東方星神録   作:あんこケース

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もう我慢できない。『紫の世界』?知ぃ~らね!


姉と妹。母と息子

月の都 郊外の空き地 VSクロノス

 

 

シヴァ《おらぁ!》

 

フラン「てぇーいっ!」

 

レミリア「はっ!」

 

 

クロノス《…ぬぅ!》

シヴァの『ネクロ・キャリバー』フランのレーヴァテイン、レミリアのグングニルがクロノスの大鎌と激しく火花を散らす。強力な三人の攻撃にもクロノスは焦ることなく、淡々と攻撃をさばいていた。

 

咲夜「お嬢様、援護致します。幻符『殺人ドール』!」

 

アリス「魔操「リターンイナニメトネス」!」

 

クロノス《…!…止まれ

 

後ろから咲夜のナイフとアリスの人形が襲いかかるが、クロノスは鎌を持っていない手をかざす。するとナイフや人形がピタリと空中で止まってしまった。

 

クロノス《お前らがくらえい!》

 

レミリア「うぐっ!」

 

フラン「きゃーっ!」

 

止まった攻撃をクロノスは自らの攻撃にしてレミリアとフランにぶつけてくる。予想外な攻撃方法に二人はたまらず後退りした。

 

クロノス《おろかな…雑魚がいくら群がろうが、儂らに敵うことはなかろう!せいやっ!ゴゴゴゴ…!!》

 

咲夜「…!大きいのが来ます!」

 

シヴァ《やっべっ!あれを壊すのは…!》

 

フラン「ど、どーすれば良いの!?」

 

クロノスが大鎌を起点に巨大なエネルギー球を作り出す。さすがのシヴァでさえも、その大きさに尻込みするほどのサイズ…フラン達がうろたえるのも無理はなかった。

 

クロノス《死ねぇい!カッ!!》

 

フラン「…シヴァ!お姉さま!どうにかできないの!?」

 

レミリア「……っ…!」

 

シヴァ《仕方ねぇ…!捨て身で俺が突っ込む他ねぇか…?》

 

クロノスが鎌を振り下ろすと同時に、頭上のエネルギー球がレミリア達めがけて降ってくる。とっさに全員がどうにか対処しようと構えるが、どうすべきか良い方法が見当たらない。

 

クロノス《フォッフォッフォッ!これはどうしようも》

 

 

???《あるんだよなぁ~♪》

 

 

ズブブブブブッッ……!!

 

 

エネルギー球がレミリア達を押し潰そうとした時、クロノスの言葉を遮った者がいた。それと同時にエネルギー球は突然現れた、黒いブラックホールのような穴に吸い込まれて消えていく…

 

クロノス《…誰だ!?》

 

???《も~!仮にもあんたの孫だぜ?俺は~?》

 

咲夜「…あなたは…!」

 

苛立つクロノスとレミリア達の間に出てきたのは、紫の髪に中世の貴族を思わせるコートの青年。おちゃらけた口調と人を食ったような笑み、そして手に持つアメジストの剣は神世界では有名だ。

 

ディオニュソス《面倒ごとは嫌いだし、自分で戦うなんてナンセンスだけど…こうなったら仕方ないよねぇ…アハハハハハハッ♪》

 

クロノス《…貴様の仕業か!ディオニュソス!!》

 

ディオニュソス《あったりまぇじゃーん。俺は昔アマテラスとゼウスを吸収しようとしたんだぜ?あんな『気』のかたまりなんて屁でもねぇーよ》

 

ケタケタ笑いながらクロノスをおちょくる青年、『創界神ディオニュソス』はそう説明する。そう言っている間にも黒い穴にエネルギー球が消えていき、さっぱり無くなった。

 

オシリス《…スタスタ…すまん、暫し準備で遅れた》

 

ディオニュソス《おーう!んじゃバトンタッチといこうか!》

 

クロノス《…ほざけ!》

 

『妖蛇神杖オグドアド』を地面に刺し、『創界神オシリス』も機械の四肢を動かして歩いてくる。緑色の皮膚に隻眼の目を鋭くさせてオシリスはディオニュソスと共に臨戦態勢に入った。

 

クロノス《消えろ!ブンッ!!》

 

オシリス《…ガキィンッ!!むっ…!!》

 

