幽香「…コキコキ…かかってきなさい!」
テミス《 …ち…メインステップ。アルテミスの大樹神殿を配置!ターンエンドですわ!》
肩を鳴らしてヤル気満々の幽香とは反対にテミスは舌打ちしながら大きな木の神殿を配置してターンを終えた。
幽香「メインステップ。天使を統べる大女神!創界神イシスを配置!神託の効果でコアを二個イシスへ」
イシス《そしてティティエル、おいで。召喚時効果でデッキ下から一枚ドロー》
幽香の背後にイシスが出現し、フィールドにも小さな天使のアルティメットが現れた。
幽香「バーストをセット。ターンエンドよ」
テミス《 メインステップ!来なさい!アルテミス!神託でコア三個を置き、さらにポラーナイト・ガルムを召喚しますわ!》
アルテミス《…………》
テミスはアルテミスを呼び出すと、銀のたてがみをしたオオカミを召喚する。アルテミスの大樹神殿の効果でポラーナイト・ガルムは最大軽減で召喚されていた。
テミス《 アタックステップ!ポラーナイト・ガルムでアタック!再びコアを自身に置き、回復しなさい!》
幽香「ライフで受けるわ…ってかなり痛いわね。バーストもらうわよ、エジットの天使モニファーエル。ライフを一つ増やして新たなバーストを伏せるわ」
ポラーナイト・ガルムの前足が幽香のライフを切り裂くと、幽香のバーストから褐色肌の天使が黄色い光でライフを回復させた。
テミス《 ふんっ!ポラーナイト・ガルム!もう一度です!》
幽香「これもライフで」
くるっとポラーナイト・ガルムが着地して再度駆け出す。今度は口から放たれたビームが幽香のライフを砕いた。
テミス《 ターンエンドです!》
幽香「…良い感じにコアが増えたわね。メインステップ。天霊王杖ウアス・セプターを創界神イシスにダイレクト合体!さらにエジットの天使長ネフェリエルを召喚してデッキ下から二枚ドローよ!」
イシス《これでアルテミスのシンボルは黄色、そしてこちらのシンボルとしても扱うわ》
イシスの手に光が集まって一本の杖が形成される。そのウアス・セプターが輝いてアルテミスの力を抑制し始めた。
幽香「アタックステップ!レベル4のネフェリエルでアタック!アタック時効果!ライフを増やしてネフェリエルは回復!!」
テミス《 ライフで受けます!》
ネフェリエルが十字の杖を叩きつけてテミスのライフを破壊した。
幽香「…これぐらいで良いかしら。ターンエンドよ」
テミス《 …ちぃ…メインステップ!リーディング・オリックスとダーク・ドーベルXをどちらもレベル2で召喚ですわ!》
テミスが呼び出したのは機械の鹿と猟犬、リーディング・オリックスはドローソース…ダーク・ドーベルXは疲労ブロッカーとして優秀な一枚である。
テミス《 アタックステップ!ポラーナイト・ガルム!おやりなさい!》
幽香「…バースト発動。エジットの天使長マアトエル!召喚した後、ネフェリエルとティティエルからコアを一つずつライフへ!よってティティエルは消滅するわ」
イシス《マアトエル!その野良犬を迎え撃ちなさぁい…》
ポラーナイト・ガルムが三度目の攻撃を仕掛けるが、幽香もバーストを発動させて銀髪に茶色い鳥の翼、手に半月刀を持った天使を召喚する。召喚されたマアトエルはアルティメット故の高いBPでポラーナイト・ガルムを真っ二つに斬り捨てた。
テミス《 《font:149》ぐぬぬ…!リーディング・オリックスの効果で一枚ドロー…!ターンエンド!》
幽香「メインステップ。ネフェリエルをレベル4、マアトエルをレベル5へ。アタックステップ!マアトエルでアタック!まずは私のライフを二つマアトエルへ!」
イシス《そうすることで相手のスピリット二体をデッキ下へ戻すの…!あぁ…私の神域も発動するわ。ライフ一つもらっていくわよ?》
マアトエルが幽香のライフを吸収して半月刀にエネルギーを貯める。その半月刀から放たれた一閃はリーディング・オリックスとダーク・ドーベルX、テミスのライフを砂塵に還した。
テミス《 …リーディング・オリックスはフィールドを離れるとき、創界神にコアを二個おきます!ライフで受ける!》
マアトエルがテミスに接近してライフを一つ砕いていく。だが幽香の攻撃は終わらなかった。
幽香「続きなさい!モニファーエル!フラッシュタイミング!モニファーエルに煌臨!エジットの天使長ハトフェル!煌臨したのでライフを一つボイドに置いて回復!」
テミス《 いい加減にしなさい!フラッシュタイミング!マジック!氷雪サークル!ソウルコアをコストに使い、ハトフェルとネフェリエルを指定!》
