パラサイト・インクマシン 作:アンラッキー・OZ
Chapter 82
ソコヴィアから帰還して数日後、被災地の後処理報告と引継ぎを済ませたレイニーはニューヨークの一角に聳え立つビルの一室で、滅多に着ることのないスーツに袖を通しネクタイを締めた。専用のロッカーを閉めてロッカールームを出て薄暗い廊下を歩き進み角を曲がると、合間から光が漏れる扉の前に立派な髭をたくわえた白人男性が待ち構えていた。
男──クエンティン・ベックの手から差し出された黒の髪留めを受け取り、長く伸ばした黒髪を後ろで一本にまとめて髪留めで結ぶと、光零れる扉を開ける。
「みんな、おはよう」
「「「おはようございます! 社長!」」」
『ベンディ・アニメーション・プロジェクト』のスタッフが総出で出迎えていた。
記者会見でベンディの正体暴露してからいくらか小さい騒動はあったものの、『ソコヴィア事件』後の世間からのバッシングは予想より少なかったため、活動は滞りなく進行していた。南アフリカでのハルク暴走でアベンジャーズの信用の失墜こそあったが、件の首謀であるウルトロンの撃破に伴い、我こそはと協賛を希望する企業の声が増えた。
若社長ユカリ・アマツこそ不在だったが、社長代理のベックとスタッフの手腕により企業との提携を取り付けることに成功、予算把握と納期チェックの会議を終えてアニメーターの選出をしている最中だった。
原画は既に、レイニーがジョーイ・ドリュー私宅から持ち込んだものが存在するが、如何せんその原画はスタッフでも手に掛けることが烏滸がまし過ぎて触れられない至宝と化していた。そのため、原画には手を加えることなく当時の手法をそのままに再現できると声を大にして立候補するアニメーターがおらず、難航していたのだ。
腹案として、レイニーとベックで共同制作しネット配信されたアニメーションを元に本編の製作を進行しているが、どうしても〝本物〟を使いたいという声が多く、会議は相当揉めた。そこで入ったのが一本の電話だ。
『私が描くよ』
新アベンジャーズ基地にいた
「なんでいままで」とか「ご無事ですか」とか「ウルトロン強かったですか」とか「肌色成分多めでした」とか、そう言いたいスタッフは大勢いたが、この一言ですべてが吹っ飛んだ。なお最後の一言を抜かす一派は同社員から折檻を受けた。そこでレイニーの肌面積議論が白熱し、
「へソチラ成分は過多だろ!」
「むしろ包帯水着スタイルで」
「黒メイド水着にモップステッキ常備の変身アイテム」
「水着ならレオタード一択」
「あのスタイルでマイクロビキニは逆にアリ」
「背中フルオープンは譲れねぇ!」
「謎の光全撤廃! 黒インクで塗るだけ! ただしエロバージョンはブルーレイでな!」
「変身バンクはベンディと友情融合…」
「怒涛合体は男っぽい、悪魔合体はグロい失敗作…」
「禁忌合体。背徳的」
「「「それだ」」」
「そもそも社長を性癖の塊にするのは」
「うるせぇ! わかってんだよ!」
「でもダメだからこそやりたいだろうが! あの逸材だぞ!」
「魔法少女すこ」
「絆創膏」
……等々、コアな性癖の人材ばかりが集まっているせいで、『悪魔法少女★ユカりん(仮題)』のショートアニメが製作されることが決まってしまった。こればっかりはレイニーの予想外だった。
しかし、予算と放映時間の関係上ギリギリ問題ない範囲の企画書を既に提出しており、最終的にスタッフの熱意に押されてレイニーは渋々OKサイン。ちなみにベックはまさかの推進派。
流石に本人をモデルにするのは問題があったので女性スタッフ限定でレイニーのスケッチを許可し原画を上げてみたが、何も見ずに描いた男性スタッフの原画の方がリアリティがあり、何よりも客層のツボを突いていた。
流石に完全敗北した女性スタッフは力及ばずと泣き崩れたが、男性陣の執念が上回ったとレイニーが慰めた。
ただスタッフの性癖を詰め合わせたものだと批判されるんじゃないか、という声もあったがそこは用意周到な男性スタッフ、既に書き上げていたアニメのシナリオが伏線になるように構成されており、「え、私の事情全部把握してんの?」とレイニー本人がドン引くようなストーリー構成だったという。
おのれタカヒ〇、おのれ虚〇
挨拶もそこそこに済ませてデスクにつくと、レイニーら含むスタッフ一同は原画作業を進める。
レイニーにヘンリー・スタインのような原画技術はない。だが、レイニーにはそのデザイン元となるベンディを宿している。
液タブやペンタブの扱いを知らないベンディにはレイニーが、ベンディを写実的に書くポイントがわからないレイニーにはベンディが、二人三脚体制で作業は進み、この日一日の進行具合から逆算して予定の1/3の日数で原画作業が終わると予測され、スタッフたちは沸き立った。
