パラサイト・インクマシン 作:アンラッキー・OZ
Chapter 9
「ハァイ、ロキ、ソーさん」
「───」
「キミは…誰だ?」
「ああ、この姿は初めてだっけ」
そう言って〝スーツ〟を着る。
全身がインクに戻り、頭身の比率が小さくなっていく…おいおいおいこれだと見上げるミニベンディサイズになっちゃうよ、まぁいいか。
「ベンディ!?」
【 That's right . …… Aa , My neck will hurt so I will Return 】
(そうだよ。……アア、首痛くなっちゃうから戻るね)
すぐスーツを脱いで元の頭身に戻る。視界がみょん!という感じで上下したから酔いそうだ。
「レイニー・コールソンよ。改めてよろしく。貴方のトンカチと雷凄かったわ」
「あ、あぁ、よろしく。そこまで率直に言われると照れるな、ありがとう。だがこれはトンカチではなくムジョルニアだ」
「ムニョルニャ」
「ム・ジョ・ル・ニ・ア」
「…ムジャルニア」
「惑星ニダダリアの心臓で作られた最高の武器なんだ。ウルという特殊な金属でできている。持ってみるか」
「うん」
柄を差し出されたから試しに持ってみる。
あ、腕が。地面が。
「おおおおおい!? 腕が千切れたぞ大丈夫か!?」
「大丈夫大丈夫。それより絶対持てないって確信した上で渡したでしょ意地悪ね」
ムニョルニャ(ムジョルニアだっけ?)を掴んだままの右手を離し、半ば肩から千切れた右腕をくっつけて元に戻す。痛覚がない分欠損した実感がわかるから、どこかで体の一部を置いてったりとかドジっ子属性は無いから安心してよぅ。
「悪かった…しかし、あの化け物がこんな子どもだったとは思わなかった」
「アハハ、よく言われるわ。ところでその、貴方のツレに用があるんだけど、いい?」
「ロキか? …少しの時間ならいいが、悪いが俺が目を離すことはないぞ」
「そっちの方が助かる」
正直、神をも騙す幻術が無効化できるかわからない相手である以上、私も掛かる可能性は高い。ある程度術への耐性はある師匠から学んでいるが、地球(彼らはミッドガルドと呼んでる)と彼らの故郷であるアスガルドの術の性質は異なる可能性がある。そうでなくても、未知の術への耐性が無い最初は掛かりやすいだろう。
「口のやつ、ちょっと外してもらえる?」
「…5分だけだぞ」
器具で固定された口枷を弄り、パカっという音とともに外れるとロキが大きく息を吸ってにやついていた。
「──ッハァー、久々に新鮮な空気が吸えた。感謝するよインクの化け物めよくもこの私に恥をかかせてくれたなエェ!?」
「感謝するのか怒りたいのかどっちなのはっきりして」
「1の感謝と10億の怒りだよ化け物め! ニュースに私のクソ汚い落書きが描かれた顔を晒した罪は重いぞ!」
「……あ、恥を〝かく〟と落書きを〝描く〟を掛けたのね。うまい」
「真面目に聞け! そして兄上も笑ってるんじゃない全然隠れてないぞ!」
「っぶはは! 実はな弟よ、お前の顔写真は取っておいてあるんだ。あとで両親に見せる為にな!」
「貴様ァ!」
ソーさんもいい空気吸ってらっしゃる。
さて、ここで兄弟の戯れを肴にするのもいいけど今回は別件で来た訳だ。
「私の父の仇ロキ」
「仇? …あぁ、あの矮小な男のことか? 背中からズブリと一突きしてやったぞそのことは」
「まぁ生きてるっぽいから別にいいんだけどね。顔の落書きで手打ちってことで」
「「……何ィ!?」」
おお、リアクションがシンクロニシティ。
ロキの方は生きてる事に驚いてるんだろうけど、ソーさんは多分落書きで手打ちってところに驚いてるんだろうな。
