東方星神録   作:あんこケース

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皆さん聞きました!?グラン・サジット・ノヴァ!…ふふふ…サーガブレイヴ二話の予告から既にこいつの出し方は決めてるぜ!


熱く高ぶる勇気は誰のため

一方 魔理沙&咲夜VS妖夢&アリスは…

 

 

アリス「待ちなさい!」

 

妖夢「逃げるのか!卑怯者!!」

 

魔理沙「ヤベェ…!」

 

咲夜「来たわよ!」

 

魔理沙の箒に相乗りして咲夜は妖夢とアリスから逃げ回っていた。最初は魔理沙達が押していたのだが、アリスのとある魔法で形勢が逆転してしまった。それは……

 

アリス「潰しなさい!ゴリアテ人形(ジャンボフォーメーション)!!

 

ゴリアテ人形《ゴゴゴゴゴゴ!!!》

 

咲夜「右斜め45度!!」

 

魔理沙「ほいっっっとぉぉ!!」

 

アリスと妖夢は推定五~六メートルはあろうかという巨大人形の肩に乗り、二人を追い詰めている。アリスがいつも使っているゴリアテ人形はだいたい二メートル程度だが、ヘラの力故か倍ものサイズに膨れ上がっていた。

 

咲夜「すごいわ!魔理沙!!初めて弾幕ごっこスペシャリストの肩書きが活きたわね!」

 

魔理沙「やかましい!それより次の攻撃を教えてくれ!」

 

妖夢「炎剣『六道輪廻の業火』!!」

 

咲夜「今度は左30度よ!!」

 

現在魔理沙はアリスが張り巡らした動きを重くする魔法の糸をかわすことに集中している。しかしそれでも何重、何層にも張られた糸を紙一重でかわせるのは普段から弾幕ごっこのスペシャリストを自負している故か……

 

今も妖夢が放った炎が魔理沙の肩すれすれを抜けていった。

 

ペルセポネ《けどどうする!?このままだとジリ貧よ…!》

 

ロロ《…ヘラとカグツチの力を操るあの二人をリアルファイトで打ち負かすのは骨が折れる…どうにか流れをこっちに引き戻してバトスピでの決着に持っていかないと……》

 

魔理沙の華麗なテクニックもいつかは限界がくる…さらに妖夢の弾幕にも注意を払うことになると、それは想像上に早く来てしまうだろう。

 

アリス「…まったく……そろそろ終わらせるわよ……『鳥籠』」

 

魔理沙「…ぐ…!しまった…!…道が……!」

 

飽き飽きしていたアリスは腕から魔法の糸を発射して魔理沙を妨害する。地面に突き刺さった糸の檻のせいで、魔理沙と咲夜はその場に立ち往生してしまう。もし無理矢理糸の間を通ろうとしたら見事な人間ところてんができてしまうだろう。

 

妖夢「もう逃げ場はありません。覚悟!」

 

魔理沙「…マジでヤベェ……!!」

 

ゴリアテ人形から降りてきたアリスと妖夢がジリジリと魔理沙と咲夜に近づいてくる。もはや魔理沙と咲夜に打つ手は無いように思えたが……

 

アリス「…それにしても……こんなへなちょこを異変解決に送り出した馬神 弾ってのもたかが知れるわね…」

 

咲夜「…カチン!……なんですって……!!!?」

 

アリスが何気なく言った言葉は咲夜の神経を逆撫でするどころかおもいっきり殴っていった。咲夜は目を鷹のごとく鋭くしてアリスをにらみつけた。

 

アリス「あら?だいたい敵の強さっていうのは下を見ればすぐ分かるわ。だからあなた達の上も大したこと無いって言ったのよ」

 

咲夜「……私の……せいで……?

