東方星神録   作:あんこケース

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七幕 夜明け

永遠亭近くの竹林

 

永琳「…っっ!はぁぁ!!」

 

弾「…ぐ…!おぉぉ!!」

 

二人の創界神のぶつかり合いも佳境に差し掛かっていた。弾の拳を永琳は受け流してカウンターの蹴りを叩き込むも、弾は咄嗟に足をあげて受け止める。

 

永琳「…まさかこれ程てこずるとは…!仕方ないわね!パチン!」

 

そんな徒手空拳の戦いが暫し続いていると、永琳は指を鳴らして自分の神話ブレイヴ『幻想星弓エターナル・ジュエリー』を手に取り、遠距離の弾幕攻撃に切り替えた。

 

永琳「秘術『天文密葬法』!!」

 

弾「おいおい…最初は『壺中の天地』じゃないのかよ…」

 

永琳「な…!?」

 

永琳はエターナル・ジュエリーにつがえた矢を中心にエネルギーの玉を放つ。弾の身長サイズの大玉は弾を取り囲んで矢の逃げ道を塞ぐが、その時呟いた弾の言葉に永琳は動揺してしまい……

 

弾「…萃鬼『濛々迷霧』!!」

 

永琳「………消え…ぐぅ!?」

 

…弾が霧になって消えたことに気づくのが一瞬遅れてしまった。その隙をついて弾は霧状態のまま永琳にまとわりついて動きを封じ込める。

 

弾「…萃香の能力は使うのも気持ち悪いな…竜宮使『エレキテルの竜宮』!!」

 

永琳「ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

永琳を羽交い締めにするように弾は『疎と密』を元に戻して姿を見せる。そして今度はキャーイクサーン!の力で自らを中心に放電した……つまり密着していた永琳は防御も回避もできずにゼロ距離で感電してしまった。

 

弾「…よっと……さてそろそろ……ん?」

 

永琳「…そろそろ…何かしら?…まったく…焦げ臭い…!」

 

弾「…君は実の所蓬莱人じゃないんだろ?さすがに創界神とはいえ…即座に傷を治すなんて…」

 

永琳「御生憎、私は少し特殊なの。私の能力のお陰で、気力が続く限り私は再生できるのよ…さてそろそろ…潰す」

 

弾は崩れ落ちた永琳から距離をとり、バトスピでのバトルに持っていこうとした。だが『あらゆる薬を作る程度の能力』を持つ永琳はすぐさま傷を治癒して立ち上がった。

 

そう言うと傷一つない永琳はエターナル・ジュエリーを両刃剣に変形させ、弾に斬りかかった。弾も冷静にグランシャリオを構えて受け止める。

 

永琳「ガキンッ!…私も聞きたいことがあるの…!ガキンッ!…なぜ私の技のランクを知っていたのかしら…!?…ガキンッ!…」

 

弾「…キリキリ…さぁね!ガキィン!」

 

永琳「…ズザザ!…なら倒したあとに吐かせる!バッ…!日食『天岩戸の大宴会』!!」

 

弾「…かなりの量だな…!」

 

永琳と弾は再び接近戦を繰り広げる。弾のグランシャリオと永琳のエターナル・ジュエリーが何度もぶつかって火花が飛び散った。それでも弾を押しきれないと踏んだ永琳は、空中から夜空を埋め尽くすほどのエネルギー弾を精製し始めた。

 

弾《…さて…咲夜の能力でかわすか…魔理沙の能力で迎え撃つか…それとも輝夜の金閣寺の一枚天井で防ぎきるか…》

 

 

ツクヨミ!聞いたぞ!アマテラスをうまく引きずり出したんだってな…っっ…!イテテ…

 

…アマテラス…あまり永琳を責めないでやってくれ。誰だって失敗はある…人選もそうかもしれないが…大国主神のやり方が一枚上手だったのだろう

 

…永琳…お前が一人前になる姿を見たかったなぁ…

 

 

弾「…ぐ…またか…!?」

 

永琳「隙あり!!はっ!!」

 

