無名の丘
弾「…来たな…!」
永琳「ざっと……一万…程度かしら?」
鈴仙「…逃げちゃダメよ逃げちゃダメよ逃げちゃダメよ…」
妖夢「…スパンッ…チャキ!」
咲夜「…弾様…!あちらに…!」
フラン「…あれは…?」
魔理沙「…!」
弾達の眼前に広がっていたのは数えきれないほどの妖精の大軍団だった。その最前列の中央、ちょうど弾と永琳の真ん前に主犯であろう二人が並び立っている。
弾「…幽香…!隠岐奈…!」
幽香「…うふふ…さすがに知られているわよね…!」
隠岐奈「…だがちょうど良い。馬神 弾、お前に用があったのだ」
日傘をさして妖艶な笑みを浮かべる幽香…そして以前の異変のように椅子に座って鼓を持った隠岐奈…幻想郷最強の二人の妖力と神力は弾も少し身震いさせた。
弾「…悪いが…幻想郷の創界神の力を渡すことはできない」
隠岐奈「幻想…そうかい…それは今ここで殺して欲しいってことで良いんだな!?」
弾「お前達全員倒すって意味だ!!」
幽香「…なら散りなさい…!マスター…スパーク!!」
幽香は隣にいた隠岐奈の提案を一蹴した弾に閉じた傘を向ける。すると傘の先から黄色い極太ビームが放たれた。地面をえぐりながらマスタースパークが弾に向かっていく……
妖夢「斬!!」
幽香「…ち…」
隠岐奈「やれ!」
妖精達《ワァァァァァァァァ!!》
弾にぶつかる直前妖夢が割って入り、マスタースパークを縦に一刀両断して軌道を反らした。それが戦いの火蓋を切って妖精達が弾達に襲いかかった。
魔理沙「パチン!たとえ数が数でも中身は妖精!魔符『スターダストレヴァリエ』!!」
ロロ《上からだ!》
咲夜「パチン!幻符『殺人ドール』!!」
初っぱなから『分神』した魔理沙は箒に乗って妖精達の上を取る。遅れて飛び上がった咲夜と同時に星の弾幕をばら蒔いた。咲夜も大量のナイフを投げつけ、妖精達を次々と一回休みにさせていく。
妖夢「パチン!氷命剣『
妖精達《…カチーン…》
隠岐奈「…しまった…!生命力が…」
続けて『分神』した妖夢の抜刀術により、断末魔を叫ぶこと無く妖精達が凍ってしまう。これでは生命力を受けてパワーアップするどころか復活することもできない。
永琳「うどんげ!援護しなさい!」
鈴仙「は、はい!散符『
幽香「…ふんっ!」
隠岐奈「…これで良い…舞!里乃!時間を稼げ!」
舞「了解!」
里乃「殺す気で行くよー!」
鈴仙の弾幕が幽香に放たれるが、幽香は日傘をぶんっと振ってすべてをかき消してしまう。さらに隠岐奈は部下の舞と里乃を呼び出して戦力を増強させてきた。
妖精達《うぉぉぉぉぉぉ!!》
ペルセポネ《まずいわね…単純に数で押されてる…!》
隠岐奈「私達としてはお前達を倒せば良いんじゃない。お前達を押さえ込めればそれで良いんだ」
弾「よっと…!みんな!オレと永琳が何とか妖精達を押さえ込む!幽香と隠岐奈はまかせた!!幽霊姫『華胥の永眠』!!」
永琳「うどんげ!あなたは風見 幽香を!天呪『アポロ13』!」
咲夜「お供致します!幻符『殺人ドール』!!」
鈴仙「え!?」
さすがに幽香達と戦いながら七人で万近い数の妖精達は対処しきれない。すると弾が手のひらからピンクの蝶を放って妖精達を撃ち落とすと、魔理沙達にそう叫んだ。
それに続くように永琳の米粒弾と咲夜のナイフが妖精達の進路を邪魔していく。そして三人が妖精達を押さえ込みにかかった。
隠岐奈「…だがお前達を蹴散らせば話は同じ!」
妖夢「負けない!この剣には幻想郷の未来がかかってる!」
カグツチ《トトも正気に戻そう!》
隠岐奈は椅子から立ち上がって地面に足をつけて妖夢と向かい合う。妖夢も半霊マントをたなびかせて二刀を構えた。
妖夢「だぁぁぁ!」
隠岐奈「秘儀『七星の剣』!」