 

魔理沙「咲夜!聞くな!!」

 

アリスの指摘に咲夜は猛烈に動揺してしまう。普段から完璧な従者としてレミリアや弾につくしてきた彼女にとって、今の言葉は彼女の根幹をえぐった。

 

咲夜《…申し訳ありません…お嬢様…弾様…失態を挽回するどころか…お二人の顔に泥を塗ってしまいました…もう私は…》

 

妖夢「隙あり!断命剣『冥想斬』!!」

 

ペルセポネ《咲夜ちゃん!!》

 

呆然として自らの存在意義すら揺るぎかけている咲夜に妖夢は十八番の剣術をおみまいしようとした。妖夢の刀が咲夜に迫る………

 

するとなぜか咲夜は迫ってくる妖夢の刀がものすごくゆっくりに見えた。まるでテレビの録画をスローモーションで視聴しているかのような……

 

咲夜《…あぁ…これが走馬灯ってやつ…今までよく生きてきたわよね…私…》

 

次々と浮かんでは消えていく咲夜の記憶……だがとある記憶に差し掛かった時、そのシーンだけはものすごく鮮明に…より具体的な場面が思い浮かんできた。

 

…まだ咲夜が小さかった頃…紅魔館に拾われてひとつひとつ家事などのメイドの雑務を学んでいた頃…テレビに写っていたとある青年の姿を見て、咲夜は彼に憧れの眼差しを向けた。

 

咲夜《…私とはまるで正反対だった…ただ雑用をしている私と、世界を守るために戦っている彼…》

 

そのあと流れた彼の悪い噂も咲夜の憧れを消すことはできなかった。しかし数年後『馬神 弾死亡説』が噂され始め、さすがの咲夜も彼の死を信じるしかなかった……

 

……幻想郷に移住して数年が経った()()()()()()

 

 

尋ねてきた赤い髪の青年…咲夜が彼の顔を見た瞬間、さまざまな感情が心の中で激流の如く押し寄せてきた。「なぜ幻想郷にいるのか」「なぜ紅魔館を尋ねてきたのか」「今までどこにいたのか」…そんな疑問もあったが、咲夜の心の大部分を支配していたのは…「あの弾様と会えて…しかもバトルしてくれた!」という大興奮だった。

 

咲夜《……あの日の興奮は今でも思い出せるわ…本当に私と彼とでは違い過ぎ…》

 

 

だが次の記憶はさらに上を行った。それは弾が正式に幻想郷の創界神になって間もない頃、弾が紅魔館を尋ねてきた時の記憶だった。

 

弾《…毎回ありがとう、咲夜。この紅茶はいつも美味しい》

 

咲夜《ありがとうございます》

 

とある一室で椅子に座っている弾は咲夜がだしてくれた紅茶を味わっていた。未来世界でも時々まゐの紅茶の飲んでいたことを思いだし、弾は感慨深い表情を浮かべた。

 

弾《…そういえば…咲夜は毎日家事やって…大変じゃないか?》

 

咲夜《…慣れれば楽ですし…お嬢様にもお世話になっているので……ですが正直…弾様と比べてしまいますね》

 

弾《オレ?…オレはここまで上手い紅茶を淹れられないぞ?前にまゐに淹れたら…茶葉の量間違えたし…》

 

自嘲するような笑みと共に話す弾。そして少し暗い顔をしている咲夜の顔を真正面から見つめて語った。

 

弾《…別にオレは咲夜に最高の仕事を期待している訳じゃない。オレはただ…咲夜がオレたちに尽くしてくれている気持ちがあれば良いさ…それにオレの道と咲夜の道は違うだろ?》

 

咲夜《…私の…道…?》

 

弾《シュタイン・ボルグも言ってたけど、咲夜達の仕事があってこそオレたちがやっていけるんだ。その道は隣り合わせだけど違う道…咲夜は自分の道を進んでいってほしい。そうじゃないと『本当の忠臣』とは言えないぞ?》

 

咲夜《………》

 

 

その時は弾の眼差しの奥にある感情が読み取れなかった。「自分の道」と言われても「忠実な従者」である咲夜は「自分」などあまり考えたことがなかったのだ。

 

そして弾の『本当の忠臣』の意味もわからないままだった。忠実にレミリアにつかえている自分に何が足りないのか……

 

 

咲夜《…わかった……わかりました…!私は『今の私』に拘泥していました…!自分は忠実な従者だと自負して…心のどこかで『進化』することをやめていました……!》

 

妖夢の刀が咲夜の頬に触れようとした一歩手前、咲夜は理解した。自分が『従者』として主のことだけを考えて(別にこれは悪いことではない)自分自身の『進化』を怠っていたことを…

 

咲夜「…まだよ…!まだ終わらない!終わらせない!私の『時間』はまだ止まっていない!!