どう永琳の弾幕を対処するか思案していた弾の脳内に再び謎の声が響いた。それに気をとられてしまった隙に永琳は大量のエネルギー弾を弾の頭上に浴びせるように放った。

 

弾「…やべっ…永須姫『金閣寺の一枚天井』!!」

 

永琳「…今度は輝夜の……!?」

 

弾「…からの…!『気炎万丈の剣』!!」

 

弾はすぐさま意識を目の前の攻撃に戻し、輝夜の一枚天井……のようなバリアを展開して永琳の弾幕を防ぎきる。さらに弾はグランシャリオの緋色に輝かせ、大きく構えた。

 

弾「…これも…オマケだ!『殺意の百合』!!」

 

永琳「!?」

 

弾の身体が赤いエネルギーに包まれてまるで槍の如く空の永琳に突っ込んだ。あまりの速さに永琳は反応できず、緋色のグランシャリオによって袈裟斬りにされてしまう。

 

永琳「…っっ!でも私の能力で即効性の薬を…がはっ!?」

 

弾「無駄だ。純狐の能力でその傷を『純化』させた。これで傷は治らない」

 

永琳「…まさか…!奴の能力まで…!ちぃ!!」

 

弾「…!!」

 

右肩から左腰ほどまで斬られた永琳は治癒することを諦め、星のエネルギーを纏って弾に接近する。弾も星と幻想郷の力を使って光を纏って迎え撃つ。

 

永琳「…ハァハァ…あなたを見てると…!本当に腹が立つわ!まるであの英雄気取りのバカ親父みたいで!!」

 

弾「…まさか…タカミムスビか!」

 

永琳「…その名前を…!口にするな!!」

 

永琳と弾はまるでジークヴルムの如く光を纏って何度も激突する。その最中の対話で弾は永琳がタカミムスビの名前に強く反応したことから、『英雄気取りのバカ親父』がタカミムスビのことではないかと推測し始めた。

 

弾「…《…まずはバトスピに…》どうする?これ以上殴りあってもオレの優位は変わらないぜ?」

 

永琳「…ならバトルしろと?」

 

弾「あぁ、バトルすればあんたの知りたいことがわかる」

 

永琳「…良いわ…その安い挑発に乗ってあげる!」

 

ひとまず弾は永琳の記憶を戻すことに集中してバトルを持ちかける。二人は空中で向かい合うと、お互い神話ブレイヴをカードにしてデッキに入れた。

 

弾 永琳「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

 

 

 

 

弾「…ニヤリ…」

 

永琳「…メインステップ。星の叡知!創界神オモイカネを配置!神託でコア三個を追加…ターンエンドよ」

 

いつもの不適な笑みを浮かべる弾。それを無視して永琳は自身を配置してターンを終えた。

 

弾「メインステップ。こっちもオレを配置して神託を使う。そしてその中の『光導』カードを回収する!さらに銀河星剣グランシャリオをオレに直接合体!!」

 

弾も自身も配置して神託を発揮する。落ちたのは太陽神龍ライジング・アポロドラゴンX、光星姫ヴァージニア、そして魔羯邪神シュタイン・ボルグX。

 

弾「…コア三つを置いて三枚を手札に!ターンエンド…どうしてオレを始末しようとする?」

 

永琳「……姫様が静かに暮らせる世界に…あなたは邪魔だからよ」

 

弾「…オレは輝夜を月の都に突き出そうとはしてないぜ?」

 

永琳「…メインステップ!バーストをセットして蟹甲竜キャンサードラゴンを二体召喚!」

 

弾の問い掛けを途中で切り、永琳は蟹のハサミがついたドラゴンを連続召喚する。だが明らかに論理的矛盾がある記憶に永琳も何か違和感を感じていた。

 

永琳「…ターンエンドよ」

 

弾「メインステップ。光星姫ヴァージニアと樹星獣セフィロ・シープを召喚!そしてデッキを三枚オープンしてコアブースト!」

 

弾は淡々とヴァージニアとセフィロ・シープを召喚して手札、コアを補充する。めくられたのは魔星人シュタイン・ゴイル、戦神乙女ヴィエルジェX、サジタリアスドロー。

 

