この物語には以下の内容が含まれます。苦手な方はご注意を。
●この作品は『刀使ノ巫女』に『鬼武者』を加えた二次クロスオーバー創作となります。
●『刀使ノ巫女』の世界線に『鬼武者』側の時系列が紛れ込んでいます。
なお、この話は『プロローグ&短編・試作集』にて投稿した作品と同一になります。
この世には、異形の化け物・『荒魂』を祓う
『特別祭祀機動隊』という形で警察組織に属する少女たちは、全国5か所にある中高一貫の学校にて日夜訓練に励み、有事の際には希少な金属で作られた『御刀』を用いて『荒魂』と呼ばれる化け物を斬って払う、そんな神薙ぎの少女を指している。
1998年9月に起きたとされる『相模湾岸大災厄(さがみわんがんだいさいやく)』という人類史にも大きく刻まれた大事件。その事件を解決した刀使たちの功績もあって、刀使が担う御役目の重大性と荒魂という災厄の危険性は世間一般に大きく知られ渡るほど根深く認知されていた。
そんな未曾有の大事件が起きてから現代に至るまでに、特別祭祀機動隊と呼ばれる国家公務員の特別職が発足され、そこに所属する彼女たちは全国5か所にある中高一貫校にて訓練を積む傍ら、有事の際は御刀と特殊能力を用いて荒魂から人々を護ることにより、人々の安寧は保たれていた。
……しかし、人々は知らなかった。この世界には蠢くもうひとつの闇が存在している事を……
「――― きゃあああー!!」
災厄発生から19年後、ある山中にて。荒魂発生の報告を受け、刀使の部隊が火急的速やかに派遣され対応。派遣された刀使たちは荒魂との戦闘を開始した。しかし、現場は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「待ってろみんな! 今ボクが助ける!」
派遣された刀使の部隊の隊長『獅童真希(しどう まき)』が立ち塞がる荒魂を斬り捨て、取り残されてしまった2人の隊員の元へと向かおうとする。
「獅童さん! 無茶です!」
「バカな事を言うな! 部隊の仲間が取り残されてるんだぞ!」
「冷静になってください! 荒魂ではないあの化け物に刀使の力が通じないんですよ!」
副隊長が真希に食い下がろうとするも、部隊長である真希としては取り残された隊員を助けることを頑なに譲らず声を荒げる。
(あの化け物はいったい何なんだ……斬られたみんな、『写シ(うつし)』を一撃で断ち切られている)
真希の視線の先には荒魂とは違う『化け物』の姿もあった。三度笠に鎧姿、一見落ち武者のように見えるが笠の下は頭蓋骨が剥き出しになっており、彼女たちからすれば化け物と呼ぶに値するには十分であった。この化け物は荒魂討滅中に突如として現れ、真希の部隊と荒魂が入り乱れた混戦へと発展してしまった。
化け物は刀使の基本戦術であり最大の防御術『写シ』を一撃で破り、真希や副隊長等数名を残し隊員のほどんどが戦闘不能となっていた。
『きしゃあああぁぁぁ!』
取り残された刀使に異形の影が迫る。化け物は手に持った打刀を振り下ろそうと上段に構えた。
「誰か! 隊長、助けて!」
「やめろおおおおおぉぉぉぉぉ!」
真希は隊員の慟哭がひどく遠くに聞こえた。必死に手を伸ばそうとするが、助けを求める隊員は遥か先、振り下ろされた凶刃は『写シ』が切れた隊員の身体を引き裂き、彼女は鮮血のもとへ沈む。そう容易に想像できた。
「……?」
ほんの一瞬の時であったが酷く長く感じられた。隊員は自分が斬られた……その筈であった。いつまで経っても何も起きなかった。反射的に目を閉じていた隊員の静かに双瞼を見開いた。
隊員の目にまず映ったのは、こちらに駆け寄ろうとし手を伸ばしていた真希の姿である。真希はどこか目の前で何が起こったかわからない表情をしていた。続いて見上げると、振り下ろされるはずの凶刃は隊員の目の前で止まっていた。
『……しゃ?』
化け物も自らに何が起きたか理解する間もなく、困惑の声から一瞬遅れずるりと斜めに滑り落ち、化け物の身体がまるで煙に巻かれるかのように消滅する。
「化け物を……斬った……」