ディオニュソス《おうらぁ!》

 

戦いは第2ラウンドに突入し、クロノスとオシリス、ディオニュソスの接近戦が繰り広げられる。めんどくささをまったく見せずに剣を振るディオニュソス。身体中の機械で力を底上げするオシリス…

 

…この二人の連携攻撃にもクロノスは優位にたち振る舞う。オシリスの杖とディオニュソスの剣を大鎌が弾いていった。

 

クロノス《…崩符…『剣山地獄』!!》

 

オシリス《がっ…!!》

 

咲夜「…!!み、右腕が…!!」

 

とうとうクロノスの鎌がオシリスの機械の身体をぶったぎる。『オグドアド』を掴んでいた右腕が肩口から鮮血を出しながら、宙を舞った。

 

クロノス《フォッフォッフォッ!さぁ…今度は首の番ぞ!》

 

オシリス《…ハァ…ハァ…ズサッ…》

 

ディオニュソス《……もうそろそろか?

 

膝をついてオシリスは荒い息を整えようとするが、クロノスの大鎌はその隙を逃さず、オシリスの脳天めがけて振り下ろされた。一番近くにいたディオニュソスは、何故かそれを見ているだけだが……

 

 

クロノス《もらっ………っ!?》

 

ヘラ《あら父上、うちの能力…お忘れになったんとちゃいますか?》

 

アリス「ヘラ様!」

 

振り下ろされた大鎌がクロノスの頭上でピタリと止まってしまった。さらにクロノス自身の身体もクモの巣にかかった虫のように身動きが取れなくなる。

 

そんなクロノスを嘲笑いながら、レミリア達の後ろから歩いて来たのは『創界神ヘラ』。神世界一の人形使いである彼女には、敵の動きを封じるための『糸』を張るなど朝飯前だ。

 

クロノス《…ぐ…たかが糸で儂の動きなど…》

 

映姫「『ただの糸』だけではありませんよ。オシリス様の『化神』の力も合わさった『猛毒』の糸です」

 

ヘラの側に控えていた映姫が冷静に答える。彼女を守るように這い出して来たのはオシリスの化神『冥界蛇神アウザール』。口からなにやら液体を垂らし、血走った目でクロノスをにらみつけている。

 

クロノス《『毒』…だと…!?》

 

オシリス《…ガチッ…んんっ!…ふぅ…毒使いはペルセポネだけではないぞ?しかも私の『アウザール』の猛毒は『即効性』だ》

 

映姫「…オシリス様本人は囮です。その代わりに私は『アウザール』を受け持ち、ヘラ様と隙をうかがっていました」

 

オシリスが解説をしながら転がっている自分の右腕を拾い上げ、無造作に肩口にねじ込む。するとたちまち離れた腕と肩が繋がり、元通りに再生した。これも『エジット』の冥界の創界神たる彼がなせる技か…

 

シヴァ《へへっ!これで思う存分破壊できるぜ!来やがれ!『ヴァルドラム』!!》

 

ヘラ《…うふっ…折檻の時間やで…『ジェラシックドール』…》

 

ディオニュソス《まっ、テキトーにね~♪『カヴァリエーレ・バッカス』!!》

 

オシリス《ご苦労だった『アウザール』。もう少し働いてくれ》

 

動けないクロノスを見て、創界神達は次々と『化神』を実体化させて反撃に入る。シヴァの巨大な紫色の西洋ドラゴン、ヘラの鬼の角を持つ美女型人形、ディオニュソスの四本腕の中世騎士、そしてオシリスの機械の蛇神が並び立った。

 

 

オシリス《化神『スネークギガバイト』!!》

 

まず初めにオシリスが機械の足を広げ、クロノスに噛みつくように挟み蹴りを繰り出す。さらに『アウザール』も顎を大きく開けてクロノスに襲いかかった。

 

 

バキバキバキッッ…!!