弾「ヴィエルジェXを手札へ。残りはデッキの一番下に戻す。ターンエンド」

 

永琳「…メインステップ!神世界の月よ!永久に地上を照らし出せ!月光龍ストライク・ジークヴルムX!召喚!」

 

永琳の背後から白い機械のジークヴルムが登ってくる。そしてフィールドに舞い降りると、弾を見据えて大きく吠えた。

 

弾「…来たか…ストライク…!」

 

永琳「アタックステップ!行け!ストライク・ジークヴルム!アタック時効果でヴァージニアをデッキボトムへ!」

 

弾「ライフで受ける!」

 

ストライク・ジークヴルムが白いビームを口から放ち、ヴァージニアを消し去ると、腕で弾のライフを一つ破壊した。

 

弾「…ふ…!久しぶりに白いストライクを見た…!」

 

永琳「…!…ターンエンド」

 

弾「…感じないか?この痛み…バトルフィールド(ここ)だけは何も考えなくて良い空間だ…まさに『生きてる!』って感じないか?」

 

永琳「……あなたのターンよ…」

 

ライフで受ける痛みをそう表現した弾を永琳はまたスルーした。それでも弾は永琳が僅かに表情を変えたことを見逃さなかった。

 

弾「…メインステップ。戦場に咲く美しき大天使!その微笑みで戦いに勝利をもたらせ!戦神乙女ヴィエルジェX!駆け上がれ!神の名を持つ赤き龍!太陽神龍ライジング・アポロドラゴンX!召喚!!」

 

ヴィエルジェ《…今度は永琳ちゃんね…》

 

弾のフィールドに描かれた乙女座からヴィエルジェが現れ、地面から噴き出した炎からもライジング・アポロドラゴンがフィールドに降り立った。

 

弾「さらにグランシャリオをライジングに合体!さらにシープのコアをライジングへ!アタックステップ!合体アタックだ!!」

 

弾の手からグランシャリオがクルクルと回転してフィールドに投げ入れられる。そして大きくなったグランシャリオをライジングがキャッチして構えた。

 

弾「アタック時効果!キャンサードラゴンを指定アタック!さらにグランシャリオ、界放の効果!あんたのバーストを破棄する!コアが増えたのでライジングはレベル2にアップ!!」

 

永琳「…く…!キャンサードラゴンの破壊時効果でデッキを一枚めくる!それが『光導』なら疲労状態で残るわ!」

 

弾「それでも破壊したことに変わりはない!レベル2合体時効果でストライク・ジークヴルムを破壊し、オレのコアをヴィエルジェに置いてライフを二つ破壊する!」

 

永琳「…ぅ!!」

 

ライジングがグランシャリオを一振りして永琳のバースト、鋼星騎スコルリッターを吹き飛ばす。そして永琳のキャンサードラゴン一体を踏み潰すが、星読でめくられたのがキャンサーシェルだったので、キャンサードラゴンはその場で復活した。

 

しかしライジングは隣のストライク・ジークヴルムに目を向けると、口から炎を放って焼き尽くした。それでもまだライジングの効果は終わらず、永琳のライフが二つ消し飛んだ。

 

弾「ターンエンド」

 

永琳「…同じ型のデッキなのに…!メインステップ!赤く染まる月!月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ!穢れの力を今ここに!!」

 

永琳のフィールドに再びストライク・ジークヴルムが現れる。だが今回は赤いストライク・ジークヴルム・サジッタだ。

 

永琳「アタックステップ!サジッタでアタック!界放の効果でヴィエルジェを破壊してライフを一つ砕くわ!そして一枚ドロー」

 

ヴィエルジェ《あっつ!まだよ!弾のコアを二個ライジングに置いてライフを回復しつつ手札へ!》

 

弾「…んん!来るか…!超神月紅龍…!」

 

サジッタの火炎放射がヴィエルジェを燃やして破壊する。ライジングの効果でレベル2に上がっていたヴィエルジェは手札に戻った。だがそれよりも弾の意識は永琳の手札に向けられている…

 

永琳「フラッシュタイミング!進化する赤き月光!超神月紅龍ストライクヴルム・ノヴァ!サジッタに煌臨!!煌臨時効果で手札の幻想星弓エターナル・ジュエリーを直接合体!!」

