東方星神録   作:あんこケース

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今回は『東方妖々夢』の裏話…つまり幽々子の過去話を書きます。知ってる人は「そうだね~」って文字を追ってください


春雪異変の真相

魔法の森 上空

 

…紫は飛んでいた…スキマを白玉桜に繋げようとするが、なぜか繋がらない。なのでわざわざ紫はスキマをボート状にして空を滑走して冥界との境目まで向かっていた。

 

紫「…幽々子…!ごめんなさい…今回は……!!」

 

アレックス《ちょちょちょ!紫さん!速すぎますよ!》

 

紫「……あ……」

 

身体の中からアレックスが注意する。紫が振り返ってみるとはるか遠くに霊夢達の姿が見えるほど、紫は三人をつきはなしてしまっていた。

 

霊夢「こら~!!ヽ(♯`Д´)ノ紫!速すぎるわよ!」

 

咲夜「…ふぅ…時を止めてないと追いつけないわ」

 

魔理沙「…ゼェ…ゼェ…ほんとお前の能力って便利だな…ゼェ…」

 

時を止められる咲夜は澄まし顔で、霊夢も持ち前の莫大な霊力を噴射して紫のあとを追ってきた。唯一魔理沙は息を切らしている。

 

霊夢「…まぁ…幽々子が心配なのもわかるけど…落ち着いて行くわよ」

 

紫「…ええ…」

 

ゼウス《…あー…ちなみに儂ら…どこに向かっておるんだ?》

 

霊夢「冥界よ。幻想郷から冥界に行くには、まず魔法の森上空にある結界の穴を通らなくちゃ行けないのよ」

 

魔理沙「以前の『春雪異変』はとある桜を咲かせるために幽々子が起こしたからな…今回も一応冥界に向かってみるんだぜ」

 

ロロ《……あれか…その結界の穴と言うのは……?》

 

ロロの言葉の通り、空高く上がった一ヶ所が黒く歪んで穴が開いている。しかもそこに向かってサクラの花びらのようなものがたくさん吸い込まれている。

 

咲夜「…あそこよ!」

 

紫「突入するわ!!」

 

紫がその穴めがけて接近し、三人もそれに続く。雲を突き抜け、風を切り裂いて四人は黒い穴へ飛び込んだ……が……

 

ごぉぉぉぉぉぉぉん!!!!

 

魔理沙「ぐぇっ……!!」

 

霊夢「…くっ…!またぁ?」

 

紫「……なにこの結界…まったく図式が見えない…!?」

 

紅魔館と同じように、今回も穴を覆うように別のバリアが展開されて四人は弾かれてしまった。すぐさま紫がこの結界の術式を解析しようとするも、あまりにも強固で複雑な術式なのか頭を抱えていた。

 

ゼウス《…よし…儂らが物理で殴る!》

 

ロロ《…アンタークかリリアがいればなぁ……!》

 

アレックス《…ダメですね…連絡が取れません…!》

 

ペルセポネ《…なら私達がやらないと…!》

 

四人から出てきた創界神達が全員エネルギーをチャージし始める。そしてゼウスの雷、ロロの魔法、アレックスのグラン・デーヴァの斬撃、ペルセポネの鞭がバリアに直撃した。

 

 

 

だがそれでもバリアは砕けるどころかヒビすら入っていなかった。

 

 

ゼウス《…なん……だと?》

 

アレックス《……ど、どうします?解術に切り替えますか?》

 

ロロ《……っっ!イヤ…これはキツすぎる。リリアやアンターク、アプロディーテのような魔法に長けた創界神でも…!》

 

ペルセポネ《…ねぇ…気のせいならいいですが……私達…少し弱体化していませんか?なんか今の攻撃の時、ものすごく体が重くなりましたし……》

 

ペルセポネの呟きに創界神達は自らの手を見つめて苦い顔をする。どうやらペルセポネの気のせいではなかったようだ。

 

霊夢「……なによ…!八方塞がりじゃない…がつぅぅぅん!!がっぅぅぅん!!…なにこの音?」

 

創界神達が歯噛みしていると話し声をかき消すほど大きな音が響き始めた。まるで何かが硬い物にぶつかって砕けるような鈍い音…一同は音のする方向を振り返ると………

 

紫「くっ…!ガツゥゥゥゥン!!ガツゥゥゥゥン!!

 

魔理沙「お、おい!紫!殴ったところでどうにもならねぇって!」

 

そこにはバリアに向かって拳を突き出している紫の姿があった。全力で叩いていたからか、その手からは血が滲んでひどい有り様になっている。

 

霊夢「ガシッ! 紫!落ち着きなさい!!」

 

紫「離して!行かなくちゃ!幽々子が今どうなってるか知らないと!!」

 

紫は止めようとした霊夢を振り払って再び拳をバリアに叩きつける。もはやその顔は何かに取りつかれているように血走った眼をしていた。

 

今の紫の脳内には蓮子と離ればなれになった時のこと、未来世界で弾が引き金になった時のことがフラッシュバックしていた。そして幽々子も自分の元から居なくなってしまう場面が頭をよぎった。

 

紫「…ガツゥゥゥゥン!!…イヤなのよ…!蓮子の時も…!弾の時も…!もう大切な人を失いたくないの!!!!

