東方星神録   作:あんこケース

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開戦の火蓋

月面 豊かの海 裏側 海岸

 

 

弾「よっと…」

 

霊夢「…ここは…あの時の…」

 

魔理沙「ロケットで来たところだな。確かここで依姫と戦闘になったんだぜ」

 

永琳「月の都はあそこ…ギリギリ目視できるわね」

 

フラン「わぁ~!海だ~!」

 

咲夜「…妹様…遊びに来たのではないですよ」

 

弾達は降り立った砂浜…豊かの海から遠くに見える中華風の建物を確認する。そして海に興奮していたフランを引っ張って一同は海岸から桃の林に入って月の都を目指し始めた。

 

妖夢「…不気味ですね…私達が侵入しているというのに誰も来ない…」

 

鈴仙「案外迅速にはできないのよ。依姫様が例外なだけで、玉兎達は臆病だから」

 

妹紅「…おーん…にしてもこの木以外に草木がねぇな…この木は腐葉土無しでどうやって生きてるんだ?」

 

そんなこんなで一同は引き締めた気を緩ませ、のんびりと歩いていた。すると必然的に内容は月の都関係になってくる。きっかけは紫の呟きから…

 

紫「ふぅ…よかったわ…月面戦争時はすぐ部隊が飛んできたから臨戦態勢を整えていたけど…」

 

早苗「へ?前にも月の都と戦ったことがあるんですか?」

 

幽々子「…そうなのだけど……あの時は不思議だったわね~」

 

隠岐奈「確かに。第一『月面戦争』と語ってはいるが、実のところを言えば、幻想郷反対妖怪達と一緒に月面に飛ばされただけだからなぁ…」

 

萃香「まぁ…めんどくさい妖怪達を排除できたから結果オーライだけど」

 

幽香「…そう?私達としてはいい迷惑だっただけよ…でも何でいきなり月面に飛ばされたのかしら?」

 

スサノヲ《…兄貴のおふざけってことは黙っとこ……》

 

第一時月面戦争を知る古参妖怪達が当時の様子を話してくれる。幻想郷をよく思わない妖怪達と戦っている最中に、月面へ飛ばされたのが原因らしい……この件を聞いてスサノヲは完全シカトを決め込んだ。

 

弾「…ん…もうすぐ林を抜けるぞ」

 

フラン「フランいちばーん!」

 

レミリア「あ!フラン!待ちなさい!!」

 

永琳「…はっ!!」

 

もうそろそろ林を抜けるかと思われた所でフランが呑気に駆け出す。そしてフランが林を抜けて広大な平野に足を踏み入れた瞬間…!!

 

ズドォォォォォォォォン!!!!

 

フラン「きゃ!?」

 

アテナ《…危なかった…!》

 

アレス《…全員…来たぞ!!》

 

辺り一帯にとてつもない轟音が響いた。それはフランめがけて飛んできたエネルギー弾をアテナと永琳の結界が防いだ際の音である。

 

林と月の都の大きな門の狭間……そこは身を隠せるような障害物はひとつもなく、真っ平らな地平線が広がり、敵だと思われる生命体など感じ取れなかった……

 

…だが軍神であるアレスの声に全員臨戦態勢のスイッチを入れ直した。

 

椛「…臭いも何もしませんが……」

 

鈴仙「…来た…って…あれは!?」

 

小町「…彼岸(うちら)の獄卒じみた怪物に…動く式神ねぇ…」

 

霊夢「いつぞやの蟲忍者や変な霊魂までいるわね」

 

それは一瞬の出来事だった。遠くで何かが光ったかと思うと、突然何もなかった月面に大量の妖怪達と紫色の人形兵士が現れていた。さらにウカノミタマの部下らしい蟲忍者や動物霊も出てきている。

 

妖怪達はまるでオオカミ人間やゾンビなど、普通にイメージされるまさに『妖怪』と言える奴ら。幻想郷では人の姿も知能すら持たない下級妖怪達だが、ツクヨミの力を使っていると考えれば侮れない。

 

人形兵士達は霊魂が取りついた甲冑…つまりはツクヨミの力で産み出された式神であることは明らかだ。その種類も槍兵、騎馬兵、弓兵など様々な形を取っている。

 

 

輝夜「…豊姫の能力ね……あら?埴輪兵も…」

 

映姫「…袿姫もここですか…やれやれ…骨が折れそうです」

 

神奈子「…おおっと…永琳、お弟子さんのご登場だ」

 

大量の妖怪&式神&蟲忍者の間には袿姫お馴染みの埴輪兵隊の姿もある。そしてものの数分で弾達の前に万単位の軍団が立ちふさがった。

 

さらに彼らを召喚した光が怪物達の最前列にも発生し、そこから出てきたのは幻想郷に馴染みある月の三人だった。

 

豊姫「この月に足を踏み入れるとはどういう……八意様!?」

 

依姫「え!?…な、なぜ八意様が穢れた妖怪どもと……!?」

 

サグメ《……!?……輝夜様まで……これはいったい…》

 

永琳「…豊姫、依姫、そしてサグメ…そこを通しなさい。ウカノミタマに用があるの

 

三人は永琳も来るとは聞いていなかったのか、あたふたと驚きを隠せない。だがその焦りは永琳のドスの効いた声によって一瞬で霧散した。

 

