パラサイト・インクマシン 作:アンラッキー・OZ
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Chapter 128
「なぁ兄上、マリオは知ってるか?」
「何の話だ?」
「いや、ゲームの話だ。私がハマったゲームにはマリオという赤帽子の配管工がいるんだが、そいつには弟がいる。ルイージって奴だ」
「へぇ」
「ルイージってのは、正に永遠の二番手というヤツでな。兄に勝る弟などいない…これを克明に突き付けられたような存在だよ」
「ハッ、それはそうさ。兄より優れた弟はいない。
「ああ。だから私は
「……は?」
「知ってるか? ゲムヲの登場は1980年に発売された『Mr.ゲーム&ウォッチ』、マリオの登場は1981年のしかも初登場
「何を言ってるんだお前は!?」
「……ホゥ、私を前に悠長なことだ。ンン?」
「ほれ見ろ、
「…ああ、なんてこった」
Chapter 129
「さ、て、と…それじゃ次の話に行きたいところだけど……ね、貴女の疑問に答え続けるのもフェアじゃないでしょう? 少しは私の質問にも答えてもらってもいいかしら。ちなみに拒否権はないから」
もう恒例行事となってしまった問答でもしましょうか。
いつの時代だって対話による解決は必要よね。下手に突いて火傷を負わされては堪らないもの。何事も平和的解決に手を伸ばさなきゃ、損をするのはいつだって私。
まぁ、火傷程度で死ねないのは、ねぇ?
それでも私は知っている。火傷を負った過去を持つ人が炎を見て恐れるように、対話を挟まない解決が生む面倒事を知っている。
「貴女は、
(…知らない)
「ふむ…次の質問。貴女は転生者という存在を知ってる? 若しくは、貴女は転生者?」
『
……これも無い、か。勘違いだったみたいね。あまりにも過去に見た同位体とは違う傾向が強く見えたから、
そもそも、私は異次元の旅人共とは致命的に相性が悪いから、憑依の
「最後の質問…というよりこれは数当てに近いのかしらね。『14,000,605』…この数字は何を指しているでしょうか」
(せんよんひゃくまん…? ………まさか、)
「アラ? やっぱり貴女は今までのよりも鋭いわね?
正解は、私が見送ってきた同位体の個数よ。同時に私の『不老不死殺し』の実験台になった
ああ、魂が震えているのがわかる。
私は歓喜に。貴女は恐怖に。
覆しようもない事実に打ち震えて、生きる力さえも撓ませているのがよぉくわかる。
それでも──霧散しないのは、魂の強度が高いからでしょうね。今までの同位体の半数以上は、この事実を聞いて自壊してしまったから。
この同位体は、とても
(……うそだ)
「嘘じゃない。言ったわよね?
残念ね、私の言ってることはすべてが真実よ。これまでの話も、そしてこれから私が言うことも」
あくまでもアストラル体に成り立ての魂が嘘をつけないというだけで、アストラル体という状態に慣れれば如何様にも虚偽の皮を被れる。私がこの状態になって年換算だと…××××年くらい?
流石に鋭い洞察力を持った変異体であっても、私が以前嘘をついてたことは思い出せないみたいね。ドリアン・グレーの絵画、偽りの不死の秘術。その場で考えた思い付きだし、アレ。
でも、研究者としての矜持にかけて、虚偽の研究結果の報告をするつもりはないわ。
(…さっき)
「ん?」
(さっき、言ってた、持ち込んではいけないもの、って…)
ああ、それ。
「彼らはあろうことか、前世の記憶を持ち込んでたのよ」
(……そんなの、いいじゃない。あなただってエニシの脳を移植されてるんだから、同じ穴の狢でしょうに)
ええ。
そうね、そうなんでしょうね。貴女にはそう聞こえるしそう思えるんでしょうね。
でも違うのよ連中は。
「そうね、その記憶が『マーベル』という次元由来のものであれば私も頓着しなかったわ。歯牙にもかけなかった。
でも連中はあろうことか、『マーベル』という次元が創作物として存在している
言うなれば『マーベル』という次元そのものを貶めたのよ、連中は。いま生きる人間を『
(…なん、で)
なんで?