 

弾の予想通りサジッタが永琳の上空に昇った赤い月の光を受けて輝く。そしてサジッタの身体が炎に包まれると、サジッタの身体がさらに大きくなり、翼も六枚のファンネルに変化した。

 

その煌臨したストライクヴルム・ノヴァが手を掲げてエネルギーを収束させていく。すると銀色に光る弓が現れ、ストライクヴルム・ノヴァはエネルギーを矢を弓につがえた。

 

弾「…ライフで受ける!」

 

永琳「トリプルシンボルよ!食らいなさい!!」

 

ストライクヴルム・ノヴァが矢と背中のファンネルから放った雷が弾のライフを一気に3つ消し飛ばす。その衝撃にさすがの弾も顔を歪ませて後ずさる。

 

永琳「…合体スピリットは回復しているわ。もう一度アタック!界放を使ってライジング・アポロドラゴンを破壊!」

 

弾「…フラッシュタイミング!マジック!アドベントスターを使用!手札から龍星皇メテオヴルムXをノーコストで召喚!そしてブロック!」

 

永琳「ち…フラッシュで私の神技を使用する!グランシャリオを破壊!」

 

煌臨時効果で回復していたストライクヴルム・ノヴァはエターナル・ジュエリーを両刃剣に変形させて飛び出す。しかし弾のマジックによって呼び出されたメテオヴルムがその行く手に立ちふさがった。

 

それでも永琳は自ら衝撃波を放ち、ストライクヴルム・ノヴァに射ぬかれたライジングから分離して地面に刺さっていたグランシャリオをへし折る。

 

弾「続けてフラッシュタイミング!天駆ける闇祓う光!超神光龍サジットヴルム・ノヴァ!!メテオヴルムXに煌臨!!効果でキャンサードラゴンを一体破壊!」

 

永琳「…!…その化神…星読は…不発ね…」

 

メテオヴルムがストライクヴルム・ノヴァに掴みかかるが、容易く振り払われ剣で貫かれようとした瞬間…弾の背後から透明のドラゴンが駆け上がった。そのドラゴンはストライクヴルム・ノヴァを突き飛ばしてメテオヴルムに重なる……

 

そしてメテオヴルムは四つ足に巨大な弓を持った赤い星の龍に変わった。サジットヴルム・ノヴァは早速矢を放ってキャンサードラゴンを射ぬく。

 

弾「こっちのサジットヴルム・ノヴァはBP30000!ストライクヴルム・ノヴァを破壊しろ!」

 

永琳「…あら…それはいけないわね…フラッシュタイミング!カプリコーンホールを使用!相手スピリットのコア二個をリザーブへ!」

 

二体の星の化神がお互い剣になった弓で斬り合う。だが永琳のマジックから出現した黒い穴ががサジットヴルム・ノヴァのエネルギーを吸いとってしまう。

 

弾「…オレの神技でもう一体のキャンサードラゴンを破壊する」

 

永琳「星読発揮、ゾディアックランサーなので回収&キャンサードラゴンは疲労状態で残る…さぁ!サジットヴルム・ノヴァを破壊しなさい!!」

 

サジットヴルム・ノヴァが徐々にストライクヴルム・ノヴァに押され始め、とうとうサジットヴルム・ノヴァの剣が手から弾かれてしまう。サジットヴルム・ノヴァは後退して口から炎を放つが、ストライクヴルム・ノヴァは軽く切り裂いて接近していく。

 

そしてストライクヴルム・ノヴァのファンネルからエネルギーの槍が放たれ、サジットヴルム・ノヴァはかわしていくも何発か被弾してしまい、動きが鈍ってしまう。

 

その隙にエターナル・ジュエリーを弓に戻したストライクヴルム・ノヴァはフルパワーで矢をぶっぱなし、サジットヴルム・ノヴァを貫いて破壊した!!