おかげで締め切りギリギリまで睡魔と戦い仮眠室がいっぱいになるという事態は回避され、タイムカードは定時きっかりで退社できるという極めてクリーンな会社になったという。
ただし、
「騒ぐな、金庫の金全部この袋に詰めろ」
〝アベンジャーズのベンディ〟が社長として注目を浴びた弊害として、不埒な輩が来訪することはある。
「…今日の受付嬢だれだっけ」
「おいそこしゃべるな。コイツの頭が吹き飛ぶぞ」
「アンジェだったはずだけど」
「あいつ今日出勤してないんじゃ」
「え? じゃああいつ誰?」
【あ……な……た……
お……か………ね…】
「……え」
【ぱふぁ】
「あ」
「あ──」
「おい誰だ社長室に『
「いいから社長呼べぇ!! 強盗が死ぬぞ!」
…たまに、魂救済活動の一環で派遣しているインクの住人によるトラブルもあるが、それでもこの会社のスタッフには奇妙で幸福な日常だった。おかげでインク
しかし、哀れな犠牲者を差し引いて、会社の景色はレイニーとベンディにはこれ以上ない幸せの風景であった。
かつて、ジョーイ・ドリューが経営していたスタジオは社員の魂と神経を擦り減らし狂気に堕とし魂を穢した地獄だった。その恩讐から産まれたベンディは何よりもブラック企業というものを嫌悪しており、それ故にクリーンな職場体制が構築されつつある居場所が心地よかった。
もし、一人でも残業者が出た暁にはベンディの悪夢が再来して
育休産休あり、災害発生時はもれなくお休み、仕事持ち帰りはできるだけしないという、他の労働者にとっては天国、プロジェクトスタッフにとっては(好きな仕事に関わる時間が少ないという)ある意味地獄ではあるが、過重労働故に疲労で倒れるスタッフが出ることなく、アニメ制作は順調に進んでいった。
グッズ製作も順調。
舐めたら舌が真っ黒になる『ベンディのペロペロキャンディ』
どろりと舌上で肉が溶ける触感がする『小悪魔大好物
外サクサク中カリカリお酒のツマミに最高『腹ペコワンちゃんの骨スナック』
等々が企画として出された。企業側としても、今後のベンディの劇場アニメ公開へ向けて製作を進めており、劇場公開前には売り出すらしい。
ただし、アベンジャーズとしてのベンディのグッズ販売部署と揉めており、ベンディグッズの利権争いで少々問題も発生している。
「はい、みんなおつかれー」
「社長! お疲れ様です!」
「明日はマッスルベンディ見せてください!」
【 OK 】
(イイズェ)
問題も所々あるが、それでも進捗は概ね良好。
レイニー参加から数週間が経過し、ベンディ・アニメーション・プロジェクトは好調だった。
【 Rainy , The phone is ringing 】
(レイニー、電話鳴ッテルヨ)
「あらホント。はいもしもしこちらベンディ・アニメーション・プロジェクトの」
『社長を呼んでくれ、ビル・フォスターだと伝えてくれれば』
「社長のユカリ・アマツですが」
『…本人か。ちょっとウチ来てくれるか? エイヴァの調子があまりよろしくない』
「状態は?」
『時たま振動で全身の細胞の
「…緊急性高いわね。以前マクシミリアン教授と話したけど、人体の分子結合に関しては専門外だと断られたわ、バナー博士も同様。アテはない?」
『……一人、いる。気に食わん奴だがな。〝ゴライアス計画〟に聞き覚えは?』
「……確か、特殊粒子の性質を応用した人体巨人化計画だったかしら? そういえば貴方の名前あったわね、研究主任は確か…」
『……ヘンリー・〝ハンク〟・ピムだ』
「なんだ、知ってるならその博士に聞けば…あ、あ~そういうこと。その博士相当性格捻くれてそうね」
『スタークといい勝負だろうよ。奴は初代アントマン、確かピム・テックでこないだ一騒動あったはずだ』
「
『そのまさかだ。なんだ、心当たりでもあるのか』
「……あー、うん。まぁ、ちょっと同僚が一杯食わされてね…情報ありがとう。そっち方面で探り入れてみるわ。最悪因縁ある博士がお宅にコンニチハしてもいいわよね?」
『えっそれは』
「昔の柵とエイヴァちゃんの命とどっちが大事なのよ! 男だったらハッキリしなさい!」
『うっ……うぅ~ん…あいつはなあ…ちょっt』
ガチャン。
「問答無用。忙しくなるわよ」
【 For a while , the work is postponed 】
(シバラク原画ハオ預ケカァ)
次の日、マッスルベンディは現れなかった。レイニーは会社を休んだ。
Chapter 83
「ただいまー、キャシー帰ってきたぞ~」
そう、ただいま!