ああ、お決まりの常套句ね。同位体の中でも一際誰かに優しい貴女は、彼らへの慈悲の心を持ち合わせているのね。行動には必ず信念と、それに付随する理由があると、そう信じてる。善人だろうが悪人だろうが英雄だろうが悪党だろうが、影響の大きさに比例して想いも大きいはずだって、心の底から信じてる。
「だってそうした方が気持ちいいから。自分が気持ちよくなれるから。
子どもって幼少期は砂を集めてお城を作るわよね? それと同じよ。
大人って欲求を満たすために他者と交わるわよね? それと同じよ。
正義感を肯定したい。息をするのに適した環境にしたい。
振るった力で蹂躙される様を見たい。世界が思い通りになる様を見たい。
そういうエゴを孕んで生まれ堕ちた連中は、
(…どう、して、そこまで、)
「だって自分は一度死んだのだから。
死という生物最大の不幸と遭遇してしまったのだから、見返りとして好きにさせろと、世界を寄越せと。あろうことか訪れる旅人は皆口々にそう言うのよ。だから私は言い返してやった。
そんなことを言うなら、生まれ変わってくるべきじゃなかった。新生するべきではなかった。蘇るべきではなかった。不老不死になるんじゃなかった。
本当に。
本当に、何故
「一方私の方はというと、幸いにも次に渡った次元でも
それでまず手始めにやったことは──
(……なるほど、脳の継承をしなければ、そもそも
「ぴんぽーん大正解」
それが、『マーベル』という次元でたった一人エニシの脳を継承したという証明でもある。
私が言えた義理じゃないけど、エニシの脳が生み出す無限の探求力は加速度的に世界を滅ぼしかねない。私一人でさえ世界を滅ぼす事故に遭遇したんだから、いくら無限に膨張を続ける宇宙であっても、多分その増殖スピードを上回る勢いで枯らす。
「でも殺したところで私という存在は消えなかった──まぁ、物は試しだからね? とりあえず次元を渡ったら
それに……わざわざ私が不老不死になるところまで過保護に見守って、最初の次元のルートを守らなくてもよくなったのよね」
(……なんで? 『不老不死殺し』が研究であるなら、『不老不死』の存在は必須なんじゃないの?)
「簡単な話よ、必要なくなったの。不老不死の存在は
異次元の旅人が不老不死というケースもあったけど、それはかなり稀だった。でも異次元から旅人が来るということは、死者を蘇らせて次元と次元に梯子を掛けた超常存在がいるということでもある。
「実験の前提として同一の
でもね、別次元から来た異端分子が率先して同位体を排除するようになったのよ。世界を終末に導く者を排除するのは、いつだって
(それが…転生者。
でも、わからない。エンシェント・ワンですら予見できなかった地球滅亡の災厄。それを、転生者とやらは容易く見抜き、災禍が芽を出し萌芽するよりも先に始末したと?)
「別に滅亡の未来を予知しなくたっていいのよ。連中は、連中の知る
ま、確かにそれは正しい。同位体が存在している以上
(……でも、彼らが異次元から来たという証拠は? そもそも転生者だってどうやって見分けるの? この銀河に数多の種族がいるならその内の一人だって思うじゃない。前の次元にいなかったからと言って、いままで注目していなかったかもしれないじゃない。貴女だって全能ではないのだから。
なんで、なんで貴女は彼らを見つけられるの…?)
おっと、割と鋭い点突いてくるわね。
なるほど、認識の
でも、その発想に至るということは、ある程度予想もついてるってことよね? マインド・ストーンの力を吸収し、人の精神が見えるようになった貴女なら。
「異次元から来た連中にはいくつか共通点がある。
①親の存在がない、若しくは不自然な出生歴がある
②真っ当な人間が付けたとは思えない奇妙な名前
③肉体と魂の
(……ズレ?)