 

 

クロノス《…ぐっ!》

 

映姫「…よし…大鎌が壊れた…!!」

 

シヴァ《次は俺だ!化神『昇竜破壊拳(しょうりゅうはかいけん)』!!》

 

オシリスと『アウザール』の一撃がクロノスの大鎌を粉々に粉砕する。さらにシヴァがエネルギー体になった『ヴァルドラム』を拳に纏わせ、右アッパーパンチと共に撃ち出した。

 

撃ち出された『ヴァルドラム』にクロノスは胴体を噛みつかれ、そのまま上空へ打ち上げられてしまう。

 

 

クロノス《あがっ…は、離せ!》

 

ヘラ《安心しぃや…今すぐ離したるで!!!》

 

アリス「…!!…神世界最高の人形使の一撃…いったいどれ程精密な魔法を使うのかしら!?」

 

『ヴァルドラム』に咥えられたクロノスの上をヘラと『ジェラシックドール』が取って追撃を放とうとする。アリスは彼女が繰り出す攻撃を1人形使いとしてワクワクしながら見ていたが……

 

ヘラ《化神『一万本糸パンチ』!!》

 

 

ドゴォォォンッッ!!

 

 

アリス「………………」

 

 

ヘラの号令を受けて『ジェラシックドール』が繰り出したのは……『糸で巨大化させた拳によるパンチ』だった。威力はクロノスを地面に叩き落とし、小さなクレーターすら作るほどだったが……アリスは予想を裏切られて呆然としている。

 

『弾幕はブレイン』を自称する彼女は『糸の精密操作による攻撃』を期待してたのだが…『糸パンチ』は完全にそれの対極にいる攻撃方法だろう…(-_-;)

 

オシリス《…あー…たぶんもっと華麗な一撃もあると思うぞ?》

 

シヴァ《そ、そーだぜ!だから落ち込むなって!》

 

ディオニュソス《あれれー?確かヘラって人形使いの他に『オリン随一の拳闘士』って》

 

シヴァ《余計なこと言うなバカ!》

 

咲夜「皆様…まだ戦闘中ですが?」

 

アリスの何かが音をたてて崩れ落ちそうになるところを、創界神達が取り繕う(一名塩を塗っているが)。この場だけ空気が緩みかけたが、咲夜の冷たい一括に全員気を取り直した。

 

 

クロノス《…ゴフッ…ば、バカな…!》

 

ディオニュソス《…そんじゃぁ俺の番かな?『バッカス』行けっ》

 

地面に転がったクロノスを今度は『バッカス』の二刀流がおみまいされる。巨体に似合わないスピードで『バッカス』はクロノスをすれ違い様に斬りつけた。

 

しかしクロノスの身体には斬られたような傷は一ミリも見当たらず、彼も痛みを何一つ感じなかった。

 

クロノス《…むっ?斬られて…いない…?》

 

ディオニュソス《はい終わり。戻れ『バッカス』…♪~♪♪~》

 

クロノス《…わからんが…今が好機!》

 

レミリア「…おいディオニュソス!危ないぞ!」

 

自分の化神を消してディオニュソスはクルリとクロノスに背を向ける。口笛すら吹く余裕を見せている彼だが、クロノスにとっては反撃する絶好の機会。

 

クロノスは立ち上がり、再びエネルギー球を精製しようとしたが、ディオニュソスは剣を鞘に戻しながら何時もの狂った顔でこう言った………

 

ディオニュソス《…バーカ。もうお前は俺の剣に酔ってるんだよぉ~。化神……『ネメシス・リープ』パチンッ》

 

 

ズバァァンッッ!!!!

 

 

クロノス《あっ…!?ドサッ…》

 

ディオニュソス《チャオ♪》

 

ディオニュソスが剣をおさめた瞬間、クロノスの胸部がXの字に切り裂かれた。それを確信している彼はまた人を食った顔でクロノスをあざけ笑う。

 

フラン「…え…?何が起きたの?」

 

シヴァ《…『斬られた』ことすら気づかせない…毎度毎度すげぇ剣の腕前だな…》

 

ヘラ《…あとは性格さえ良ければ完璧なんやけどなぁ…》

 

ディオニュソス《あれぇ~?いつもゼウスを監禁しようとするメンヘラ大年増の女神様が何か言ってるよぉ~?》

 

ヘラ《…あらあら…もういっぺん言うてくださらへん?そないしたら、あんた自身を人形にしたるで?》

 

なんやかんやとヘラとディオニュソスはバチバチ火花を散らしている。これ以上ヒートアップすれば一触即発になるかと思われたが、ヘラははぁーとため息をついて煽るのをやめた。

 

