NEWダンガンロンパV2 絶望のコロシアイホテルツアー 作:肘鉄
「せいか~~~い!!他のミンナもちゃんと理解できてるみたいだね!」
「いや、でもコロシアイって」
「しょぼーん……信用してくれないんだね……これだけ工程を簡略化してあげてるのに……」
落ち込むモノクマだがこんなことをいきなり始められて信じられる訳がない。それは皆も同じようで、ほとんどが疑問符を掲げている。
「ま、良いもんね!そのためにコイツを準備させてるから。カモーーンエグイサル!!」
モノクマが宣言するとレストラン入口の大扉が開かれる。そこからさっきまで影も形もなかった一機のロボットがズカズカと入ってきた。
二足歩行で片方の腕には・・・
「き、機銃!?」
アンジェリカが恐怖にひきつった顔で叫ぶ。
「このホテルではボクが支配人。オマエラはそれに従ってればいいの!まだ信じられないヤツもいるみたいだし……」
「一人死んで貰おっかな」
モノクマが玩具のような赤いハンマーで目の前のボタンを叩くと、何処からか現れたルーレットが周りだす。
本気だ。何故かはわからないがそう思った。コイツは本気で俺達を・・・殺害するつもりだ。
回転が遅くなる。よく見るとルーレットにあしらわれているのは俺達を模した顔だ。
また回転が遅くなる。全員が固唾を飲んで見守る。
更に回転は遅くなる。そして針の役割を担っているであろう点灯表示が遂にその動きを止めた。
14つに分けられたうち光輝いているのは・・・
「お……れぇ?」
天海だった。
「ミセシメは天海クンにけってーーい!!うぷぷ、やっぱり不幸だねぇキミは!」
「ふ、ふざけるな!!お前やっぱり最初から……!」
先程会った時からは考えられない激昂具合で天海が大声をあげた。
「ふざけてなんかないよ?意図的に決めるならわざわざキミを選んだりしないって。だからこれは間違いなく厳粛なるルーレットの結果なんだよ」
「そん……な」
エグイサルが動き出す。その機銃が天海に向けられた。
「じゃ……いってみようか」
「……あ…………」
機銃が作動音をあげ始める。しかし天海は既に諦めたといわんばかりに動こうとしない。
「天海!!」
思わず声を張り上げる。同時に痣街がエグイサルに向けて走りだした。
(一体何を……!?)
そして機銃が斉射される瞬間、痣街はその華奢な身体つきからは考えられないスピードでエグイサルに接近し、
直後凄まじい勢いで弾丸が発射された。悲鳴と叫び声、そして銃声が飛び交う。弾丸が天井にぶつかり、跳弾でテーブルや椅子が砕けていく。破砕物の破片が飛び散る。
俺は伏せることしかできなかった。そんな中、誰かに覆い被さられる。
斉射が終わり、エグイサルがその動きを止める頃には食堂は滅茶苦茶になっていた。やがて舞い上がった埃が薄まっていき、視界が開けていく。
「皆さん!無事ですか!?」
散らかったテーブルや置物のせいで皆の姿が確認できない中、まず始めに星宮が声をあげた。それから次々と無事を知らせる返答が続く。
「天海も生きておるぞ!怪我も大したことない!」
鬼龍院が天海の生存を確認したようだ。残るは・・・
「大丈夫か!?」
俺を守る様に覆い被さっていたのは痣街だった。
「痛った……大丈夫だよ」
所々擦り傷があるものの、大怪我は負っていない。
「良かった……」
本当に良かった、と心からの安堵の声が漏れる。
「そっちこそ大丈夫?」
「ああ。お前のおかげでな。ありがとう」
「そんな表情もできるんだね」
「……うるさいな」
「アハハ、ずっとしかめっ面だったからさ」
「チッ……」
「うぷぷ」
「!」
全員がモノクマの声に反応して即座に緊張した空気を放つ。
「結果的に誰も死んでないけど、これで本気だって信じてもらえたよね」
確かに信じるしかなかった。モノクマは本気だ。あの威力の弾丸が命中していれば間違いなく天海の命は無かっただろう。