豊姫「…さすがの八意様の頼みでも…ここを通す訳にはいきません。お引き取りください」

 

依姫「…今ならどうとでも揉み消せます。私達も八意様と戦いたくありません」

 

サグメ《………ペコリ…》

 

永琳「…スチャ…どけ……!!」

 

三人「「《ゾクッ!!》」」

どうにか穏便に帰らせようと三人は丁寧に通すことを拒否するが、永琳は愛弓に矢をつがえて戦闘意思を隠さずに突きつける。その目付きや気迫は月最強の依姫ですら震え上がらせた。

 

開戦直前にもかかわらず、お互い手を出さない膠着状態がしばし続いた。月の三人としては恩人と殺しあいたくはないし、永琳も弟子を手にかけるほど落ちぶれてはなかったのだ。

 

だがその均衡はとある一発の砲弾によって破られた。

 

 

鈴仙「パチン…維持『武主怒無羅素多阿(ヴィシュヌブラスター)』!!」

 

豊姫「え…くっ!バッ」

 

妖夢「鈴仙!?」

 

後ろに控えていた鈴仙が『分神』状態へと変わり、巨大ルナティックガンから氷のビームが豊姫めがけて放たれる。とっさに身をよじって豊姫はかわすが、その後ろの数十体の妖怪が一撃で凍りついた。

 

依姫「…ウソ…今のを…鈴仙が…!?」

 

鈴仙「師匠!お気持ちはわかりますが、私達は戦いに来たことをお忘れなく!依姫様達も倒さなければ洗脳は解けません!!」

 

永琳「…ええ…そうね…!」

 

弾「…全員!戦闘用意!」

 

依姫は昔の鈴仙とは見違えたほどのビームに目を丸くさせていると、鈴仙は永琳に…ひいては全員に『戦争』を思い出させた。その声に永琳は威嚇のための矢を下げ、弾はグランシャリオを構えて戦闘態勢に入った。

 

文「パチン…さて…!制空権は貰います!風符『風刀切刻(カマイタチ)』!!」

 

魔理沙「パチン…へへ…!銀河群龍(ダイナギャラクシー)!!」

 

咲夜「パチン…幻符『殺人ドール』!!」

 

『分神』文、魔理沙、咲夜が妖怪や式神達の上から風の刃、竜型のエネルギービーム、無数のナイフをぶちかます。敵は強そうに見えて案外脆いみたいだ。

 

豊姫「…ッッッ!…あなたとは…こんな再会はしたくありませんでした…!!」

 

依姫「…スチャ…是非に及ばず…!八意様…!あなたは尊敬する師でした…!!」

 

サグメ《……(自分の周りに陰陽球を浮かべる)……》

 

永琳「…なにここで首をとるつもりでいるの?私は死ぬ気で来た訳じゃない!勝ちに来たのよ!!」

 

蓮子「永琳さん!ここは任せてください!」

 

隠岐奈「あんたは先行きな!」

 

幽香「…早めに終わらせてきてよ…!」

 

さすがにこれ以上攻撃されては三人も反撃するしかない。すると苦虫を噛み潰した表情で構える三人の前に蓮子と四天王が割って入った。

 

永琳「……あなた達…」

 

隠岐奈「実はコイツらとは悪縁あってな!それを晴らすのにちょうどいい!」

 

蓮子「お願いします!依姫さん達は必ず元に戻しますから!」

 

幽香「…わかったらさっさと行きなさい…!」

 

永琳「…!…ありがとう!ダダダ」

 

隠岐奈、蓮子、幽香の言葉を受けて永琳はものすごいスピードで戦場を走り出し、妖怪達や式神達の隙間を突っ切って月の都の門を目指した。

 

 

隠岐奈「…ふぅ…悪いがちょっと付き合ってくれよぉ!」

豊姫「…なるほど…!あなた達が八意様を唆して!!」

 

隠岐奈は自らの神力を吹き出させて豊姫と対峙する。対する豊姫は永琳への尊敬があらぬ方向へ向かってしまい、憎悪の瞳で隠岐奈を睨み付けていた。

 

 

幽香「…ブンブン!!気合い入れて…!勝つのよ…!」

サグメ《……穢れた妖怪風情が…!》

 

幽香も首をふって気合いを入れ、陰陽球を従えるサグメに閉じた日傘を向ける。二人から放たれる妖力と神力が辺りの地面をえぐりとるぐらいぶつかり合った。

 

 

弾「十二宮Xレアよ!みんなを援護してくれ!」

 

ヴィエルジェ《了解!》

 

アリエス《…やれやれ…骨が折れるのぉ…》

 

レオ《…しゃーねーだろ…!》

 

依姫「…おのれ…!よくも…!よくも御師匠様を!!」

 

弾がグランシャリオを持っていない手を空にかざし、十二宮達を召喚して怪物達に対抗する。そして蓮子はワナワナと震えて抜刀した依姫と向かい合った。

 

依姫「八百万の神々よ…!我が恩師を唆した不届き者に死を!!」

 

蓮子「……仕方ないか…!かかってこい!」

 

 

 

 

 

 

 

???《…よし…これぐらいあれば大丈夫だろ。さぁて…情報収集もここまでにして……アイツらの援護に向かいますか!》

 


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