東方星神録   作:あんこケース

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新弾発売されましたね!自分の狙いはもちろんサジットX!あとツクヨミのデッキも組みたいですね~♪


畜生世界の現状

 

弾「…映姫…悪いんだがオレ畜生界に対しての知識が…」

 

阿求「『畜生界』というのは地獄の隣の六道のうちの一つで動物的本能に従って争いあっている弱肉強食の世界です。確か今は動物霊を率いる三つのヤクザのような組織が凌ぎを削っていたはず…」

 

オシリス《…む…?》

 

畜生界という言葉にいまいちピンとこなかった弾に阿求が補足説明をする。するとオシリスも窓から畜生界の方向を向いて眉をひそめた。

 

映姫「…どうかしましたか?」

 

オシリス《…その畜生界の方角から…何やらものすごい信仰力が流れて来る…この大きさの信仰なら神が顕現してもおかしくないほどのな》

 

アテナ《…フム…もしかしたら動物霊が畜生界を抜け出してこちらに攻めてきたのにも関係がありそうですね…顕現した神に追いやられたとか…》

 

弾「……阿求…?」

 

阿求「創界神に限らず神と言うのは人間に信仰されると力を持ちます。そしてたくさんの信仰の力はその場に神を呼び寄せることができるんですよ」

 

ベテラン創界神達が感じ取ったのは畜生界から流れてくる膨大な『信仰』のエネルギーだった。一応彼岸も幻想郷の一部なので幻想郷の主神である弾は阿求の答えのあと指示を飛ばした。

 

弾「…さすがにオレが出ないといけなさそうだな。映姫、オレは今から動物霊を蹴散らして畜生界に向かう」

 

映姫「お供します。攻めてくる動物霊にも少し心当たりがありますので」

 

ラー《純狐、我らはどうする?》

 

純狐「面白そうだからついてくわ♪」

 

阿求「………」

 

アテナ《…稗田の…あなたも行きますか?》

 

弾のあとに続こうと映姫や純狐が声をあげるなか、一人阿求はそわそわしているだけだった。それにアテナが声をかけるとビクッと体を震わせておずおずと話し出した。

 

阿求「…お力を…お貸しいただけないでしょうか…?」

 

アテナ《構いませんよ、知恵ある者は嫌いではありません。私を降ろせば非力なあなたでも大丈夫です…私の防御は神世界一ですので》

 

阿求「感謝します。弾様、私も行けます!」

 

弾「…こうなった阿求は止まらないからなぁ…仕方ない、一人で行動しなければいいぞ」

 

小さな体で阿求は胸を張る。彼女は生まれつき体が弱いが好奇心旺盛で、かなり危険な物事にも首を突っ込むのは彼女を知る者なら理解している。弾は彼女の好奇心を押さえられないと分かり、同行を許可した。

 

 

 

 

 

 

彼岸と畜生界の間

 

 

動物霊「ヒャッハー!」

 

動物霊「退きやがれ!」

 

死神「負けるな!踏ん張れ!」

 

獄卒「やつらを畜生界に追い返せ!」

 

ここ彼岸と畜生界の狭間は今戦場と化していた。畜生界から進攻してくる動物霊達とそれを食い止めようとする彼岸の死神、獄卒、その他地獄の妖怪達がぶつかり合い、どちらも押せず退けずのつばぜり合いになっていた。

 

???「くぅ…映姫様はまだですか!?」

 

死神「久佗歌様!さきほど小野塚 小町が連絡しに行きました!もうそろそろ到着するはずです!」

 

死神を統率している翼を持った少女、その髪は半分が薄橙、もう半分が赤髪で髪の中には黄色いヒヨコがピヨピヨと鳴いている。彼女は庭渡 久佗歌、地獄から異界に通じる関所の門番を勤めている土着の神である。ちなみに司るのは野生の鶏で、頭にヒヨコを乗せているのはそのため。

 

久佗歌「…もヤダ…今日非番なのに……」

 

死神「そんなこと言わないでください!私達もそうなのですから!」

 

映姫「ほう、庭渡 久佗歌。あなたはこの門番としての誇りはないと?」

 

弾「悪い、待たせた」

 

久佗歌「コケェェェ!!?…し、四季様…!そんなことは……って弾様までぇぇぇ!?」

 