〝帰ってきた〟という充足感! 〝マイホーム〟という安心感!
最高だね。帰る家があって、
でも、こうして家に居ることを許して貰えたし、終わりよければすべてよしってね! 娘と一緒に暮らせれば、俺はもう満足だよ。このまま何もなく余生を送りたいね。
ところで、娘は?
「キャシー?」
おかしい、いつも「ただいま」って言えばすっ飛んでくるはずのキャシーが…って、そもそも家に住めるようになったのここ最近だけどな。と、思いたかったんだけどさ。
この高級そうな黒い靴、誰のだ。
サイズは…4.5くらいか? 小柄の子ども? キャシーの学校の友達ってオチならいいんだが、なんだ…凄まじく嫌な予感しかしない。ピム・テックの関係者? 女性社員ってんならありそうだけど私怨なんて冗談じゃないぞ。
「あ! パパ―! おかえりー!」
「キャシー!」
居間からとことこ走ってきた娘をキャッチ! ああ! ほんとうにかわいいよキャシー! もう何処にも嫁に出したくないってくらいかわいいよ! 最高! いや、それだとキャシーが一生独身に…!? でも、娘が好きな男の子なら…イヤイヤ! パパは許しませんよ!
ところで、その手に持ってるくろいお人形さんはどうしたのかなー? なんだか、スッゴク、見覚えあるんだけど……
「お父さんが帰ってきたんですか? あら」
「うわ」
やべ、口に出ちった。お口にチャーック!
いや、だって! 居間からテレビにも出てる有名人が! 出てきたら! そりゃ驚くじゃんか!
だって、アベンジャーズのデビルヒーローにして、アニメ会社の社長さんだぜ!? 喉から心臓飛び出るくらいビックリさ! こう、ジム・キャリーが演じる『マスク』みたいにさ!
……心臓は出ないよ、マジで。代わりに煩いってくらいドクドク言ってるよ俺の心臓。もつかな? もたなさそう、有名人枠とは
ていうか、間近に見るとちっさいなぁ~、キャシーより少し背が高いくらいか?
「初めまして、スコット・ラングさん。わたくしベンディ・アニメーション・プロジェクト社長のユカリ・アマツです」
「あ、ど、どうもご丁寧に」
名刺渡されちゃったよ。
こういうとき、自分の名刺返せたらスッゴイカッコいいんだけどなぁ~わかる? 返せない時の自分の惨めさ。ちょっと凹む。大人になるとわかるよな、この気持ち。
「此度はベンディ・アニメーション・プロジェクトへのクラウドファンディングへの応募ありがとうございます。その〝特典〟を届けに来ました」
「え? いや俺はそんなの応募した憶えは無いけど」
「私がしたの! ベンディかわいい~」
「キャシー!?」
え、そんなの知らないよ!? ああそうか、俺服役中だったからその間のことなんて全然知らないよな…面会だって無かったし…そう、ジム! お前がせがむキャシーを捕まえてたんだってな! キャシーから聞いたぞ?
「正確には俺たちの金だがな、キャシーにせがまれて断れなかったんだ」
いや知らないよ。ちなみにいくら?
「2500ドル。上から三番目に高いやつだ、確か限定1000本コースだったかな?」
ウッワ、俺がこの前ハズレの
ま、まぁ娘にせがまれたら、そりゃあ…出すかもな? おこづかいの限界目一杯まで。
「本日は、本物のベンディとの触れ合い特典も特別についてます。あとは試作品ですが、まだ市場に出回っていないベンディグッズもご用意しました」
「本当ですか!? よかったなキャシー! 俺たちも大金出した甲斐あったってもんだよ」
「ええ、そうね! 見てこの食器セット! ロットナンバー0001だって! 一番目の当選者よ!」
「嘘だろマジかよ! 本当に運がいいな!」
「抽選の結果ですよ。支援してくださったそのご厚意、感謝しております。これからの我が社の活躍にご期待ください」
「おねーちゃんありがと! ベンディのアニメ楽しみにしてるね!」
あっコイツ、キャシーに色目使ってるな!?
