幻想郷 上空
アポローン《…あ~あ!なーんか最近俺出番ねぇなぁ~!!》
そんな愚痴をこぼしながら飛んでいるアポローン。最近どころか相当バトルしていないからか、そのどよーんとしたオーラは凄まじい。
アポローン《…よし!ここは一曲ひいて気分を……》
ひゅーーーーーーーーん!!
アポローン《…んん!?ごはぁ!!!?》
嫌な気分を振り払うようにアポローンは愛用している竪琴を取り出して一曲演奏しようとした瞬間、上から何か大岩サイズの塊が降ってきた。アポローンは一瞬反応が遅れたがどうにか態勢を建て直し、落ちてきた何かを念動力で浮かせて確認する。
アポローン《…ドラムぅぅ!?…「親方!空からドラムが!」って聞いたことねぇぞ!?》
???「あ~…そこのお兄さ~ん!そのドラムうちのなんだ~!拾ってくれてありがとー!」
アポローンが降ってきたドラムに驚いているとさらに上から声が響いてきた。アポローンがフッと振り返ると、そこには白いスーツに赤い髪をした女性がふよふよと浮いていた。
だがアポローンの目にとまったのはそのスーツみたいな格好でも、赤い髪でもなかった。一番気になったのは彼女の回りにある雷神がつけてそうな多くの太鼓だった。
アポローン《…ええと…付喪神…かな?》
???「そだよ~!あたしは堀川 雷鼓!元は太鼓の付喪神だったんだけど、魔力をコントロールするために太鼓を捨てて外の世界のドラムを依代にしたんだよ~!!」
アポローンの質問に赤髪の彼女…雷鼓は明るく彼女の回りにある太鼓をドドン!とならして説明した。するとドラムにまたがった雷鼓はアポローンが持っていた竪琴に気づいた。
雷鼓「…あれ?お兄さん、もしかして演奏家?」
アポローン《…あぁ、そうだよ。気分転換に一曲演奏しようと思ってたんだ》
雷鼓「マジ!?ならうちらの演奏聞いてってよ!それに良ければ一緒に演奏しよ!」
アポローン《…へぇ…!仲間がいるのかい?》
雷鼓「あぁ!案内するよ!」
そう言って雷鼓はアポローンを連れてとある場所へと案内した。
霧の湖のほとり とある廃洋館
???「…♪~♪♪~」
???「…♪♪~♪♪♪~」
???「…♪♪♪~♪~♪♪~」
弁々「…スゴいねぇ…」
八橋「……姐さんに言われて来たけど…自信失うわ…」
ここは紅魔館より湖から離れた廃洋館、その庭から聞こえてくるのはバイオリン、トランペット、キーボードが奏でる綺麗な音楽…それを聞いていた九十九姉妹は自分達より上手な彼らに圧倒されていた。
三人「「「♪♪♪~~~!!!」」」
九十九姉妹「「(*’ω’ノノ゙☆パチパチパチパチ」」
演奏が終わり、三人がペコリとお辞儀する。彼らはプリズムリバー三姉妹、ポルターガイストの姉妹で幻想郷では名演奏隊として有名である。
???「…ふぅ…まぁこんなところかな」
金髪のつり目が特徴のバイオリン担当 長女 ルナサ・プリズムリバー
???「どう?上手く合わせそうかしら?」
弁々「んん~…私達はいけそうだけど…姐さんはどうなんだろ?」
弁々に一緒に演奏できそうか尋ねた水色髪にピンクの服を着たトランペット担当 次女 メルラン・プリズムリバー
???「…でも雷鼓さんはよく一緒に演奏してるから大丈夫だと思うよ~」
八橋「…当の本人が居ないのが唯一の問題ね…」
軽い口調で問題ないと評する茶髪に赤い服のキーボード担当 三女 リリカ・プリズムリバー
今日は彼ら三姉妹と雷鼓が組んだ「プリズムリバーウィズH」に琵琶と琴の付喪神、九十九姉妹を加えた「プリズムリバーウィズHT」を作ろうと集まった。あとは雷鼓の到着を待つばかり…だったが…
???「アーッハッハッハ!!!」
弁々「…この声…」
八橋「…はぁ…めんどくさい奴が…」
空から降ってきた高笑い、その声にプリズムリバー三姉妹も九十九姉妹も心当たりがあった。その予想通り現れたのは黒髪に白と赤のメッシュが入った少女…その頭には小さな角が見えた。
ルナサ「…確か…天の邪鬼だっけ?」
メルラン「…ええと……名前なんだっけ?」
リリカ「…別にいいじゃない。小物なんだし」
???「こんの~!この鬼人 正邪様を忘れたのかぁ~!?…まぁいい…どうだ?お前達」
弁々「「共にこの幻想郷を支配しないか?」だろ?イヤだね」
八橋「それに今の幻想郷は各勢力が協力態勢を築いているし…吸血鬼に閻魔様、鬼に月人に神々まで相手したくないわ……負け確定じゃない」
正邪「ぐぬぅぅぅぅ……!!…それなら…!」
プリズムリバー三姉妹にさんざんバカにされ、九十九姉妹にも誘いを拒絶された正邪は懐を探ると取り出したのは……魔理沙のミニ八卦炉だった!
