また視点は変わり…迷いの竹林、アマテラス&正邪は…
アマテラス《ね~!良いじゃ~ん!》
正邪「しつこいな!私はイヤだって言ってるだろ!」
竹林ではアマテラスが正邪を勧誘しているが、正邪はお気に召さないのか拒否を続けていた。正邪は変わらずアマテラスに
ツクヨミ《…姐上…もうそろそろ諦めた方が…》
スサノヲ《…フワァァ…眠い…》
藍「…パチッ…」
妹紅「げっ…王手じゃん…」
その近くでは暇潰しにどこからか将棋の盤を出し、一局手合わせしている藍と妹紅…そしてツクヨミ、スサノヲがいた。四人とも正邪を引き入れることは諦めているようだ。
だがアマテラスだけは引き下がらなかった。
アマテラス《む~!何で私とじゃダメなの?》
正邪「何でって…お前らは『弱者』を見捨てて自分達だけが得をしようとしているからだよ!私はそんな『強者』をぶっ潰すんだ!」
藍「アマテラス様、あまり真摯に受け止めない方が良いかと。ソイツは口だけたたいて何の能力も実行力もないただの小物です」
妹紅「私もそう思うね。ただ自分の現状に不満があるから悪巧みをして、しかも正当化しようなんて…」
正邪「……ちっ!」
正邪の訴えを藍や妹紅は嘲笑して一蹴する。正邪の前科を知っているからこそ彼女の考えの『浅さ』を指摘したのだった。
正邪自身も痛いところを突かれたらしく、舌打ちしてプイッとそっぽを向いた。
アマテラス《…ねぇ正邪ちゃん?あなたの言う『弱者』を見捨てない世界ってどんな世界?》
正邪「あ…?そんなの…『弱者』が『強者』を支配する世界だよ。そうすれば『弱者』が虐げられることは」
アマテラス《でもそうなったらその『弱者』が『強者』へと変わって、また『弱者』を虐げられるようになるわ。それじゃあいたちごっこよ?》
正邪「…っ…たとえそうでも…!私は今の支配者どもが気に入らないんだよ!そのために私はレジスタンスを続ける!!」
二人とは違いアマテラスは真剣な顔つきで正邪の話を聞いている。その会話の中で正邪の瞳から強い『覚悟』を感じたのか、アマテラスは目線を座っていた正邪に合わせ、言葉を綴った。
アマテラス《…そう…まさか
正邪「…お前…も…?」
アマテラス《私もよ。あなたの言う『強者』だけでなく『弱者』も…ううん、全員が笑って暮らせる世界…その実現のために私は戦うの》
正邪「…………」
アマテラス《……だからこそあなたも協力してほしい。『弱者』とか『強者』とか関係ない…愛と平和の世界のために》
そう言ってアマテラスは正邪に向けて手を差し出す。彼女の瞳がキラリと光り、正邪は『主神』の凛としたオーラに圧倒されていた。
アマテラスが作り出したこの空間は体感時間の数秒を数時間に感じさせていた。それを破ったのはまだあどけなさが残る少女の声…
橙「藍様~!!」
藍「…む?橙!?どうした!?」
橙「敵襲です!!無数の妖怪達が永遠亭付近に!!」
妹紅「…マジか…!行くぞ!」
ツクヨミ《…大丈夫だろうと思うが…ひとまず戻ろう!》
アマテラスと正邪、そして四人に駆け寄ってきたのは藍の式神の橙だった。橙の報告を聞いて藍と妹紅は永遠亭に向かって走っていく。
アマテラス《…私は行くわ。部下と民を守らないと…ダダッ…》
正邪「……待てよ…」
アマテラス《…あら……?》
正邪「…んっしょっと…私の力が必要なんだろ?」
アマテラス《…ふふっ…》
先に向かった二人に続いてアマテラスも永遠亭に戻ろうと正邪に背を向ける。それに正邪は土を払いながら立ち上がり、ぎこちなく笑みを見せた。
迷いの竹林 永遠亭付近
恐竜《 ギャォォォォォ!!》
翼竜《 キェェェェェェ!!》
鈴仙「…っ!バキュンッ!いったいなんなのよ!こいつら!!」
早苗「おおっ!まるでリアルモンハンですね!」
