月の都 ツクヨミの神殿 中庭
霊夢「ハァ…ハァ…霊符『夢想封印』!!」
魔理沙「…っっ!恋符『マスタースパーク』!!」
ズドドドドドドドド!!
式神「ぐわぁぁぁっっ…!」
式神「ぐおぉぉぉっっ…!」
霊夢の虹色弾幕と魔理沙の極太ビームが何人かの式神を吹き飛ばす。しかし次から次へとわいてくる式神達に二人の体力は限界に近かった。
カオス《はぁぁ!》
正邪「ぐぇっ!!」
藍「うっ!!」
妹紅「ごはっ!!」
永琳「…何…この強さ…!」
紫「……まずいわね…!」
カオスを相手にしているのは、創界神達の中でも頭一つ突き出た実力の『アマハラ』3姉弟を降ろす三人と、紫、永琳。しかしカオスが手のひらから放った衝撃波に五人ともなす術無く地面を転がった。
カオス《邪魔をするな。愚民ども!》
アマテラス《…ハッ!正邪!避けなさい!》
ツクヨミ《…チッ!急急如律令…!》
スサノヲ《姉貴が『避けろ』…!?》
ドッガァァァァァンッッ!!!!
永琳「…っ…ゴロゴロ…」
紫「ぅ…!ザザザ…」
防御力に定評のあるアマテラスですらカオスの一撃は防ぎきれなかった。五人めがけてカオスの炎がほとばしり、ツクヨミの札を貫通して大爆発を引き起こした。
カオス《…さっさと終わりにしよう。原初に生まれし神々よ!蘇れ!》
ズズズズズズッッ……!!
文「あやや!?」
早苗「…ウソ…まさか…!」
カオスが身体からすさまじいほどの神力を放出する。辺り一帯に神力が満ちきると、エネルギーが収束していき、六つの人形へと変化した。
霊夢や早苗達の前で形ある姿になったのは、彼女達にとって因縁溢れる奴らだ。
ヒュペリオン《…ふんっ…》
テミス《おおっほっほっほ~!!》
プロメテウス《へへっ…!今度は容赦しねぇぞ~!》
クロノス《…ふむ…また蘇ったか…》
オケアノス《てめぇら…今度こそぶっ潰す!》
テテュス《…ふわぁ…まだ生きておったか…》
復活した六体の原初神…身体のサイズこそ霊夢達と変わらないが、前回とは違って全員スピリット状態で、式神達を率いるように立ちはだかった。
幽香「…チッ」
袿姫「…怯むな!やるしかないぞ!」
神子「…にしても…!これは…!」
カオス《そしてこれが『神罰』。醜い人間、妖怪、そして神々よ!我が鉄槌によって滅ぶのだ!!》
カオスの号令と共に六体の原初神が空へ光のビームらしきものを発射する。ビームは遥か宇宙の彼方まで伸びたかと思うと……
……月どころか地球すらも飲み込むほどの『巨大なブラックホール』が出現したのだ。
幽々子「何あれ…!?」
映姫「…ともかくあれに飲み込まれては…!」
白蓮「ですがどうすれば…!?」
アテナ《…くっ…原初神も止めなければならないというのに…!》
全てを飲み込んで破壊するブラックホールには、最強の防御力を誇るアテナでも無意味。どうしようもない事態に加え、原初神達も暴れている……
オケアノス《消えろ雑魚どもぉぉ!!》
テミス《おとなしく死に絶えなさい!!》
レミリア「ぐわぁぁ!」
神奈子「がぁぁ…」
妖夢「…ぐぅぅ…!」
天子「いっつぅぅ!」
カオスから少し離れた所で、オケアノスの触手とテミスの剣が四人を薙ぎはらう。もしいつものコンディションで一対一だったならば、彼女達はここまで苦戦することはなかっただろう。
しかし今はカオスによって強化された式神の相手の後に、これまたカオスの力を浴びた原初神達と戦わなくてはいけなかった。貯まった疲労が彼女達の動きを鈍らせていたのだ。
永琳「…ならば…!その力の源を切る!星符『紅蓮月花』!!」
ズッッドッゴォォォォンッッッッ!!!!
