パラサイト・インクマシン   作:アンラッキー・OZ

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 短編1位、日間6位、ありがとうございます



悪魔はニューヨークで踊る

 

 

 

 Chapter 4

 

 

 

「あら、それは何?」

 

「どっから入ってきやがった…って、俺が言えた義理じゃないな」

 

「彼女は新しいメンバーだ。挨拶」

 

MY name is BENDY !

 (ボクノ 名前ハ ベンディ!)

 

「レイン?」

 

「今度からレイニーで頼むわキャップ」

 

 等身大に伸び上がったインクのマスコットの顔が剥がれてレイニーの顔が現れる。その光景だけは先ほどのものの焼き増しに近いが、唯一相手の反応が異なっていた。

 

「え?」

 

what what what ?

 (何 何 何 ?)

 

 咄嗟にインクの手を前に出し交差させて身を守る。何故ならばロマノフに銃を突きつけられたからだ。

 

「ナターシャ!」

 

「どうしたナターシャ、コイツと知り合いか?」

 

「……ごめんなさい、見間違いみたい。私の知ってるある日本人とすっごく似てたから」

 

「……勘違いなら、銃を下げてもらってもいい?」

 

「ええ、本当に悪かったと思ってる」

 

Really ?

 (ホントニィ ?)

 

 ハッとしたロマノフは気まずそうに銃口を下げるが、未だ彼女が知るある人物と面影が重なることを気にしていた。

 その様子を見たレイニーはふーん…と銃を向けられたにしては危機感もなく納得したような態度で頷いている。

 

「…改めて、レイニー・コールソンよ。よろしく美女さんとイケメンさん」

 

「ナターシャよ」

 

「バートンだ。コールソンって…」

 

「フィル・コールソンは父よ」

 

 二人の背後にいたロジャースが手で「巻いて、急いで乗って」とクインジェットを指してたのでレイニーは二人の背中を押してクインジェットに乗り込む。

 

「あいつ子持ちだったとかマジかよ…それじゃ、お前もあいつ(ロキ)狙い?」

 

「ぶっ殺してバラバラにして食べてやりたいけどまずは一発殴らせて」

 

「食べるって、それに殴るってあなた…」

 

「それなら早い者勝ちだな、俺もあいつに一発入れてやりたいところだ」

 

「望むところよ」

 

The first loki hunting championship is held ~

 (第一回ロキ狩リ選手権開催〜)

 

「彼モテモテね。ところでそっちの…彼? が、ベンディなの?」

 

「そ。私に寄生してる悪魔。頼りになるからコキ使ってやって」

 

 

 

 

 

 Chapter 5

 

 

 

 胴体着陸したクインジェットを降りた時には、既にチタウリの軍勢が侵略の手を伸ばしていた。

 あちこちで戦火が飛び交い、逃げ惑う人々と蹂躙する異形の怪物。空に開けられたトンネルは異次元に、彼らの巣に繋がっている。

 数分前まで送っていたニューヨークの街並みが、営みが、破壊されていく。

 

「レイニー、君は何ができる!?」

 

Environment is good in urban area for me

 (市街地なら好環境よ)

 

 パチッとマスコット姿のベンディが意地悪そうな笑みを浮かべて指を鳴らす。それは動きだけならただの指パッチンだが、歴戦の戦士であるロジャース、ロマノフ、バートンには何らかの力が発生したように感じられた。音も空気の振動だが、今回発生した振動は空気だけではない。

 

There is no office that does not use a ink in this day and age

 (このご時世、インクを使わない仕事場はないわ)

 

 半壊したビルのあちこちで、白く四角い印刷機が破裂する。

 中から体積を膨れ上がらせて溢れたシアン、マゼンタ、イエロー。

 カラフルなインクたちは捻れ、混ざり、溶け、やがてブラックに飲み込まれる。

 

Just for this once Here is our workplace

 (今日だけはここが私たちのデスクよ)

 

 黒く染まったインクは壊れたコピー機の残骸さえ飲み込む。歪に壊れたインクマシンを宿したインクは小さいながら、あらゆる場所でその全てがベンディの指揮下に置かれ、そして変貌する。

 避難しようと焦って、側で見ていた女性職員は腰を抜かした。

 

 

【【【 HA HA HA HA HA !