いや待てこの社長女性…というか、女の子だろう? なら別に色目とかじゃないか…?
「い、いやぁ、社長直々に届けてくれるなんて光栄だなぁ…お暇なんですね」
「オイ」
小突かれた。痛い。失言だった。
「ところで…スコットさんとすこしお話があるのですが、よろしいですか?」
「え、ええ…どんな話かしら?」
「先ほどのアンケートですよ。何分、会社を立ち上げたはいいんですがノウハウとかからっきしでして…ファンの方のニーズというものを生の声で聞きたいものでして。今後のプロジェクトの活動方針に反映させていこうと思いまして、2つ、3つお聞きしたいことがあるんです」
「ああ、それなら構いませんよ。どーぞどーぞ」
オイ、ジム!? 俺さっきから「拒否しろ」アイコンタクト送ってたのになんで気付かないんだよ!? ルイスの奴なら速攻気付いてくれたぞ!
「ありがとうございます。それでは…キャシーちゃん、少しパパとお話してくるね」
「いってらっしゃーい」
「ちょっと外出ましょうか。近所を見て回りたいんです」
「え、イヤ俺さっき帰ってきたばっか」
「案内いいですよね?」
あっこれ逆らっちゃダメなやつだ。
ぎゅっ、と。手首掴まれた。触られたとこがな~んかうぞうぞしてて気持ち悪いっていうか…寒気するっていうか。アントマンになって初めてバカでかいネズミと対峙したときみたいな感覚がする。
引っ張る力はそんな強くないのに、あれよあれよと玄関から出ちゃった。しかも、テレビに出る有名人と一緒に…! なんか、スッゴイ他の人の視線気になる! 落ち着け落ち着け…こういう時に挙動不審そうな奴が、一番他人の記憶に残るんだ! そう、落ち着けばいい落ち着けば…
はい、無理。
「先日の手腕は見事でした。まさか、私たちの基地に侵入して『ファルコン』の警備を掻い潜り、資材の一つを盗み逃げ遂せるなんて。そこらのコソ泥にはできない芸当です」
「…えっと、人違いか何かじゃないですかね? 俺はそんなことした覚えはないですよ」
「ピム・テックの事件については聞き及んでます。イエロージャケット開発者のダレン氏と取引をしていたミッチェル・カーソンはS.H.I.E.L.D.の元幹部でしたが、HYDRAの幹部でもありました。彼は別経由で私たちが捕縛したので、
ちが、じゃなかった! 危なっ! 思わず訂正しそうだった!
そのミッ
「……ええーっと、今日は、アニメ会社の社長として来たんですよね? それともアベンジャーズの一員として? それなら、一度出直してもらっても?」
「名刺、裏返してみて」
名刺ってさっきの? あっポケットに突っ込んでくしゃくしゃにしちゃった、ヤベ。えーっと何々…
…おおーカッコいいね、角度によって立体的に見えるのか最近の印刷技術はすごいなぁ。
そうじゃない、いや違うそうじゃなくて!
この際印刷技術云々はどうでもいいよ! ベンディってこれ、あれじゃん侵入したこと完璧バレてる!? いや、向こうは確証まではない筈…あ、でもウソついてたってバレたらどうしよう。その場でベンディに飲み込まれるってことないよね!? 助けてホープ!
いやそうだ、こんな時にはアントマンのお供、蟻たちを使って……って、
「? アリさん呼ばないんですか?」
「エッ、エエ~……? アリさん? 何のことかなぁ? 俺実は虫とか苦手でさ、見るだけでゾワゾワしちゃうんだよね」
「そうなんですか。娘さんは「おっきぃアリさんと仲良しなの」とおっしゃってましたが。一緒に暮らすのは大変そうですね」
おおおおおい!? キャシーお口チャックの約束は!?
逃げたいけど逃げられないこの距離感わかる!? ちょっと引っ張られた手、全っ然強くないのに振りほどける気がしないっていう…! ところで、俺何処向かってんの? いつの間にか人気のない裏路地っぽいとこに来ちゃったんだけど。
はッ、まさか俺、ここで拷問とかされちゃう?
「そこまでだ、もうソイツを弄るのはやめてくれないか」
「あらおじさま初めまして。眼鏡かっこいいわね」
は、博士ぇ~!!