 

永琳「仕方ない…ターンエンド……ねぇ、あなた…あなたの産まれた場所にも……富裕層っていたのかしら?」

 

弾「………?」

 

永琳「…富…権力…命までもを思うがままにしている奴らのことよ」

 

弾「…ああ…」

 

ターンエンドを宣言した後、永琳は静かに問いかける。その表情を見て弾はなぜかとある男の面影を感じ取った。

 

永琳「…私が産まれたのもそんな所よ…手を伸ばせば何でも手に入った…父のお陰でね…」

 

弾「…さっきタカミムスビの名前を出した時…ずいぶん憤怒していたが…あんたは…」

 

永琳「…ええそう。第7の原初神にして神々の英雄、生命を司る光導と冥主の創界神タカミムスビ、人名『八意 優作』は私の実父よ」

 

永琳の言葉に弾は驚いてばかりだった。もちろんタカミムスビが永琳の実父だったことも驚いたが、今話している永琳の目が明らかに死んでいたからだ。英雄の父を誇らしげに思うような感情は一切感じ取れない。

 

弾「…ならなぜそんな顔をするんだ?ゼウスやヘラ達から聞いたぞ。世界の命のために他の原初神と戦い、五勢力の間に和平をもたらして神世界を平和にした立派な父親を」

 

永琳「……だから?

 

弾「…!!……」

 

永琳「だから何よ?あいつのせいで私の人生はメチャクチャになったのよ!!」

 

永琳は死んだ目でそう言い放った。これがいつもの顔の裏に隠されていた永琳の心の闇…その黒さに弾は戦慄していた。

 

永琳「わかる!?たとえどんな努力をしても「タカミムスビ様の娘だからこれぐらいできるよね」とか言われ続けるの!それどころかあいつの娘だからってイジメられたりするの!」

 

弾「…まだ人間だった頃か…」

 

永琳「創界神に()()()()()後もそうよ!結局どれだけ私が努力しても手柄は全部月の都のクソ老害どもがかっさらっていく!それでもあの()()()は私の前に姿を見せない!一番助けて欲しい時に助けてくれない!!」

 

弾「…人間としても…創界神としても居場所はなかった……」

 

永琳「…まだ私が幼い時…アイツは良くこう言ったわ。『愛と平和のために』って…それなのに私は!?くだらない!くだらない!くだらない!!だから輝夜と一緒に私は月の都を捨てたのよ!」

 

まだ知らなかった永琳の闇…それを弾は正面をまっすぐ見つめて受け止めていた。弾の生まれは普通の家だったので、権力者の闘争とかは分からなかったが、弾は永琳の真の心の闇を理解できた。

 

永琳「…さっきあなたはここで生きていることを実感できると言ったわね。私はそんなこと一度もないわ。私が望むのは『ただの平穏』誰にも邪魔されずにひっそり暮らしていければそれで良いの」

 

弾「……少し前…あんたみたいなやつと話したことがある。そいつはあんたとは真逆の生まれで、世界に絶望した……でもあんたはそいつの足元にも及ばない!」

 

永琳「うるさい!あなたに…!あなたに何が!」

 

弾「そいつは自分の境遇に文句は言わなかった。歪んでいたとはいえ、今何ができるかを必死に考えて大切なもののために戦った。でもあんたは与えられたものにケチつけることしかやってない!」

 

永琳の語りを弾はバッサリ吐き捨てる。その脳裏には未来世界で人間と魔族に混沌をもたらそうとした暗闇の男が写っていた。さらに弾は力強い口調で話し続ける。

 

弾「口を開けば『父親が悪い』『境遇が悪い』『周りの奴らが悪い』…それこそくだらない!!あんたは人のせいにすることしかできないのか!?たとえ手札がすべてネクサスやマジックだけだったとしてもそれでバトルするしかないんだ!」

 

永琳「黙れ!私がどれだけ努力してきたか」

 

弾「その努力は『人に認められるため』『誉められるため』『名誉や称賛が欲しいため』だろう!だからあんたの周りにはそういう人間が寄って来たんだよ!!」

 

永琳「……っっ………!?」

 

猛烈な弾の突きつけに永琳はとうとう押し黙った。そして目を伏せてワナワナと震え始める彼女に弾は口調を和らげて話す。

 