 

…ピキ…ピキピキピキ…バリィィィィィン!!!!!

 

紫の叫びと共に放った右ストレートがバリアにヒットすると、創界神達の渾身の一撃すら弾いたバリアにヒビが入り、ガラスが割れるような音を発てて砕け散った!

 

霊夢「…ええ!?」

 

魔理沙「砕けた!?」

 

咲夜「…とにかくチャンスよ!!」

 

一同驚愕に感情が支配される。何より一番驚いているのは殴った紫自身であった。だが咲夜の一声で全員正気に戻ると、バリアの砕けた部分から冥界へと繋がる穴に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

幻想郷 冥界 白玉桜の石階段下

 

 

ゼウス《…おお…これは風流な……》

 

魔理沙「…会わなかったな…これも敵の思惑なのか…?

 

穴を抜けて四人が降り立ったのは大きな石畳の階段の一番下だった。そこからは果てしなく続くと見える石階段、その両隣には薄ぼんやりと火が灯っている灯籠が雅な雰囲気を醸し出している。

 

紫「…この上に幽々子がいるわ…あと白玉桜の裏庭に植わっている一際大きい桜…それは絶対に咲かせないように」

 

咲夜「…確か…『西行妖』って桜だったかしら?そこまで念押しすることなの?」

 

石段を駆け登りながら咲夜は尋ねる。『西行妖』と言うのは白玉桜の庭に植えられている大きな桜の木のことで、絶対開花しない桜としても有名である。以前も幽々子はそれを咲かせようとしていたのだが……

 

紫「…少し…昔話をしても良いかしら?」

 

アレックス《…ずいぶん重い話みたいですね…大丈夫です》

 

紫「…まず私と幽々子の出会いから話さないといけないわ…今から千年くらい前…まだ幼かった幽々子と」

 

魔理沙「ほーん…あいつ千歳ぐらいだったのか…あいてっ!」

 

ペルセポネ《女性の年齢につっこむな!…あ…続けてちょうだい》

 

階段を登る足を緩めずに紫はポツリポツリと話し出す。余計なことに首をつっこんだ魔理沙は咲夜の体内から出てきたペルセポネの拳骨を食らってうめいた。

 

紫「…幽々子は著名な歌人の家に産まれた人間だったわ…でも生まれつき『人を死に誘う程度の能力』を持っていて…彼女に近づいた人間はことごとく自殺してしまったの……」

 

ロロ《……コントロール…できない能力なんだね?僕は彼女が死を好む性格だとは到底思えない》

 

紫「もちろん。でもそんな能力を持つ幽々子は親戚から疎まれて…唯一その力を受けなかった半人半霊の庭師以外側には誰もいなかった…私が彼女と仲良くなったのはそんなときよ…」

 

紫の話を聞いていた一同は少なからず衝撃を受けた。いつも飄々として真意を見せない彼女にそんな暗く重い過去があったとは考えられなかったようだ。

 

紫「私は彼女の能力を受けない妖怪だったから彼女と話せた…大好きな親と引き離された彼女と気があったのかもね…でも悲劇はここからだった…」

 

咲夜「…その悲劇って…?」

 

紫「…幽々子の父親が庭に咲く満開の桜の木の下で自殺してしまったの…しかも彼女の前で…歌人だったから見事な桜を見ながら死ぬ気だったらしいわ…そして…」

 

ペルセポネ《…まだ…続くの?》

 

紫「…そのあとを追うように幽々子の能力に誘われて次々と歌人達が自殺していった…それを自らのせいだと悔いた幽々子も……」

 

紫はそこで言葉を切った…否…続けることができなかった。両の眼から溢れ出る涙が続けることを妨害していた…だがそのあとの内容は全員察することができた。

 

ペルセポネ《……しかし…無粋なことを言うようで申し訳ないのでけど…冥界の女神として疑問があるわ……そんな近くで『死』を経験したならその桜は……色々と危ないと思うわよ?》

 

紫「……その通りです…死んだ歌人達の大量の『生気』を吸ってその桜は妖怪化してしまった…それが『西行妖』、私は西行妖が人を死へと誘い続けることを恐れて封印したわ……幽々子の死体を使ってね…それから西行妖が開花することはなくなった…」

 

ゼウス《…なるほど…ものすごく失礼な言い方をすれば…『人柱』だな……》

 

紫「…コクン…そして私はなんとか幽々子を生き還らせようと『生と死の境界』をいじろうとしたけど…もちろん閻魔に止められたわ。ちなみにその時止めた閻魔ってのが四季 映姫なのよ」

 

魔理沙「なーる…だから紫は映姫が苦手なのか……」

 

ペルセポネの冥界神としての忠告から話された妖怪桜、西行妖のこと…もう一同は何度息を飲んだかわからなくなった。

 

紫「だけどこの状況は映姫にとっても好ましくない状態…だから私と彼女は交渉の末、とある契約をしたわ。幽々子を冥界で転生するまでの霊の管理をする亡霊として生き還らせると…」