妖夢「ふんっ!ズバンッ!ズバンッ!はぁぁ!」
隠岐奈「…く…!バッ」
隠岐奈は七本のレーザービームで貫こうとするも妖夢は軽く楼観剣を走らせて次々に真っ二つにする。そのまま隠岐奈を斬ろうとしたが、隠岐奈は後ろに飛びずさった。
隠岐奈「ならば…!スチャ…」
カグツチ《…!トトの神話ブレイヴ!妖夢ちゃん!デカいの来るよ!》
妖夢「…こい!」
先ほどからの余裕綽々の表情を消して、隠岐奈は虚空から一丁のライフル『聖刻神銃ジェフト=グリフ』を取り出す。カグツチは体内で妖夢に注意を喚起した。
隠岐奈「…踊れ!刻符『タイムズスクエア』!!」
妖夢「う…キョロキョロ…!」
隠岐奈がジェフト=グリフの銃口から放った弾丸は妖夢の周りをぐるぐると周り出す。妖夢は回る弾丸に注意を巡らして、いつ自分に飛んできても良いように構えた。
隠岐奈「背後に気をつけな…!刻符『裏切りの聖刻射撃』!」
カグツチ《…!後ろだ!》
回る弾丸に気をとられていた妖夢の背後に隠岐奈が一瞬にして移動する。そして至近距離でジェフト=グリフの引き金を引いた…
妖夢「…ブワッ…遅い!」
隠岐奈「消え…ぐ…ズシャァァ…」
…が突如妖夢が氷になって隠岐奈の背後に回り込み、技の反動で動けない隠岐奈を背後から斬りつける。神とはいえ『分神』状態の攻撃は重く、隠岐奈はジェフト=グリフの銃身で受けるが威力を殺せずに地面を滑った。
隠岐奈「…ハァ…ハァ…だが距離さえ取れればこっちのものだ!」
妖夢「…それはどうでしょう?チャキ…」
滑ったのを利用して隠岐奈は妖夢から離れる。そのままジェフト=グリフを妖夢に向けたが…妖夢は追うことも弾幕を放つこともしなかった。
ただ白楼剣を鞘に戻し、腰を低くして右手の楼観剣を背中越しに顔の辺りまで持ってきて構えていた…
隠岐奈「…何を?…刻儀『リバースシーズン』!!」
妖夢「……断氷剣…『
ズバァァァァァァァン!!
妖精達《きゃぁぁぁぁ!!》
隠岐奈「ぐぁぁぁ!」
舞「御師匠様!」
里乃「なに…今の攻撃!?」
隠岐奈の手から四季のオーラが妖夢に迫ってくるが、氷を纏った斬撃が剣先から
カグツチ《…飛ぶ斬撃…!修得してたんだ…!》
妖夢「当然です《…うわぁぁぁ!土壇場でできちゃったぁぁ!》」
隠岐奈「…ゴフッ!…ひ、秘技『裏切りの後方射撃』!」
妖夢が内心狂喜乱舞していると、隠岐奈は血を吐きながら無数の陰陽球を精製してくる。斬られて体力を消耗しているのに大量の使い魔を放てる辺り、さすがは賢者だろう。
妖夢「《落ち着け…!さっきと同じように…!》
永琳「…彼女こっちで正解だったわね!」
妖夢は再び集中を剣に込め、向かってくる陰陽球めがけて大きく振り抜いた。氷の斬撃が空を駆け抜けて陰陽球をぶったぎっていく。
妖夢「もう一発!!」
半霊マントを翻して妖夢は再び楼観剣を振り抜く。生み出された陰陽球はすべて斬り裂かれて消滅した。
妖夢「あとはあなたです!せいっ!」
隠岐奈「…バンバン!…っぅ…ガキンッ…!」
妖夢は隠岐奈の銃弾をかわすか剣で弾くと、一気に距離を詰める。隠岐奈はジェフト=グリフの銃身で受け止め、そのまま妖夢の楼観剣と火花を散らした。
妖夢「…キリキリ…!思い出してください!あなたは簡単に操られる神ではないはず!」
隠岐奈「…ギリギリ…!」
妖夢「…ガキンッ…!氷命剣『
隠岐奈「がぁぁぁ!!」
妖夢の渾身の一撃がジェフト=グリフを弾き、隠岐奈に大きな斬り傷を負わせた。生命力をコントロールできる彼女もそれすら『凍結』させる妖夢の剣には圧倒的に不利である。
舞「おのれ!よくも御師匠様を!」
里乃「師匠!助太刀します!」
隠岐奈「…すまない…!合わせろ!」