「それじゃなんだ、最後に私を嘲笑いに来たというわけか。お父さんは生きてましたよ、ざまぁみろと」
「まぁそれもあるんだけど、聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
何言ってるんだこいつって感じで嗤われた。
それはそうだろう。この数分の会話で怒るときは怒る、笑うときは超嗤うけど、
でも、だからこそ私は聞かなきゃいけない。
「ロキ。ソーの義兄弟にしてオーディンの息子。狡知の神で知られる貴方に問う。今回の一連の襲撃は
「…何の話だ? 捕まった後に話しただろう。私は神に成り代わって愚かなお前たちミッドガルドの世界を総べてやる為に侵略しに来たのだ」
「侵略しに来たのなら、あの…何だっけ?」
「チタウリだ」
「そう、チタウリの軍勢とやらを連れて破壊行為までする必要は無いはずでしょ。やるなら最初に大打撃を与えてお偉い人の交渉テーブルを用意するなり犯行声明を出せばよかった。なのに貴方はそれをせずゲートからどんどん軍勢を呼び寄せた。あれは侵略行為っていうより破壊行為」
「……私もあの時は頭に血が上っていたのかもしれないな。無駄に足掻いていたお前たちを見てな! お前たちが足掻いたから街への被害が広がったようなものだぞ! ハハハハハ!」
「ふぅん…と、すると過剰に軍を呼び寄せたのは私たちを黙らせる為だったって訳? にしては実に理性的な判断だったけど…ああ、あの〝杖〟に何かされた可能性も否定できないけどね。でもそれはきっかけではなく過程を加速させる装置でしかなかった…ソーさん」
「なんだ」
「そのチタウリの軍勢って、アスガルドにあるものなの?」
「…いや、そんなものはアスガルドにはない」
「なるほどね、とすると別の宇宙人が地球…若しくは、あの石を狙ってたってことね」
…ここまで言っても特に顔色を変えないところは流石ロキと言わざるを得ない。さすロキ。
なるほど、どこぞの女狐みたいにポーカーフェイスと騙し合いはお手の物って感じだ。ポーカーとかやらせたら絶対一人勝ちするタイプだな、主に幻術でインチキして。
「……」
「だんまり? せっかく口枷外せたのに?」
「化け物のお前と話すよりも新鮮な空気を吸ってる方が有意義だと思ったのさ」
ほほう、こやつやり方は下衆いけど義理堅いな? 嫌いじゃないけどそんなイケナイお口にはパンチをプレゼントだ。
「っボゴッ!?」
「ベンディ! いや、レイニー?」
「こっちの時はレイニーでいいよ」
「そうじゃなくて、何やってる!?」
「んー?」
お口にフィストファックしてモゴモゴカミカミされてるけど特に痛みはない。同時にその感覚が、目の前にいる存在が実物と証明してくれて助かる。
そうして、自分の一部を切り離し、
「ッゲホゲホ! 貴様…私に何をした!」
「まぁそんな悪いものじゃないよ。もしかしたら暇な時に相手してくれるかもだし、多少は手助けしてくれるかもね?」
「何の話だ…!?」
「ま、正直に全部話してくれれば良かったんだけど。でも貴方変に頑固だしこれから危なっかしそうだからね。地球のお土産ってことで大事にしてね」
「待て小むす…モゴモゴ!」
「いつの間に枷を…」
「手癖悪くて。でもロキには負けるよ」
用は済んだので、伸びーるインクハンドで口枷を掴んで強引に嵌める。どうせ何聞いても今の状態じゃはぐらかされそうだし、これ以上の会話は無意味だろうし。
「ありがとうソーさん、ロキも無事故郷に戻んなね。寄り道しないように」
「あ、あぁ…ロキに何したんだ?」
「んー? うーん…お目付役をつけた?」
「何で疑問系なんだ…」
「だって、もう
じゃあの! ばいばい! またね!
