東方星神録   作:あんこケース

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さとりとか依姫みたいに『他人の力を使える』キャラっていろんな組み合わせを想像できて、好きです。


覚妖怪VS小さな賢将

命蓮寺 屋根 さとりVSナズーリン&小傘

 

 

さとり「…シュンッ!」

 

ナズーリン「…ちょこまかと…」

小傘「わわっ!?今度はあっち!?」

 

命蓮寺の屋根ではナズーリンと小傘をさとりが相手取っていた。だがそれは戦いというより、むしろ鬼ごっこに近い…なぜなら…

 

ブラフマー《…なぁさとりちゃん…》

 

さとり「ハァ…ハァ…何ですか…ハァ…?」

 

 

ブラフマー《 そろそろ逃げるの止めね?

 

さとり「絶っっ対!イヤです!」

 

瓦の屋根を駆け抜けながら、さとりとブラフマーは脳内でそんな会話をくり広げていた。実の所、さとりの強さとは『心を読む程度の能力』で相手の記憶から厄介な攻撃の記憶を引っ張り出して再現する事……

 

 

……それだけである。

 

 

さとり「ですから!私はもっぱらインドア派なんです!『弾幕ごっこ』はともかく、戦闘は専門外!」

 

ブラフマー《ん?幻想郷の地下…『旧地獄』?それの親玉みたいなポジションじゃなかったっけ?》

 

さとり「デスクワークに向いてるのが私だけだったんです!『鬼達には向かないでしょう』って!」

 

まるで誰かに怨みをぶつけるようにさとりは叫ぶ。その矛先はおそらく某妖怪の賢者か某閻魔様に向いていると思われるが、幸か不幸かその声は風に流されていった。

 

悲痛な声をあげながら走るさとりを、どうにかフォローしようとブラフマーは思案する。

 

ブラフマー《…厄介な攻撃を再現できるのもスゲェつえいじゃん》

 

さとり「『能力』がすべてじゃないですよ!戦闘は!どこかのフラワーマスターが良い例です!」

 

ナズーリン「まてぇぇぇ!!」

 

両手をブンブン前後に振りながら、さとりは屋根の上を縦横無尽に走りまくる。ただ一つさとりの想定外だったのは、そこまで命蓮寺の屋根が広くなかったことで……

 

 

さとり「ズザッ…あっ…」

 

ナズーリン「どうやら、もう逃げられないね」

 

小傘「…ようやく追い詰めたぁ~…」

 

…すぐにさとりは屋根の端に追い詰められてしまった。そばに飛び移れる屋根もなく、前からはナズーリンと小傘がジリジリと距離を詰めてくる。

 

さとり「…ぅ…」

 

ブラフマー《…誰だって『最初』があるもんだ。サポートしてやるから!お前はドンッと行け!おらよっと!》

 

振り返って近寄ってくる二人に一瞬尻込むさとりだったが、体内のブラフマーは半ば脅迫染みた声援をあげ、自分の愛刀『三龍宝剣 エンシェントキャリバー』をさとりの手に握らせた。

 

さとり「パシッ…ええいっ!こうなったらやけです!かかってきなさい!!」

 

ナズーリン「棒符『ビジーロッド』!!」

 

小傘「大輪『からかさ後光』!!」

 

『エンシェントキャリバー』を構えてさとりは腹をくくる。その直後、さとりを挟むようにナズーリンがレーザーを、小傘が上から米粒弾幕を放ってきた。

 

ブラフマー《焦るな!これはいつものように避ければ良い!》

 

さとり「…スッ…ふっ…バッ!」

 

ブラフマーの指示に合わせてさとりは『弾幕ごっこ』で培った、回避能力でレーザーをくぐり抜け、米粒弾もかわしていく。

 

ブラフマー《良いぞ!次はこのまま斬りかかれ!対象はそのネズミっ娘だ!》

さとり「せいっ!!」

 

ナズーリン「ぐっ…!ガキンッ!!」

 

小傘の弾幕をかわしてさとりはナズーリンに接近すると、両手で『エンシェントキャリバー』を振り下ろす。ナズーリンは両手のダウンジングロッドをクロスさせ、剣を受け止めた。

 

ブラフマー《よしっ!さとりちゃん!お前の『記憶』から『摩多羅神』の剣術スペルを引っ張ってこい!》

 

さとり「ググッ!想起『うろおぼえの七星剣』!!」

 

ナズーリン「ぐへっ…!」

 

ブラフマーに言われ、さとりは己の記憶から隠岐奈のスペル『七星の剣』を再現する。

 

その力でさとりの『エンシェントキャリバー』の刀身が本物の炎へと変わってナズーリンのロッドを切り裂き、本人にもダメージを与えた……

 

…うろおぼえなのは焦っていたからだろうか?