永琳は冷静に今やる最善の行動を決定して愛弓を引き絞る。エターナル・ジュエリーから放たれた全力の炎の矢は…もう『矢』が出す音じゃない爆音と共にカオスへ向かっていくが…
カオス《…!…奴の娘か。感動的だな…だが無意味だ》
永琳「…止められた…!?」
カオス《…還れ。はぁっ!》
…カオスはまた手をかざすと、永琳の炎の矢はカオスの手のひらの、すんでのところでピタリと静止してしまう。しかも炎が永琳に跳ね返り、彼女の身体は爆発の煙によって見えなくなった。
永琳「…が…は…ドサッ…」
豊姫「八意様!」
カオス《…よし…まずは貴様から消してやろう…》
永琳「…ま、まずい…!」
力無く倒れた永琳にカオスが歩いてくる。その手には明らかにヤバい色をしたエネルギー弾があり、まともに食らえば確実に永琳の身体は吹っ飛ぶ…吹っ飛ぶどころか塵になってしまうだろう。
紫「させない!バッ」
鈴仙「散符…」
カオス《…パチンッ!》
テテュス《…よっ…行かせんぞ?》
紫「うっ…!」
鈴仙「きゃっ!」
カオスを止めようと紫や鈴仙が動こうとするも、テテュスがそれを許さない。二人の行く手や銃口めがけてテテュスの光が直撃し、永琳のバックアップを妨害したのだ。
カオス《タカミムスビの娘よ!その命、我に献上せよ!!》
永琳《あ…このままじゃ…死ぬ…これ…》
ゆっくりとカオスは永琳との距離を詰めてくる。うつぶせで倒れたままの永琳はもちろん、周りにいた紫達は原初神達に邪魔されて身動きがとれない…まさに絶体絶命である…!
カオス《ズズズ…!死ね!》
カオスの右手から暗黒エネルギー弾が放たれ、永琳は死を覚悟して目を瞑った……
「久しぶり…でもないか…ふんっ!!」
カオス《…ぬぉ…!?》
ズドォォォォンッッ!!!!
そんな声が響くと、空からブラックホールをも書き消すほどの光を纏った何者かが降りて…いや『降ってくる』。彼はカオスが放ったエネルギー弾と永琳の間に着地し、永琳を守るように攻撃を受け止めたのだ。
弾「…へぇ…お前が『混沌』の創界神か」
永琳「だ…!?…」
弾「悪い。ちょっと野暮用で遅くなった」
カオス《…くぅ!現れ……!?》
現れた弾の姿を見て、カオスも永琳も…その場にいた創界神達はもれなく全員固まる。なぜなら今の弾の姿は『グラン・サジット・ノヴァ』の黄金のアーマーを着けたフル武装状態で、より一層鋭い顔つきは創界神達は自らの師を、原初神達は忌々しい仇敵を思い出させたからだ。
カオス《…バカな…!なぜ貴様がその力を!?》
弾「ついさっき貰ったのさ。バッ!創界神達よっ!俺に続けぇぇっ!」
霊夢「ん!?何これ…?」
魔理沙「…なんか…変な『気』が身体に入ってくるぜ…?」
狼狽えるカオスに弾は肩をすくめて答えると、手のひらを空にかざす。そこから溢れ出したエネルギーが宮殿全体へ広がり、戦っていた霊夢達の身体に吸い込まれた…
ゼウス《…おぉ…!?》
ロロ《…力がみなぎる…!》
イシス《まぁ…!》
シヴァ《しゃっ!これならフルパワーで顕現できるぜ!》
スサノヲ《おうっ!反撃開始だ!》
莫大なパワーを吸収した霊夢達…の中の創界神達がどんどん実体化して降り立つ。以前とは違い、全員が本来の力を遺憾無く発揮して式神達や原初神に向かっていった。
ヘラ《うふふ…ほな父上!うちらも混ぜてもらいましょか!》
ペルセポネ《はんっ!あんたがクロノス?よくもうちの咲夜をいじめてくれたわね!》
アリス「これで形勢逆転…ってところかしら?」
咲夜「そうじゃない?少なくとも…!負ける未来は見えないわ」
クロノス《おのれ…!くたばり損ないどもがぁ!》
押されていたアリスと咲夜を庇うように彼女達の体内から、自身の周りに(ゼウス折檻用)戦闘人形達を並べたヘラと、愛鞭を地面に叩きつけたペルセポネが顕現する。
対するクロノスも苦虫を噛み潰した香で鎌を挙げて戦闘を続ける意思を示した。
アレス《神奈子、俺達は挽回した。これから奴の撃滅作戦を開始する》
ホルス《…さぁ!お前の罪を数えろ!》
神奈子「…了解ぃ!」
文「風向きが変わりましたね。さぁて…もう一度…あなたをぶっ潰す!」
プロメテウス《この…!やれるもんならやってみろ!》
対プロメテウス陣営でも、斧を背負ったアレスやお決まりのポーズで指を向けたホルスが助太刀に入る。ホルス達の風や生命力とプロメテウスの炎がぶつかって、その一帯にサウナのような乾いた風が吹き荒れた。
カオス《…貴様…!いったい何をした!?》
弾「今まで創界神達が本気の力を出せなかったのは、お前の能力だろ?全てを飲み込む『混沌』が創界神達のエネルギー源…『自分の世界』を互いに圧迫していたから…」
カオス《…まさか…!『世界』を強制的に引き離したのか!!?》