正邪「…フフフフ!!ならあの白黒魔法使いからくすねてきたこのミニ八卦炉で吹き飛ばしてやる!!」
弁々「は!?あの白黒何盗まれてんだい!」
八橋「ど、どうする!?」
ルナサ「…流石にあれは無理…!」
メルラン「…に、逃げよう!」
リリカ「でも私達の家が…!!」
正邪「くらえぇぇぇ!!」
あの攻撃を防げない五人がおろおろしていると、正邪の八卦炉にエネルギーが充填されて…巨大なビームが放たれた………
雷鼓「うちのバンドメンバーに何してくれてんだぁぁぁ!!!!!」
バリバリバリバリバリズドォォォォォン!!!
正邪「ずどぁぁぁぁぁぁ!!!?」
…が間一髪、雷鼓のフルパワーでぶっぱなした雷がビームを打ち消すどころか正邪自身にもクリティカルヒットし、正邪は黒焦げになって落下した。
弁々「姐さぁぁん!!」
八橋「…助かった…」
アポローン《…雷鼓、奴は?》
雷鼓「…簡単にいえば…幻想郷をぶち壊そうとしている悪党よ!」
アポローン《…理解した……!!》
正邪「…ピクピク…ブンブン…だぁ!お前ら!邪魔するなよ!!」
後ろから着いてきたアポローンと雷鼓は正邪とプリズムリバー、九十九姉妹の間に立ちふさがる。黒焦げの状態から復活した正邪は雷鼓とアポローンを睨み付け、しばしにらみ合いが続く。
正邪「……ならバトルだ!こっちが勝てばトンズラさせてもらう!」
アポローン《…よし…雷鼓!俺も力を貸そう!》
雷鼓「サンキュー!…よくも私のバンドメンバーを傷つけようとしたね…!覚悟しな!!」
正邪 雷鼓「「ゲートオープン!界放!!」」
雷鼓「…こっちから行くよ!メインステップ!勝利の音楽を奏でな!創界神アポローン!神託によってコアを二個を置くよ!ターンエンド!」
アポローン《…さぁて…キバって行くぜ!》
先行の雷鼓の背後にグルグルと腕を回しながらアポローンがヤル気満々で現れた。
正邪「……メインステップ!ブレイドラ、エリマキリザード、ロクケラトプス、そしてイクサトカゲを召喚!!バーストもセットだ!」
雷鼓「な…!?『01ウィニー』!?」
対する正邪は一気に赤の低コストスピリットを四体並べてきた。バーストも張られているので、防御も考えられている。
正邪「アタックステップ!行け!お前ら!フルアタックだ!」
雷鼓「…仕方ない!ライフで受ける!」
ブロッカーのいない雷鼓はブレイドラとエリマキリザードの火炎放射、ロクケラトプスとイクサトカゲの突進のライフで受けた。これで雷鼓のライフは一気に残り一つになってしまう。
正邪「はん!ターンエンド!次で終わりだな!」
雷鼓「………ドンドコ!…へぇ…面白いじゃん!メインステップ!!あたしの雷!見せてやる!雷よ!天を裂け!雷皇龍ジークヴルム!レベル2で召喚!!」
この逆境にむしろテンションが上がった雷鼓はドドンと太鼓を一叩きして気合いを入れる。そしてそのカードを掲げると、雷鼓の後ろから赤い大きなドラゴンが這い上がってきた。
雷鼓「ジークヴルムはこっちのライフが自身の召喚コストになる!さ~ら~に~ぃ~!雷雲貫くその光!太陽神龍ライジング・アポロドラゴン!召喚!!」
弁々「来た!姐さんのドラゴン!」
さらに雷鼓のフィールドに赤い太陽が昇ると地面が炎に包まれて爆発する。そしてその中からオレンジ色の翼を生やしたドラゴンが咆哮と共に現れた。
雷鼓「アタックステップ!行け!雷皇龍ジークヴルム!煌激突!!ライジングの効果でブレイドラを指定アタックだ!」
正邪「なぁ!?」
雷鼓の号令を受けてジークヴルムは雷を纏って突進する。そしてライジングの咆哮で飛び起きたブレイドラを照準におさめた。
雷鼓「ここで煌激突の効果!ブロックされたので手札のカードをソウルコア無しで煌臨できる!煌星第二使徒スターゲイズを煌臨!さらにジークヴルムレベル2効果でライフ一点…ドーン!」