「エグイサルのテストもできたし、今回はこれでおしまい!こんな序盤から人数減らしちゃうと苦情来ちゃうしね。感謝してよオマエラ!」
テスト?苦情?与えられた知識の中にはそれに該当するような項目はない。
「あと痣街クン!キミだから今回だけは見逃すけど、エグイサルへの故意の攻撃はルール違反だからね!」
エグイサルが何処かへ退散していく。どうやら本当にこれで終わりらしい。
「それぞれの個室に『モノクマフォン』を用意してるからちゃんとルールを確認しておいてね!それじゃ、あでゅー!」
言い終わるとモノクマもスルリと物陰に消えた。
「たす……かった……?」
放心していた天海が口を開く。
「生きてるよな?なぁ!オレ生きてるよなぁ!?」
「ぬお!?ど、どうしたのだ!」
天海は我を取り戻したかと思うと鬼龍院を問い詰めるように叫んだ。
「大丈夫、生きてますよ。まずは落ち着いてください」
星宮が仲裁に入った。他の者も自分より取り乱している天海の存在のせいか、あれだけの事が起こったにも関わらずパニックにはなっていない。
「ハァ…ハァ………すいません。俺、ちょっと取り乱したみたいっす」
天海はようやく落ち着いたようだ。
「殺されかけたのだ。気にするな」
「そうです!悪いのはあの横暴なヌイグルミです!個室もありますし天海殿には休息を進言します!脚を怪我されているようならお手伝いしますので!」
「すいません、じゃあお願いするっす……」
鬼龍院と五十嵐に支えられ、天海はレストランを出ていく。
「痣街、個室って」
「うん、受付横の通路、最初に天海くんがやってきたところだね。その先に個室が有るんだ」
俺以外は既に知っている情報だ。痣街から個室のことを聞いている間に他の者が次々と扉の向こうへ消えていった。皆、疲れきった表情をしている。
「……俺達も行くか」
「うわ、ちょっと」
痣街の肩に手を回して支える。この腫れて膨らんだ右足首では歩くのは困難だろう。
「気付かれてたかぁ」
「あんな鉄の塊を思い切り蹴り上げればこうもなる。それに……」
俺を庇ってできた傷もあるのだ。ある程度の責任は感じる。
「でもなんか……情けないな」
「お前のおかげで助かった命があるんだ。胸を張っていいと思うぞ」
「その通りですよ痣街さん」
「星宮さん」
星宮も痣街に肩を貸す。
「あなたがあの行動を起こさなければ、天海さんの命は無かったんですから」
「そうかな……そのせいで皆を危険に晒しちゃったし」
「でも誰も死んでいません。結果良ければ全て良しです」
「そう……だね……」
一瞬、暗い表情を覗かせたが、それはすぐに隠された。
そしてその様子に、疑心で満ちた視線を送る人物がいたことに俺は気がつかなかった。
やや長い通路を抜け個室の集まるフロアに出る。途中、幾つかの扉が有ったが、星宮によると開かないものが多いらしい。
「ありがとう二人とも。結局更に情けないことになったけど」
「だから気にするなって……」
部屋へ消える痣街を見送り、自らの個室を探す。
「えーと、天海……?鬼龍院……草野……」
「右手側にはありませんよ。阿笠さんと私の個室は左手の奥です。お隣さんですね」
確認してみると確かにそこには自分の個室がある。ネームプレートにSD風の人物像。少々苛つくことにこれも良く出来ていてわかりやすい。
「左隣は星宮で右隣は……空き部屋?」
「ネームプレートもありませんし、最初から鍵が掛かっているんです。おそらく使用する予定のない部屋、なんでしょうね」
こんな非日常的なことの為に用意された舞台にしてはテキトーだな。
「今は余計な事は気にせず休みましょう。おやすみなさい阿笠さん」
「あっ、あぁ。おやすみ」
ニコリと微笑んで星宮は部屋へと入っていった。不意に見せた笑顔に、屈辱だがドキリとさせられてしまう。
しかし直後に響いた施錠音が俺を現実に引き戻した。
そう、コロシアイはもう始まっているのだと。