    We are Bendy ! Nice to meet you ! 】】】

 ((( ハハハハハ!

      ボクタチハ ベンディ! ヨロシクネ! )))

 

 

Citizen's evacuation , protection , and rescue .

  Splash out from the beginning

 (市民の避難と保護、ついでに救出

   初っ端から大盤振る舞いね)

 

 半径数キロ先の範囲で小さなベンディが産み落とされ、その愛くるしいマスコット姿は人々を惹きつけた。

 

 どこか夢の国の住人に似てるから、とは思わないでほしい。一応彼らの手袋は二個ポチだ。鼻もそんなに長くない。

 

 あるベンディは避難ルートを探って誘導。また、あるベンディは自慢のインクの力を使って瓦礫を持ち上げ、埋もれていた市民に手袋で包まれたインクの手を差し伸べる。

 そして、あるベンディは盾となりチタウリの兵士の銃弾を受けて消滅する。べしゃりと飛び散ったインクが血液の如くそこかしこの窓ガラスにスプラッタのようにへばりつく。

 

 だが、彼ら(ベンディ)は無数と言っていいほどの個体が存在する。ここニューヨークはベンディからすればインクの宝庫だ。突然湧いて出た集団にチタウリの兵士たちは困惑した。ヒトとは明らかに異なる別種の生物。

 

 このニューヨークが戦場になる以上、被害者を抑えるためにも避難誘導は必要だ。ある程度の武力を持った警察には避難よりも威嚇による防衛ラインの構築が急務な今、ベンディの働きは戦う前のこの上ないアシストだった。

 

「やるじゃない」

 

Thanks . By the way ?

 (ありがとう。ところで一ついい?)

 

「手短に」

 

Please let me ride in order to conserve my strength

 (ちょっと乗せて。体力温存)

 

「…あとで、訓練と筋トレ必要そうね」

 

 小さなマスコット姿のベンディがちゃっかりロマノフの肩に乗ってる姿が見えたそうな。

 

 

 

 

 

 Chapter 6

 

 

 

 視界を共有しているサーチャーらが順調にニューヨーク市民の避難誘導を進ませてるらしい。

 まだ人気が残っていそうな場所は捜索に当たらせて、他のサーチャーたちにはインクに戻って集まるように伝えた。

 

 元々サーチャーって地を這う無貌のヒトガタだったはずだけど、流石にアレは怪しすぎるからイメチェンしてもらった。あのデザインは私でなくても絶対逃げるか斧で叩く。

 

 正直、複数のインクを操作するなんて初めてだったから頭がこんがらがって目が回りそうだ。大半の操作はベンディがやってるけど、こっちにも煽りを受けてる。

 彼は感覚で動かしているんだろうけど、見てるこっちからすれば数百もの別チャンネルが表示されたテレビを見てる気分だ。つまり酔う。

 

Oof !

 (よいしょお!)

 

 ズガン、と揃えた指の先端を槍状に固めたインクがキモい化け物を串刺しにする。ん〜〜ギモヂイイ!!(ダミ声)

 頭動かすより体動かす方が性に合ってるわ、私。第二形態だと手足伸びてリーチ増すから間合いも広いし、元の人間らしい体だから馴染みがある。

 

Oops too

 (おっとこっちも)

 

「!?」

 

 イケメンお兄さんに馬乗りしていた化け物を、お兄さんの腹から出てきたインクの槍で一刺しグサリ。あらお兄さんどうしたの。

 

「お前今何した!?」

 

When I shook hands

 (握手した時に一部ね)

 

 今の私には指が二本ない。左手の小指と薬指。今突き出たのは小指部分だ。…かなりサイズがでっかいけど。あれじゃ耳掻けないじゃない。

 イケメンバートンさんと美女ナターシャさんは服の色の関係上憑いててもパッと見で見分けがつきにくい。

 色々試してみて、こっちは自動(オート)で近付いた化け物を突き飛ばすようにやってみた。案外できるもんだな、無理しない程度に試してみよう。

 

「…そういうのは、先に、言っといてくれ!」

 

Sorry !

 (ゴメン、ね!)