ぶんぶん手を振ってお別れ。どうせ今生の最後でもあるまいし、そんな別れに時間かけるものでもないでしょう。手枷が嵌められた手を必死に伸ばして喉を押さえているけどあれは吐けない。無理。吐くの、ではなく
すっごい怨みが篭った目で睨んできてるけど、仇であってももう憂さ晴らしはしたしイケメンだからそれほど恐ろしさはないんだなぁ残念。
二度と来んなって感じでダブル中指突き立てられた。一昔前の不良ですか。
「そうだ、ソーさんそろそろ
「何ぃ!?」
Chapter 10
「はろーバナーさん。ハルクって呼んだ方がいい? あ、スタークさんも」
「……誰?」
「おいおいボクはついでかぁ? 随分な扱いしてくれちゃって。彼女はベンディだよ」
「ええ!? こんな小さい子どもが!?」
「2回目…ハイ、ハジメマシテ、ベンディことレイニー・コールソン」
自己紹介は大事!
というか、ハルクの時しか会ってないから殆ど初見!
「なんて遠い目をしてるんだ…しかもカタコト」
「や、こっちの事情です気にしないでください」
「う、うん。ブルース・バナーだ。ハルクよりこっちがいいかな、よろしく」
「ところで我々に何の用だ? こう見えても忙しくてね、壊れたスタークタワーの再建に着手したいんだ。なんでもフューリー長官がアベンジャーズの新しい拠点にしたいと煩くてね、いやぁ天才は忙しくて辛い辛い。そう、例えるなら、超高級スポーツカーみたいなボクと、そのオプションサービスで付いてくるサービスドリンクみたいな…メロンソーダ風味なバナー博士をわざわざ呼んで」
「メロンソーダ…」
「私はシーズン限定のタピオカがいいかな。じゃなくて、ちょっと協力して欲しいことがあって、お願いしにきたんです」
「お願い? なんだい?」
「おいおい安請け合いはしないぞ? でもそうだな、話だけは聞こう。受けるか受けないかは内容とおたくの資産、あとボクの気分で決める」
「トニー、子ども相手にそれは…」
「ノーノー、子どもだからってバカにしちゃあいけない。こういうのはちゃんと大人な対応しなくちゃあ」
「小切手に好きな額書いて貰って」
「「……え?」」
断る気満々だったスタークさんのびっくり顔が見れたからちょっと気分いい。
「プラスで、研究で得られる情報の共有」
「…なんの研究だい?」
「私について」
Chapter 11
ラボならS.H.I.E.L.D.よりもボクのラボの方がいい、という誘い文句で彼女たちをマリブポイントにあるラボに招待した。特別待遇だぞ? このボクから招待される人間なんてほんの一握り…いや、二つ…三握りくらいか? パラジウムでハイになって末期だったときは派手に宴会してたからな、たくさん呼んだ気がする…悪酔いしすぎて覚えてない、まったく天才も酒には勝てない時がある!
レイニーも条件に「外部に情報を漏らしたくない。できればS.H.I.E.L.D.にも」と言ってたし、ボクのラボならS.H.I.E.L.D.に負けないくらいの設備が整ってるし、ネットワークに関してはアイアンマンのスーツのデータを保存してるジャービスが遮断・管理してくれるから問題もない。
それに…
「そうなの! レイニーちゃんってベンディだったのね! あの…」
「かっこよかったでしょ!」
「うん、カッコいい…のかしら? なんか、真っ黒でマッスルで歯が…」
「あー、うん、ちょっとコメントしづらかったかも」
「でも凄いじゃない! トニーと肩を並べて戦ってたんだもの! いくつ?」
「…13さーい!」
「きゃー! かわいいー!」
(本当はソイツ11歳だけどな、見えないけど)
ペッパーとも仲良くしてくれてる。
正直最近…いや、いつもか? 上手くいってるようでギスギスしてる仲を取り持つには、レイニーはいい潤滑油になってくれそうだ。
そう、回りの悪い歯車には適度に油を差さないと回らない…それと同じだ。
「それで、もう検査終わったの?」
「うん!」
「あー、それでだが報酬は」
「…ちょっとトニー? まさかレイニーちゃんにお金を取ろうだなんて考えてないわよね?」
おい。
おいおいおい、これは流石に想定外…あ!
