迷いの竹林 内部
小型肉食恐竜《ギィィィッッ!!》
椛「はっ!ズバンッ!」
ドォォォォンッッ!!!
椛「きゃっ…!」
ヘルメス《おおうっ!…スサノヲのじーさん…余波がスゲェな…》
『アマハラ』3姉弟が空で激戦を繰り広げている一方、竹林内では椛の剣が『ラプトル』を斬り捨てていた。ちょうど妹紅が大爆発した爆風で、椛は思わず膝をつく。
ヘルメス《…椛ちゃん、大丈夫かい?》
椛「…ええ…まだまだ行けます!」
ヘルメス《…まぁ…無茶だけはすんなよ》
この大異変が始まってから、椛は各方面への連絡係として奮闘していた。それに加え、こうして大きな戦いがあればいつも最前線で剣を振るっている…
…その疲労が効いているのか、体内からのヘルメスの声に答える声にもいささか元気が足りていないように思える。
???「ふぉふぉふぉ…背後がお留守ぞよ?」
椛「…っ!?ブンッ!」
???「おお…っと…なかなかやるのう」
その時後ろから声が聞こえ、反射的に椛は右手の刀を大凪ぎに振り抜いた。その人影はクルリと宙で一回転すると、特徴的な尻尾を器用に操って着地する。
椛「…あなたは…!佐渡の大狸…!」
???「『二ツ岩 マミゾウ』という名もちゃんとあるぞ?白浪天狗よ」
椛「…カチャッ…」
どこか掴めない顔つきで椛の前に降り立ったのは、年寄り染みた言葉使いをする化け狸『二ツ岩 マミゾウ』だった。圧倒的な力を持つ大妖怪のマミゾウを相手に椛は静かに刀を構えるが、斬り込む隙を見いだせない。
マミゾウ「…来ないのならこちらから行くぞ?『肉食化弾幕変化』!!」
狼の群れ《アォォォンッ!!!》
ヘルメス《へぇ…犬には犬ってか?》
構えるだけの椛にマミゾウは見た目は普通の弾幕をばらまく。するとその弾幕一発一発が小さな狼になって椛に襲いかかってきた。
椛「私は犬ではありません!狗符『レイビーズバイト』!」
ヘルメス《…狗じゃん…》
…どうなんでしょうね…?
すぐさま椛はトレードマークの盾を放り投げ、自由になった左手も刀に添えて自分の正面で一回転させる。そして己の妖力を斬撃として刀から放ち、向かってきた狼の群れを切り裂いていった。
マミゾウ「ほぅ…だがいつまでそれが持つかのう?『延羽化弾幕変化』!!」
小鳥の群れ《キョェェェッッ!!》
椛「…!『レイビーズバイト』!!」
ヘルメス《…椛ちゃんのスタミナを枯らす気か…それなら…ボソボソ…》
自らの技を打ち破られても、マミゾウは平然と再び弾幕を椛に放つ。今回は弾幕を雀の群れにして襲いかからせたが、再度椛は妖力の斬撃で鳥達を打ち落としていく…
…しかしヘルメスが危惧する通り、マミゾウと椛とではスタミナが違う。ただの白浪天狗の椛の体力は大妖怪のマミゾウについてはいけない、ましてや向こうはただ弾幕を放つだけだが、こちらは警戒マックスで反応しながら、打ち落とさないといけない…
椛「ハァ…ハァ…うぐっ…」
ヘルメス《おいおい椛ちゃん!そろそろスタミナが…》
集中しながら何発も妖力の斬撃を放っていた椛だったが、十に届くか届かないかの辺りで痛々しく顔を歪めた。まるでマラソンをした後のように、刀を杖代わりにして肩で息をしている。
マミゾウ「…しぶといのぉ…だがこれで終いじゃ!変化『鳥獣戯画』!!」
動けない椛を取り囲むように、マミゾウは今までよりさらに多い弾幕を出す。その弾幕は狼や小鳥や蛙へと変わると、いたぶるかのように椛の周りを旋回し始めた。
マミゾウ「さぁて…!かかれぇい!」
椛「…くっ…!」
本当に生きているかのような動きで狼に小鳥、蛙の群れはマミゾウの言葉をトリガーにして、一斉に椛へと突進する。もう余力がない椛はどうにか防ごうと、刀を振ろうとした……