ため息をついていた久佗歌の背後から聞こえた鋭い声…彼岸どころか幻想郷ですら知らぬ者はいない説教好きの閻魔の不機嫌な時の声である。映姫は久佗歌を尻目に門の外から止まることなく攻め込んで来る動物霊にその目を向けた。

 

映姫「……フム…これは骨が折れそうですね…」

 

弾「そうでもないぞ?こい!レオ!!」

 

弾が懐からカードを取り出して動物霊達がたむろしている真上に投げる。するとカードが白く輝いて一体の機械の獅子…ストライクヴルム・レオへと変化し動物霊達を踏み潰しながら地面に降り立った!

 

動物霊「ぎゃぁぁぁ!?」

 

動物霊「なんだァァぁ!!?」

 

レオ《ファァ…なんだ…こいつら全部ブッ飛ばせば良いのか?》

 

弾「映姫!阿求!ここは任せた!オレは純狐と畜生界の神を叩く!」

 

映姫「了解」

 

阿求「分かりました!お気をつけて!!」

 

純狐「…案外レオの背中って乗り心地良いのね…」

 

レオに飛び乗った弾と純狐は押し寄せてくる動物霊達を二人に任せて畜生界に繋がる門めがけてレオを走らせる。レオが門をくぐるのを見届けた映姫と阿求はまだ残っている動物霊達に向き合った。

 

すると動物霊達の合間を縫って二人の人間…まぁ十中八九妖怪だろうが…が前に出てきた。一人はカウボーイのような格好に黒い翼の女傑、もう一人は清楚な格好だが頭の鹿のような角と背中の亀のような甲羅から生えている竜の尾が一際目を惹いた。

 

映姫「……!あの者達は…!」

 

阿求「…知っているのですか?」

 

映姫「先ほど言った畜生界の組織の長達です。いつの間に仲良しになったのですか?勁牙組組長驪駒 早鬼!鬼傑組組長吉弔 八千慧!

 

早鬼「ふざけんな!誰がこんな胸くそ悪いヤツと…!」

 

八千慧「本当…私もこんな脳ミソ筋肉ダルマと手を組まなければいけないなんて…」

 

早鬼「あぁん!!?てめぇさっきからいい気になりやがって!お前から潰してやろうか!?」

 

八千慧「…上等です…あなたがいなくてももうこの計画に支障はありませんから…まぁ私を倒せるとは思いませんけどね」

 

映姫の問い掛けに真っ向から否定するこの二人。向かい合っている映姫と阿求を放置してお互いの悪口を言い合っているところを見る限り、チームワークは皆無なようだ。

 

映姫「…あなた達の要求は何ですか?なぜ今になって私達と戦争を?」

 

早鬼「ん…ああ…以前あんたに言われた人間霊の奴隷扱い問題解決のために…まぁこっちにとっても労働力の人間霊が絶滅するのはよろしくねぇからちゃんと保護施設の『霊長園』ってのを作ったんだが……」

 

八千慧「人間霊を一ヶ所に集めすぎたため信仰が集まりすぎて造形神を呼び出してしまったのです」

 

阿求「…『以前あんたに言われた』?」

 

映姫「以前から畜生界では人間霊達が最下層の奴隷として苦役を受けていました。なので弾が幻想郷の創界神になったことと同時に人間霊の待遇改善を通告していたのですが…それが裏目に出てしまいましたね…」

 

早鬼や映姫達の話をもう少し詳しく説明すると、人間霊の扱いの酷さを懸念する映姫と労働力が無くなることを心配した早鬼や八千慧の利益が一致したので、畜生界に人間霊の保護施設、『霊長園』を増設した。

 

だがそこに人間霊を集めすぎて彼らの信仰が強くなりすぎ、造形の神を呼び出してしまった。造形神が造り出す偶像の兵士達は肉体を持つが精神を持たないので、霊体の動物霊では歯が立たない。

 

そこで謀略の得意な八千慧が提案したのは「地獄の面子に偶像を破壊させよう」という手段だった。なので動物霊達を地獄に攻め込ませ、大元を叩こうと畜生界に乗り込んだやつと偶像を戦わせようとしたのだ。

 

映姫「…はぁ…なんとも傍迷惑な…」

 

