祓う刀使 闇断ノ紅鬼   作:黑羽焔

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『刀使ノ巫女』生放送によるOVAあらすじ発表による意欲上げでの執筆

2020/6/17 誤字・脱字などを修正


第2話『それぞれの御前試合見学……そして、発端へ』

side:柳生命

 

「やっと着いた!」

「間に合ったのか?」

 

 命と美炎は現場の刀使たちと協力し鎌倉に現出した荒魂の討滅を終え、現場の後処理を応援で駆け付けた機動隊やノロの回収班に任せ御前試合の会場へと急いだ。その甲斐もあってギリギリであるが会場である折神家へとたどり着いた。

 

「くぅ、この緊張感……ぶっちゃければ、わたしも出たかったっ!」

「会場の空気を感じるのもいいが……時と場合考えろ!」

 

 御前試合 ――― 刀使を統括する折神家で年に1度行われる武闘大会であり、神奈川の鎌府女学院・岐阜の美濃関学院・奈良の"平城学館(へいじょうがっかん)"・京都の"綾小路武芸学舎(あやのこうじぶげいがくしゃ)"・岡山の長船女学院。折神家管理の元で組織された5校の代表がしのぎを削る。言わば、その年の刀使の頂点を決める大会でいずれの試合も御刀が用いられる文字通りの"真剣勝負"である。

 

 その会場の雰囲気に美炎がアツくなるのは無理はない。が、今はその第1試合に間に合うか微妙な時間帯であるため、命はコツンと美炎の頭を叩いて落ち着かせる。

 

「美炎~! 命先輩~! こっちこっち~!」

「バカ! 大声出しちゃダメじゃない!」

 

 その姿に気づいた美炎の同級生が手招きして二人を呼んだが、声を張り上げ過ぎたのか高等部の先輩に窘められる。命はやれやれといった様子で美炎と一緒に席へ着く。命は御前試合の状況を尋ねる。

 

「御前試合の組み合わせはどうなってる?」

 

「選手宣誓が終わったところで、第1試合目…可奈美と綾小路の代表からですね」

 

「可奈美が最初!?」

 

 試合の組み合わせを聞くと、可奈美が最初の試合から出番のようだ。ごくりと息を飲み試合に臨む可奈美を見る美炎とその同級生。

 

(初戦なのに割と落ち着いてるな。会場の雰囲気に呑まれてはいない……が、あれはいつもの可奈美だな)

 

 命は可奈美の様子からどのようなコンディションであるか推測しつつも、いつものように相手の剣術を楽しもうとする可奈美の姿にうっすらと乾いた笑みを浮かべていた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:海外から帰ってきた青年

 

「……やっと入れたか」

 

 命たちが会場入りして少し経った頃、1人の青年が御前試合の行われる会場入りし自分の席を目指していた。

 

 青年の特徴は黒髪黒目と一般的な日本人。髪型はボサボサとしたショート、大きく目を引くのは一般の成人男性より大柄で推定で190cmを超えた巨躯であろう。

 

(荒魂騒ぎに関わったのもあるから、そこは仕方ねえな)

 

 刀使という役割を知ってもらうための一環でこの日折神家は試合会場があるエリアのみ一般に開放されており、受付で手続きさえできれば誰でも入れるのだが、この日は鎌倉市内で起きた荒魂の襲撃が重なったことで青年は予定された入場時間よりも大きく遅れての会場入りとなってしまっていた。

 

『勝者 ――― 美濃関学院、柳瀬舞衣』

 

「美濃関学院か。確か柳瀬という子は命が言ってた友達の一人だったかな……って、1回戦ほとんど終わってるじゃねえか」

 

 アナウンスと受付でもらったパンフレットを照らし合わせると、1回戦の数試合が済んでしまったのが判明する。足早に一般用に設けられた座席へ向かうと運よく空席を見つけることができた。

 

「隣、失礼する」

「ん、いいよ」

 