文「…全く…世話が焼けるわね。『幻想風靡』!!」
ホルス《間に合ったか!》
マミゾウ「ぬっ!?」
その瞬間、並び立つ竹の間を縫うように風が吹いてきた。その風を纏った緑の烏天狗、射命丸 文が椛の周りに群がる動物達を蹴散らして、椛の側へ降り立った。
椛「……礼だけは言っておきます…」
文「あやや、ならさっさと立ちなさい。
ヘルメス《うぇーい、ツンデレ~!》
ホルス《文も~!》
ぶっきらぼうに椛は文に言うと、刀を振って立ち上がる。もう何度もこんな下りをしている文もすぐさまマミゾウに意識を戻した。
マミゾウ「…二人だろうが変わらんぞ!『八百八狸噺子』!」
文「…椛、まだ行ける?」
椛「…もちろん。
文「…ふふっ…」
マミゾウは周りの恐竜達サイズの巨大な満月型弾を作り出し、二人めがけてぶつけてくる。『ホル=エッジ』を構えた文と息を整えた椛は軽口を交わした後、お互いの得物に力を込めて斬りかかった。
文「風符『
椛「『
ガギィィィィィィィンッッッ!!!
マミゾウの月型巨体弾幕と文の風を纏った『ホル=エッジ』、椛のヘルメスの力を込めた刀の一閃がぶつかり合う。身の丈を軽く越える弾幕に文も椛も顔をしかめ、グッと足を踏ん張らせた。
文「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
椛「だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ヘルメス《…今だ!二人とも!!》
ホルス《この月を上に流せ!!》
文 椛「「…!…おらぁ!」」
バゴォンッッ!!
その時体内の創界神二人が好機を伝える。その声を聞き逃さなかった文と椛はお互いの得物の先をを下に反らせ、身体を後ろへねじった。
それにより文と椛の剣先が下から上に向いたため、巨体弾幕は二人の剣に沿うように斜めに弾道を変えた。
マミゾウ「なぬっ!?」
文「おらぁっ!!」
椛「せいやっっ!!」
マミゾウ「…うごぉ……!!」
無防備になったマミゾウを文の『ホル=エッジ』と椛の刀がクロスするように切り裂いた。相当な深傷にマミゾウはその場で痛みを堪えるため、うずくまる。
椛「…グッ」
文「…!…グッ」
マミゾウを斬り抜いた二人…すると椛がしたガッツポーズを見て、文も己の腕を合わせて疑似ハイタッチを交わした。
文「…さて…あとは任せるわ」
椛「了解。ヘルメス様、出番です」
ヘルメス《久しぶりのバトルじゃあ~!!》
あとはバトルで蹴りをつけられると踏んだ文は、また翼を広げて飛び去っていく。それに振り返らず椛はヘルメスに声をかけ、踞ったままのマミゾウにデッキを向けた。
マミゾウ「ぐ…やむを得ん…!」
椛「…参る!」
マミゾウ 椛「「ゲートオープン!界放!!」」
マミゾウ「先行は譲るぞ」
椛「…メインステップ!『刃獣キツネッキー』を召喚!召喚時にデッキを三枚めくります!」
椛先行で始まったこのバトル、最初にフィールドに現れたのは胴体から剣が生えた黄色の狐だった。『キツネッキー』は自身の効果でデッキをサーチする。
椛「…よしっ!めくられた『創界神ヘルメス』を手札に加え、残りはデッキ下に。これでターンエンド」
マミゾウ「なるほど、創界神だけを探るか。メインステップ。『マガツ・ドラグーン』を召喚じゃ。バーストも伏せよう」
一方マミゾウは濃い紫色のワイバーン型ドラゴンを召喚した。このスピリットは自身を『紫』としても扱うハイブリッドスピリットの特徴を持っている。
マミゾウ「ふむ…ちょいとつついてみるか。アタックステップ。『マガツ・ドラグーン』でアタックじゃ。効果で一枚ドローする」