阿求「…閻魔様…それあなたの説教の評判と同じですよ……」

 

早鬼「まぁ作戦は成功した!よってあたしらがここにいる目的も失くなったな」

 

映姫「……いいえ…まだあなた達に用があります…!!」

 

八千慧「…え…?」

 

結果的に弾と純狐を畜生界に向かわせることに成功した二人はさっさと引き上げようとしたが、映姫はそれを許さなかった…そのわけは……

 

映姫「…私の機嫌が悪いからです!さぁ構えなさい!!白黒はっきりつけさせてあげます!!」

 

オシリス《…なんだかんだで映姫もストレスがたまっていたんだな…まさかとは思うが宇佐見 蓮子探しにハブられたことが原因か…?》

 

早鬼「はぁ!?おいおいそりゃないぜ閻魔様にまな板の嬢ちゃん」

 

阿求「…オ・ノーレ…誰の胸がまな板だって?

 

早鬼「…やべ…」

 

早鬼の言いはなった言葉が阿求の一番の地雷にクリティカルヒットして爆発した…阿求は自分の胸の貧しさを指摘されると性格が変わる(二次設定)のである…もはや早鬼と八千慧に逃げる選択肢はなかった。

 

早鬼「仕方ねぇ…ならこっちが勝てばあの馬神 弾の下にはつかねぇぞ!」

 

八千慧「あら…脳筋にしてはいい提案ね」

 

映姫「構いません!」

 

阿求「叩き潰す

 

 

四人「ゲートオープン!界放!!」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃 弾と純狐は…

 

 

 

弾「…ここが畜生界…」

 

純狐「…敵が来たわよ!」

 

レオ《…しっかりつかまれ!走るぞ!》

 

弾「おおっと…!?」

 

畜生界に飛び込んだ弾の目に広がっていたのは景色だった。一息つくまもなく侵入者を排除しようとたくさんの動物霊が襲いかかってきた。レオはとっさに体を捻って動物霊の突進をかわして走り出す。

 

なんとかレオの背中に乗っている純狐は弾に気になっていたことを尋ねる。

 

純狐「…でもさっき話に出てた神の居場所って!?弾!あなたは分かる!?」

 

弾「…なんとなくだけど…あっちから神力を感じるな…よしシュタイン・ボルグ!動物霊を蹴散らして道を作ってくれ!」

 

ボルグ《かしこまりました!失せなさい!》

 

動物霊「おんぎゃぁぁぁ!!」

 

動物霊「ぐっはぁぁぁぁ!!」

 

また別のカードから飛び出したシュタイン・ボルグが杖からビームを放って周りの動物霊を蹴散らしてレオの道を作る。そして感じ取った神力をたどって弾はレオを走らせた。少々走っているとまるで大阪にある鍵穴のような古墳が見えた…

 

弾「…大仙古墳…?イヤあそこが召喚された神のアジトか!」

 

純狐「…月の都のような建築物が内部に見えるわね……さてここに現れた神はどんなやつなのか……」

 

レオ《突入するぞ!》

 

弾は高層ビルがそびえ立っている古墳内部に神力を感じとるとレオは空中を駆けながら古墳の内部へと飛び込んだ。だが着地しようとした古墳で弾達を待っていたのは……

 

埴輪兵「…ザッザッザッ……」

 

弾「…埴輪?」

 

ボルグ《…見事な造形術…!土からここまでの兵士を造り上げるとは…!》

 

数えきれないほどの埴輪の兵士が弾達を待ち構えていた。槍を持っているものもいれば埴輪の馬にまたがっている兵士もいる。その精巧さに魔術師でもあるシュタイン・ボルグも思わず称賛の声をあげた。

 

そうしてると埴輪兵隊の真上の空中にいかにもなオーラを纏ったまるで美術教師のような格好をした女性が現れる。そばには隊長クラスと思われる埴輪兵も付き添っている。

 

???「…何者だ?我が安寧の支配を脅かす不届き者は?」

 

???「…袿姫様、あの白い獅子にまたがっている者達かと」

 

弾「お前か?この世界に召喚された神は」

 

???「いかにも!我が名埴安神 袿姫!この畜生の世界で虐げられている人間を救わんと顕現した造形神(イドラデウス)なり!」

 

