東方星神録   作:あんこケース

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はい!ようやくアマテラス様を動かせる!そろそろ伏線を回収していかないと……


最終九章~終わりの始まり~
天照大御神の照らす道


永遠亭 会議室

 

 

白蓮「…えぇ!?まさか…毘沙門天様も!?」

 

ヴィシュヌ《…あぁ、しかもお前さんとこの門弟もな》

 

セト《面目ねぇ…!ヤロー!ぶっ壊してやらぁ!》

 

天子「右に同じよ!」

 

正気に戻った天子とセトが怒りの雄叫びをあげている中、白蓮が現状を聞いて驚いている。いつも使っている会議室でヴィシュヌが椅子に座っている白蓮に説明していると、その反対側でもひと悶着起きていた。

 

 

サラ《やーん!ブラフマー!》

 

ブラフマー《…やべぇ…!サラちゃんが俺の右腕に抱きついてる…!もう柔らかいとかそういう次元じゃねぇ…!》

さとり「…うわぁ…ヤバい人だ…」

 

シヴァ《おいブラフマー、心の声が漏れてるぞ》

 

満面の笑みでサラスヴァティーがブラフマーの右腕に抱きついていた。真顔のまま鼻血を出してぶつぶつ呟いているブラフマーは、さとりでなくともドン引くだろう。

 

そんな騒がしいインディーダ組を放置して残りの創界神と幻想郷組は霊奈とウカノミタマから情報を貰っていた。

 

ツクヨミ《…ふむ…ではその男が原初神を解放し、幻想郷の時間を巻き戻したと?》

 

ウカノミタマ《ええ。はっきり言って神としての『格』はただの創界神のレベルじゃないわ》

 

ツクヨミの問いかけにウカノミタマは例の男についてそう忠告する。ツクヨミの彼女に対する対応を察するに、どうやら一発殴られて許されたようだ。

 

魔理沙「なぁ、おばさん。そいつの…何だ…目的とか動機って知ってるか?私達はそれがよくわかっていないんだ」

 

霊奈「おば…んんっ!…確か『歴史の修正』…とか言っていたな…」

 

紫「幽々子の時もそんな事言ってたわね…その男は歴史を変えようとしているのかしら?」

 

魔理沙の何気ない『おばさん』発言が霊奈の心をえぐるが、ぐっと堪える。そしてこちらも殴られて許されたのか、紫が以前のことを思い出して目的を推定した。

 

永琳「そういえば…弾は?」

 

咲夜「…あら?お姿が…?」

 

スサノヲ《…今外で姉貴と話してる。二人で話したいんだとよ》

 

カグツチ《…なに話してるんだろ?》

 

紫の隣にいた永琳がキョロキョロしていると、行き先を知るスサノヲが腕を組んで答えを返す。カグツチの呟きは視線の先にある窓から外へ流れていった………

 

 

 

 

永遠亭 裏庭 迷いの竹林

 

 

弾「…もう動いて平気なのか?」

 

???《あなたこそ。オモイカネ…永琳が五月蝿くない?》

 

弾「あはは…さすがは元あんたの懐刀だよ」

 

ここは永遠亭付近の竹林…完全に回復した弾は歩きながら目の前にいる女性と会話する。カサカサと草をかき分けて隣を歩きつつ凛とした声で話す彼女…

 

地面につきそうなほど長い裾の巫女服

 

勾玉が繋がった首飾り

 

『竜宮の使い』を思わせる羽衣、

 

そして太陽を模した王冠

 

彼女こそ『アマハラ』の最高神にして『最強』の創界神の異名を持つ創界神、創界神アマテラス。八咫烏暴走異変から早数日、すっかり元気になったアマテラスが弾を散歩に誘ったのだ。

 

 

弾「…それで?話があるんだろ?」

 

アマテラス《もちろん。けどまず最初に…我が弟たちや部下を助けていただき、そして裏切った部下を許していただき…誠にありがとうございました》

 