 

さとり「…できた…私…剣術はできないのに…?」

 

ブラフマー《気を抜くな!もう一人いるぞ!》

 

小傘「わっ!火!?だったら…驚雨『ゲリラ台風』!」

 

炎の斬撃に後退するナズーリンを見て、驚いていたのはさとり自身だった。

 

驚くさとりの炎に対抗しようと小傘が自分の本体であるからかさを掲げる。すると空模様が怪しくなり、強風と共に大粒の雨がさとりに降ってきた。

 

ブラフマー《雨風か。なら吹き飛ばしちまえ!奇跡の風でな!》

 

さとり「…想起『おぼろげな神の風』!」

 

 

ビュゥゥゥゥゥッッ!!!!

 

 

小傘「どっっひゃぁぁぁ~!!?」

 

目には目を、歯には歯を、風には風とさとりの『サードアイ』が己の記憶を呼び覚ます。早苗のスペルと小傘のスペルがぶつかり、破れた小傘の身体が大空へ舞い上がった……

…そしてやはり『おぼろげ』なのは…?

 

さとり「………私……まさか強い…?」

 

ブラフマー《…まぁさとりちゃんは弱かった。でもな、それはさとりちゃんの能力を生かせてなかったからだと思うぜ?》

 

さとり「…はいぃ?」

 

ブラフマー《だってよ。自称『インドア派』ってことは、他人と接する機会が少ないだろ?それはつまり()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()ってことでもある。そうだろ?》

 

空の彼方へ飛んでった小傘を眺めながら、さとりは自分の手を見て呟く。そこにブラフマーは答えをくれた…確かにお空が『八咫烏』の力を得るまで、さとりは地霊殿以外の人とはあまり接触がなかったのだ。

 

ブラフマー《でも今は違う。別の世界にまで出て、いろんな『出会い』を経験してる。その『つながり』の強さこそ、さとりちゃんの強さに直結してるんだ》

 

さとり「…弾さんには感謝しないといけませんね」

 

ブラフマー《だな♪》

 

さとりはぼやきながら照れ臭そうに頭をかく。いつもこいしやお空が世話になっている彼だったが、気づかずにさとりも世話になっていたのだ。

 

ナズーリン「…イタタっ…ま、まだだ…!」

 

ブラフマー《…もうここからは…大丈夫か?》

 

さとり「ええ。後ろで突っ立っていれば良いですよ」

 

ブラフマー《辛辣!?》

 

態勢を立て直したナズーリンがよろよろとさとりの前に戻ってくる。

 

 

さとり ナズーリン「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナズーリン「あまり私をなめない方が良いよ?仮にも『賢将』だからねぇ…」

 

さとり「…自分で言いますか…?まぁ良いです。メインステップ。マジック『ブレイヴドロー』。デッキから二枚ドローし、三枚オープンします」

 

自慢気に(無い)胸を張るナズーリンを尻目に、さとりはターンを開始する。最初にリバイバル版の『ブレイヴドロー』を使い、手札を増やしにかかった。

 

さとり「…その中の『三龍宝剣エンシェントキャリバー』を手札に、そして『アバタードラゴン・ヴァイオレット』は手元に置き、残りはデッキの下へ」

 

ナズーリン「…うまい。あのマジックはそういう意味で使うのか…」

 

さとりが使ったマジックにナズーリンは感心していた。今言った通り、さとりの使う『創界神古竜』軸のデッキはオープンされた時に手元へ行くスピリットがいる。

 

しかも神話ブレイヴとも相性が良いため、『ブレイヴドロー』はまさにベストマッチなマジックだろう。

 

さとり「バーストをセット。ターンエンド」

 

ナズーリン「メインステップ。『ボーン・ダイル』と『さまよう甲冑』を召喚だ。召喚時の効果で一枚もらうよ」

 

ナズーリンが召喚したのは紫色をしたワニと、不気味な霧を纏う甲冑だった。初手に『ボーン・ダイル』はかなり強めである。

 

ナズーリン「バーストも伏せて、ターンエンドとしよう」

 

さとり「…はぁ…イヤな思い出が…メインステップ。未来の創造主!『創造の創界神ブラフマー』を配置!同名がないので『神託』します。デッキを三枚トラッシュへ」

 

ブラフマー《シャッ!全部対象だったからコア三個追加!そんでもって『アバタードラゴン・ブルー』は手元行き!》

 