弾「オレは馬神 弾、幻想郷の創界神だ。さっそくなんだが畜生界から手を引いてくれないか?動物霊達が暴れているのもあんたがここに現れたからじゃないのか?」

 

バッと両手を広げて堂々と名乗った袿姫に弾も名乗る。そして袿姫に畜生界を去るよう頼んだ。

 

袿姫「それは聞けぬ頼み。私はここで人間霊を守らなければならない…だがお前達はなぜ私を排除しようとする?私がいなくなればまた人間霊が動物霊に酷使されてしまうのだぞ?」

 

純狐「ぐ……弾、まずいわ。畜生界の秩序を守るならこいつを倒すべきだけど…人間霊を守るならこいつは倒せない…」

 

袿姫の問い掛けに純狐は言い返せなかった。確かに袿姫は畜生界の秩序を乱してはいるが、それは人間霊のためを思ってのこと。問題なのは人間霊を奴隷扱いしていた動物霊達の方である。

 

袿姫「…そうだ…人間は弱く愚かだ。それ故に私が守り、導かなければならない!私が造る偶像を持って人間霊を管理する!ただ目の前の気に入らないヤツを排除しようとするだけの妖怪や動物霊どもとは違う!!」

 

弾「…薄っぺらい…」

 

袿姫「なんだと…?」

 

袿姫の演説じみた長セリフをぶったぎり弾は袿姫の考えを真っ向から切り捨てた。

 

弾「あぁ、確かに人間は愚かだよ。だが弱くて愚かだからぶつかって…痛い目みて…傷つかないとわからない…たとえ苦難に邪魔されようとも…それでも皆精一杯生きている!自分の手の内に置いて守るためだと言って偶像で支配するなら動物霊と同じだ!お前はただ自分の欲望を満たしているに過ぎない!!」

 

袿姫「…な…!?」

 

弾「それに妖怪どころかオレやお前…神々だって愚かだ。裏切られるのが怖いから誰も信用しなくなったり……娘を心配するあまり大事なことを見落としたり……」

 

レオ《…告白してきた女をひとりぼっちにさせたり…とかな…》

 

弾「…ふ…ああ!俺たちだって完璧じゃない!人妖神みんなお互い助け合っているんだ!!お前一人で導けるわけないだろう!!」

 

弾の信念こもる言葉に今度は袿姫が黙る番だった。

 

袿姫「…黙れ!…仕方ない…埴輪兵隊!ヤツを叩き潰せ!!」

 

埴輪兵「…ラジャー…!」

 

弾「…来たな…純狐!埴輪兵の成分を純化させてくれ!!」

 

純狐「…うふふ…あの八意 永琳が惚れる訳だ…よし!畜生界に蔓延る土人形よ!我が力の前にひれ伏せ!!」

 

弾達を抹殺しようと袿姫は埴輪兵隊に突撃を命じたが、冷静に弾は純狐に指示を飛ばした。弾の言葉を聞いた純狐が自身の能力『純化する程度の能力』を向かってきた埴輪兵隊めがけて放った。

 

埴輪兵「…ギ…ガガガ…ギガガ………シーン…」

 

袿姫「…埴輪兵隊が…フリーズしただと…!?磨弓!これはいったいどういうことだ!!?」

 

磨弓「それが袿姫様…埴輪兵隊の成分が土だけになってしまい関節が動かなくなりました……」

 

純狐「残念でした♪弾!今よ!」

 

純狐の能力によってただの土人形と化した埴輪兵隊の前に弾が降り立つ…その手にはグランシャリオが握られていた…!!

 

弾「…くらえ!」

 

その声と共に弾はグランシャリオを十二正座が描かれた長大な光の刃にして横真一文字に振り抜いた。その威力に埴輪兵達はなす術無く斬り裂かれ、次々と爆発四散していった。

 

弾「…どうだ?今度はこっち(バトスピ)で決着をつけるのは」

 

袿姫「…仕方ない…!磨弓!もう一人を任せる!」

 

磨弓「御意」

 

純狐「それを待ってたわ!ラー!行くわよ!」

 

ラー《…ようやく出番か…》

 

四人「ゲートオープン!界放!!」

 

 

 




はい。ありがとうございました。

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