。未来は捉え方一つで無数に広がるの。
『可能性』・・・『希望』・・・。そのような甘い言葉がより深い『絶望』を与えることになる。
『絶望』を『絶望』と捉えるか『絶望にある一筋の希望』を捉えるかでまた別の未来が見える『可能性』が広がるんだよ。君はどう思う?
僕ですか?
君が望む『未来』は彼の望む未来にある?それとも・・・
僕が望む『未来』は・・・
亮一・・・
気が付くと僕はベットに横たわっていた。
「あれ・・・母さんとカンナさん」
「亮一!大丈夫か」
「ここは?」
「Alvisのメディカルルームだ。お前突然昏睡状態になって三日三晩ずっとこのままだったんだ」
「そうなんだ」
「剣司さんを呼んできます」
「カンナ、よろしくね。なにがあったの?」
「夢の中でマリスが出てきたの」
「マリスくんが?」
「うん。こっちにおいでって、そしたら知らない女の人が突然現れて」
「恐らくべノンの精神攻撃ですね」
「剣司くん。精神攻撃って?」
「以前Alvisで研究していてマリスとともにべノンへ行った『セレノア』がそのようなSDPを発動している可能性があります」
「確かそれで里奈ちゃんが今・・・」
「はい。カンナさんから聞いた状態から推測するに可能性は高いかもしれません。前回の戦闘で総士が攻撃を受けた際に総士は[海中にいたはずなのに気が付いたら見知らぬ場所にいて痛みと共に元の海中に戻りいつの間にかスサノオがいて助けてもらった]と意識を別の場所に持っていかれたというような報告をしてました」
「何故それに亮一が」
「それはわかりません。ただ亮一くんが倒れたのがマリスとの対話が終わった直後だということを踏まえると狙われた可能性がありますね。しかしよく戻って来れたな。里奈は今も昏睡状態が続いているのに」
「その夢の中に女の人が出てきたんです。なんかマリスと難しい話をしていて」
「そうか、とりあえず無事で良かった。暫くはここで休んでろ」
「わかりました」
「じゃあ俺は作戦準備の方に戻りますね」
「ありがとう。剣司くん」
「作戦ってなに?」
2人の表情が険しくなり、母さんが一息ついて呟いた。
「『第二次L計画』が実行されることが決まったの」
それはかつてAlvisが二度と実行しないと誓った作戦計画。絶望へのカウントダウンは刻一刻と迫っていた。
とある高台で海を眺める一人の女性。
「これで満足か?そうかお前が望むことが出来たなら。私はそれでいい」
「今戻るのか?あの島に?何故」
「私には彼らの力になり得る力はない。それはお前達も理解しているのだろう」
「・・・そうかいつかお前と約束したな。あの島の行く末を見守ると。その時が来たということだな。・・・・・わかった。」
霧に覆われる高台。霧が晴れた後、女性の姿はそこに無かった。