そう言ってアマテラスは一度足を止めると、深々と頭を下げて感謝の念を表した。彼女の太陽の飾りが日の光を反射してキラリと輝いた。

 

弾「…俺はたいしたことをしていないさ」

 

アマテラス《うふふ…さて。その話というのは『原初神』と『元凶』についてよ》

 

弾「…あんたは知っているのか?時間をも巻き戻すこの異変の元凶を…」

 

弾も足を止めてアマテラスに疑問を投げかける。アマテラスは静かに首を縦に振った。

 

アマテラス《…タカミムスビ様が書き残した著書に手掛かりがあったわ。キーワードは……『混沌』よ》

 

弾「…『混沌』?」

 

アマテラス《ええ。その『混沌』の神なら原初神も甦らせることも可能。それぐらい強大な力を秘めているそうらしいから…》

 

アマテラスが裾から一冊の本を取り出してとあるページを開く。どうやらタカミムスビが書いた本のようだ。

 

アマテラス《その神だと私は推測するわ。そしてその『混沌』の力に対抗できるのは『星神』…永琳のことかしら?彼女の潜在能力は凄まじいはずだし》

 

弾「…確かに…覚醒した後ウカノミタマを一方的に叩きのめしたらしいからな…」

 

アマテラス《…ていうか…自分の『化神』をあんなに作れるなんて反則よ。私だって二体作るので限界なのに…》

 

弾「…え?そうなのか?」

 

また歩きだしたアマテラスは羨ましそうに永琳の力について愚痴る。その愚痴に一つ弾は引っかかる点があった…それは『化神を作れる限界量』

 

アマテラス《……え?だってみんな化神は一つ、タカミムスビ様の『分神』を受けた『アマハラ』の創界神でも二つが限界よ?》

 

弾「…俺…一応化神、合計13体いるんだけど…」

 

アマテラス《……へ…?》

 

弾の告白にアマテラスはすっとんきょうな声をだして呆然になる。持っていた本が手から滑り落ち、足元の草の上にドサッと落ちた。

 

弾「十二宮とサジットヴルム・ノヴァがいるから…ほら…スチャ」

 

アマテラス《………ほんとだ…まさか……》

 

弾は自らの化神にした『十二宮Xレア』と『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』のカードを差し出す。アマテラスはそのカードを手に取り、あり得ないと言った顔で眺めていた。

 

アマテラス《…うそ…仮に元々力を持って存在していたスピリットだとしても…それを自分の力に変換しないといけないから、多数の化神は作れないのに……》

 

弾「アレックスのジークフリードはどうなんだ?あれも元々力ある龍だったはず…」

 

アマテラス《あれはタカミムスビ様の力を借りただけ。アレックスやブラフマー達の力じゃないわ》

 

弾「…なら…俺がおかしいのか…」

 

アマテラスはそう言って弾に化神達を返してそう評価した。二人の耳に竹林から吹いた風がピュゥゥと響き、またこの雰囲気を一新させた。

 

アマテラス《……うん…よし…!馬神 弾。私はその昔タカミムスビ様の側近兼弟子でした。最高神になっても彼の言葉に従って神世界を統治していました》

 

弾「……一番彼に近い創界神だったのか……」

 

アマテラス《その通り。ここからは私の個人的な欲を吐くけど…私はタカミムスビ様が健在だった頃の神世界が一番楽しかったわ》

 

弾「…『楽しい』…?」

 

アマテラス《例えるなら『幻想郷』みたいにみんなワイワイガヤガヤしてたってことよ…タカミムスビ様がみんなをまとめあげてたからね》

 

何か踏ん切りをつけたアマテラスは改まって弾に向かい合う。そして彼女は昔を懐かしむように竹林から見える空を見上げると、また言葉を続けた。

 

アマテラス《…そしてあなたには幾つものタカミムスビ様の面影を感じる。だから……あなたを次世代の『王』と認めたい》

 

弾「…そんなたいした」

 

アマテラス《『たいした男じゃない?』ほんとそういう遠慮するところもタカミムスビ様にそっくり!でもあなたが何と言おうと私達『アマハラ』はあなたを王に推薦するわ!》

 

