蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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嵐、来たりて
第五十話「導き」


「ここにいたのか」

 

総士と美羽は亮一を探していた。

 

「すまない。2人を助けられなかった」

 

「………いや。ありがとう総士。聞いたよ、同化されそうになってフェンリルを使おうとしたお二人を総士が助けたんだって。僕にはそんなこと出来ない」

 

「こんなの助けたの内に入るもんか」

 

「あの状況でお二人を助けられたのは、きっと総士だからできたんだよ。もっと誇れよ」

 

「こんな状態じゃあ助けたのうちに入らない。こんな辛うじてなんて………失敗だ」

 

「もう総士ったら、なんでそこで意地を張るの?素直に褒めたられた事は喜びなよ」

 

「そんなことだから君達は進歩しないんだよ」

 

「皆がここに戻ってこれた。今はその事を喜ぼうよ」

 

「………」

 

「………」

 

「亮一も島を守ってくれて、ありがとう」

 

「えっ、うっうん」

 

「また無断でAlvisに入り込んでたそうじゃないか」

 

「ちゃんと出撃の許可はもらったもん」

 

「まぁ、その身勝手な行動のおかげで僕達はここに帰ることが出来たわけだしその点は感謝してやる。僕と張り合うっていうならこれくらいは出来て当然だけどな」

 

「だから、素直にお話ししなよ総士」

 

「うるさあいな、こうして感謝の気持ちを伝えてるだろ」

 

「どうだか~。亮一一緒に来る?美羽と総士はこれからブリーディングに参加するの」

 

「どうしたの?」

 

「なんだ聞いてないのか?僕達が敵の精神攻撃の実態を解明したからそれを踏まえての作戦会議だ」

 

「いや、僕はまだここにいるよ」

 

「わかった。じゃあまた後でね亮一」

 

そうして二人はブリーディングへ向かった。

 

 

(ニ人はどんどん先へ行く。僕よりも2歩3歩先に………このまま二人は…………)

 

帰り道。自分の現状を憂い重い足取りで歩いて寄った海岸

 

そこでは1人の女性が海を眺めていた。

 

(あれ?母さん………いや違う。けど何処かであの人を見た気がする)

 

「なにか用か?」

 

亮一の視線に気がついたのかその人がこちらを向いた。

 

「あのどうしましたか?こんな場所で」

 

「ちょっとな、感傷に浸っていたんだ」

 

その人に見覚えがあった。だが雰囲気がその時とは違う………亮一はその違和感を抱え恐る恐る尋ね続けた。

 

「感傷………ですか」

 

「昔、人間関係で上手く行かなくてさ。大事な仲間だったんだけど考え方の違いですれ違って、対立して、そして………戦った」

 

「そう…なんですね。どうして対立しちゃったんですか?」

 

「彼等と共存出来るか出来ないかって言葉にすると簡単なんだけどとても難しい問題」

 

「彼等と共存………」

 

「君は出来ると思う?」

 

「出来る……と思います。僕の周りには彼等に近い存在の人々が沢山います」

 

「そうか、それは望みがあるな」

 

「あなたもこの島に暮らしているならそうではないんですか?」

 

「どうかな?君のようにこの島に深く関わっていたらそのような人達と出会う機会に恵まれるかもしれないけど、私達はこの地で暮らす事がある程度だからね……」

 

「えっ、この島のひとじゃないんですか?」

 

「普段は気の赴くままに外の世界を周っているからね」

 

「あの………僕2年前に一度世界を見に行ったことがあるんですけど、外の世界ってこの2年で変わりましたか?」

 

「珍しいねその歳で島の外に出たんだ。」

 

「えぇ、まぁ」

 

「より複雑化したかな。特に人類が、新国連と独立人類軍が手を組んだかと思えば、独立人類軍同士が争ったり、一部の新国連と独立人類軍が違う派閥で双方の相反する派閥と争ったり………」

 

「そうですか………」

 

「何かあったのかい?」

 

「さっきの戦闘でその時に交流した人と戦ったんです。その人は独立人類軍の人だったんですけど、さっきの戦闘ではベノンの下で戦っていました」

 

「…………」

 

「わからないんです。彼はその時、仲間や彼の上官をとても信頼しているように見えました。それなのになぜベノンの下で僕達の島を襲ってきたのか」

 

「なんらかの理由があるとは思っているようだね」

 

「はい」

 

「ならばあとは相手を信じることだ。」

 

「信じる事・・・・・ですか?」

 

「前に出会った彼が『本当の彼』だと思うなら、『本当の彼』を信じて向き合うんだ。そしてなにより大切なことは『自分自身を信じる』ことだ」

 

「僕自身を信じる・・・・・」

 

「そうだ。君自身の感性・・・・・いや心って言う方がわかりやすいかな。自分が思ったことを信じて進むんだ」

 

「でも、もし自分を信じて間違っていたら」

 

「その時は君を大切に想っている人達が止めてくれる。だから心配するな。沢山悩み考えた。ならば後は動くだけだ」

 

「・・・・・ありがとうございます。少し気が晴れました」

 

「そうか、なら良かった。でもそれが君の本当の悩みではないね」

 

「えっ」

 

「全てを人に合わせる必要無い」

 

「なっ。なんですか急に」

 

「確かに他の人に合わせることは大事なことだ。人類を一つの集合体と見るなら、相手を傷つけ合う事は止めた方がいいし、争いの無い平和な世界を人類が望む事は悪いことではない」

 

「はぁ・・・・・」

 

「例えが大き過ぎたな。そうだな・・・・・この島が目指す目標に向かいこの島に住む人々が同じ目標に向かい進む事は悪いことではない。むしろこれだけ多くの人々が同じ目標に向かい進めるのは素晴らしいことだ。だけど『目指す場所』は同じでも『目指す場所の目指し方』は皆が同じである必要は無いんだよ」

 

「『目指す場所の目指し方』って」

 

「力を示すことが出来る人と話し合うことが得意な人」

 

僕にはふと2人が思い浮かんだ。

 

「これは正反対に見えるかもしれない。でも一つの目標に向かうのに力を示すことが出来る人が必要な時と話し合うことが得意な人が必要な時が来るかもしれない。そう考えると正反対の2つは『目指す場所』に別々の進み方をしていると言えるのではないかな?」

 

「でも僕はどっちつかずで」

 

「『目指す場所』への進み方はなにも2つではない。人の数だけ進み方がある。だから君は『君に出来る目指し方』をすればいい」

 

「僕に出来る目指し方・・・・・」

 

「それは君にしか出来ない。すぐに答えが出るものでもない。だけど焦ってはダメだ。君が考え続ければ自ずと答えは見えてくる」

 

(自分自身の手で真実を見出してやる)

 

(今日もいっぱいお話しよ)

 

(あなたがいると定めた場所があなたを貴方にするのです)

 

「………お役に立ちそうかな?」

 

「はい。ありがとうございました。…………あの」

 

「どうかしたかい?」

 

「貴女達に僕はお会いしたことがありますか?」

 

「…………そうだな、それは君の予想次第かな」

 

その人はそう言い残して僕に背を向け歩いて行った。僕はその背中にこれからの指針を見たそんな気がしていた。




亮一と対話を終えた女性は島を見渡せる崖に来ていた。

「お前のやりたいことは出来たか………そうか。ならそれでいい」

「これからどうする?………私か?私はお前達がしたいことについて行くたけだ」

「………全く。お前達はこういう時は強引だな。しかし奇遇だな私もそう思った。ではここで見守るとしよう。この島と彼の行く末を」

彼女達は決意を固めるとその場から立ち去った。
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