弾「まぁな。
カオスが慌てて自らの能力が打ち消されていて、神世界に浮かぶ『世界』群が元に戻っていることに気がついた。計画が完全に破綻して弾を睨むカオスだったが、当の弾は首をすくめて呟くだけだった。
永琳「…ザッ…弾…」
弾「…行くぜ、「相棒」?」
永琳「…ええ!」
紫「わ・た・し・も!忘れて貰っちゃ困るわ!」
立ち上がる永琳と負けじとスキマから出てきた紫。この二人を両脇に従えて、弾は少し微笑むとすぐさま意識のスイッチをカオスとの戦闘に切り替えた。
当のカオスは先ほどまでの余裕そうな顔を消し去り、青筋を浮かべて三人を睨み返している。
カオス《…クソッ!消えろっ!ドォンッ!!》
弾「止まれ…スッ」
カオスが手から再び暗黒エネルギー弾を放って来るが、三人に当たる直前で突如爆発して消えてしまう。どうやら弾が特殊なバリアか念道力か何かでカオスの攻撃を弾いたようだ。
カオス《…なら式神達!奴を取り押さえろ!》
式神《ギギギッ!!》
式神《ガガガッ!!》
弾「小賢しい。『二重結界』!」
カオスは何発も遠距離攻撃を書き消されたので、代わりに数体の式神達による物理攻撃を命じる。しかしまたもや弾は右手を翳すだけで、式神達の剣や槍を結界で静止させてしまった。
弾「よっと!ブンッ!」
式神《バゴンッ!…ギギ………》
式神《ドガンッ!……ジジ……》
飛びかかる寸前で止まった式神達を、弾は払いのけるように手を振る。すると何かに弾かれたような勢いで式神達は空中へ吹き飛ばされ、宮殿の壁に激突してしまった。
まるで飛び回るハエを振り払う程度の感じで敵兵を排除し、しかもその式神達をもはや半分崩壊させながら宮殿の壁にめり込ませていた。
永琳「…強い…!」
紫「…弾…その力…どこで?」
弾「あぁ、実は」
カオス《隙有り!》
紫の質問に答えようとして、弾の首がぐるりと横を向いた。その隙をカオスがつくのは当たり前だろう。カオスの右ストレートが弾のこめかみに飛んでいくが……
弾?《…バシッ!…ったく…年寄りは労れ…!》
カオス《うっ!?》
紫「…え?」
突然弾の声が貫禄のある老人の声へと変わり、機敏な動きでカオスの拳を受け止める。『混沌』の力が込められたパンチは黒く染まった右腕の肘下に止められていた。
アプロディーテ《…ウソ…!》
クベーラ《…マジかよ…!》
永琳「…お、お父…さん…!?」
タカミムスビ《…ああ。どうやら馬神 弾が私の『能力』に加えて『意識』すらも吸収しやがってな…やれやれ、休むのはまだまだ先のようだ…なっと!》
カオス《うごぉっ!ズザザザ…》
周りの創界神達の驚きを他所に、タカミムスビ(in弾)が左腕でカオスの眉間を殴り飛ばす。見事なほどまっすぐにカオスは吹っ飛ばされ、宮殿の石畳に二本の筋をいれながら踏みとどまった。
弾「…まぁ、そういうこと」
永琳「…えぇ…」
タカミムスビ《心配はいらん。もしデートとかで
紫「そ、そう?…なら問題ないかしら…?」
永琳「…もう…その時は引っ込んでてよ》
一瞬にして弾とタカミムスビの意識が切り替わり、雰囲気もどんどん変わる。永琳としては複雑な気持ちだったが、それで尻込んでいては紫の思うつぼ。鋭く釘をさして食い込みに言った。
カオス《まだだ!》
弾「いや、ここまでだ!星符『グランスラッシュ』!!」
ズバァァァンッッ!!!!
紫「『深彈幕結界-夢幻泡影』!」
永琳「『天網蜘網捕蝶の法』!」
ドッガァァァァンッッ!!!
しぶといカオスはさっきの暗黒エネルギー弾を大量に精製して周りに浮かべる。それらを弾達に放つが、弾のグランシャリオの一振が弾丸を斬り落とし、紫と永琳の『ラストワード』が入れ替わるようにカオスを襲った。
カオス《…ハァ…ハァ…あり得ない…!なぜ…!これほどまでの…!》
弾「これが俺達の力。『命』を守る力だ!」
タカミムスビ《…さぁ…今が貴様の終焉の時…!》
カオス《ふざけるな!私は絶対的!私が世界を統べるのだ!》
紫「弾、後は問題ないわよね?」
永琳「お父さんも弾の足引っ張らないでね!」
弾とタカミムスビが地面に両膝をついて喚くカオスに立ちはだかる。紫も永琳も弾が負けることなど気にもせず、肩を叩いて他のところへ援護に走っていった。
弾「…これで終わらせる!」
カオス《終わることはない!この腐れきった世界を浄化するまではな!》
弾 カオス「《ゲートオープン!界放!!》」
はい。ありがとうございました。
今の弾とタカミムスビの関係はビルドの戦兎君と葛城、ドライブの泊さんとベルトさんみたいな『身体はおんなじ。でも意識や思考がもう一つある』関係と思ってくださいまし。簡単に言えば二重人格。
そしてやっぱり私は『ハッピーエンド』を好むようです(笑)