さっきの『ブレイヴドロー』で引き当てたのか、さとりの後ろにブラフマーが突っ立った。『アバター』達も順調に手元へ貯まっていっている…

 

……しかしまぁ…相手のトラウマを思い出させる『覚妖怪』がトラウマを呼び起こさせられるというのは…なかなか面白い…

 

 

さとり「…想起『初期手札すべて防御マジック』」

 

 

…ぎゃぁぁぁ!………チーン………

 

 

ブラフマー《…?さとりちゃん…どしたん?》

 

さとり「何でも。さらに手元から『アバタードラゴン・ヴァイオレット』を召喚。ターンエンド」

 

……さ、さとりは続けて紫色のアバタードラゴンを召喚し、ターンを終えた。

 

ナズーリン「…メインステップ。ネクサス『偽りの地下帝国』を配置だ。『ノーザンベアード』もレベル2で出そう」

 

ナズーリンの背後に薄紫の煙に包まれた城がそびえ、フィールドには大きなシロクマがドスンッ!と召喚された。

 

さとり「…『ノーザンベアード』ですか…」

 

ナズーリン「まだ動かないよ。ターンエンド」

 

さとり「…メインステップ。『三龍宝剣エンシェントキャリバー』を『創造の創界神ブラフマー』にダイレクト合体!」

 

ブラフマー《よっと…厳しいな…俺の『アバター』達は『ノーザンベアード』を突破できねぇぞ…》

 

固い表情でさとりはブラフマーに刀身が炎の剣を合体させる。しかしナズーリンの『ノーザンベアード』が予想以上に問題だった。

 

BP8000、ブロック時にコアブースト&ターン1回復…今『アバター』達を並べて攻撃しても、結局向こうにコアを与えるだけになってしまう。

 

さとり「…ここは我慢です。ターンエンド」

 

ナズーリン「…こりゃ長引きそうだ。メインステップ。『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』を召喚して、手札のブレイヴをノーコストで召喚。『紫電の霊剣ライトニング・シオン』!」

 

手堅く行こうとさとりはアタックをせず、ターンを返す。それとは対照的にナズーリンは空の北斗七星から一体のドラゴンを呼び出し、それに続くようにソードブレイヴも召喚した。

 

ナズーリン「『ライトニング・シオン』の召喚時効果。相手スピリットのコアをリザーブへ。そしてドロー」

 

さとり「ですが『アバタードラゴン』はフィールドを離れる時、私の手元に返ります」

 

まるで死神のような容姿をした紫色の『北斗七星龍』は手にした『ライトニング・シオン』で『ヴァイオレット』を切り裂く。

 

ナズーリン「アタックステップ!合体スピリットでアタックだ!」

 

さとり「…『ブラフマー』の神技を使用!手元に戻った『ヴァイオレット』を再度召喚!そのアタックはライフで受けます!」

 

ブラフマーが『エンシェントキャリバー』の刃先から炎を噴き出させ、『ヴァイオレット』を呼び戻す。それと同時に合体した『北斗七星龍』が『ライトニング・シオン』をさとりのライフを貫く。

 

ナズーリン「ここらでターンエンドっと」

 

さとり「…イタタ…メインステップ。『アバタードラゴン・ブルー』、『アバタードラゴン・イエロー』そして『焔竜魔皇マ・グー』を召喚!」

 

ライフを二つ失ったさとりだが、貯まったコアを使って青と黄色の『アバター』とこれまた死神を思わせる黒いドラゴンを召喚した。『北斗七星龍』と向かい立つ『マ・グー』は燃え上がるマグマのような顔の装飾を震わせ、威嚇する。

 

さとり「アタックステップ!『マ・グー』にトラッシュからコアを置いてレベル3へ!『イエロー』でアタック!」

 

ブラフマー《アタック時に『ノーザンベアード』を破壊!おまけに『マ・グー』によってBPプラス3000かつダブルシンボルよぅ!》

 

強化された『イエロー』が飛び上がり、口から炎を吐いて『ノーザンベアード』を焼き尽くす。

 

さとり「フラッシュタイミング!手札の『アバタードラゴン・グリーン』のアクセル!『ボーン・ダイル』も破壊します!」

 

ナズーリン「むっ…ライフで受けよう!」

 

追撃にさとりは手札のアクセルを切る。放たれた緑の光線が『ボーン・ダイル』を貫き、ナズーリンのライフも『イエロー』の手刀が二つ叩き割った。

 

さとり「続けて『ブルー』でアタック!」

 

ナズーリン「ここまでだよ。フラッシュタイミング!マジック!『ポイズンブレス』!」

 