「根本的に、異次元の魂とこちらの次元の肉体は規格が噛み合ってないのよ。そのあたりは
まず、本来こちらの次元にいる連中は『緑』。
グリーンカラー、グローバリズム、自然色。つまり次元由来のクリーンな色。
対して異次元、あちらの世界からやってきた連中は『赤』。
デンジャラスカラー、
緑と赤。あら、まるで3D眼鏡みたい。
「でも連中って気付かないのよねぇ…それとも人間だからこそなのかしら? 不都合なことには目を背ける。自分だってその正史とやらの世界には存在しない異物であることには変わりないのに、同じ穴の狢であるにも関わらず同位体を排除する……ねぇ、これって矛盾してるわよね?
まず
この世界に新生した己を呪い、速やかに自害しろ!」
私だったら嫌よ。二度目の人生を歩もうだなんて思わない。
幼少期の恥ずべき記憶も、学童期の色褪せた青春も、成人期の退廃した研究生活も、抱えた過去のなにもかも忘れて、まっさらな人生を歩みたい。明日を掴みたい。
連中は…『強くてニューゲーム』って言ってたかしら? 一度目の人生の経験を引き継いだまま二度目の人生を迎える……ああ、ああ!
なんて
それこそ詭弁。それこそ戯言。
当たり前を楽に済ませるのが上策? 嘘を言え、羞恥心を隠しているだけだろう。当たり前であろうと四苦八苦して乗り越えて経験を積むことが『人』が『生』きるということだと、理解できないのか。一回人生を謳歌したくせに。
私は不老不死だが、それでも不真面目に生きたことは一度として無いぞ。気が狂いそうになるほどの永劫であったとして、『不老不死殺し』という研究を完遂するための、失敗を繰り返してもめげずに真面目に取り組んでいるぞ。
だから私は赦さない。不真面目を赦さない。転生者を、異次元からの旅人を赦さない。
転生者死すべし、慈悲はない。
「──連中は、意気揚々と幼い同位体を手に掛け、喰らって殺し、犯しては殺し、或いは謀略で殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺し続けた。まるで自分が行うことが正義であると微塵も疑わず、その行為こそが世界を救うために為す偽善であることを信じて。
不思議ね…何千回と生と死を体感し生き続けてる私でさえ早々殺人なんていう非行には走らないわ、命の大切さを理解してるから。連中には、生命冒涜の特権でも与えられたのかしら?」
ある転生者は、何十回と転生し続けて生死の価値観がおかしくなったとか嘯いてたけど、流石にそれはおかしい。
元からその転生者には生命を軽んじる傾向があった、というのが私の仮説だ。現にそういう連中を虱潰しに捕えて記憶を覗くと、現代社会に馴染めず他者を害することを願望に抱いていた。或いは
上下関係が厳格だったり犯罪抑制を掲げた管理社会における民衆の間では処理できない不満を解消するための施策としてはアリ、か? 統治する立場になったことがないから何とも言えないが、反旗を翻す民衆の母数削減としては上等か。クソね。
「嗚呼、いい
何せ娼婦としては最高級の器であったし、性処理道具としても申し分のない肉体だった。強い牡を見れば浅ましく腰を振って子種を強請る淫売はまさしく
愛玩動物として首輪をつけて飼い慣らすに足る毛並みもあったし、憂さ晴らしとして嬲り甲斐のある心も兼ね備えてた。いたぶられても何度だって立ち上がって見せる生贄はまさしく
でも哀しいかな、その程度では『不老不死殺し』はできなかった。私には届かなかった。何千、何万とあらゆる手段を試しても、それが
とある次元の同位体は全宇宙を元締める娼館のオーナーに成り上がってたわね。タイム・ストーンによる自己の年齢操作であらゆる年代にも対応、インクの肉体を利用してどんな異種族だろうと満足させられる肢体にも変化可能。インクによる自己増殖で同時に100人を相手にしてたっけ。
性欲と言う切っても切り離せない生物の欲求を満たし、宇宙を支配する在り様は正に
「だから、ポップコーン片手に連中の羽虫が如き足掻きを見るのは辞めたのさ。どうせこの続きを見たところで私の思い描く
そもそも、私が眺めてるのは連中の
「ちょっと寄り道をした。研究を進める上でそれが必要か否かを確かめるために。そのために『
初期は何度も返り討ちにあって殺されてたけどね。10回殺しても死なないとか、一方的に攻撃が通される鎧とか、未来視に似た攻撃回避とか、死の線を見通す眼とか。
でも、攻略法はあった。その方法がねぇ。
「ただ、いい意味でも悪い意味でも誤算があった──この世界で
(えっ…神って、全知全能なんじゃないの? そもそも、神っているの…?)