椛「ライフで受ける!」
『マガツ・ドラグーン』が一直線に椛めがけて飛び、硬い部でライフを一つ破壊していった。
マミゾウ「ターンエンドじゃ」
椛「メインステップ。駆け抜けろ!『創界神ヘルメス』を配置!『神託』によりデッキ上三枚をトラッシュへ。対象が二枚なので、コアを二つ置いて配置です」
ヘルメス《さらに『英雄獣ペイリトゥース』!来な!こいつは召喚時に相手の手札を一枚、手元に置かせる!》
マミゾウ「ぬぉ!?」
椛の後ろに現れたヘルメスに続き、フィールドにも胴体からサボテンが生えたヒョウが召喚される。『ペイリトゥース』の吠える攻撃がマミゾウの手札を一枚露にした。
そのカードは……『ソウルホース』、スピリットカード。
椛「置かれたのがスピリット。よってボイドからコアを二つ『ペイリトゥース』へ。そのコアを使い『ヘルメスの竜巻神殿』を配置です」
増えたコアで椛は竜巻が巻き起こる神殿を配置し、更なるコアブーストを展開した。
椛「これでターンエンド」
マミゾウ「…アタックはせんか…メインステップ。手元の『ソウルホース』を召喚し、ネクサス『旅団の摩天楼』を配置するぞい。配置時に一枚ドロー」
椛がコアを増やしていくのに対し、マミゾウは足に炎を灯した霊馬の後に配置した『旅団の摩天楼』でシンボルと手札を増やしていく。
マミゾウ「マジック『トーテンタンツ』を使うぞ。手札の『黒き骸王バルト・アンデルス』を破棄して『キツネッキー』と『ペイリトゥース』のコアを一つずつリザーブへ」
椛「…『バルト・アンデルス』…」
次にマミゾウは手札のスピリットカードを一枚棄てて、椛のスピリットを除去しにかかる。『キツネッキー』はレベル1だったので、コア0となり消滅した。
それより椛はマミゾウが棄てたカードの方が気になっていた。
マミゾウ「アタックステップ!行け『マガツ・ドラグーン』!アタック時に一枚ドローするぞ!」
椛「もう一度、ライフで受ける!」
再び『マガツ・ドラグーン』が雄叫びをあげて空を飛ぶ。その勢いのまま突進して椛のライフを砕いた。
マミゾウ「終わりぞよ。ターンエンド」
椛「…考えても仕方ない!メインステップ!『アルゴの英雄獣メレアグロス』をレベル2で召喚!」
ヘルメス《お…ソイツが出たってことは、ガチャの時間だぁい!》
椛のフィールドに『ペイリトゥース』より大きい白銀の身体に、青い鎧と槍を咥えたオオカミが現れる。ヘルメスの言う「ガチャ」は…このスピリットの効果に由来していた。
椛「アタックステップ!『メレアグロス』でアタック!アタック時効果!再び相手の手札を一枚手元に!」
マミゾウ「…またか…めんどくさいのぉ…」
槍を咥えたまま『メレアグロス』は颯爽と走りだし、緑の衝撃波を放ってマミゾウの手札を一枚手元へ落とした。
椛「さらにレベル2からの効果!相手の手元のカードと同じ数、こちらのデッキをオープン!その中の『英雄獣』を1コストで召喚する!」
ヘルメス《うしっ!駆け抜けろ化神ッ!『七大英雄獣 光速神王オデュッセイバー』!!レベル2で召喚!!》
『メレアグロス』の雄叫びに呼応して、空からヘルメスの化神『オデュッセイバー』が駆け降りてくる。この召喚で『ヘルメス』のコアは合計五個となった…
椛「『創界神ヘルメス』のレベル2『神域』!コスト4以上の『剣獣』はBPプラス10000され、ターンに一度回復します!」
マミゾウ「…むむ…フラッシュタイミング!マジック!『スケープゴート』!トラッシュより来たれいっ!『黒き骸王バルト・アンデルス』!レベルは2じゃ!」