明らかに劣勢な隠岐奈の元に舞と里乃が駆け寄ってくる。そして二人が後ろで踊って生命力を高め、隠岐奈のジェフト=グリフにエネルギーが充填されていく…
妖夢「…さて…どうしよう…あの火力は斬れるかな…」
魔理沙「妖夢!私がやるぜ!恋心『ダブルスパーク』!!」
フラン「私も!禁忌『ドラゴニックトラップ』!!」
隠岐奈「発射!!」
膨大なエネルギーを斬ろうとした妖夢の両隣に魔理沙とフランが降り立つ。魔理沙は杖の先から、フランは鎧から二体の紫色の竜を呼び出して彼らの口から特大ビームをぶっぱなした。
魔理沙「ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
フラン「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
隠岐奈「…ぅぅ!」
舞「や、やば…!」
里乃「…スゴい…パワー…!」
後戸組の自然エネルギー波と魔理沙&フランの魔砲がぶつかり合い、余波によって辺りの地面が吹き飛ぶ。だが無限の魔力を持つ魔理沙がさらに火力をあげ、徐々に押し返し始めた。
魔理沙「おうりゃぁぁぁぁぁぁ!」
ドゴォォォォォォン!!!!
魔理沙の雄叫びと共に押し返ったエネルギー波が三人を飲み込む。そして辺り一帯を巻き込んで大爆発を引き起こした。
隠岐奈「…ハァ…ハァ…」
舞「ぐぇ…!」
里乃「うげっ…!」
妖夢「ありがとう!」
魔理沙「へへーん…さてお前ら!どうだ?決着は
隠岐奈「…へぇ…こっちもそれは歓迎だ…!」
ボロボロの隠岐奈と二童子に魔理沙はデッキを取り出し、顔の前で軽く振って見せる。妖精達を通したい隠岐奈に取っても時間稼ぎとしてのバトルは狙い目だ。
妖夢「…二人をお願いできる?」
魔理沙「あぁ!おいしい所はやる!」
フラン「絶対勝ってね!」
「ゲートオープン!界放!!」
幽香「…うふふ…かわいいかわいいウサギちゃん…!私と…アソビマショ?」
鈴仙「ヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィィィィィィィィ!!ダダダダダ!」
クリシュナ《鈴仙ちゃん!逃げてどうするのよ!》
ヴィシュヌ《…マジか……》
一方その頃、優し~いお姉さんがニッコリ微笑んだ瞬間、鈴仙はまさにウサギの如く(本当にウサギだが)震え上がってガクガクになって逃げていた。
幽香「酷いわ…少しぐらい良いじゃない……マスター…スパーク…!」
鈴仙「ぎゃぁぁ!バッ!」
妖精達《にゃぁぁぁぁぁぁぁ!?》
クリシュナ《…案外こっちの方が良いかも…?》
逃げる鈴仙めがけて幽香はマスタースパークを連射する。だが機敏な鈴仙に当たることはなく、周りの妖精達だけが吹き飛んでいくことになっていた。
ヴィシュヌ《…そうだ…よっと…グシャ!…》
鈴仙「…へ?ヴィシュヌ様…?突然出て来てな…に…を………」
幽香「…………ブチィ…………」
鈴仙の言葉は最後まで続かなかった。なぜならヴィシュヌが右半分だけ鈴仙から出てくると、足を伸ばして咲いていた一輪の花を踏み潰したのだから………
鈴仙「…/(^o^)\」
幽香「ぶっ殺す!ダブルスパーク!!」
鈴仙「ギィィィヤァァァァァ!!!!ヴィシュヌ様のバカァァァ!!!」
クリシュナ《…ワテクシもそれはちょっと…》
ヴィシュヌ《…ほ、ほら…おかげでさらに周りを気にしなくなったぞ…?》
ぶち殺スイッチが振りきれた幽香はなんと二人に分身し、二人で傘からマスタースパークを放ってきた。鈴仙はヴィシュヌに愚痴りながら再び走り出す。
幽香「待ちなさい!!花の仇!!」
鈴仙「ギィィィヤァァァァァ!!」
戦場にマスタースパークの轟音と鈴仙の絶叫が響き渡った…
はい。ありがとうございました。