「待て待てペッパー! 後ろ向いて後ろ! 彼女笑って…レイニー
「何!? レイニーちゃん泣きそうな顔してるじゃない! 別に学校の健康診断みたいなものだったんだから無料でもいいでしょ!」
「健康診断だって!? もしそうなら世界一贅沢な健康診断だよこれは! …一応ボクと彼女は仕事仲間でありビジネスパートナーだ。ギブアンドテイク、ボクが調べて彼女が報酬を払う。それは、その…事前に取り決めてて…」
「トニー! 3年前あなたがまだ社長だった時、拉致されて帰ってきたときのスピーチ覚えてる!?」
「それとこれとは話が…あ、アーアーわかった! ペッパーわかったから! ったく…もう、大声出して腹減った…これでバーガー買ってきてくれ全員分。な、頼むから」
「ちょっとまだ話が…!」
「ペッパーさん、一緒にバーガー買いに行こー?」
「ッそ、そうね…行きましょう、ハッピーに車寄越して貰いましょうか」
ニヤリとペッパーにバレないように笑いやがって。ファインプレーだけど原因は
何故かご機嫌のペッパーがお金を握ったレイニーを連れて出て行くのを見送ると、すぐに地下に戻って画面とにらめっこしてるバナー博士の元へ合流。
眉間にこれでもかってくらい皺寄せちゃってまぁ…跡残るぞ~すぐ老け顔になるぞ~って、元々か。まぁ、うん、気持ちはわかるよ。
「どうだ? 結果見て」
「異常だ」
「そりゃ素人目でもわかる」
まず肉体。
検査結果から判断するに、彼女の体は人体と呼べるものではなかった。外側だけなら人の皮を被っているが、骨と呼べるようなものが映らなかった。
「骨の配置が既存と異なる。どの生物にも当て嵌らない。強いて言うならタコやイカのような軟体動物に近いか…?」
「ついでに組成もだな。カルシウムとかじゃない、殆どが金属だ」
しかも、所々だがヴィブラニウムらしきものが使われている。地上最強にして最硬、父が開発したキャプテンの盾と同じ金属だ。
入手経路について調べると、ジョーイ・ドリューという資産家が莫大な金でヴィブラニウムを買い取ったという記録が残っていた。まさかそれをたかがインクマシンに使ったのか…? 狂人の発想だな。まぁ狂人と天才は紙一重ともいうが…天才が理解できなきゃそれは狂ってるって認定だろ。よくまわりの連中も留めなかったな、バイヤーからすればいい金ヅルか。
「血液…というよりこれは最早インクだな、純度100パーセント」
「白血球赤血球共にナーッシ、血管というよりあれは天然素材のチューブみたいだな。循環してるのは…硬化を防ぐ為か?」
血液ではなくインクが全身を
「心臓は」
「これでもかってくらい人間そっくりだな、まんま〝インクマシン〟だ」
「そうだ、マシンだ。左心房、左心室、右心房、右心室とあるのが人間だが、彼女はインクマシンを二つくっつけた心臓…この場合は
そのとおり、マサチューセッツ工科大の学生でなくてもバカでもわかる人体解剖。心臓はたしかに人体の血液を拍出するためのものだが、立っている人間は重力に従って下へ下へ血液が落ちる。その重力に逆らって心臓に戻すのがふくらはぎの筋肉だ。
まるで、体そのものがインクマシン。
そしてインクだってめちゃくちゃだ。
「彼女が取り込んだインクは従来のものじゃない。比重も割合も明らかに数値を超えている。特にアレだ、レイニーの体表のインクの数値が桁外れだ」
ニューヨークでの戦い…うっ、寒気と幻覚が…じゃない。そう、彼女の戦いっぷりだ。迫り来る…というより、逃げ惑う宇宙人どもを千切っては投げ千切っては…喰ってた。口からの咀嚼もあったがありゃ無味無臭のスポンジか青臭くて乳臭い粘土みたいな食感してそうなサンドイッチだったんじゃないか。うぇ、想像しただけで吐きそうだ。
そう、口からだけではなく全身で吸収していた。それだ。
「取り込んだものは全部インクになったと話してた。つまり、彼女の体表のインクには消化・吸収を促進する酵素のようなものがあるのか…?」