ヘラ《…やめまひょ。恨みからはなんも生まれまへん。さっきはうちの失言やったわ》

 

ディオニュソス《お、おぅ………》

 

オシリス《ホッ…》

 

ディオニュソスもヘラが正直に謝ってきたことに困惑して、動揺を隠せない。彼のヘラへの認識は『嫌がらせをしてくる面倒な女』一点だったので、彼女から優しくされることに慣れていなかった。

 

クロノス《…お、おのれ…このままでは済まさん…!》

 

レミリア「…来たわね!ようやく私の見せ場よ!」

 

ディオニュソス《……ハッ…よ、よしっ!》

 

フラン「シヴァ!お姉さまを助けて!」

 

シヴァ《おぅ!》

 

待ってましたとレミリアはクロノスの前に躍り出る。さらにフランの願いを受けてシヴァはレミリアの体内に降りていき、ディオニュソスもそれに続こうとした。

 

その途中ヘラの隣をディオニュソスが横切った時だった。

 

ヘラ《…気をつけてや……》

 

ディオニュソス《…!…ああっ!勝って戻る!》

 

フラン「お姉さま~!頑張って~!」

 

レミリア「大丈夫よ。負ける『運命』は見えないから…」

 

片方は母と息子、もう片方は妹と姉。それぞれの思いを胸にディオニュソスはレミリアの中に降り、レミリアも決意の目でデッキを構えてバトンの態勢を整えた。

 

 

レミリア クロノス「《ゲートオープン!界放!!》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノス《ひれ伏せ!儂は神々の王となる者ぞ!》

 

レミリア「悪いわね。神に反逆するのが『吸血鬼』の本分なのよ」

 

骸骨のようなカブトの下でクロノスがうめくが、カリスマモードのレミリアは軽く受け流す。

 

レミリア「始めるぞ。メインステップ。ネクサス『魔界の決戦場』を配置する。バーストも伏せようか」

 

先行をとったレミリアが配置したのはどこかの戦場だった。遠くから剣や槍がぶつかる音や勇猛果敢な叫び声が聞こえてくるネクサスだったが、なにやらただならぬ雰囲気が満ちている…

 

レミリア「ターンエンド」

 

クロノス《メインステップ!『No.32アイランドルート』を配置して一枚ドロー。そして紫の創界神ネクサス!『紫電のゼロ』を配置!!『神託』によりコアを二個置くぞ》

 

クロノスもネクサスを配置してシンボルを確保する。後ろに配置時ワンドローの根が生えた社が築かれたが、もう一つのネクサスは何もフィールドに現れなかった。

 

クロノス《続けて『キャメロット・ポーン』を召喚。バーストセットしようかの…》

 

レミリア「『紫速攻』系か…?いやまだ決めるには早すぎるな…」

 

次にクロノスは紫色の小さな槍兵を召喚した後、バーストをセットした。見えたカードからレミリアはクロノスのデッキを考えるが、いかんせん汎用性が高いカード故、結論は出さない。

 

クロノス《ターンエンドじゃ》

 

レミリア「メインステップ!運命(さだめ)を破壊せよ!『破壊の創界神シヴァ』を配置!『神託』してコアを一つ『シヴァ』へ!さらに…『ディオニュソス・パスト』を召喚!」

 

シヴァ《ゴキゴキ…さぁて破壊タイムだ!》

 

ディオニュソス《…ん…たまにはこっちも良いかぁ…?召喚時効果で二枚ドローするぜ》

 

手首を鳴らしながらシヴァが『魔界の決戦場』に姿を見せる。さらにフィールドには若かりし頃の『ディオニュソス』が剣を持って召喚された。当人も意外と気に入っているようである。

 

レミリア「アタックステップ!『ディオニュソス・パスト』でアタック!」

 

ディオニュソス《…えー…まぁ仕方ないか!》

 

クロノス《ライフで受けよう!》

 

そうは言っても『自分では戦いたくない』のか『ディオニュソス』は文句をたれながら駆け出す。その剣の一振りは華麗にクロノスのライフを両断した。

 

レミリア「かかったわね!『ディオニュソス・パスト』の『転醒』発揮!相手のライフが減った時、裏返して配置できる!『ディオニュソス・フューチャー』!」

 