弾「…あんたは非常に自己中心的だ。助けてくれるのが当たり前、悪いのはすべて他人…いい加減ちっぽけな自分の世界に引きこもってないで外に出て戦え…あんたの父親のようにな…」

 

永琳「……………」

 

弾「メインステップ!山羊座からきたる魔術師!!死を司る冥界の王!!レベル3で顕現!魔羯邪神シュタインボルグX!召喚時効果でトラッシュの『光導』カードを一枚手札に戻す!」

 

ボルグ《行きます!》

 

弾の正面に山羊座が描かれ、展開された魔法陣からシュタイン・ボルグが現れる。そして弾のトラッシュから紫のエネルギーを纏って一枚のカードが手札に返っていった。

 

弾「アタックステップ!シュタイン・ボルグでアタック!星界放を使ってストライクヴルム・ノヴァのコアをリザーブへ!」

 

永琳「…フラッシュタイミング!キャンサーシェルを使用!シュタイン・ボルグを手札に戻すわ!」

 

シュタイン・ボルグが杖を振るってストライクヴルム・ノヴァのエネルギーを削る。永琳も星読で回収したキャンサーシェルでシュタイン・ボルグをバウンスさせたが……

 

弾「フラッシュタイミング!マジック!アドベントスターを使用!手札のシュタイン・ボルグを再び召喚!!」

 

永琳「な!?」

 

ボルグ《…さて…私の出番はここまでですね…後は任せましたよ!》

 

先ほどの星読は弾にも見えていた…つまり弾がこれを計算していないわけがなかった。二枚目のアドベントスターによって召喚されたシュタイン・ボルグに続けて弾はトラッシュから戻したカードに手を伸ばす。

 

弾「天駆ける闇祓う光よ!我が友を救いだせ!超神光龍サジットヴルム・ノヴァ!!シュタイン・ボルグに煌臨!煌臨時効果でストライクヴルム・ノヴァを破壊する!!」

 

シュタイン・ボルグが空に昇ると、再びサジットヴルム・ノヴァが重なってフィールドに降り立つ。そして弱体化したストライクヴルム・ノヴァめがけてサジットヴルム・ノヴァ渾身の一矢が放たれてど真ん中を貫いた!!

 

永琳「…そ、そんな…!」

 

弾「サジットヴルム・ノヴァでアタック!!界放の効果でライフを一つ砕き、エターナル・ジュエリーを破壊!!」

 

永琳に追い討ちをかけるように駆け出したサジットヴルム・ノヴァが地面に落ちたエターナル・ジュエリーを踏み潰す。しかも界放で永琳のライフが一つ砕かれ、残りは二つ…サジットヴルム・ノヴァの射程圏内である。

 

永琳「…ぃ…!?こ、これは…!?」

 

弾「…!…行け!サジットヴルム・ノヴァ!!」

 

弾は永琳が頭を押さえて踞るのを確認してサジットヴルム・ノヴァにとどめを指示する。サジットヴルム・ノヴァは剣を全力で永琳のライフに振り下ろした!!

 

 

 

 

 

 

 

永琳「……………」

 

弾「…ふぅ…っっ…!さすがに…五体満足では終われなかったか…」

 

気絶している永琳の隣に座り込んだ弾は左手の痛みに少し顔を歪ませる。でもあまりそれは気にならなかった…大切な友を救いだせたのだから…

 

紫「弾!無事!?」

 

蓮子「…見たところ…勝ったみたい?」

 

霊夢「あ!やっと見つけたわ!」

 

魔理沙「お!霊夢!弾!終わったか!?」

 

輝夜「…ぞろぞろと来たわね……」

 

そんな二人の所へ散っていたメンバーが集まってくる。みんなの問いに弾は軽く笑って答えた。そうしていると気絶していた永琳がピクッと動いた。

 

永琳「………」

 

スサノヲ《…なぁ…永琳…俺たちはお前に謝んなきゃならねぇ…》

 

カグツチ《…起きてるでしょ?なら勝手に話すね》

 

弾「…タカミムスビのことか?」

 

スサノヲ《……まぁな…》

 