「アミラーゼ、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチターゼ、ラクターゼ、リパーゼ、マルターゼ! そんな当たり前の分解酵素すらなかったけどな!」
インクに消化酵素がないからバナー博士の腕を丸々突っ込ませてみたけどどうなってんだありゃ! まるでワープだワープ! あ、そういや…
「…ベンディ、ニューヨークの時にワープしてたな」
「それ彼女から聞いてみたけど、インクを伝って移動したって言ってたね」
どういう理屈だ。
もう理屈すらないんじゃ…いや待てよ。
「物質を取り込んでインクにする力と、インクを伝ってワープする力は一緒なんじゃないか?」
「いや、そもそもA地点からB地点の移動と、彼女の肉体の崩壊→再生のサイクルの謎を解かなきゃならない」
「崩壊と再生のサイクルは解けてる。万能細胞だ」
「なんだって?」
驚いてるぞバナー博士。そうだな、生物分野はキミの専売特許だからなハッハッハ専売ではなくなったぞ! これからはもうただのバナーくんだ、博士の名を付けるのはやーめた。
「それじゃ、元の身体がインクになったりインクが身体や武器に変形するのは…」
「インクが万能細胞代わりになってるんだろ。めちゃくちゃな理論だが、形状記憶合金みたいなもんだよ、ナノテクノロジーに精通するところがある」
つまり、インクだけならただのインクだが、そこにレイニーという要素が入ることでインクは別の性質を持つ。レイニーという司令塔、あるいは媒体が持つ記憶を転写し、構築し、肉体や武器という形に変形させてる。
いいなぁ…それ、アイアンマンもそうなったら持ち運び自由だろうなぁ。
「なるほど、全てが肉体を構成する…つまり分化する前の細胞のようなものならば、どれだけ欠けたところで構築、再現し機能する訳だ。彼女たちが言う…小さくなる第一形態、成人レベルの大きさの第二形態、ハルクみたいなマッチョになる第三形態みたいに、体の大きさが変わっても、サイズに比例して体内の臓器のサイズが変化するだけだから最低限の機能は保証されてる。これ、医療的にも大発見なんじゃないか?」
「それはないな、そもそも彼女は細胞核すら存在しない。人体でもないのにそのメカニズムを解析したところで人間に応用できるかどうかは…うん、
ボクならね。
「そうか…まぁパターンをある程度読めればそこから万能細胞に近付けるきっかけにはなるかもしれないな。しかし…ただのインクが、ねぇ」
それだ。それなんだよバナーくん!
普通のインクとレイニーが
まぁ吸光度自体、光の通った後の吸収だけじゃなくて、反射とか…散乱とかも含まれる無次元量だから、それだけでは判断しようがないけどね。
他にも紫外線吸光度やスペクトル測定も行ってみたが、彼女のインクは特定の吸光度特性…特性は言うなればブラックホールみたいなものだった。
すわ、このインクには重力場でも働いてるのか!? とビビって慌てた。もちろんバナーくんだけだ。ボクはビビってない、ビビってなんかいないぞ。
別にシュバルツシルト面も観測してないし、ホーキング放射すらない。ほら、ブラックホールじゃなーい。
だが、どんな大きさの物質も触れたら取り込むという点ではブラックホールに類似してる。試しにバナーくんのメガネを拝借して突っ込んで、その後レイニーに出してくれと頼んだら入れる前の状態が出てきた。そのあとバナーくんに叱られたけど無視。仕返しにアイアンマンの腕部分をまるごと突っ込まれた時は肝が冷えた。怒ったら本物と2Pカラーみたいな複製品もオマケで付いてきたけどな。
調べてみたら、インクで固めた外装だけの模型品だと思ったが内部構造まで同じだった。つまり普通にリパルサーも機能してた。…いや、あんな真っ黒な未塗装パーツ使う気にはならないが。
つまり、インクに変えるのも変えずに吐き出すのも彼女の意思決定が必要みたいだ。
「一種の置換装置なのかもしれない」
「置換? 何と…何を?」
「……プラトンのイデア論」
何故そこで哲学? 考えすぎて疲れたか?