ディオニュソス《んん~!でもやっぱり今の俺が一番!『神託』発動!一つ貰うぜ》

 

クロノス《…な、なんじゃと!?》

 

レミリア「最後に『転醒』時効果。相手の創界神ネクサスのコア二個を奪い取るわ」

 

『ディオニュソス・パスト』のカードがひっくり返り、フィールドの『ディオニュソス』も若い頃の姿から一気に成長して『シヴァ』の隣に移動した。

 

レミリア「これで良いわ。ターンエンドよ」

 

クロノス《…ふん…メインステップ。『キャメロット・ナイト』『カースガーゴイル』を連続召喚!儂の駒になれぃ》

 

クロノスは自らを落ち着かせ、小さな紫色の騎士、そして白い身体の悪魔を立て続けに呼び出す。『不死』を持つ『キャメロット・ナイト』を処理するのは骨が折れそうだ。

 

クロノス《アタックステップ!まずは『カースガーゴイル』!あの小娘のライフを削るのじゃ!》

 

レミリア「…『魔界の決戦場』の効果!相手スピリットが疲労したことにより一枚ドロー。そのアタックはライフよ!」

 

『カースガーゴイル』が鋭い爪をレミリアのライフに突き立てる。その前に『魔界の決戦場』がザワザワ音をたてて手札を増やした。

 

レミリア「…いっつ…!なかなかくるわね…」

 

クロノス《続け!『キャメロット・ナイト』!》

 

レミリア「再度ドロー。これもライフで受ける!」

 

『原初神』のバトルによる一撃にレミリアは不快感を示す。それにお構い無く『キャメロット・ナイト』の一突きがもう一つライフを破壊していった。

 

クロノス《フォッフォッフォッ…ターンエンド》

 

レミリア「…チッ…メインステップ!『創界神ディオニュソス』を配置して『神託』。コアを二つ置くわ。そして『冥府の守護騎士』、『冥府三巨頭ザンデ・ミリオン』を召喚!」

 

ライフを二つ砕かれたレミリアは、冷静に本家『ディオニュソス』を出して『冥府』の維持コアを無くす。浮いたコアで召喚されたのは、ぼろ布を着た人間サイズの骨の騎士とその何倍もの巨体の骸骨ドラゴンだった。

 

『冥府の守護騎士』は賎しい見た目とは真反対にチャキッ!と剣を構え、『ザンデ・ミリオン』も骨の顎を鳴らして今か今かと攻撃の指示を待っている。

 

レミリア「アタックステップ!『ザンデ・ミリオン』でアタック!こいつはスピリットを破壊しないとブロックできないわよ!」

 

クロノス《…ならば『キャメロット・ナイト』を破壊。『キャメロット・ポーン』でブロックだ。スピリットの破壊によりバースト発動!『呪の覇王カオティック・セイメイ』により一枚ドローして手札に戻る》

 

『ザンデ・ミリオン』の邪悪な波動がクロノスのフィールドを覆い尽くし、『キャメロット・ポーン』のブロックと引き換えに『キャメロット・ナイト』が塵に還った。

 

『キャメロット・ポーン』も踏み潰されてその後を追うが、クロノスはバーストで上手くリカバリーする。

 

クロノス《さらにコスト0のスピリットが破壊されたため、トラッシュの『キャメロット・ナイト』の『不死』発揮。再召喚するぞ》

 

それだけでは終わらず、フィールドに溢れ出した霧から『キャメロット・ナイト』が復活する。豪快な効果ではないが、チマチマやられるとウザイ効果には間違いない。

 

レミリア「あーもう!めんどくさい!ターンエンド!」

 

クロノス《メインステップ!『妖術師ヤクモ』を召喚!召喚時効果でトラッシュから『キャメロット・ポーン』『シキツル』を蘇生させる!》

 

イラつくレミリアをさらにクロノスはイラつかせる動きを始める。フィールドがおどろおどろしい空気へと変わると、背中にクモの足を生やした陰陽師が現れ、トラッシュの『キャメロット・ポーン』と『シキツル』を呼び出したのだ。

 

クロノス《『シキツル』の効果でドロー。バーストセット。アタックステップ!『キャメロット・ナイト』でアタック!》

 