 空いていた席の隣にいた背丈の低い少女?に一声かけ腰をかける。

 

「ん? あれ、この席だったんだね?」

 

 すると、少女?が青年に声をかけてきた。青年は隣席へと顔を向ける。

 

「……なんでここにいるんですか?」

「そりゃあ、あたいも御前試合を見たかったからだよ」

「しかし、よく入れたもんだな」

「こう見えてもあたいは"成人"してますから。去年だって、一昨年だって来てるんだぞ」

 

 隣席にいた少女?は青年にとっての既知の仲だったようだ。見た目は小学生ほどの小柄な体系で子供といえる程ではあるが、少女?は子ども扱いされたのにムキになり、財布から自動車免許を取り出し自らが成人していることを強調してくる。一応、自動車免許をとれることから少女?は立派な成人女性である証明となっている。

 

 青年はそんな女性に呆れた表情を浮かべつつも自分の席に腰掛ける。

 

「随分遅かったけど、『昴(すばる)』? 荒魂騒動に首突っ込んでた?」

「……こんな人集まってるとこで言うな。『阿曇(あずみ)』」

「あ、やっぱりね。お、次の試合始まるよ」

 

『――― 平城学館、十条姫知(じゅうじょう ひより)! 前へ!』

 

 昴という青年は阿曇という女性の茶化しをいなしていると次の試合のアナウンスが会場内に響く。綾小路武芸学舎の代表と平城学館の代表が試合場に現れると阿曇という女性はタブレットを構えた。

 

「奥方様たちのために御前試合は撮っておいてるんだ」

「へぇ」

「命は今年も出場してないから、そっちのほうがないのが残念だけどね」

「いいさ、帰国したし。機会があえば命といつでもやれるからな」

 

 二人は命とは縁のある間柄らしい。

 

「双方、構え!」

 

 審判の合図で礼をし、御刀を抜き構える両刀使。

 

「あれは……『小烏丸』か?」

 

 平城学館の代表である姫知が抜いた"両刃造(もろはづくり)"の御刀に気付いた昴はその銘をぽつりと呟いた。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

side:三人称

 

 短時間で決着がつく刀使の御前試合はあっという間に決勝へと進み、中休憩後、命は美炎たちと決勝戦が行われる白洲へと移動していた。美炎たちは移動しながらこれまでの試合を振り返っていた。

 

「可奈美が決勝戦まで登っちゃうなんてね」

「可奈美はやっぱ凄いよ」

 

 決勝の一枠目は可奈美が制していた。二回戦に鎌府代表の糸見紗耶香との試合で序盤迅移による強襲で危ういところがあったものの制し、準決勝にて舞依との美濃関代表戦の再選を果たしていた。

 

「舞依は残念だったね」

「準決勝じゃなくて、決勝で当たればよかったのにね」

 

 準決勝、舞依は可奈美に居合で臨んだが"迅移"で背後に回った可奈美を捉えたと思われたが可奈美は抜き身の瞬間を防がれて敗退してしまった。

 

「それで居合の達人である命センパイ。舞依の居合どう思いましたか?」

 

 美炎は命の様子がおかしいことに気付いた。どこか上の空で、辺りをキョロキョロとしている。

 

「みことーせんぱーい! きこえま~すか!?」

「のわっ! 耳元でささやくな!」

 

 美炎の同級生がわざと耳元で囁くように声をかける。すると、命は飛び上がりそうにびっくりしつつも我に返る。

 

「いや、準決勝で舞依が見せた居合について」

「あ、あぁ。着眼点は悪くはなかったが、まだ刃が鈍いように感じたな」

 

(センパイ、誰か探してたのかな。あれ?)