化け物を阻むかのように1人の人がいた。背丈は成人の男性より大柄(推定で190cm)、格好は陣羽織に右手に構えた日本刀、どこぞの荒武者を思わせるような様相だ。黒の頭巾を被っているためか顔は見れない。
『きしゃあ!』
「だぁっ!」
化け物が乱入していた荒武者へと襲い掛かる。それを口火に荒武者が化け物を次々と一刀で斬り捨てていく。
「刀使たち、こいつらは俺が引き付ける!」
「男!? 男がなぜ御刀を」
「早く、その子たちを連れて行け!」
真希の問いを一蹴。荒武者の活躍で化け物の囲みは崩され、取り残された2人の隊員までの道ができる。真希は一瞬唖然ととられていたが、我に返ると副隊長と共に2人の隊員を担ぐとその場から離れる。
『ごあああぁぁぁぁ!!』
「スペクトラルファインダーに反応!」
「――― こんな時にッ!」
『熊型』と呼ばれる荒魂が木々をなぎ倒し姿を見せる。荒魂の大きさに比例して災いのレベルが異なっている。今の真希たちにとって相手にはしたくないほどの災いを内包しており、周囲にいた化け物をなぎ倒しながら荒武者へと迫る。
「下がれ、荒魂は……」
「知っている」
荒魂の大爪が荒武者へと振り落とされるが、荒武者はそれを躱すと荒魂の腕を走り伝って頭部へと向かう。
その途上、真希はまた信じられない光景を目の当たりにした。
荒武者の左手の甲が青く輝き、刀を左手へと持ち替える。すると、左手からの青い光が辺りを照らす。
「なっ……」
輝きが収まると荒武者が持っていた刀がの形状が変わっていた。青い、雷光を纏う異質な刀となったのだ。
「どりゃあ!」
荒武者が雷光が迸る刀を縦に──正中線をなぞるようにして振り下ろす。荒魂は縦二つに切り裂かれる。
荒魂は『ノロ』と呼ばれる。負の神性を帯びた物質で構成されており、刀使は自らが持つ『御刀と呼ばれる神聖な力をもった日本刀でないと祓う事が出来ない。筈だったが、荒武者の用いた刀は結合されたノロを四散させた。
「隊長!」
「負傷者を連れて撤退を。ボクはここに残る」
「獅童さん、しかし……!」
「……悔しいがあの荒武者の実力なら、荒魂や化け物が相手にはならないだろう。『ノロ』をこのまま放っておけない」
「……わかりました。お気をつけて」
『ノロ』を放置してまた荒魂を生み出される2次災害も止めなければならない。荒武者の実力は刀使を遥かに凌駕しており、同時に現れた化け物ですら相手にならない。真希は撤退の命を出すと、殿をつとめ戦いを遠くから眺める。
(こんな剣があったのか)
荒魂や化け物が入り乱れる中、荒武者は双方を切り捨てていく。御前試合において輝かしい成績を残す優秀な剛剣の使い手である真希の観察眼でもっても、荒武者の剣の冴え・技・巨躯から繰り出される剛の剣はこれまで見た中でも遥かに高い領域へと達していた。少なくとも、このような剣と同じ使い手は昔一度だけ見た英雄『折神紫(おりがみ ゆかり)』の剣だけだ。
「……鬼」
真希が荒武者の剣からその本質に気づく、感じた言葉をぽつりと呟いた。荒武者の剣は真希の部隊が苦戦した敵の一団を言葉通りの鬼神とも言える大立ち回りで片づけてしまった。
「あんなにいた荒魂や化け物が……いったい何をするつもりなんだ」
真希を疑問をよそに荒武者は左手を掲げると意識を集中する。すると、化け物の死骸から蛍のような光玉が顕出し、光玉が抜かれた死骸は風化し消滅。光の玉は彼の左手に吸い寄せられるように入っていく。全ての光玉を吸い寄せると荒武者は踵を返す。
「……待って!」
真希はその光景に見とれていたが、寸での所で我を取り戻し荒武者を呼び止める。荒武者は歩みを止めた。
「部隊の子を助けてくれたことに礼を言いたい……ありがとう」
「務めを果たしただけだ」
「そうか……。だが、「それには応じられない」」
荒武者は真希の対応の言葉を止め、右耳をそっと触れる。誰かと連絡を取っているのかと真希は思っていると、
「『ノロ』の回収はそちらに任せる」
真希の静止を聞かず荒武者そのまま駆け出し、山中奥深くへと消えていった。
――――――――――
【獅童真希のその後】
「――― さん! ――― 真希さん!」
「ん……」