レミリア「うじゃうじゃと…!一枚ドローしてフラッシュタイミング!手札の『時空の破壊魔龍ラクタ・ヴィージャ』を召喚!手元を増やしてバトルを終わらせるわ!」

 

シヴァ《良くやった『ラクタ・ヴィージャ』!》

 

ディオニュソス《ほーう♪やるねぇ~!》

 

押し寄せるクロノスのスピリット達、最初に攻撃してきた『キャメロット・ナイト』の前方の空間にヒビが入る。そこから出てきた『死竜』が『キャメロット・ナイト』に何もさせずに追い返した。

 

クロノス《続けて『シキツル』でアタック!》

 

シヴァ《おおっと!俺様のレベル2『神技』を使う!破壊だ!『カースガーゴイル』!》

 

レミリア「…ナイスよ!『魔界の決戦場』は相手スピリットの破壊をトリガーに『転醒』する!『千槍将軍デスバゼラード』!!」

 

『シキツル』が骨の翼で羽ばたいて攻撃してくると、シヴァの衝撃波が逆に『カースガーゴイル』を吹き飛ばす。すると『魔界の決戦場』が消え去り、フィールド内でたくさんの武器を背負った鬼として再臨した。

 

クロノス《…ぬぅぅ…!また『転醒』かっ…!》

 

レミリア「『デスバゼラード』の『転醒』時効果!相手スピリットのコア三個をリザーブへ!『キャメロット・ポーン』『ヤクモ』『シキツル』のコアを指定!」

 

ディオニュソス《ヒュー♪ざまぁw》

 

『デスバゼラード』が六本ある腕で槍を突き出すと、『キャメロット・ポーン』『ヤクモ』『シキツル』のコアが貫かれる。全員コアが一つしか乗っていなかったので、綺麗さっぱり消滅した。

 

これでクロノスのフィールドには疲労している『キャメロット・ナイト』だけになる。

 

クロノス《ぐぬぬ…ターンエンド》

 

レミリア「反撃よ!メインステップ!紫電の輪舞!『冥府骸騎士アジャクシオン』を召喚!!『デスバゼラード』をレベル2に!」

 

空から雷が落下して地面を破壊する。そこからツルハシのような両刃の鎌を手に取り、『冥府の守護騎士』より大きな骸骨騎士が出現した。

 

レミリア「アタックステップ!『デスバゼラード』でアタック!一枚ドローして『キャメロット・ナイト』を破壊!」

 

クロノス《ライフで受ける!ライフ減少によりバースト発動!『大甲帝デスタウロス』!『ザンデ・ミリオン』を疲労させ、疲労しているスピリットを全て破壊じゃ!》

 

背中の槍を発射して『デスバゼラード』が『キャメロット・ナイト』とクロノスのライフを撃ち抜く。だがクロノスのバーストから緑の虫のような外骨格に紫の悪魔の翼を生やした合体スピリットが出現した。

 

さらに『デスタウロス』から噴き出した黒い煙が『ザンデ・ミリオン』と『デスバゼラード』を飲み込んでしまった。

 

レミリア「仕方ない、ターンエンド」

 

クロノス《…耐えたぞ…メインステップ!輪廻転生司る悪魔!『魔界七将ベルゼビート』を召喚!召喚時効果でトラッシュの『呪撃』を持つ『カースガーゴイル』を蘇生!》

 

バトルフィールド上空に黒い膜で覆われた球が出現し、中からハエの頭をした悪魔が不気味に鳴いて現れる。リバイバル前の『ベルゼビート』は手をかざして『カースガーゴイル』を蘇らせた。

 

クロノス《フォッフォッフォッ……『ベルゼビート』を『転召』!色欲司る不吉の申し子!『魔界七将アスモディオス』!レベル2で召喚するぞ!》

 

レミリア「…っ…!またリバイバル前の…『転召』なんて久しぶりに見たわ…」

 

『ベルゼビート』が塵になって空へ昇っていくと、反対に空からはケンタウルスのような下半身は馬、上半身は六手の悪魔が駆け降りてきた。『デスタウロス』と並んだ光景にレミリアは少々気圧されたように口をしかめる。

 

クロノス《『アスモディオス』召喚時効果!相手のスピリットからコアを二個ずつ外す!『ベルゼビート』で『転召』したことにより、手札も四枚棄てて貰おうかの!》

 