さとりはこのまま押しきれると踏み、『ブルー』もアタックさせる。しかしナズーリンの手札が黒い煙になって『ブルー』を地面に叩き落とした。

 

ナズーリン「『ポイズンブレス』はコアが一つのスピリットのアタックを無効にするもの。『マ・グー』以外のスピリットは私のライフを削れない」

 

さとり「…やりますね。ターンエンド」

 

吹き荒れる煙の中、ナズーリンは不適に『ポイズンブレス』の効果を述べる。さとりも髪をなびかせつつ、嗤いながらターンエンドを宣言した。

 

ナズーリン「メインステップ。『偽りの地下帝国』をレベル2にして、手札のこいつをコスト6に。賢者の蛇!『白蛇帝アルデウス・ヴァイパー』!レベル3で召喚!!」

 

『偽りの地下帝国』の霧がフィールドに流れ込むと、一ヶ所に集まって大きな蛇の形になる。それを振り払って出てきたのは黄金の翼に白い身体をした大蛇だった。

 

ナズーリン「召喚時に『アルデウス』はフィールドのコア三個を外す!『強化』も入れて合計五個!『アバター』達の三個と『マ・グー』のコア2個を指定だ!」

 

さとり「…っ…!手元には残りますが…コアは増やされますね…」

 

ナズーリン「その通り。さらに消滅したスピリット一体につき、コアを増やす!そのコアで『機巧獣ヨロイファント』をレベル2で出そうか」

 

『アルデウス』が自身と『ライトニング・シオン』の力で強化された波動を放ち、さとりの『アバター』達を消滅させる。さらにナズーリンは機械の白いマンモスを並べてきた。

 

ナズーリン「…行くか…『ライトニング・シオン』を『アルデウス』に合体!」

 

『北斗七星龍』が持っていた『ライトニング・シオン』を『アルデウス』は尻尾を巻きつかせる。そして『ライトニング・シオン』を剣先から、あろうことか飲み込み、その後腕から出して見せたのだ。

 

さとり「…うへぇ…」

 

ブラフマー《…普通に持てよ…》

 

ナズーリン「…そこは同感…アタックステップ!ソード合体アタック!!『マ・グー』のコアを3つ除去!」

 

合体した『アルデウス』の一振りが『マ・グー』のコアを吹き飛ばすが、何とか『マ・グー』はコア一つで堪える……

 

そしてここからがさとりの切り返しだった。

 

 

さとり「相手のスピリットがアタックしたので…バースト発動!『爆心龍マ・オンー龍態ー』!一枚ドローしてBPプラス5000!」

ブラフマー《…へへっ…『マ・オン』!『人態』になれ!煌臨!!》

 

 

さとりのバーストから現れたのは溶岩の鎧を纏った四つ足のドラゴン。それにさとりは手札のカードを重ねて煌臨させる。すると『マ・オン』の身体が起き上がり、一段と翼を大きくして二本足で立ち上がった。

 

さとり「…『マ・オンー龍態ー』で…ブロック!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴッッ!!!

 

 

ナズーリン「うわわっ!?なんだ…この地響きは…!?」

 

さとり「…『龍態』となった『マ・オン』はブロック時、BP30000以下の敵を……全て焼き殺す!」

 

『マ・オン』が猛烈な咆哮をあげると、『マ・オン』の身体からドロドロに溶けたマグマが発生する。明らかに触れては死ぬマグマはナズーリンのフィールドを飲み込んだ。

 

ブラフマー《ヒュー♪シヴァの気持ちがチョイとわかった気がするな。こりゃぁ気分爽快だ》

 

ナズーリン「…『ライトニング・シオン』はフィールドに…ターンエンドっ…!」

 

マグマが消え、ブラフマーの口笛が響いたナズーリンのフィールドにあったのは……突き刺さっている『ライトニング・シオン』だけだった。

 

さとり「終わらせます。メインステップはこのままにしてアタックステップ。『マ・オンー人態ー』でアタック!」

 

ブラフマー《…とどめはもらうぜ。『転~神』っ!》

 

ナズーリン「ライフで受ける…!!」

 

更地同然になったフィールドを『マ・オン』が飛ぶ。ナズーリンは『マ・オン』の火炎放射をライフで受けるしかない。

 

さとり「『創造の創界神ブラフマー』で…アタックっ!!」

 

ブラフマー《ぶったぎれろぉぉぉ!!》

 

フィールドに降り立ったブラフマーが炎の剣をナズーリンめがけて振り下ろした!!

 

 

 

 

 


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