ヘルメスの加護を受ける『メレアグロス』の前に黒い竜巻が巻き起こる。中から三つの首が竜巻を食い破って現れ、四つ足で力強く地面を踏みしめた。
黒いしわがれた翼に三つの頭部、尻尾にも蛇の顔がついたキメラ『バルト・アンデルス』が椛を威嚇する。しかしレベル2のコスト確保のため、『マガツ・ドラグーン』と『ソウルホース』は消滅してしまった。
マミゾウ「そやつのアタックはライフで受けよう!だがバーストをもらうぞ!『封臨禍斬』!このマジックはアタックしてきたスピリットのコアを一つ、ボイドへ送る!」
椛「…っ…!」
『メレアグロス』の槍がマミゾウのライフに突き刺さるが、バーストから溢れ出た黒い煙が椛のスピリット達の足元に充満した。椛のスピリット達は『オデュッセイバー』以外は全員レベル1…これ以上のアタックはあまり有効と言えないだろう。
マミゾウ「さらに『スケープゴート』の効果で『バルト・アンデルス』は破壊じゃ…だがお主の手札を受ける一枚道連れじゃよ」
たった今現れた『バルト・アンデルス』が光になって消えていく。しかしそれと同時に椛の手札のカード…『パキラフォックス』がすううっとトラッシュへ落ちた。
マミゾウ「…スピリットじゃのぉ…なら『バルト・アンデルス』はそのままフィールドに残る」
椛「…『メレアグロス』は回復します。ターンエンド」
破壊された『バルト・アンデルス』が再び黒い竜巻から復活する。『封臨禍斬』の影響もあり、椛はターンをマミゾウへ返した。
マミゾウ「メインステップ!『ボーン・トプス』を召喚!さらに『咎人の骨剣エグゼキューショナーズ』を『バルト・アンデルス』に直接合体じゃ!」
空から落ちた紫の光が『バルト・アンデルス』の尻尾にぶつかると、一本の剣に変わる。そして隣にも骨のトリケラトプスが召喚された。
マミゾウ「『バルト・アンデルス』のコアを使い『旅団の摩天楼』をレベル2へ!アタックステップ!ソード合体アタックじゃ!ネクサスの効果で『メレアグロス』は消滅!」
椛「…『オデュッセイバー』!ブロックです!!」
『旅団の摩天楼』レベル2効果で椛のスピリットのコアが一つ取り除かれる。そして『バルト・アンデルス』めがけて『オデュッセイバー』が飛びかかった。
レベルが下がったとは言え、『バルト・アンデルス』はBP11000、『オデュッセイバー』はBP10000。『バルト・アンデルス』の首に噛みついた『オデュッセイバー』だったが、尻尾に振り払われて『エグゼキューショナーズ』で刺される………
椛「フラッシュタイミング!手札から『疾風の双刃カムイ・ハヤテ』を『オデュッセイバー』にダイレクト合体!これでBPはこちらが上!!」
椛の手札から飛び出した双刃が『バルト・アンデルス』を弾き飛ばし、『オデュッセイバー』は噛みついて合体する。
『カムイ・ハヤテ』の合体によってパワーが逆転した『オデュッセイバー』は目にも止まらぬスピードで『バルト・アンデルス』をすれ違い様に切り裂いた!
マミゾウ「ぬぉぉ…た、ターンエンドじゃ…」
椛「メインステップ!『オデュッセイバー』をレベル3に!アタックステップ!行け!ソード合体スピリット!」
ヘルメス《まずは残った『エグゼキューショナーズ』と『ボーン・トプス』を手元へ!さらにレベル2効果で『オデュッセイバー』はトリプルシンボルだ!》
『カムイ・ハヤテ』を咥えた『オデュッセイバー』が駆け出して、『エグゼキューショナーズ』と『ボーン・トプス』を切り裂く。
これでマミゾウのブロッカーは居なくなった。
マミゾウ「…あ…ヤバい…」
椛「覚悟!」
一筋の風になった『オデュッセイバー』が『カムイ・ハヤテ』でマミゾウのライフを一気に3つぶったぎった!!