「いるわ。そしてこの次元の神は殺せる──それはアスガルドの歴史を見ても明らかよ。
連中が『マーベル』と呼称するこの次元では、神は絶対の存在じゃないの。いくら魂を黄泉から引き摺り上げて、恩寵を授けられる絶大な存在であっても、不老不死であったとしても、
だから殺せた。だから殺した。そうしてこの次元に旅人共を送り出す不遜なる
結果、異次元の旅人はその魂にはあまりにも不釣り合いな力を宝の持ち腐れの如く抱えた卑しい盗人に成り下がった。そういう連中を鹵獲し、尋問し、時には実験の貴重な
まぁ、中には手を掛けるのも躊躇う
酒豪で宴会芸しかできなくて胸だけはご立派な駄女神とか。
PAD仕込みの胸だけど性格は善くて品のある女神とか。
同族を救う為に自らを対価に宇宙法則を書き換えた女神とか。
円環の理を奪って堕天し世界改変を行った女神とか。
そういう
…やっぱり、
向こう側から何千何万と侵入してきてるのだから、さぞ通りやすい
よし、決めた。次の
「ここからの話だけど──聞きたくないなら、拒否していいわよ? 口にしてほしくないならそう言えばいい。だって貴女にはそう意見するだけの最低限の資格があるのだから。その意見が叶えられるかどうかは別として、だけど」
(……ぇ)
「見たくないなら目を瞑ればいい。聞きたくないなら耳を塞げばいい。目立ちたくないなら口を噤めばいい。そうして受け入れ難い現実から逃げて、逃げて、逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて──ひたすら己という硬い殻に籠って微動だにしなければいい。
別に私は人間のそういう弱い部分が嫌いじゃないわ。むしろ愛しいとすら思えてくる。人間にはそういう弱い側面もあるからこそ結束できる、強くなれる。弱さは生物由来の生存本能みたいなものだし、その弱さが今日の人類の繁栄に繋がった。
共依存と言う形に溺れることもあれば、共生という形で恋や愛や友情を育むこともできる。ああ、
正しいことは激痛を伴う。だって、苦しみを我慢するということだから。
正しいことは激痛を伴う。だから、人は最も痛みの少ない楽な選択肢を選ぶ。
世の中には優しい逃げ道を用意してくれる。目を閉じれば正しい現実は見えない。耳を塞げば正論は聞こえない。口を噤めば反論は帰ってこない。
何事にも、
逃げることは悪いことではない。逃げたければ逃げればいい。誰もその背を追いはしない。
だって、そんな敗者に大した価値は無いのだから。
言うべきことは言った。最低限の警告はした。でもこの同位体は。
(……ッ)
何も、言わない。
拒絶しなければ拒否もない。如何なる真実だろうと受け止める、そういう覚悟が決まった眼を見せてる。溶液の中で動けず、それでもガラス越しに、真実を受け入れようとしてる。
だから、おかしいのよねぇ。
この同位体は、私が今まで見てきた同位体とは頭一つ抜きんでて
何より、己が世界の主人公であると言い張らない。自律性の欠如か? 単なる達観か? それとも諦観か? いや違う。
……私という同位体の総体から溢れ出た
「ああそう──なら、これから貴女に行う実験を教えてあげるわね。少し前に思いついた『不老不死殺し』の手段なんだけど、貴女で
(試し、書き…?)
「なんで貴女をわざわざ『
過度な
まるで酸塩基平衡の実験で試薬を垂らす瞬間のように、ギリギリの分水嶺を見極めていく。
ああ、同位体を甚振る連中の嗜好がよぉくわかる。確かにこれは病み付きになりそうだ。
(腐った…イヤ、『
あ──なるほど、そういうことか。
どういう経緯か、この同位体は
「『
この実験にはいくつかの条件が存在する。前提条件としてだけど、この星がたった一つの存在によって滅びるという未来が確定していなければならない」
(……え、星の、滅亡? 地球が?)
