次の日 命蓮寺への道
弾「…なんだか…いつもより緊張感があるな…」
手紙が届けられた日から夜は明け、弾は人里から命蓮寺へと繋がる道を歩いていた。あの後様々な議論がなされたが、最期は『こちらも戦力を引き連れ、不意打ちに備えておく』という結論に達した。
そして次が弾が選んだ『戦力』である。一応選抜の基準は『リアルファイトの強さ』と『交渉力の高さ』を参考にしたそうな。
1人目 幻想郷の賢者にしてスキマ妖怪 八雲 紫
もう幻想郷において胡散臭さと交渉では右に出る者はいないので同行。歩きたくないのか、弾の隣に器用にスキマに腰かけて移動している。
紫「ブツブツ…いえ…もし相手があの要求をしてきたら…ブツブツ」
2人目 月の賢者 稀神 サグメ
以前も純狐と交渉した月の都の苦労人。『口に出すと事態を逆転する程度の能力』はたとえ相手が創界神であろうと通用する強大な力を持つので、今回は同行している。
ちなみに「側近が両方とも行くと、いざというとき仕切る者がいなくなる」という理由で弾と一緒に行けなかった永琳が、殺すような目でサグメを睨みつけていたそうな。
サグメ《…八意様…お許しください…!》
3人目 永遠に幼き紅い月 カリスマ レミリア・スカーレット
彼女の性格としては交渉向きではないのだが、相棒のディオニュソスがバリバリ口が回るのと『運命を操る』力をかって選ばれた。弾の後ろを腕組みしながら歩いているが、いかんせん子供っぽい。
レミリア「…あの寺に黒幕がいるのか…ふふっ…美味な血だと良いわね」
4人目 楽園の最高裁判長 四季 映姫・ヤマザナドゥ
浄玻璃の鏡で真実を見通し、白黒はっきり判決を下す彼女も交渉向きな人材。背筋を伸ばし、仏頂面で杓を持ってツカツカと歩いている。
映姫「こらっ!私達は遊びに行くのではありませんよ!」
五人目 地霊殿の主の覚妖怪 古明地 さとり
相手の心を読む能力を持ち、旧地獄の事務作業を一手に担っている彼女こそ弾の切り札。たとえ洗脳を解かずとも相手の腹を割れるのは大きい。
ちなみにさとり本人は最期まで「行きたくない」とごねたが、とある理由で仕方なく同行するはめになった。
さとり「…はぁ…」
そして最期の6人目 封印された大魔法使い 聖 白蓮
交渉にはあまり向かないであろう彼女がついて来たのは『自分の門弟達が不安だから』と弾に直談判したからだ。
弾としても、とある理由から白蓮を連れていこうと考えていたので渡りに舟だった。その理由とは………
サラ《なぁんで私まで行かなくちゃならないのよ…》
ブラフマー《…まぁ良いじゃないか!久しぶりのデートだと思えば》
サラ《そうね!》
集団の一番後ろを歩いていたのは全く乗り気じゃないサラスヴァティーだった。なぜか弾は周囲の反対を押しきって彼女を一団に加えていた。
無理にさとりを連れ出したのも彼女の相棒のブラフマーが唯一サラスヴァティーを宥められるからだった。
レミリア「…めんどくさい…」
映姫「…なぜ彼女を連れてきたのですか?」
弾「…後でわかるさ」
さとり「…あの…あまり私の側で大声を出さないでください…」
サラ《仕方ないじゃない!あんたの中にブラフマーがいるんだから!》
映姫がこっそり弾に耳打ちする内容は、もちろん後ろでさとりに大声をあげているサラスヴァティーの件。だが弾は裏切りを警戒する永琳や映姫とは違い、彼女に一定の信頼をおいていた。
白蓮「あらあら…弁財天様、あまりその子をいじめないでください。これから大切な話し合いの前に緊張してしまいますよ」
サラ《あ?どーせ罠に決まってるわよ。あんた、期待してるの?》
白蓮「ええもちろん。可能性が少しでもあるのなら、それを捨てるべきではないと思います」
サラ《……あっそ…》
さとりが困っているのを見かねて、白蓮が丁寧な口調で助け船を出す。白蓮の誠実すぎる人柄にサラスヴァティーも面を食らったのか、おもしろくなさそうにそっぽを向いた。
紫「…見えてきたわ。全員気を引き締めて」
レミリア「…おお、白蓮。お出迎えだぞ」
一輪「姐さん!」
水密「姐さん!無事で良かった!」
とうとう弾一向は命蓮寺の門前へと到着した。すると門の前に馴染みのある人影が白蓮を呼んだ。
白蓮「…星…村紗…一輪…ナズーリン…小傘ちゃんまで…」
ナズーリン「やれやれご主人。だから言っただろう?少なくとも捕虜を殺しはしないとね」
星「で、でも!やはり聖は操られているようです!ここで洗脳を解かないと!」
小傘「…ううっ…怖い…でもわちき!やるよ!」
ディオニュソス《あーらら…こりゃ話し合うってことすら聞かされてなさそーじゃね?》
オシリス《…罠だったか…まぁ読めてはいたがな》
並んでいる命蓮寺メンバーの一番端…そこにいたのは全体的に水色の服と髪、そして一つ目と舌が出た紫色の傘を持った妖怪。唐傘に取りついた付喪神、多々良 小傘だった。
そして中心にいる星の呟きを察するに、どうやら向こうは『白蓮が捕まり、都合の良いように洗脳された』と思っているらしい。そして星達はそれぞれの武器を構え、話し合う様子など微塵も感じられなかった。
白蓮「…そんな…」
映姫「…辛いでしょうが…行きますよ…!」
弾「……スチャ…」
気を落とす白蓮を映姫が前に立ち、閻魔の杓を構える。紫や永琳、レミリアもそれぞれの武器を取り出し、弾がグランシャリオを持って星達に意識を向けた。
さとり「…!…不意打ちとはずいぶん卑怯ですね。仏教徒に手を貸して良いんですか?神霊廟の方々?」
サグメ《…やはり…気のせいではありませんでしたか》
そんな中、一人さとりは先ほど通ってきた道の森に目を向ける。すると弾達を挟んで星の反対側から人の声が響いてきた。
神子「…覚妖怪を連れてきたのはそういうことですか…」
布都「むっ!なかなかやるな!」
屠自古「…はぁ…まためんどうな…」
青娥「芳香ちゃん?ご飯の時間よ~」
芳香「ご~は~ん~!や~る~ぞ~!」
こころ「…………」
ぞろぞろと出てきたのはさとりの予測通り『神霊廟』の仙人達。そしてピンクの髪に長いバルーンスカート、周りにたくさんの『お面』を浮かべた付喪神、秦 こころ。
紫「…ぞろぞろと…パチンッ!」
レミリア「…これも想定済み!パチンッ!」
弾「…白蓮、みんなを助けるぞ…!」
白蓮「……はい!」
弾達は円陣を組んで囲んでいる命蓮寺と神霊廟の面々を迎撃にかかる。白蓮もどうにか気を取り直して拳を構えた。
神子「…総員!かかりなさい!」
弾「…かかってこい!」
はい。ありがとうございました。