弾の謙遜する返事をアマテラスは遮って推し続ける。彼女の口調も興奮しているのか、後半になるにつれて熱くなっていった。

 

弾「…いや、ツクヨミやスサノヲの意見も」

 

アマテラス《だいじょーぶ!もうあの二人どころかカグツチやウカノミタマすら賛成したから!たぶん『インディーダ』の『トリムルティ』や『オリン十二神』も同意見だと思うけど?》

 

弾「えぇ…!?」

 

アマテラス《あら?嫌なの?》

 

弾の逃げ道も既にアマテラスは外堀を埋めていたようだ。しかも『インディーダ』や『オリン』すら推していたという事実に弾は頭を抱えるが、アマテラスの質問には口を閉ざす。

 

弾「……イヤ…じゃないんだが…」

 

アマテラス《なら良いじゃない。あなたは神世界全てを手に入れるのよ?》

 

弾「……だからだよ…神世界全ての責任が俺にのし掛かる…俺の一存で幸せが悲劇になってしまうかも……」

 

弾の心に根深く残っているのは『コアの光主』時代の重い責任のことだった。あの時の苦い…苦すぎる経験に弾の目線が下へ下がりかけた。

 

アマテラス《…バンッ!なぁにしけた面してんのよ!何のために紫ちゃんや永琳がいるの!そういう時には『臣下』に相談しなさい!》

 

弾「ぉ!?」

 

アマテラス《あ~たは人に助言する時ゃ良いことゆーのに、自分のことは盲目なのねぇ~!》

 

もはや気品さや神々しさを完全に捨てきり、まるで居酒屋のおじさんみたいにアマテラスは弾の背中をバンバン叩く。

弾「…フフっ…負けたよ…皆に担がれる『王』ってのもカッコ悪いけどな」

 

アマテラス《サラスヴァティーは例外かもしれないけどね~…でもブラフマーが押し通すと思うし…大丈夫か…》

 

弾「…あぁ…それはもう手をうってるよ。彼女は変わる」

 

諦め半分覚悟半分の表情で弾は『王』の推薦を受け入れる。だが皮肉染みたアマテラスの一言に返答する時には、既にその目はいつもの目に戻り、言葉も力強い響きがあった。

 

 

その弾の言葉が終わった瞬間だった。二人は空気の変動を感じ取った。

 

 

アマテラス《……そう……!…はっ!》

 

弾「…!…来たか…!はっ!」

 

 

ドドォォォォンッッッ!!!!!

 

空の彼方から飛んできた何か…二人はそれを確認する前に透明のバリアを展開して防御する。その飛翔体はバリアに防がれて粉々に砕け散った。

 

 

アマテラス《…突然すぎない…?》

 

弾「…ん…パシッ…これは…手紙か?」

 

アマテラス《ハァー…なに?あれは手荒な矢文だったわけ?》

 

弾は砕けた飛翔体から落ちてきた紙切れをキャッチする。そこには古典で習うような文字がびっしりと書かれており、そこにはこう書かれていた……

 

 

一 我はこの世界を真に憂れう者であり、貴殿等は清廉潔白な世界を汚す害虫である。

 

二 されどそのような愚か者を導くことこそ『神』の役目。よって貴殿等にも譲歩の機会を与えることにした。

 

三 明日の正午、命蓮寺にて待つ

 

 

アマテラス《……つまり思ったより私達がしぶといから要求を呑む代わりに降伏しろって?》

 

弾「…いや…もしかしたら誘い出すだけなのかも…」

 

アマテラス《…ひとまず戻りましょう。こういう時は相談するのが一番よ》

 

手紙の内容はアマテラスにとっても弾にとっても信用ならないものだった。それでも一旦手紙を永遠亭に持ち帰るため、二人は急いで来た道を戻し始めた。

 

 

 




はい。ありがとうございました。

公式の背景世界のアマテラス様もアレックスを次世代の『女王』にしようとしていたので、弾さんをそのポジに入れました。

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