蒼穹のファフナー 〜Wunsch〜   作:naomi

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第九話「黒烏の牙」

「見たことのないファフナーのタイプだな」

 

ボレアリオスの後ろに5機のファフナーが距離を一定に保ってついてきていた。

 

「『ティフシュワーズ・モデル』。独立人類軍オリジナルのファフナーです。バーンズ将軍直轄の精鋭部隊『クロウ小隊』にのみ配属されている、隠密行動特化型のファフナーです。レーダーに反応しないように、何百という周波数を各パーツから常に放出しており、少なくとも人類軍の現技術では索敵は不可能な機体です。個々の技量の高さも相まって遭遇した人類軍のファフナーの生存率は0%を記録しています。…よくわかりましたね」

 

「まあ、来主は元はフェストゥムだしな。人の存在はこの中でもずば抜けて察することが出来る」

 

「フェストゥムとの共存…噂には聞いていましたが、貴方達は本当に成し遂げようとしているのですね」

 

「困難な道のりだがな、今も昔も」

 

カンナさんはその事実にとても驚いた表情をしていた。

 

「ねえ、どうするの。僕達であいつらやっつけていいの」

 

「いや、奴らが攻撃してくるまでは待ってくれ」

 

「えー」

 

「万が一、向こうから抗議があった場合の正当防衛の口実が必要だ」

 

ボレアリオスに『ティフシュワーズ・モデル』から放たれたミサイルが着弾する。

 

「おいおい、偽装鏡面展開してるんだぞ。なんでこんなにピンポイントに着弾出来る」

 

「『ティフシュワーズ・モデル』が展開している無数の周波数がその装備のエネルギーに干渉して彼方には目視出来ずとも位置が特定出来るのでしょう」

 

「ってことは、あいつらに偽装鏡面は無意味なのか」

 

「僕の居場所を傷つけたな」

 

「おい。来主待て」

 

溝口が制止するまえに、来主の乗るマーク・ドライツウェン『クロノス』と『エウロス型』は『ティフシュワーズ・モデル』に反撃をしていた。

 

「くっそ、一騎・春日井、出撃頼めるか」

 

「行くぞ一騎」

 

「あぁ」

 

「溝口さん僕は」

 

「亮一はお嬢さんの監視役だ」

 

「…わかりました」

 

一騎さんのマークエルフリペアと甲洋さんのマークフィアー『アバドン』も戦場に介入を始めた。

 

(あの敵、3人を相手に全く引けを取らない…)

 

「彼等は何故あんな周りくどい戦い方をする」

 

「周りくどい」

 

「あぁ、相手のパイロットに致命傷を与えないようにコックピットに近い部分を避けて、武装を中心に戦力を削ぎ落とすような戦い方だ。『クロウ小隊』はそんな簡単にはやれないぞ」

 

「それが俺達のボス『真壁史彦』の方針だ。『人類とは戦わない、人を討てとは決して命じない』」

 

「甘い…甘過ぎる。そんなことでこの世界を生きていくなど」

 

「お嬢さんはどうやって教わったかは知らないが、俺達はこいつらに『人を殺めること』を教える気はない。勿論その苦しみもな」

 

僕の肩に手を置く溝口さん。僕にとって当たり前のことで二人のこの会話の『重さ』を僕は知るよしが無かった。

 

するとそこへ一騎さんが現れた。

 

「一騎…まさか」

 

「…亮一、俺の替わりにマークエルフリペアに乗るんだ」

 

「えっ、どうかしたんですか一騎さん」

 

「…いいから俺に捕まれ」

 

これまで無かった一騎さんの荒れた口調に自然と一騎さんを掴んでいた。

 

一瞬でマークエルフリペアのコックピットに移動する。

 

「すっ…凄い」

 

「あとは…頼んだ」

 

一騎さんの身体が黄金色に輝き、やがて光となって消えた。

 

「一騎さん…一騎さん」

 

「マークエルフリペアが再起動…亮一君か」

 

「甲洋さん。一騎さんが消えちゃいました」

 

「『力を使い過ぎて眠り』についたのか。…亮一君、SDPを発動してくれ、あの機体達の動きを止めるんだ」

 

「わかりました」

 

SDPを発動する…5機の機能が上手く停止し、その間に甲洋さんがティフシュワーズ・モデルの武装を破壊していく

 

「凄いや亮一、皆動きが止まったよ」

 

「来主。油断しないで『彼等』にもそう伝えて」

 

「了解。ねぇ、皆この人達を食べたそうなんだけど」

 

「それはダメだ。余計な争いを来主も生みたくは無いだろ」

 

「そうだね。戦わないでいいなら戦いたくないな」

 

最後の一機の武装を破壊している時

 

(なに…抗う感じ)

 

手元から同化現象が発現していた。

 

「亮一君どうか…くっ、こいつ『服従』から抜け出した」

 

その機体はアバドンを退け、此方に向かって来ていた。

 

「亮一君気をつけて」

 

クロノスとエウロス型の攻撃を被弾しながらも抜け出し目の前に立ちはだかった。

 

敵のクロウがこちらを突き刺そうと伸びる、僕はそれをルガーランスで反らしながら避けた。

 

しかし敵のもう一方の手がマークエルフリペアの腕を掴む

 

「貴様…何者だ」

 

相手からのまさかの接触であった。

 

「…君は誰なの、なんで僕達を攻撃するの」

 

「それが任務だからな。直ぐにでも貴様を殺りたいところだが、味方を人質に捕られた上に貴様を殺ったところで全滅は間のがれん今回は見逃してやる」

 

「随分上からモノを言うね君」

 

「殺されないだけ、ありがたく思うことだな。貴様、名は」

 

「…霧島亮一」

 

「…亮一か、次に会うときは貴様の死だ。この『リベラル・イェーガー』が貴様を殺してやる」

 

奴のティフシュワーズ・モデルがマークエルフリペアを蹴りその勢いで空に上がると戦場を離れた。

 

「亮一。急いで戻ってこい、このポイントにアイツらの『タイラント』が発射されてる」

 

『タイラント』。人類軍が使う大量破壊兵器で『核ミサイル』と同等…それ以上の破壊力を持つ兵器。それが僕達のいる海域に放たれた。

 

「甲洋さん。来主」

 

「ギリギリまで、僕達は破壊を試みる。亮一君は先にボレアリオスに戻って」

 

「二人とも危険です」

 

「大丈夫だから、早く戻るんだ」

 

ボレアリオスに着艦した時タイラントは強烈な爆風を発生させ、それに連動するかのように機能停止したはずの4機がフェンリルを起動していた。

 

アバドンとクロノスがボレアリオスに着艦する。

 

「二人とも、大丈夫ですか」

 

「ありがとう。大丈夫だよ」

 

「あの光…やっぱり嫌いだな」

 

「そうだね」

 

「あの…残っていた機体は」

 

「フェンリルを起動していた。中のパイロットは恐らく…」

 

「そんな…でもどうして仲間がいるのに」

 

「特殊部隊の彼等にとって任務の失敗は『死に値する』ことなんだと思う」

 

「人命より大事な任務なんて…」

 

「この世界には、僕らににとってわからない価値観が沢山ある。君もこれからもっと知ることになるよ」

 

この出来事が因縁の始まりであった。

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