ああ、そういえばまだそのことは話してなかったっけ。
「いままで漂流してきた次元では、インフィニティ・ストーンを集めきったサノスが全宇宙の生命体の半数の消滅、という野望を成し遂げたわ。名付けて『指パッチン事件』。でも、8回ほど前だったかしら…なんとも興味深いデータが取れたのよ。
何がきっかけだったかは知らないけど、遠くない未来で宇宙の救済者として崇め称えられるサノスは、宇宙の中でも地球だけは
アレはちょっとした奇跡だった。
まさに救世主らしい手技には関心するところもあったけど、結局は騙して殺しただけだから、あまり見ていて気持ちいいものじゃない。『G.I.ジョー』みたいな後味の悪い
「やったのは私じゃないんだけどね。そこそこの友情を結んだ転生者に騙される形で体のいい生贄にされてたわ。地球という星を守る上で、同位体を排除する上で都合のいい絶好のシチュエーションだった。結果としてサノスによる星の破壊を、存在丸ごと捧げて防いだおかげで、地球という星は守られた。
何が言いたいかっていうとね、一つの存在によって世界を滅ぼすことができたなら、『逆説的に』一人の人間によって世界を救うことも、何ら矛盾してはいないのよ。
確かにたった一個の腐った果実は周囲の果実までも腐らせるでしょう。でもそれなら、
「この場合、
そもそも、一番最初に一人でも地球を消滅させることができたのだからそこに気付けよって話なのだけれど…でも、その頃の私という要素には
でも諦めなかったから気付けた。考えられた。嗚呼、やっぱり人間って素晴らしいわね。不条理の塊よ。勇気と気力と夢さえあれば、諦めなければ可能性は切り拓ける」
本当に。正しく。
信念と努力と日々の弛まぬ研鑽は、如何なる不可能を可能にしてくれる。
努力は限界を乗り越え、あらゆる偉業を成し遂げる。それは、人間が歩んできた歴史で証明されてる。
でもその正道を突き進む人は
正道を突き進む聖者であればあるほど、己が身を削ってガリガリに痩せ細りながら苦しみの内に死んでいく。
いつだって肥え太るのは邪道を選ぶ狡猾な連中。利権を、旨味だけを蛇蝎の如く貪り喰らう恥知らず。彼らは手にする物に見合うだけの、それこそ
『あらゆる武器を創造する能力』
『あらゆる技能を模倣する能力』
『あらゆる科学を超越する能力』
『あらゆる魔法を行使する能力』
『あらゆる想像を実現する能力』
『あらゆ『あら『力『を現実『清め『■『簒奪す『あ『不変『時を『らゆる『神秘『ベクト『■■■『る能力』
──いずれも、一生涯を生贄に捧げなくては手に入らないような
でも連中は躊躇なく使う。葛藤も、良心も、責任も考えず。
その能力に込められ想いも汲み取らず、まるで暴力の象徴とばかりに振り回す。後に残るのは『自分がそれを成した』という充足感と、影響を考えなかった馬鹿の杜撰な後処理だ。
『あればあるほどいい』のは、私の持論だ。故に『考えれば考えるほどいい』に行き着くのは自然の流れとも言える。だから──行き過ぎた能力が世界に与える影響を鑑みれば、そこでは『使わない』という選択肢を選ぶべきだ。
人命救助の為に? 止む無く? そういう
なら質問するが。
考えて考えて、考えて考えて考えて考えて考えていれば──そういう状況にはならなかった。だって未来を知ってるなら、『マーベル』という
だから私は言う。『考えれば考えるほどいい』。
あって損することは、なくて損することよりも圧倒的に少ない。実験の回数が多ければ多いほど法則性や規則を見出す指標になるし、手段が多ければ多いほど解決への糸口が見つかる。
宝の持ち腐れは、なんとも看過し難い。
スタートラインが周りよりも突き抜けてる。50m走で一人だけゴール1m手前でスタートできるようなアドバンテージを持っていて、それを活かせないようでは話にならない。
分不相応なものを背負うべきじゃない。受け取るべきじゃない。強請るべきじゃない。だって、目の前にいる
価値の知らない赤子であっても、慈悲深き万能の
(…で、私を材料に地球の代わりの生贄にして実験を成功させるわけね)
「いいえ? 逆よ逆。むしろこの実験は
(………は?)