 

 乱戦だから返事中もぶっ飛ばしてる。

 あー今は殴ってるだけだけど食べたらンギモヂイイ!!ってなるんだろうなぁ。ちょっと爽快感に浸れるというか、脳みそからガッツリいっちゃうとこう…ね! 快感がね!

 やばい、少しトリップしてる? 薬使ってないよ。というか効果ないよね私。

 ……多分。

 

 数増えてきたなーと思ったら、サーチャーたちが空飛ぶ人を見かけたって。雷撒き散らして、トンカチ持って。

 トンカチ? 斧じゃない?

 空飛ぶって化け物にお手玉されてるとかじゃなくて? え? 違う?

 

People came down from the sky …

 (空から人が…)

 

「ソーだ。お前誰だ?」

 

Saw ? MY name is BENDY !

 (ノコギリ? ボクノ 名前ハ ベンディ!)

 

「……味方か?」

 

 うん、と三人の様子を見た(ソー)さんが渋々納得したご様子。ゴメンね紛らわしくて。

 そしたらどうやらトンネル作ってる装置のバリアが破れないそうで。近くにおじさんと鹿…トナカイ? の被り物をしたあんちくしょう(ロキ)がいるらしいって。よし行ってくる。

 

 と思ったらロキ居なくなったら化け物軍団の手がつけられなくなるって。へぇ、面倒なポジションに付いてる。見敵必殺できない。

 

 するとバイクでこっち来る市民…市民? との連絡が。誰?

 と思って見てみると…なんだこれは、タマげたなぁ…と思わず自分をそっちのけでドン引きするような混ざり具合の人間がいた。

 

 

 あれは、凄い非効率。

 

 

 私たちは寄生を超えて融合して対話しているからミスマッチがあまりない。でも、あの人間は内の存在と対話してないのか意識共有してないのかわからないけど、()()が合ってない。私が言うのも何だけど、酷く歪。ナターシャさん曰く、ハルクだそうで。とてもヒドイらしい。同感。

 

 …あとで話した方が良さそう。

 

『愉快な仲間を連れてくる』

 

 あれが噂のアイアンマン。赤と金のメタリックなカラーがすっごくかっこよくていいなって思ったら空飛ぶクジラ連れて来た。あれ? クジラって空飛ぶっけ…飛ぶわ。飛んで夢見せて卵乗せた島のテクスチャ作っちゃってたわ。これは絶許案件。

 クジラは緑人ハルクとアイアンマンに爆発四散された。うんやっぱりクジラは絶許。保護団体だろうが何だろうがあいつはダメ。

 

 よーしベンディ、第三形態だ!

 

What's Third form ?

 (第三形態ッテ?)

 

 そりゃあれだよ…えーと、一番マッスルで怖いやつ。

 

Oh yeah !

 (アァアレネ!)

 

 あれ、第三形態って認識してるの私だけ?

 

 指示通り、成人レベルの大きさのベンディが肥大化、巨大化、白い歯が横にずらりと並んで筋肉インク量増し増し、指も長くなってトッキントッキン突起が増えてく。まるで()()()みたいに肉体を創り変えられる感覚がゾワゾワするけど、あの時と違うのは苦痛がないことか。

 

 

 それは多分、自分と悪魔(ベンディ)を受け入れたからだ。

 

 

「そんなこともできるのか…」

 

『悪くないスーツだ。少々…いや結構趣味悪いな!』

 

「だいぶいい感じにゴツい体になってきたな、頼りがいがある」

 

「コイツ本当に味方なのか?」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎───!!」

 

「すっごくワルモノって感じがするわ」

 

I hear you

 (それな)

 

 順当な評価だと思う。私も中々化け物じみてきた。

 でも可愛らしいマスコット姿でスプラッタするよりも悪者フェイスの方が相手もビビってくれるでしょ。ほらまた絶許クジラがやってきた。

 

「レイニー、キミは市民の避難誘導を続けつつ援護頼む」

 

Can I eat this ?

 (アイツラ喰ッテイイ?)

 

「…キミは聞かなくても食べるだろう。頼むから市民は喰うなよ」

 

Ok

 (りょーかい)

 

 

 私たちは道具(tools)

 

 化け物たちは愚者(fool)

 

 さぁ、悪夢を始めましょう。

 

 

 

 

 

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