ディオニュソス《やべっ…おぜ・うー!手札何枚だ!?》

 

レミリア「おぜう言うな!……ちょうど四枚ね…」

 

シヴァ《丸腰かよ…!まぁ『冥府の守護騎士』と『アジャクシオン』は効果受けないからましか…》

 

『アスモディオス』が水晶の剣から黒いビームを発射して『ラクタ・ヴィージャ』のコアを取り除く。さらにレミリアの手からカードが全て離れ、トラッシュに落ちていった。

 

クロノス《フォッフォッフォッ!これでお主を守るものはせいぜいバーストぐらい!観念せい!》

 

レミリア「…あら?『神々の王になる』って言う割には…このカードが見えてないのかしら?」

 

クロノス《…あぁ?》

 

レミリア「このカードは効果で手札から破棄された瞬間、召喚できる!召喚!『鬼神女王ジェラシックドール』!!」

 

ディオニュソス《………!!》

 

落ちたレミリアのカードの一枚が光りながらフィールドに移動する。どこからか伸びてきた糸が空中で自動的に編まれていき、鬼の女性型人形『鬼神女王ジェラシックドール』がレミリアを守るように降り立った。

 

クロノス《バンッ!なぜだっ!?そやつはヘラの『化神』なはず!!》

 

レミリア「…さぁね?『覚妖怪』ではない私には彼女の頭の中は分からない。でも……想像することはできる…クルッ」

 

バトルボードを叩いてクロノスは身を乗り出しながら問うが、レミリアは肩をすくめてとぼける。するとレミリアはクロノスに背を向け、彼女の後ろに立っていたディオニュソスと向き合う。

 

レミリア「…たぶん、一番手のかかるドラ息子のことが…心配だったのかもね」

 

ディオニュソス《………………》

 

シヴァ《…お前と似て…アイツは不器用だからなぁ…》

 

先程までのカリスマ顔とは別に、優しい顔でレミリアは意味深に言葉を綴る。うつむいたディオニュソスに隣のシヴァは肩に手を置いて感慨深く続けた。

 

ディオニュソス《…フッ…親孝行か…血の繋がったお袋にはしてたけど…そろそろ義理の方にもやる時かねぇ…》

 

レミリア「ふふっ…クルッ…『ジェラシックドール』の召喚時効果!デッキを一枚破棄!…さすがにこれは当たらないか…『冥府作家ラス・カーズ』なので、そのまま破棄」

 

シヴァ《さぁて…これでこっちのスピリットは三体!俺の効果も入れて十分守りきれるぜ!》

 

『ジェラシックドール』の効果が発動するのは『呪鬼のカード』か『ネクサス』か『マジック』。さすがに『無魔』主体のデッキでは当たらなかったが、クロノスの攻撃を牽制することはできた。

 

クロノス《ぐぅぅ!ターンエンド!》

 

レミリア「終焉の時よ。メインステップ!『ジェラシックドール』をレベル3に!アタックステップ!『ジェラシックドール』!奴を滅せよ!」

 

悔しげに歯噛みするクロノスだったが、既に風向きはレミリアに向いていた。ドローしたカードを使うことなく、『ジェラシックドール』にアタックを命じる。

 

レミリア「レベル2からの『界放』!相手のスピリットを一体破壊させ、『ディオニュソス・フューチャー』のコア二個を移動。トラッシュの『ザンデ・ミリオン』を回収」

 

クロノス《…『カースガーゴイル』を破壊する…そのアタックはライフだ!》

 

シヴァ《もう一度俺の『神技』!手札を手元に置いて『デスタウロス』を破壊!》

 

『ジェラシックドール』の糸が『カースガーゴイル』とクロノスのライフを貫き、二度目のシヴァの衝撃波が『デスタウロス』を粉砕していった。やはり『アスモディオス』を無理矢理召喚したことによるコア不足が響いているようだ。

 

レミリア「残り二つ!続けて『アジャクシオン』でアタック!!コアが0個時、ターンに一度回復する!そして『破壊の創界神シヴァ』!『転神』!その大いなる力を振るえ!」

 

シヴァ《おうっ!》

 

クロノス《『アスモディオス』!防御せよ!BPはこちらが勝っておる!》

 