 

アレックス《…あの~…確か以前幽々子さんが「この桜の下に死体が埋まってるのだけど…誰のかしらねぇ…」って言ってましたけど……》

 

ペルセポネ《…大方…自分のせいでたくさんの死者を出したことを後悔させないための閻魔の慈悲でしょうね。それに亡霊になるときに記憶を引き継がせるのは大変だし》

 

冥府神のペルセポネの補足を聞いて霊夢達は紫と幽々子の絆の深さを改めて感じた。紫は悲劇のうちに亡霊となってしまった幽々子とたとえ記憶が無くとも親友になるほど二人の仲は良かったのだ。

 

紫「…そして『春雪異変』の時…幽々子は西行妖を封印している死体について興味を持ち、西行妖を咲かせようとした…」

 

霊夢「ちょっと待って!それじゃ…西行妖が満開になったらどうなるのよ!?」

 

紫「…西行妖の封印が解かれて幽々子が生き還るわ…その代わり西行妖は人を死へと誘うようになって…幽々子も再び死んでしまうでしょうね…」

 

咲夜「…急ぐわよ!」

 

咲夜の掛け声に全員気を引き締めて速度を上げる。霊夢達が思っていた以上にこの異変は重大なものだった。だがようやく白玉桜の入口が見えてきたところで、魔理沙が異常に気づいた。

 

魔理沙「………なぁ…何か…身体が重くないか…?」

 

霊夢「…ん……気のせいじゃないみたいね…」

 

ゼウス《……!!…しまった!!》

 

四人は石段を上がり始めた時よりいくぶん身体が重くなったような感覚を覚えていた。するとゼウスの言葉の直後、四人の身体がピタリと空中で静止してしまった!

 

咲夜「…ぐ…!?…何…空中で……金縛り!?」

 

ペルセポネ《いえ…!これは……》

 

 

 

???「糸符『パラサイト』これであなた達の動きは封じたわ」

 

???「幽々子様の邪魔をする者は…斬る!」

 

白玉桜の門前に立っていたのは西行寺 幽々子の剣術指南役兼庭師の半人半霊の剣士、そしてなぜかいる七色の人形使いの魔法使いだった。

 

魔理沙「妖夢と……アリス!?」

 

妖夢「…なぜ私の名を…?……イヤ!斬れば分かる!!」

 

アリス「…まぁ分かると思わないけど……あなた達を抹殺するのが私達の役目よ。面倒だから大人しく斬られなさい」

 

霊夢「…ぐぅ…まずい……!!」

 

ロロ《…ぐぐぐ…!…そうか…途中から身体が重くなったのは…ヘラの力を受けてパワーアップしたアリスちゃんの糸を手繰り寄せてしまったからか!》

 

ロロが悔しそうにうめくももはや遅かった。あと少しで妖夢の刀が四人に迫る……その瞬間…!!

 

???「あはは!」《残念!》「半人前!」《ボッチ魔法使い!》

 

???《…なるほど…気力を抜く糸ですか…でも縛られてない私達なら切れますね》

 

妖夢「な!?う…!」

 

魔理沙の懐から飛び出した二枚のカードが四人の糸を切断していく。斬ろうとした妖夢も思わず後ろに飛んで後ずさった。

 

紫「ジェミナイズ!シュタイン・ボルグ!」

 

ジェミナイズ「魔理沙!」《アリスちゃんを倒すよ!》「ボルグ!」《君は紫ちゃんを先に!》

 

ボルグ《魔理沙さん!咲夜さん!ここをお任せします!》

 

魔理沙「…言われずとも!」

 

咲夜「また助けられてしまったわね…!了解!幻符『殺人ドール』!!」

 

糸から解放された魔理沙と咲夜はアリスと妖夢の前に降り立つと咲夜のスペルカードが発動した。すると一瞬のうちに二人のまわりに大量のナイフが出現して襲いかかった。

 

妖夢「…キンッ!くっ!数が多い…!キンッ!」

 

アリス「仕方ない…!戦操『ドールズウォー』!!」

 

ズドドドドドドド!!!

 

妖夢はもう一本の刀も抜いて飛んでくるナイフをなんとか弾いていく。一方「できる女アリス」はすぐさまスペルカードで十二体の人形を出現させ、ナイフを迎撃する。だがその隙は結界組(ゆかれいむ)にとっては十分だった。

 

霊夢「よしきた!」

 

紫「…恩に着るわ…!!」

 

ボルグ《さぁ!こちらへ!!》

 

アリスと妖夢の隙を突いて霊夢と紫がその二人の頭上を飛び越え、門をくぐっていく。そして今度は門の前に咲夜と魔理沙が並び立った。

 

妖夢「あ!?」

 

アリス「…やられた……!」

 

咲夜「…さて……少しつきあって貰うわよ?」

 

魔理沙「…アリス…なにやってんだよ!!」

 

 

 

 




はい。ありがとうございました。

さぁて…今までの異変を順番にやれば……あ、隠岐奈と袿姫の出番………

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