 

妖夢「…っっ…ズサァ…」

 

アリス「…これって…!?」

 

魔理沙「…咲夜……?」

 

ロロ《…弾の神力…!?…まさか『分神』か!?》

 

咲夜の声が響くと同時に身体から弾の神力が迸った。そのエネルギーで妖夢は思わず後退り、アリスのゴリアテ人形も後退させる。

 

今の咲夜はメイド服が夜空のような漆黒に染まり、裾も膝下まで長くなる。だがその黒いメイド服には幾千もの星が現れては消えていく…それはまるでプラネタリウムのようだった。

 

咲夜「…ふふっ♪何か行ける気がするわ!来なさい!!」

 

妖夢「…っっ!こけおどしだ!熱剣『焔歌舞伎』!」

 

長くなったメイド服の裾を咲夜はバサッとはためかせて両手にナイフを構える。咲夜から溢れでる神力に少し怯みながらも妖夢は炎の刀を突き出す。

 

咲夜「…バッ!遅いわよ!やぁ!」

 

妖夢「…速い!?ぐはっ…!!」

 

アリス「私もいるわよ!操符『レベルティターニア』!!」

 

咲夜は妖夢の刀をヒラリと回転してかわすと、そのまま回し蹴りを叩き込み近くの木の幹に激突する。一方アリスはゴリアテ人形とは別の人形をふたつ出現させ、魔法で約二メートルサイズまで巨大化させる。

 

咲夜「…へぇ…その人形達からエネルギー弾が放たれるのね…」

 

アリス「全弾発射!…え!?」

 

咲夜「残念だけど…見えてるわ!逆転『時の中のスバル』!!」

 

目が金色に輝いた咲夜の呟きにアリスは驚愕した。なぜならアリスが砲撃を指示する前に咲夜が攻撃方法を言い当てたからだ。そして二体の人形達から光弾が発射される……

 

……ことはなかった……攻撃の直前、アリスの人形が二体とも文字通り糸が切れたようにピクリとも動かなくなり、エネルギーの充填も止まったからである。

 

アリス「な…!?ど、どうして動かないの!?」

 

咲夜「紐の『時間』を進ませたのよ。もう一発!星辰『裏鼓星!!』」

 

アリスが狼狽えている隙に咲夜の手のひらから怪しい波動が放たれる。すると一瞬でゴリアテ人形を含めたアリスの人形すべてが布と綿と紐になって地面に転がった。

 

妖夢「おのれぇぇ!!」

 

魔理沙「咲夜ばかりにかっこつけさせるか!!恋符『ノンディレクショナルレーザー』!!」

 

妖夢「…がはっ…!」

 

起き上がった妖夢が再び刀を振るうが、完全に意識の外にいた魔理沙のレーザービームをもろに食らって今度はアリスの足元まで転がっていった。

 

アリス「…仕方ない…!まさかこの魔導書で…って!?」

 

咲夜「あぁ…それも『時間』を戻してただの紙の束にしておいたわよ?」

 

一気に劣勢と化した戦況を戻そうとアリスは手元の魔導書をめくろうとする。だが咲夜の時間遡及によって魔導書はただの紙へと戻ってしまっていた。

 

アリス「…ならバトスピで勝負よ!」

 

魔理沙「それを待ってたぜ!負けんなよ?咲夜!」

 

咲夜「ええ!」

 

 

四人「ゲートオープン!界放!!」

 

 

 

 




はい。ありがとうございました。

『分神』咲夜さんは『何時ものメイド服の白い部分が黒い』『裾は膝下』『黒い部分に星空』さらに『時間遡及』と『未来予知』出来るようになりました……主の意向を誰よりも先に察知し、常に前準備をする…まさに『完全で瀟洒な従者』

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