蓮子「確かにそうだけど!戦いに集中して!!」
永遠亭近くの竹林では巨大なティラノサウルスやプテラノドンの群れが押し寄せていた。彼らの目的地は当然永遠亭であろう。
暴れる恐竜達を水際で鈴仙や早苗達が押し留めている。
霊夢「ドガンッ!…ビュンッ!はっ!」
魔理沙「ズドドド!…ビュゥゥ!おらよっ!」
恐竜達《 ゴギャァァァ…!!》
応戦する人間や妖怪達の間を飛び回りながら、霊夢と魔理沙は自らの弾幕をばらまいていく。オマケに『分神』状態の蹴りがひときわ大きな竜脚類(ブラキオサウルス)の首にクリティカルヒットした。
たまらずその竜脚恐竜は地面に倒れこみ、二人は華麗に地面に着地して戦闘を続ける。
霊夢「バリバリッ!ねぇ!ゼウス!!こいつらどこのどいつの配下!?」
ゼウス《こやつらは『地竜』!おそらくアヌビスの眷属だろう!》
魔理沙「ズドォンッ!誰の配下でもいいが…こういう時は大概大本を叩くべきだろ!?」
♪~♪♪♪~♪♪~♪~♪♪~
妖夢「…ガキィンッ!…空から…音楽が!?」
クリシュナ《…この音色…!スピリット達を凶暴化させる音楽よ!》
天子「ズバンッ!私がやる!誰だろうとぶったぎってやるわ!」
フラン「あ~!私も行く~!!」
すると戦場の空から妖しげな音色が霊夢達の耳に飛び込んできた。音楽のスペシャリストであるクリシュナの指摘に、天子とフランは我先に元凶をたたこうと飛び上がる。
咲夜「…カッ!…!!妹様!!お待ち下さい!!」
フラン「…え?」
ゴロゴロゴロゴロ!ドッガァァァンッ!!!
天子「ドゴンッ!…っっ!?きゃぁぁ!!」
セト《うぐっ!何だこの雷!?》
フラン「バッ!わっ!!?…咲夜がいなかったら、危なかった…」
だが今度は飛んだ二人めがけ、強烈な落雷が襲いかかってきた。『未来予知』した咲夜の声を聞いたフランは紙一重で雷をかわすが、天子はそのまま雷にうたれて地面に落っこちた。
天子「…いった~い…何よ!反則じゃない!!」
雷鼓「あはは!無様だねぇ~!」
八橋「姐さんカッコいい~!」
弁々「もっとやっちゃって~!」
永琳「…奴らね。この音楽の『音源』は」
さすがに頑丈な天人、ダメージらしい傷もなくすぐに身体を起こしてわめく。それを嘲笑う声も妖しげな音色と同時に永遠亭に響き渡り、冷静な永琳は即座に標的を『音源』こと九十九姉妹に切り替えた。
永琳「…シュタッ…さて…ここからだったらあの雷も迎撃できるはず……」
雷鼓「…へぇ~…撃ち落とす気かい?無駄だ!こっちにはこいつがいるんだよ!八鼓『雷神の怒り』!!」
針妙丸「出番ですね!小槌『大きくなあれ』!!」
純狐「…純化!!」
永琳「…!!?…星符『紅蓮月花』!!」
ドゴォォォンッッッ!!!!
文「っっ…!!」
幽々子「…凄い衝撃…!」
永琳は永遠亭の屋根に登り、雷鼓を撃ち落とそうと矢を構える。それにも動じず雷鼓は再び強烈な落雷を発生させる。だがいつの間にか雷鼓の側にいた小人、少名 針妙丸が秘宝『打出の小槌』の魔力を解放し、『無名の存在』純狐が雷を純化させた。
打出の小槌の魔力と純化で何倍もの大きさになった雷と、永琳の炎の矢が空中で激突し、辺りに猛烈な爆煙を巻き起こす。
永琳「…ハァ…ハァ…まずい…!まさかあの小人や神霊までいるなんて…ぅ!」
雷鼓「…さすがに耐えるか。でも何時まで持つかな!?もう一発!!」
針妙丸「ほいっと!」
純狐「ふんっ!!」
輝夜「永琳!」
『星神』としてフルパワーで戦える永琳でも、打出の小槌+純化の雷を打ち消すのは身体に堪えるらしい。思わず膝をついて荒く呼吸を繰り返す永琳に再び三人が攻撃を放つ……
雷鼓「ぶっつぶれろぉぉぉ!!」
永琳「…しまった…!!」
ゴロゴロゴロゴロ!!バッゴォォォォンッ!!
