「あの、大丈夫ですか」
パイロットはまだ気を失っている。いつ敵がこちらに気づくかわからず焦る僕。恐る恐るヘルメットを外す。
「女の人なの」
その人は長く美しい黄金色の髪をした女性だった。(綺麗な人だな…同い年、年上かな)
「くっ」
痛そうな表情を浮かべながら女性は目を覚ました。
「貴様何者だ」
夕日のようにオレンジがかった赤い瞳が僕を鋭く睨み付ける。
「あの…大丈夫…」
「触るな」
後ろのファフナーを見て彼女は察した。
「Dアイランドの兵士か」
「D…アイランド」
「亮一だいぶ手間取っているようだが大丈夫なのか」
溝口さんから通信が入る。
「負傷したパイロットを1名保護しました。どうしましょう」
「なっ、私はどこも…痛」
「よくやったぞ亮一、一騎達も敵を倒し終えて帰投してる。お前も戻れるか」
「パイロットの人に激しく抵抗されてしまって、身動きがとれません」
「それじゃあ、船を近づけるから待ってろ」
「わかりました」
通信を切る。
「私を捕虜にしようとは、いい度胸だ」
「僕は助けただけなんですけど」
「…調子が狂うな貴様」
「あのお名前は」
「カンナ・メネス」
「可愛いらしい名前ですね」
「なっ、お前が名乗れと言うから名乗ったら人の名前を馬鹿にするのか」
「そんなつもりは…すみません」
「…本当に調子が狂うなお前と話していると」
「照れますね」
「誉めてない」
「えーあーお二人さんもうよろしいでしょうか」
気づけばボレアリオスが待機していた。
「カンナ・メネス…人類軍南太平洋生存圏防衛艦隊マホロバファフナー部隊アッカード中隊少尉ね」
カンナさんは船内で溝口さんの取り調べを受けていた。
「正確にはそうなる予定だった。転属の名を受けて同じく転属になった兵士と共に移動中に奴等の襲撃にあった。だから正確には人類軍北ヨーロッパ方面守備軍第08ファフナー部隊少尉だ」
「なことはどうでもいい。お嬢さんどうするご存知の通り俺らと君らって仲悪くてさ、下手に近付けないのよ」
「勝手にしろ、捕虜の扱いを捕虜に聞くな」
「おー、気の強いお姉さんだこと」
「1つ聞いていいか、他の連中で生存者はいなかったか」
「あぁ、残念ながら生き残ったのはお嬢さん1人だ」
「くそっ」
歯を噛みしめ悔しさを滲ませるカンナさん。
「どうする亮一このお嬢さん」
「えっ僕ですか」
「俺は真壁からお前達の保護者は任されちゃいるが指揮権は任されてないからな、このお嬢さんをどうするかは、お前が決めな」
「なら一騎さん達が…」
「俺達は総士捜索には強い権限で意見するが、その他のことは特に意見するつもりはない。どうしたいか君の意思を尊重するよ」
「僕は…」
「お前はどこからどこまで甘ちゃんだな」
自由の身になったカンナさんは、甲板で外を眺める僕に話しかけてきた。
「捕虜に拘束器具無しで艦内を自由に歩く許可まで出すとは」
「僕は人助けしただけですから」
「甘いな。私が今お前を人質に艦内の掌握をし出すかもしれないんだぞ」
「カンナさんはそんなことしないですよ。絶対」
「何故そう言い切る」
「なんとなくです。そんな人じゃないってそう思うんです」
「…どこまでも甘いな。しかし、基地まで送り届ける必要は無いのだがな…」
「どうしてですか」
「いや、お前の善意に感謝しよう。なぁ、どおしてさっきから外を見てるんだ」
「今、初めて島を出てるんです。ある程度島の外について話は聞いてたけど。想像以上に酷いんだと思って」
「どんな島なんだお前の住む場所は」
「澄み渡る海、生い茂る木々、綺麗な町並み、温かい人々。そんな景色を一度に見られる美しい島です」
「そうか…私はかつてウィーンと呼ばれていた場所で生まれ育った。昔は美しい街だったらしいが今はこことそう変わらない」
「カンナさん…」
「そんな町で育ったなら、そんな甘い考えになってもおかしくは無いな。だが一度でいいから行ってみたいなそんな町…」
「来ますか僕らの島に」
「…全くどこまでも甘ちゃんだな。亮一」
「今名前で…」
「亮一ブリッジへ来てくれもうすぐ人類軍の基地に着く」
僕は外の現実をまた1つ知ることになる…。