モニファーエルの翼が蒼く染まり、また新たな天使長が煌臨する。ハトフェルはライフを砕いて回復していくが、テミスのマジックがハトフェルのビームを防御してしまった。
幽香「ふぅん…ターンエンド」
テミス《 …ドローステップ…!……メインステップ!さぁ!私の力にひれ伏しなさい!世界の秩序は我にあり!崩女神ルーラー・テミス!レベル2で顕現!!》
イシス《…来たわ…!》
テミスのカードから黒い光が空に昇り、虚空に穴を開ける。その中から下半身が鹿、背中に大きな輪、左手に天秤を持った禍々しいスピリットが駆け降りてきた。
テミス《 アタックステップ!アルテミスの効果でわたくしを指定!そしてアタックですわ!この一撃はWシンボルかつブロックされません!》
幽香「…ライフで受ける!ここで手札のエジットの天使ネチェリエルの効果が発動するわ。相手によって私のライフが3以下になったので召喚よ」
イシス《あら…そうだったわね。召喚時にリザーブのコア一つをライフへ。さらに効果で召喚されていたから相手のスピリットをBPマイナス17000できるわ!》
ルーラー・テミスが背中の輪から強力なエネルギー砲を発射して幽香のライフを二つ粉砕する。しかし幽香の手札から飛び出した童顔の小さな天使がルーラー・テミスの足元から黄色い光を立ち昇らせた。
その光に力を奪われてルーラー・テミスは光の粒子になって消えていった。
テミス《 あ…!が…!た、ターン…え、エンド…》
幽香「パチン!所詮、風の前の塵だったわね。メインステップ!エジットの天使長ソプディエルを召喚!そしてウアス・セプターをソプディエルに合体!」
イシス《…うふふ…我が側近の天使長達に命ず!あの邪神を滅せよ!》
幽香はエメラルドのアーマーと赤白の布を纏い、『分神』状態へと変わる。さらにフィールドに現れたのは金髪の天使長…
…そしてソプディエルにウアス・セプターを投げ渡したイシスが号令をかけ、四人の天使長は全員戦闘態勢に入ることで答えた。
幽香「アタックステップ!ハトフェルでアタック!ライフを砕いて回復する!イシスの神域であなたのライフももらうわ!」
テミス《 …ら、ライフです…!》
ハトフェルとイシスの光線がテミスに直撃し、テミスのライフは残り一つになる。
幽香「次はマアトエルでアタック!」
テミス《 …あ、アルテミスの神技…!このバトルの間、アタックではわたくしのライフは減りません!》
次に攻撃したマアトエルが半月刀を投げつけるが、アルテミスが張ったバリアに弾かれてライフを削れない。
幽香「…しつこいわよ。ネフェリエル、ネチェリエルでアタック!」
テミス《 もう一度です!アルテミス!》
続けてネフェリエルとネチェリエルも杖からビームを放つ。その攻撃自体はアルテミスの障壁が阻んだが、これでテミスはコアを使い果たした。
幽香「…ようやく終わりね。ソプディエル!!合体アタック!!」
最後にソプディエルがウアス・セプターを構えて翼を羽ばたかせる。ウアス・セプターから巨大な光球が精製され、ソプディエルはおもいっきりテミスに投げつけた!!
テミス《 ぎゃぁ!!…う、ウソ…です…わ……》
幽香「…土に還れ…!!」
月の都 ツクヨミの宮殿 門前
永琳「着いたわ!」
月の民達「ウワァァァァァァ!!」
レミリア「…まだ追ってくるか…!」
その頃、永琳とレミリアは操られた月の民達から逃げつつ、ツクヨミの宮殿に入ろうとしていた。永琳が扉を蹴り破ってまるで首里城の広場を思わせる内部を駆け抜ける。
永琳「…ダダダ…こっちよ!」
月の民達「ぁぁぁぁぁ!!」
レミリア「…わかった!だがひとまずコイツらをどうにか振りきらないか!?」
永琳「…キョロキョロ……!…あの部屋に入るわよ!!」
長い廊下を走りながら二人は曲がり角で見えなくなる一瞬で近くの部屋に飛び込む。追ってきた月の民達はその部屋に入らずにそのまま廊下を走り去っていった。
永琳「…ふぅ…撒いた…ってここ…!」
レミリア「…ずいぶん物騒な部屋だな…」
永琳「…二度とここには来たくなかったわ…さ、もう行きま…」
二人が入った部屋は暗い石畳に部屋の両脇に冷たい鉄の檻が置かれている…つまりここは牢獄だった。永琳は輝夜の一件でここに足を運んだことがあるのか、明らかに不快感を顔に滲ませながら部屋を出ようとした。
???《…あら?私を解放していかないで良いのかしら?》
レミリア「…!…誰だ!?」