俺…いままでで一番博士に感謝してるよ! もう、その車から出てきた瞬間緊張から解き放たれた感がマジやばい! これっきり、これっきりだけど心の底からありがとう!
「凄いですね彼。いろいろカマ引っかけてみたんですけど最後までアントマンだと口を割りませんでした。まぁ、脈拍は分かりやすいくらい反応してたので、ウソ発見器とかだとバレバレですけど。あと手汗」
「私が見込んだ後継者だからな、当然だ」
オイ、さも自分の手柄みたいに言うなよ博士。俺だって頑張ったんだぞ! え、手汗? あ、うわぁべっとりしてる…もしかして社長さんに擦り付けちゃった? あー俺ほんっと最悪…。
「それで、彼を連れてまで私を呼んだ理由は何かね」
「
「……ホープ」
「勘…ってわけでもなさそうよ」
うぉっ!? いつの間に後ろにいたんだよホープ!? いたんなら俺をこの小悪魔ガールから助け出してくれよぉ。というか、そのアントマンっぽいスーツなんだ? 新製品みたいにピッカピカで羨ましいんだけど。
うん? なんか話の流れ、おかしくないか。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃあ、最初から俺がアントマンってわかってたのか?」
「そうでもなかったら、わざわざロットナンバー0001の貴重品を寄贈なんかしませんって。いや抽選では当たってはいたので偶然ですけど」
「マジか」
「大マジ。娘さんの運すごいですね。インクの悪魔の導きがあらんことを」
「フォースの導きっぽくいうなよ」
本当にキャシーの豪運すごいな。ま、まぁ俺の娘だからな! 当然だよな! でもベンディまで引き寄せないで欲しかったよ!
「因みに、なんで俺がアントマンってわかったか聞いてもいい?」
「ミッチェルを捕まえたって言ったでしょ? ペラペラ話してくれたよ」
あ〜ハイハイそういうことね。あの取引現場に居たんだからそりゃバレますわ。はいドナドナ~、ホープにも背中押されて車の中に連行された。拒否権はなさそうだけど…俺、要る?
「…彼は要るのかね?」
「後継者ってことはそれなりに量子物理学に詳しいってことでしょ? 今回の件については、多角的な意見が欲しい」
「その前に一つ、キミは
スターク!? 博士から聞いたけど俺もあんま好きじゃないんだよな、ピム粒子の量産を目論んだっていうし、アイアンマンでブイブイ言わせてるけど俺からすりゃあ…ああそうだよ、僻みだよ悪いか!
金一杯あって人生順風満帆、抱く女は両手で数えても腐るほど! いや女は腐らせちゃダメだよな…うん、女はいつだって新鮮ピチピチがいいね。
「今回は私個人として来てるわ。アベンジャーズにもヒミツ。だけど、引き受けてくれるなら基地への無断侵入は帳消しにしてもいい」
「矛盾しているな、私用で来たのに基地への侵入のことを脅しに使うのか?」
「……あまり、形振り構っていられないのよ。私の友達の命の危機だから。一刻を争うの」
友達…キミにも友達なんかいたのか。おっといくらベンディ相手でも失礼だったな。だってインクの悪魔に友達とか…いる? って思うだろ。
「友達?」
「引き受けてくれる?」
「……父さん、話だけでも聞いてあげたら?」
「ホープ?」
「俺も賛成だね」
ぎょろ、っと全員の視線が突き刺さった。
え、なんだよ俺が同意するのは意外だって? いや別にホープが賛成っぽいから便乗したわけじゃないぜ? ……本当は、そうだけどさ。
「なんだよ、別に悪事に手を貸せって話じゃないんだろ? それならいいんじゃないか、ヒーローなら人助けだろ」
「……いい後継者ね」
「あーっ…クソ、わかったわかった。話だけでも聞いてやるから。だが勘違いするなよ、引き受けるかは話の内容を吟味してからだ!」
「やったっ」
「まったくずるい奴だ、コールソンの血筋は」
──数日後。
インクの少女と蟻の男が手を組み、量子世界に囚われていた女性と量子フェージング状態に苦しんでいた少女が救われることになるのだが、それはまた別のお話。
そして、会社で仕事を再開しようとした矢先のこと。
「社長! ビルの前に怪しい浮浪者が座り込んでて困ってるんですが!」
「え? 強盗とかじゃなくて?」
「「私は神だ」とかやる気ない声でブツブツ言ってるんですよ! オマケに右目にカッコよくもない眼帯嵌めてるし! せめて
「……んんん?」