大鎌を構えて『アジャクシオン』が疾走するが、彼の何倍もの大きさの『アスモディオス』が剣を振り下ろしてくる。BP差もあり『アジャクシオン』の鎌は『アスモディオス』の剣に弾かれ、劣勢に陥ってしまう…

 

レミリア「『アジャクシオン』の最後の効果!ブロックされたらそのスピリットを否応なしに破壊する!」

 

…が…『アジャクシオン』は雷の如く『アスモディオス』の後ろへ回り込む。そして首を勢い良くはね飛ばし、『アスモディオス』は爆発した。

 

レミリア「再び『アジャクシオン』!行け!」

 

クロノス《ライフで受ける!》

 

回復した『アジャクシオン』が大鎌を投げつけてクロノスのライフを砕く。

 

レミリア「『シヴァ』!撃滅せよ!」

 

クロノス《まだ終わらん!フラッシュタイミング!『紫電のゼロ』の『神技』!トラッシュから『シキツル』を召喚!ブロックぞ!》

 

シヴァ《…クソッ!邪魔すんな!》

 

最後のライフを砕こうとシヴァが駆け出すが、悪あがきにクロノスは『シキツル』を復活させて守ろうとする。

 

ディオニュソス《それは良くないなぁ…俺の『神技』!疲労状態のスピリットを破壊してブロックを無効化させる!》

 

シヴァ《おっ!サンキュー!》

 

ブロックしようとした『シキツル』にディオニュソスの斬撃が飛んでいく。キレイに真っ二つになった『シキツル』は爆発し、煙を突っ切ってシヴァがクロノスの眼前に到達した。

 

クロノス《…あ、あり得ない…!》

 

シヴァ《おらぁぁ!ぶっつぶれろぉぉぉ!!》

 

そんなセリフを吐き捨ててシヴァは己の拳をクロノスの最後のライフめがけて打ち込んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノス《…お、覚えて…おれ!》

 

フラン「あっ!逃げた!」

 

レミリア「はぁ!?あれで終わりじゃないの!?」

 

オシリス《…タカミムスビさんの時と同じか…!》

 

 

バトルを終えてレミリアが戻って来ると、クロノスは満身創痍になりながらも空へ飛び出し、逃走を試みていた。だがヘラの糸を潜り抜けてクロノスがほんの少し気を抜いた瞬間……!

 

 

ペルセポネ《ヒャッハー!最後の最後で出番来たわ!さぁ…『首輪』して…お散歩の時間よ!!》

 

クロノス《ゴフぅッ!?》

 

レミリア達から離れたところで戦っていたペルセポネがウキウキで鞭を振るった。意思を持っているかのように伸びた鞭は見事クロノスの首に巻き付き、逃走を押さえ込んだ。

 

レミリア「…いくわよフラン!バッ」

 

フラン「うん!バッ」

 

その隙に二人の吸血鬼が翼を羽ばたかせて飛び出す。いつもは漆黒の闇が映る月の都の空だが、『スカーレット』の影響か今は血の色を思わせる紅色をしていた。

 

二人は助走のために十分距離をとると、一斉に自らの『必殺技』を発動させる。

 

 

レミリア「神槍『スピア・ザ・グングニル』!

 

フラン「禁忌『レーヴァテイン』!!

 

 

レミリアが自分の身体の倍近くあるエネルギー槍を構えて、フランがこれまた身体を大きく越える炎の剣を持ってクロノスに突撃する。

 

重力によって威力が跳ね上がった槍と剣が、二筋の光になってクロノスを貫いた!

 

 

クロノス《 ギャァァッ…!!わ、儂は…神々…の王…に………

 

身体の真ん中に大穴を空けられ、とうとうクロノスは崩れていく。最期に手を無造作にのばしたが、その手を掴んでくれる者は誰一人いなかった。

 

 

フラン「ふふーん♪正義は勝つっ!v(・∀・*)」

 

レミリア「眠りなさい。永遠の苦しみを抱いてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。ありがとうございました。

元ネタのギリシャ神話ではヘラとディオニュソスの仲はすこぶる悪いんですけど、うちのヘラさんはアポローンやアルテミス達と歩み寄ろうとする立場にいます。彼らとの和解話をいつか書こうとしていたので、今回ここに入れました。

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