蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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第四十八話「誰が為に、己が為に」

「『シュッツ』右腕破損。機体損傷率60%を超えました」

 

「くそ、飽和攻撃だ。ありったけの火器を『シュッツ』の周囲に放ってやれ、爆撃の煙幕で時間を稼ぐんだ」

 

「でも司令代理。それでは『シュッツ』に被弾の恐れが」

 

「被弾しないギリギリの地点へ放てばいい」

 

島の防衛火器が『シュッツ』の周囲に降り注ぐ。

 

(…どうする。カンナを助ける人員を割ける状況じゃない、敵が『シュッツ』から距離を取っているのかもわからん。なにか、なにか手は無いのか)

 

「司令代理。ブルクから『フレイヤ』が出撃するとのこと」

 

「なに!?そんな指令は出してないぞ。それに『フレイヤ』だとなんでパイロットがそこにいる」

 

「わかりません。ですが既に出撃準備は完了しているとのことです」

 

「ブルクに回線を回してくれ。………こちら司令代理の溝口。おい!なに勝手にスタンバイさせてるんだ。それになんで亮一がそこにいるんだ」

 

「溝口さん。ごめんなさい。カンナさんが心配でこっそり来てました」

 

「亮一。いかん、カンナでも敵わん相手だ。お前にもしものことがあったら……」

 

「溝口さん。行かせてあげてください」

 

「恵ちゃん?!なんで恵ちゃんがそこにいる、それに行かせてあげてって………本当に大丈夫なのか?」

 

「あの子はこれまでちゃんと帰ってきました。そして今回もちゃんと帰ってくると約束しましたから」

 

「………あ〜また真壁に度叱られるなこりゃ」

 

頭を掻きむしる溝口さん。ひと呼吸し目つきが変わる。

 

「許可する。『フレイヤ』出撃だ。全員で『フレイア』及び『シュッツ』をフォローだ」

 

「『サキモリ』が敵を牽制しています」

 

「島のコア・・・・・ありがてー。よし亮一行ってこい!!」

 

「了解」

 

『フレイア』を固定していたハンガーが降下を始める。

 

「亮一」

 

「ありがとう。母さん」

 

「必ず。カンナと2人で帰って来なさい」

 

「・・・・・了解」

 

 

 

 

中破した『シュッツ』。カンナは状況打開の為に思考を巡らせていた。

 

(『サキモリ』の援護があるとはいえ、こうも存在を認識出来ないと打つ手が無い。どうする機体を置いて脱出するか・・・・・いや、そもそも姿が見えないんだ。降りて逃げたところで、どこへ逃げる・・・・・)

 

『サキモリ』の形成したシールドが破られ敵が目の前に姿を現す。

 

(ごめんなさい。お義母さん。ごめん亮一)

 

明後日の方向から放たれた砲撃が『シュッツ』と敵の間を突き抜ける。

 

「後方へ逆噴射!」

 

急に飛んできた指示に従い機体のエンジンを逆噴射する『シュッツ』。勢い余り島の岩壁に身体を打ち付けた。

 

『シュッツ』の目の前に『フレイヤ』が降り立った。

 

「…亮一」

 

「お待たせ、カンナさん」

 

「お前なんで、また勝手に」

 

「大丈夫。ちゃんと司令代理からの指示だよ」

 

「なんだと!?」

 

「そんなに驚かないでよ、こう見えて僕もAlvisのファフナーパイロットなんだから」

 

「それはそうだが」

 

「これは相手を倒す戦いじゃない。島を……いやカンナさんを守る戦い。そして僕の『願い』を賭けた戦い」

 

「亮一の『願い』」

 

「うん」

 

 

 

それは出撃直前であった。

 

(クロッシング………ルビィ姉さん。ありがとう。カンナさんを守ってくれて)

 

(島のコアとして努めを果たしたまでです。亮一1つ聞いてもいいですか?)

 

(どうしたの?ルビィ姉さん)

 

(何故貴方は戦うのですか?)

 

(何故って)

 

(戦う理由は大切です。その意味によっては同じ力でも正しく使われることもあれば間違って使われることもあります)

 

(………。)

 

(私は貴方がこれまで戦いに自ら赴こうとする姿が理解出来なかった。いえ今も理解出来ません。貴方の役割は今我々が乗り越えるべき数多の試練のその先にあります)

 

(ルビィ姉さん………)

 

(理解出来ないのは何故か、貴方から『意志』を感じられなかったから)

 

(『意志』それは『皆を守る為』にだよ) 

 

(何故?それは貴方では無くても、周りの方々がやっています。貴方よりも力を持つ方々が)

 

(それは………)

 

(そう。貴方の戦う理由はあくまで自分の行いを正当化する為の口実であり、貴方の本当に戦う為の『意志』ではありません)

 

(…………)

 

(貴方の『意志』が明確にならない限り、私は貴方を行かせるつもりはありません)

 

(そんな………)

 

(何故貴方は戦うのですか?)

 

(………昔僅かに残ってる父さんとの会話の記憶があるんだ)

 

(貴方のお父様との?)

 

(うん。そこで『約束』したんだ)

 

(何を『約束』したのですか?)

 

(母さんは必ず僕が守るって)

 

(………)

 

(そして最近。父さんのことを知って知れば知る程。こんなことを思うようになったんだ)

 

(どんな思いですか?)

 

(……父さんと会いたい。僕達を待つ父さんに会いたいって)

 

(とても素敵な思いです)

 

(へへっ、そうかな)

 

(では改めて問ます。貴方何故戦うのですか?貴方の『願い』はなんですか?)

 

(僕は、まだ見ぬ故郷と父さんに会いたい。そして母さんを、いや母さんだけじゃない。家族と僕の大切な人達を守る為になにより僕が父さんとした『約束』を果たして胸を張って父さんと会う為に………戦いたい!)

 

(貴方の『意志』確かに感じました)

 

(ルビィ姉さん)

 

(行きなさい亮一。皆と貴方自身の為に)

 

(ありがとう。ルビィ姉さん)

 

(島の加護が貴方を護ります。必ず)

 

 

「亮一。戦士らしくなったな」

 

「カンナ姉。ありがとう。一緒に戦ってくれる?」

 

「亮一お前……あぁ勿論だ」

 

態勢を立て直す『シュッツ』。戦士として覚醒した弟に背を託す姉。

 

島の危機的状況に今『姉弟』が立ち向かう。

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