「
じゃあその逆は? 魂では適合することもできない、人間という魂では到底耐えられないような強大な
着想は、数多の不出来な転生者を見て思い当たったものだ。
無数の転生者の中には、その身に宛がわれた神の恩寵で自滅する連中もいた。与えられた能力の推察をすれば、本来の持ち主であれば自滅することはない仕様になってる。なのに自滅──この場合、
つまり、その魂と不等価な物を融合させてしまえば存在崩壊を引き起こす──自発的に『不老不死殺し』が成立するんじゃないか?
「そこで考えたの。私という自己を砕くに値する
じゃあ、特大級の規模にしてみてはどうかしら? 例えば『
壊すなら相応の一撃を。
開幕ぶっぱ、想定しうる限りの
だから『星隷計画』を採用した。不老不死における研究のノウハウが活かせる。こういう未来があるからこそ、過去の経験は大事ね。
「人間って、急に身体が犬や猫にでもなれば戸惑うわよね。それでも常識の範疇だから、そこそこの大きさだからなんとか耐えられる。でも昨日まで人間だった器が、急に全長30mの鯨にでも変貌したらどうなると思う?
件の異次元の旅人の魂を使ってだけどね。
別次元から別次元へ転移しても無事な強度の魂は貴重なものだから
「
ああ、今思い出すだけでもゾクゾクする!
あの圧倒的な存在に呑まれる瞬間! 地球という一個体の巨大な存在と同一化する感覚!
きっとアレが、魂の死という感覚なのかもしれない…!
「安心して頂戴? 直接的であろうと間接的であろうと、
257回目と、361回目と、1121~1128回目だったかしら…似たようなシチュエーションで
ああ、
これに関しては、最早
でも『逆説的に』考えれば、殺害しようとしなければ誰かが
「だから貴女を殺すのは私じゃない。今まで身を粉にして守り続けてきた地球が、世界が貴女を殺すのよ。いい皮肉ね、いい未来ね、いい絶望ね。でも……これくらいの絶望では『レイン・
そうそう、ある人は『恐怖というものには鮮度がある』と言ってたらしいけど…なら、絶望には何があるんでしょうね?
私はこう考えるわ。『絶望というものには質量がある』。だって、絶望は人が背負うものだから。軽い
さて、貴女はこの絶望さえも背負える
絶望に力は要らない。
ただ淡々と、粛々と。
いままで誰もが見て見ぬふりをしてきた世界の真実を、水面に一滴一滴インクを垂らすように伝えればいいだけ。
軽いのであれば、水面で浮かび上がり。
重いのであれば、水底に沈殿して積もる。
インクが水にとって重いか軽いかは、水の素質が左右してくれる。
「その信念を貫いてもいいわよ
その人生に胸を張ってもいいわよ
その優しさを大事にしてもいいわよ
その生き様を誇りに思ってもいいわよ
その矜持を立派だと自負してもいいわよ
でも、貴女は
嗚呼忘れるものか、
今まで死んでいった連中を正真正銘の無意味な存在にさせないためにも、私は止まらない。止まることなどありはしない。
『不老不死殺し』──『自己の殺害』という到達点に達するまで。私は、止まらない。
もし私を止めてくれる人がいるのなら──それは、私にとっての
待ち遠しい。恋焦がれる。
私の
「それじゃ私野暮用あるから抜けるわね。ああ大丈夫、ちょっと遠くの
イヤーこういうのもいいわね、人生なのがあるかわかったもんじゃないわ。マルコム博士っぽい
(……最後に、聞かせて)
ん?
(……あなたは、この、『マーベル』に住まう人々を
じゃあ…私は? 私たちは、なんなの?)
ああ、そうね。
「強いて言うなら…そうね、『黒』かしら。
マイナスカラー、
連中が『マーベル』だのなんだのと名付けるこの
私たちの人生を物語のように名付けるには、お似合いの
彼女は祭壇に焚べられた