まるで人為的に発生させた稲妻とは思えないほどの雷が、動けない永琳へと襲いかかる。雷がぶつかって、何かが焼けた焦げ臭さとそれによって発生した煙が辺りに充満した。
鈴仙「…師匠!!」
豊姫「八意様!!」
依姫「…そんな…まさか…!!」
雷鼓「うおっしゃ!敵の右腕を討ち取った~!」
永遠亭の屋根から漂う煙は、竹林で戦闘していた鈴仙達にも確認できた。間違いなく永琳はよけることも迎撃もしていなかったので、敵も味方も永琳が無事では済まないことを確信した………
???「…ゲホッ!ゲホッ!…残念でした~!!所詮道具は道具か?」
永琳「…え…確かに直撃したはず…」
雷鼓「ん!?誰だ!?」
…だがその確信は煙が晴れて現れた
正邪「はっは~!鬼人 正邪様!参上!!」
藍「…まさかお前と並び立つとはな…」
妹紅「ははっ!そういうもんだろ?人生は!」
アマテラス《岩戸の防壁解除。破損は無し》
ツクヨミ《急急如律令。結界、解術》
スサノヲ《落ちるのはてめえらだ!》
煙から出てきたのは神力を放出している三人の妖怪達。彼らの後ろには透明なエネルギーの姿をした『高天ヶ原三神』がそれぞれの力を解放していた。
彼らの前からすぅぅと消えていった『白いエネルギーのバリア』『無数のお札』『何重もの炎の盾』が雷鼓の稲妻を防いでいたのだ。
藍「…橙!下がってよく見ておきなさい!これが最高クラスの式神使いの戦いだ!」
橙「は、はいっ!」
ツクヨミ《大切な娘と妹分を傷つけようとしたのなら…お前達の行き先は決まった。急急如律令。十式戦鬼に十王よ。撃ち落とせ》
向かって左には夜の王にして月の都の最高神、『創界神ツクヨミ』が札を構えて何やら呪文を唱えている。すると依り代の藍の傍らに黄金色の閻魔達が杓を持ち、紫色の鎧武者達が剣や槍を振るう。
ツクヨミ《さて…藍、これを。スメラギンガの刀だ》
藍「パシッ…感謝します」
最後にツクヨミは自らの刀を藍に渡すと、光の粒子となって身体に戻った。自身も九尾の狐の大妖怪である藍は刀を受け取り、攻撃の準備に入る。
妹紅「へへっ!輝夜!あのバカどもは請け負った!」
スサノヲ《うっし!全力には程遠いが…!吠えろ!》
反対側の右側には『アマハラ』の武神、『創界神スサノヲ』が自分の剣から燃え盛る炎と荒々しい水流を放出する。それらは打ち消し合うことなく、妹紅の周りに収束していった。
妹紅「全ての焼く炎竜に…全てを飲み込む水竜か!今の私達は!負ける気がしないな!!」
スサノヲ《どんなもんよ!バックアップは任せな!》
スサノヲの炎と水はそれぞれ四本の巨大な竜へと変わり、妹紅を中心にまるで山田の大蛇の如く鎌首を雷鼓達に向ける。スサノヲはエネルギーの制御したまま、妹紅の中へ入っていった。
針妙丸「…これ、正邪。いい加減に」
正邪「いい加減にするのはそっちだ!『力』だけで捩じ伏せる奴の言うことなんざ聞きたくないな!」
アマテラス《我が神器の一つ、草薙の剣よ、正邪に力を》
ツクヨミとスサノヲの間、以前協力関係にあった針妙丸が正邪をいさめようとするも、正邪は自分の意思を曲げない。その間にアマテラスは豪華な巫女服の裾から一本の両刃剣を正邪に授けた。
正邪「…これって…あの三種の神器の!?」
アマテラス《いかにも。日輪オーラ展開。さぁ!ひっくり返そうじゃない!》
正邪「…ぬぉ!?…ふ、ふんっ…仕方ないな!あんたの『理想郷』!!創ってやろうぜ!」
正邪が『草薙の剣』に驚いている隙に、アマテラスは正邪の身体へと降りる。少し照れ腐れながら正邪は剣を手に取り、太陽のオーラを纏って針妙丸達を見上げた。
純狐「…月の都の主神…!!嫦娥の…!!」
雷鼓「…あちゃー…まずはこっちを潰さないと…!!」
針妙丸「…正邪、容赦しないよ?」
藍「…急急如律令。かかれ!」
妹紅「潰せるもんならな!」
正邪「ここから始まるんだよ!正邪様の武勇伝は!!」