魔理沙といた妹紅からでて来たスサノヲと妖夢から出たカグツチが動かない永琳に話しかける。

 

スサノヲ《…実は……タカミムスビの兄貴は……もう死んでる

 

弾「え…!?」

 

霊夢「…は!?」

 

アリス「…だから全員…」

 

ヘラ《…かんにんなぁ…黙っとって…》

 

永琳「…ビクッ…」

 

スサノヲのカミングアウトは幻想郷メンバーを大いに驚かせた。それより一番驚いたのは気絶している(はずの)永琳だった。

 

カグツチ《…たまに手紙とか送ってたけど…あれは僕たちが書いたんだ。騙すような真似してごめん…》

 

異界王「失礼。原初神ほどの神が死ぬことがあるのか?聞いた話、ゼウスやアマテラスさえ軽く下すのだろう?」

 

ゼウス《…あの時…エジットの創界神達を甦らせたり、神世界を修復するためにタカミムスビさんは膨大な神力を使った。だがそれは自らの命を大きく削るという代償を払わなくてはならなかったのだ》

 

アレックス《…タカミムスビさんはその後数億年は元気に振る舞ってたけど…永琳さんが産まれて数年後に倒れたんだ…そこから数十年間ベッドの上で…最後まで永琳さんを心配していたよ…》

 

シヴァ《…永琳が引きこもったアマテラスを引っ張り出した時は大いに喜んでたし…国譲りが失敗しまくったときは永琳が落ち込んでないか心配してたぜ…》

 

ペルセポネ《…永琳さんがイジメられたと聞いた時はぶちギレていじめた奴らの家に病を押して殴り込んでいましたよ》

 

永琳「…ぅ……ぅぅ…!!」

 

ペルセポネが話したところで永琳は涙を堪えられなくなった。その涙は後悔か懺悔かそれとも……感謝故か…

 

弾「……どうする…?これから…」

 

永琳「…グスンッ……グスンッ…」

 

アプロディーテ《…最後に……タカミムスビさんはツクヨミとウカノミタマにあなたを任せたわ。でも今月の都は敵になったウカノミタマが占領してるらしいわよ》

 

輝夜「当人が言ってたから間違いないわ」

 

紫「…なら…いつか月の都に攻め込まないといけないのね」

 

アプロディーテの言葉に泣いている永琳以外は苦い顔を隠さなかった。月の都の強さはよく(特に紫と幽々子)は知っているからだ。

 

永琳「…ムクッ…どうしてツクヨミが私に優しかったのか…ようやく分かったわ……」

 

弾「…おはよう」

 

永琳「…ごめんなさい…いろいろと……さて…月の都に何時攻め込むか…だったわよね?」

 

永琳は赤く腫れた目を開けて起き上がる。そして弾や一同に深々と頭を下げ、話し合いに加わった。

 

永琳「私としてはツクヨミに借りを返せてないし、ウカノミタマの思惑も知りたいから今すぐにでも行きたいけど…次の異変を待ってからの方が良いと思うわ」

 

蓮子「…この次って?」

 

アリス「あれ?実害なかったわよ?」

 

永琳「そうね。でもあれは『霊』の影響で『生命力』がおかしくなり『花』が咲き誇った異変よ。私達の記憶を操作するのもそういう『繋がり』がないといけないとしたら…」

 

幽々子「…なるほど…私以外の四天王に縁ある言葉ね」

 

弾「…それよりも…」

 

永琳の提案に幻想郷メンバーは納得する。首を傾げている創界神達と蓮子に紫や霊夢が説明しようとしたその時、重大なことを話す顔つきで弾が口を開いた。

 

ゼウス《…おぉ?どうした?》

 

弾「……ものすごく眠い…」

 

魔理沙「ガクッ」

 

霊夢「…フワァー…確かに眠いわねぇ……」

 

フラン「…そうだねぇ……ァー…」

 

全員ほぼ夜通しで戦闘していたので、疲れが明らかに欠伸として出てしまった。もう東の空から朝日が昇ろうとしているが、吸血鬼じゃなくても『寝よう』と全会一致で決まった。

 




はい。ありがとうございました。

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