ジークヴルムがブレイドラを吹き飛ばそうとしたその時、ジークヴルムが赤く発光してより大きな星の龍に変化する。それに伴ってジークヴルムレベル2効果が発動。正邪のライフをひとつ砕いた。
正邪「ちぃ!だがバースト発動だ!アルティメットウォール!アタックステップはここまでだ!」
ライフが減ったので正邪のバーストが開く。そこから氷の壁が雷鼓のフィールドにそびえ立ち、追撃を妨害した。
雷鼓「…じゃあスターゲイズのレベル2効果を使うよ!煌臨元のジークヴルムを召喚することで回復する!…ようやくブレイドラを破壊できるねぇ…」
アポローン《…そして俺のコアが五個になったので神域を発動!!星龍スピリットが相手のスピリットを破壊するとライフも破壊する!》
雷鼓もスターゲイズから雷を放ってジークヴルムを再召喚させる。そして効果の撃ち合いですっかり放置していたブレイドラをスターゲイズが弾き飛ばすと、アポローンが矢を放って正邪のライフをまたひとつ砕いた。
雷鼓「ターンエンド」
正邪「…こんのぉ…!メインステップ!マジック!三札之術!二枚ドローしてデッキから一枚オープン!赤のスピリットなら手札に加えられる!」
正邪は三札之術の効果で二枚ドローするとデッキをオープンする。めくれたのは…ライト・ブレイドラ、よって手札に入る。
正邪「さらにオードラン、ライト・ブレイドラを召喚!これでこっちのスピリットの数が上!アタックステップ!フルアタック!!」
今フィールドにいる正邪のスピリットは五体、雷鼓のスピリットは三体。単純計算なら決められるが…正邪はあることを見落としていた。
雷鼓「…フラッシュタイミング!アポローンの神技を連続使用!オードランとライト・ブレイドラを破壊して二枚ドロー!残りはスピリット達でブロック!!」
アポローン《俺のことを計算に入れてなかったみたいだな!》
再び襲いかかってくるスピリット達のうち、二体をアポローンの矢が撃ち抜く。残りもスターゲイズ、ジークヴルム、ライジングの炎が焼却処分した。
正邪「…ゲゲゲ…ターンエンド…」
雷鼓「終わらせるよ!このままアタックステップ!ライジング!そしてジークヴルム!決めてきな!!」
雷鼓がドドドドンッと太鼓を響かせ、ライジングとジークヴルムが飛び上がる。ライジングの炎とジークヴルムの雷が正邪のライフをすべて破壊した!!
正邪「おっぼえってろ~!!」
アポローン《…いいのか?逃がしてしまって…?》
雷鼓「いいのよ。八卦炉も取り上げたし…あいつ自体は何もできない小物だから…それよりあんた達!怪我はないかい!?」
捨て台詞を吐きながら逃げ去っていく正邪を見ながらアポローンの問いに雷鼓は軽く答えた。すると雷鼓の意識はプリズムリバー、九十九姉妹の安否へと切り替わった。
弁々「大丈夫だよ。助けてくれてすまないね」
八橋「……姐さん…つ、強いのね…」
ルナサ「……ま…礼は言っとくわ…」
メルラン「あ~…姉さん素直じゃないから……」
リリカ「…ほんとね~…あ、そうだ…ありがと!お蔭で家が吹っ飛ばされずにすんだよ!」
雷鼓にそれぞれ感謝の言葉を送る面々……その様子に聞いた雷鼓本人も照れ臭くなる。
雷鼓「…そうだ!ねぇ、アポローン。一曲…どう?」
アポローン《お?そうだな!…では……》
雷鼓の誘いにアポローンも乗って竪琴を構える。そして自然とプリズムリバー、九十九姉妹も自分の楽器を奏で始める。辺りには美しい音色が響き渡っていた……
はい。ありがとうございました。
ようやく輝針城キャラを出せた……なぜか個人的に星蓮船~輝針城にお気に入りキャラがいないんですよねぇ……なんでだろ