 

 たどたどしい様子で一同に語る命に美炎も話題に入ってこない理由を推察していたが、ここで彼女は向かい側のスタンドにいる青髪の大人びた長船の女生徒に気が付いた。

 

「ちぃ姉ぇ!? 昨日、長船に……(あー! すぐ会えるからって、そういうことだったのかー!)」

 

 智恵も美炎の姿に気づいたようで微笑むと小さく手を振っていた。

 

(美炎、瀬戸内先輩を見つけたのか。……はぁ、兄さんも見に来るって言ってたのに、一般客が多くて見つからないや)

 

 驚きを見せている美炎の姿を横目に、命は会場の雰囲気が試合前とは違う別の緊張感を感じる。

 

「……紫様」

「……御当主様よ」

 

 その大元はすぐに分かった。刀剣類管理局の局長で、全ての刀使を統べる折神家の当主である折神紫が決勝の会場に現れたのである。

 

 彼女は二十年前の災厄“相模湾大災厄”。当時、17という若さでそれを鎮めた際の部隊の部隊長であり英雄とも呼ばれる。今尚刀使としての力は衰えず刀使の頂点に君臨する程の実力者が、20年前と変わらぬ美しい姿であった。

 

「私、御当主の折神紫様を見るの初めて……」

「私も。今も最強の刀使…か」

 

 紫が御当主の席に座ると、礼を解いた舞依と可奈美がその威光にそれぞれの感想を呟く。

その威厳に満ち溢れた姿に会場のどよめきは静まっていた。

 

(折神…紫!!!)

 

 そんな中、紫を敬う会場内に"憎悪"に近い視線。

 

 平城学館代表である姫知は自らの身を案じている『岩倉早苗(いわくら さなえ)』に対し、試合に集中したいと突き放すも紫が会場入りしたことである種の因縁をもつ姫知は刀使の頂点である紫を一瞬だけ睨みつけた。

 

(平城の……あの刀使。紫を睨みつけていた?)

「昴、どったの?」

「いや、なんでもない(気のせいでは…ないよな)」

 

 近くにいた早苗でさえ気付かなかった憎悪の視線。その背中を刺すような冷たい視線に気づいたいた者たちがいた。一般客用の席へと向かう一団にいた青年昴だったが、偶然平城学館代表である姫知の様子を見ようとした際に、彼女の憎悪交じりの視線を見てしまっていた。

 

 

 

『礼! 双方、構え! 写シ!』

 

 紫による試合前の宣誓を終え、決勝戦に進んだ可奈美と姫知は白洲に設けられた試合場に並び立つ。互いに御刀を抜き構えると"写し"と張り備える。

 

(なんだろう、ワクワクするのに震えが止まらない……)

 

 車の構えをとる姫知に可奈美は下段に構えを変えた。しかし、何故かわからないがいつもの剣術での立会とは違う寒気を可奈美は感じている。

 

(ん、平城の代表。可奈美を見ていない?)

 

 姫知が紫の方に視線を一瞬向けた。それに気づいた命であったが、意識を向けた瞬間。審判の号令の前に姫知の姿が消えた。

 

「「消えた!!!」」

「迅移っ!」

 

 近くにいた舞依と美炎が驚きの声をあげ、困惑の表情を浮かべる二人を余所に命が姫知の迅移であることを見抜き、姫知が意識を向けた御当主の席へと視線を向けた。

 

「……これがお前の"一の太刀"か……」

 

 命の瞳に映っていたのは、攻撃を防ぐのに使ったのか二本の御刀を抜いた紫と先の一撃を防がれたのに驚愕の表情を浮かべる姫知の姿であった。




試合形式はアプリ版系列で合わせました。アニメ版だと1試合目姫知vs綾小路代表・2試合目可奈美vs紗耶香になりますから差異が出てますからね。



<当話登場の人物設定>
●阿曇(あずみ)
イメージCV:花守ゆみり

御前試合を見に来た男主人公である昴と偶然再会した女性。見た目は小学生くらいだが成人の扱いで子ども扱いされるとムキになる。

とある秘密をもっているが、それは次話以降に明らかになっていきます。
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