真希の双眸がゆっくりと見開かれる。任務先からの移動中、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「少しうなされておりましたわよ」
「あぁ、すまない。寿々花」
折神家親衛隊の第二席に名を連ねる『此花寿々花(このはな すずか)』がほっとしたような安堵の表情を浮かべる。心配をかけたなと真希は顔を俯かせて答える。
(またあの夢か……)
真希が己の実力不足を痛感した事件から1年経った。あの荒武者のおかげで部隊は多数の負傷者と出したものの幸いにも死者はいなかった。が、将来有望だったが再起不能なり引退した刀使を多数出してしまった。
(あの武者がいたからこそ、みんなで帰れた。だけど、自分がもっと力があれば…力なき正義は無力―――、力でなければ守れないものがあると知った)
真希は護れなかったというに嘆いた。そして、もう二度と犠牲と出さないと誓い力を求めた。
あの日のことを悔やまなかった瞬間はない。時々、あの出来事が夢に出てきても真希その絶望には押しつぶされなかった。
その覚悟が実を結んだのか、彼女は折神家親衛隊の第一席としての座に就いている。
(今のボクを見たら、あの武者はどう思うのだろう)
あれから他の刀使も真希たちが出くわした化け物に襲われたと、折神家独自の情報網からも聞いている。それと同時にその化け物や荒魂を討滅する者たちも現れているらしいが、その者たちは霞を掴むかのようにすぐに姿を消すため詳細はわかっていない。
「これから御前試合にて紫様の護衛の任があるのに……」
「問題ないよ寿々花。みんな降車だ」
真希は心配をする寿々花に向かって微笑む。
やがて、真希が率いる折神親衛隊の乗った新幹線は目的地である『鎌倉』へと着いた。
――――――――――
【荒武者のその後と正体】
真希たちが鎌倉へと到着する1日前、成田国際空港のロビーに1人の大柄な青年がいた。
「1年ぶりの日本か。全く…あの任務の後にフランスに向かってくれだなんて、こんなに長くいることになるとはな」
そう愚痴りながらゲートを潜り歩を進めようとすると、空港の職員に呼び止められた。
「『柳生』様、お荷物の方はこちらとなります」
「おぅ、ご苦労さん」
彼は1年前、真希たちの前に現れた荒武者本人である。任務を承り完遂した彼を待っていたのはフランスへの長期の出張であった。なぜ、彼がフランスに赴くことになったのかはある事件の事を語らなければならない。
2004年、フランス・パリにおいて突如として化け物の一団が現れ殺戮の限りを尽くした。その騒動はすぐに終息されたが、その事件の終息に一役買ったのは『日本のサムライ』だったとフランス現地人の証言があった。さらに、彼の家にその出来事が綴られた書物が見つかった事で日本側もそれを認めるしかなかった。2度と事件による犠牲を増やさないためにフランス側は対抗する力をもつ日本との関係を深めてきた。
彼はその一環により、一族の技を指導するためにフランスに渡り漸く帰ってきた。職員から曰くつきの荷物(竹刀袋・大きめの旅行鞄)を受け取ると空港に併設された駅の電車に乗る。
「近日中に本家に戻る必要はあるが、しばらくは休みだって言われたな。そういや、この時期って」
ふと辺りを見渡すと10代の帯刀している少女たちがちらほらと見られた。
「そうか。刀使たちの御前試合の時期だったか」
一応の休暇中となった彼はその過ごし方は決まったようだ。
「『鎌倉』に向かうか。っと、あいつに連絡してみるか」
――――――――――
【美濃関学院の刀使】
「じゃあ行ってくるね。美炎ちゃん」
「優勝」
「え?」
「優勝してきてよね。私に勝ったんだから。あと……楽しんできて」
「うん、楽しんでくる。今度、また再戦しよう!」
場所は変わって岐阜羽鳥駅。ここに美濃関学院の生徒とその関係者が集まっていた。『美濃関学院(みのせきがくいん)』とは全国に5校設立された中高一貫の特別刀剣類従事者訓練学校。通称『伍箇伝(ごかでん)』の内の1校である。