永琳「…あなたは……!」
二人を呼び止めた声…それはどこかの檻の中から聞こえてきた。永琳は声がした檻の中を覗いてみると、そこにいたのはピンクの髪に水色の上着、そしてピンクのセミロングスカートの幼女…その姿はまさに『古明地 さとり』だった。
永琳「………誰…?」
レミリア「古明地…さとりか…?」
???《…ズコッ…あー…この格好じゃわからないか……ほいっと!》
永琳とレミリアが首を傾げていると、その幼女の身体が光りだす。すると一瞬でレミリア程の身長だった幼女が永琳と同じ背丈へと成長し、髪の毛は腰まで伸びて色も鮮やかなエメラルドグリーンへと変わった。
その姿になってようやく永琳も彼女の正体を理解できた。だが永琳の表情はかえって不快度が増している。
永琳「……創界神……サラスヴァティー…」
サラ《ピンポーン!だいせいか~い!いやぁ~オモイカネちゃん!久しぶりだね~!》
レミリア「…創界神…!?知り合いか!?」
永琳「…昔彼女やクベーラ様が『七福神』としてアマハラに迎え入れられた時にね……個人的にはウカノミタマより会いたくなかったわ」
笑顔で檻越しに話しかけてきた彼女…サラスヴァティーを無視して永琳はレミリアに愚痴る。どうやら本当に会いたくなかったようだ。
サラ《えぇ~!オモイカネちゃんひ~ど~い~!》
永琳「ならその薄っぺらい『仮面』を脱いで話してください。正直胡散臭くて話したくありません」
サラ《……ふーん…やっぱりバレてたか……あーつまんない…》
永琳の言葉にサラスヴァティーは先ほどまでの天真爛漫な表情を消し、不気味なほど感情を消した真顔でそっぽを向いた。
レミリア「…?…まるで別人だな…」
永琳「彼女は『人当たりの良い仮面』を着けて愛想よく振る舞ってるだけ。本性は自分の快楽にしか興味ない
サラ《…オモイカネちゃん…最後の一言は気に入らないわ。あの年増女狐を倒す協力してあげないわよ?》
雰囲気が百八十度正反対になったサラスヴァティーをなじる永琳にとうとうサラスヴァティーがキレ気味に言い返した。『ウカノミタマを倒すのに協力』と言うワードは永琳の意識に引っ掛かる。
永琳「…と言うと…?」
サラ《今この宮殿はウカノミタマの支配下に置かれている。絶対彼女の元へ辿り着かせないようなトラップが仕掛けられてるはずよ》
レミリア「…まぁ…その通りだな」
サラ《それに洗脳された月の民達もいる…なら私の出番じゃない?私なら敵の位置情報を探れるわ》
サラスヴァティーの提案に永琳は口を閉ざす。半分は『ウカノミタマ討伐に必要』と言う計算が、もう半分は『信用できない彼女を解放して良いのか』と言う理性が永琳の脳内で拮抗していた。
永琳「…一つ聞くわ。あなたがウカノミタマと戦う理由よ」
サラ《それはもちろん、こんな所に閉じ込められたから》
永琳「あとブラフマー様の安否が気になるからでしょう?」
サラ《……………ほんと…無駄に頭切れるんだから……》
永琳「なら良いわ。でも裏切ったら只じゃおかないわよ」
『ブラフマー』の名前が出た途端、サラスヴァティーはギロリと永琳を睨み付ける。これで完全にマウントを取った永琳は近くに置かれていた牢屋の鍵で牢屋を開けた。
レミリア「…それで…どう敵の位置を探るんだ?」
サラ《…パチン…これを使うわ》
牢屋から出てきたサラスヴァティーが出したもの、それは彼女の神話ブレイヴ『神楽器サヴィトリー・ヴィーナ』。そしてサラスヴァティーはサヴィトリー・ヴィーナの弦を弾き始めた。
レミリア「……何を…?」
永琳「サラスヴァティーは音楽と芸能の女神。今彼女は普通では聞き取れない超音波を奏でて辺りの地形を探っているのよ」
レミリア「…パチェに聞いたことあるわね…確かイルカやコウモリは聞こえない低周波を発してそれがモノに当たって帰って来た感触でモノを識別する…って」
永琳「そういうことよ」
サラ《………へぇ…そこね……》
永琳が説明している間にサラスヴァティーは建物の見取りや敵の位置を把握したようだ。しゃらんと首飾りを鳴らして永琳に振り向く。
サラ《こっちよ。ついてきなさい…スタスタ》
永琳「……行くしかないか…スタスタ」
レミリア「…まずい…私が活躍できてない…!」
レミリアの焦りとは裏腹に二柱の女神は確実にウカノミタマへの道を歩き始めた。
はい。ありがとうございました。
創界神サラスヴァティー登場!まさかの『公式のポワポワした感じは全て嘘』『猫かぶり』枠…モデルはもちろん某魔王です