その駅の構内にて美濃関学院の御前試合代表の1人『衛藤可奈美(えとう かなみ)』と惜しくも逃し補欠に甘んじた『安桜美炎(あさくら みほの)』が拳同士を合わせる。準決勝で代表の座をかけて全力で競り合った美炎なりの可奈美へのエールだ。
「ほぉら、先輩も言うことがあるでしょ」
自分の番が終わった美炎はある1人の女生徒と引っ張り出す。同年代の割に長身で、一見怖い不良のような外見をしている。
「いや、美炎にほとんど言われた……」
「本当だったら代表だったのに、態々辞退した先輩がそう言いますか?」
が、見た目とは裏腹に物静かで海のように広い優しさを内包していた。美炎の押しに彼女は困った表情を浮かべる。こういった激励は苦手のようだ。
「決勝のあとにやった、先輩の剣技すっごくわくわくしました」
「そうか。それはよかった」
彼女は可奈美ともう1人の代表である『柳瀬舞衣(やなせ まい)』とのエキシビジョンを行い、2人に勝利をおさめた。本来だったら代表間違いなしの実力者だが、彼女は御前試合に参加できない諸事情をもっておりこれまでも断っていた。
「だから、美炎ちゃんにも言ったんですけど、私もう1度先輩と試合してみたいです。だから……御前試合でもっと強い相手とやって、もっとワクワクした剣の試合をしたいです」
可奈美の純粋でとにかくまっすぐな思いを聞いて、
「わかった……可奈美、ここ以外の剣技を楽しんで来い。そして、もっと強くなったらまた相手をしよう」
彼女は挑戦を受ける意思を伝えた。同時に、新幹線の案内のアナウンスが構内に流れる。
「可奈美、そろそろ時間だ」
「わたしも応援のみんなと一緒に、この後鎌倉へ向かう。一応は、補欠だしね。あ、だからって、私の出番とか作ったら許さないから!」
「わかった! がんばる! 約束だよ!」
「可奈美ちゃん、そろそろ行こう! 新幹線来ちゃうよ」
舞衣に急かされ可奈美はホームの改札を抜ける。美濃関学院代表の2人は鎌倉へ向かう新幹線へと歩んでいった。
「私、ちぃ姉のところ行ってくるね」
「ああ。ん、誰だろう?」
美炎は幼馴染のところへ向かっていく。すると、彼女のスマートフォンに着信があり端末を取り出す。メールのようだが、その宛先を見る。
「兄さんから……え、日本に帰ってきてたんだ」
内容は海外へ出張していた兄が1年ぶりに日本へと帰国したらしい。さらに文章を進めていると、
「御前試合を観に鎌倉へ。……もしかしたら、久々に会えるかな」
刀使の御前試合を見るために鎌倉へ滞在するそうだ。彼女は久々に会えることに心を弾ませた。
――――――――――
鎌倉の地に幾多の刀使たちが集まる。そして、再会する
「未来を刈り取ろうとするのなら……俺が斬る!」
――― 現代に蘇りし鬼武者『柳生 昴(やぎゅう すばる)』
「誰かを傷つけようとするのがいるのなら……私も戦う!」
――― 鬼の力をもつ刀使『柳生 命(やぎゅう みこと)』
『幻魔の王』を葬る力をもつ鬼の一族の末裔たち。この地で待つのは、再会の物語か。さらなる災厄への序章なのか。刀使の少女たちとの交わる絆は。
まだ、誰もわからない。
刀使の巫女 二次クロスオーバー創作
『刀使ノ巫女』×『鬼武者』 -祓う刀使 闇断ノ紅鬼-
……現在は連載は未定<(_ _)>
<人物>
●柳生 昴(やぎゅう すばる)
イメージCV:鳥海浩輔
19歳、誕生日:1月25日、血液型:A型、身長:190cm、流派:柳生新陰流?
刀:『三池典太』
本作の主人公(鬼武者サイド)。とじみこ原作開始の1年前、獅童真希が率いる部隊に襲い掛かった化け物と襲来した荒魂を退けた荒武者。
戦闘では余裕を失わず物事を見極める冷静さを持ち合わせており、その洞察にて『敵』と見なした相手には容赦はなく鬼神の如き剛剣を振るう。その剣筋から獅童真希から『鬼』と評される。
序章2に登場するもう1人の主人公とは兄妹の関係。
<世界線>
戦国時代:『新鬼武者』まで史実通り。続編フラグはなし。
現代:1998年にとじみこの事件。2004年に鬼武者3の事件。主人公ズは鬼武者2・新鬼武者の柳生一族の末裔設定
鬼武者3の事件の影響で、日本とフランスの仲は最良好。