「そもそも、僕たちは見てきたはずだ。レイニーがベンディの時は小さくなったり大きくなったり、攻撃で体が欠損してもすぐ元通りになる」
「…だから、それは万能細胞的な」
「ああ、じゃあその肝心な再現するための記憶はどこに保管してるんだ?」
…あー、そうか。
一滴一滴のインクに一生物の肉体や物体の情報を蓄積するなんて無理だ…つまり、わざわざバナーくんが哲学を持ち出したのは、再現するための情報という記憶が実像なのであって、インクは実像の影と考えてるわけか!
…考えすぎじゃないかそれ!? あと説明少ない! ツーカーの友でもないのにわかるか! いつから我々科学者はフレンズな哲学者になったんだ!
「たしかに、もし記憶がインクの肉体全てに宿ってたりしたら、肉体の欠損に伴って記憶も同様に欠けるはず…」
「だが彼女は特にそれを感じてないし疑問に思ってない…いや、気付いてないだけか? まぁ我々も出会ってここ数日程度だしな、そういうサインを見逃してるという可能性もあるが」
「そもそも、彼女にとっての〝脳〟と呼べる記憶領域は何処にあるんだ? それに意識を司る部位もわからない。五感で感じ取った情報を蓄積…いやでもやっぱりインクにある程度情報をバックアップしてるんじゃないか? 彼女の体内、体表のインクと彼女が取り込んだ後で体から切り離したインクでは粘度が違ったし耐火性も違った。その辺りも関係してるのかもしれない」
「五感…そもそも五感自体あるの怪しいけどな。目、鼻、耳だって彼女の成長した姿を模してるだけだ。ただまぁ視覚・嗅覚・聴覚検査じゃ我々と同じように世界を捉えているようだが…」
「それに彼女は僕のメガネやトニーのアイアンマンのスーツのパーツを取り込んでも元に戻した。それだけじゃないインクに同じものを転写しコピーしてた、3Dプリンターみたいに! つまりインクにも情報を読み取る力がある、インクが彼女にとっての触覚なんだ。だが膨大な情報を取得してずっと維持し続けるのは難しいはず。ある程度目的を意識的に持つことでフィルターを調整してるのかもしれない」
……こうして、調べれば調べるほど
とはいえ、有意義な研究対象であることには違いない。今後も時間が空いたらアイアンマンスーツの次の次の次くらいに研究してみるのも、まぁ、悪くはないだろう。確かに値千金の価値がある、かもしれない。報酬は…でもやっぱり形だけでも欲しいな、形式上。それは彼女も理解してるだろうし…うん。オマケに強化パーツとか作ってあげるから、ね!
それに、弱点…というか、まぁ液体である訳だから液体窒素とかで凍らせれば動きは止まるってことがわかった。インクだしな。暴走時の対策に組み込める。アイアンマン洗浄装置の次に冷却機能でもつけてみるか。
無給で研究された腹いせに、流行りのタピオカチャレンジをさせたら我らが社長ペッパー・ポッツは成功したけどレイニーは案の定大失敗。そりゃあもう、ストーン!とオリンピックの飛込競技で落下する選手みたいにタピオカが胸から落っこちたさ。
多少でいいからその胸インクで盛れよって言ったら腹パンされた。ちょっと効いた。
あとペッパーにはデリカシーがないと言われて伝説の左ストレートが飛んできた。すごい効いた。
痛い。
時系列的にはダクワ前です、つまり全裸教授はまだ地上波に流れていない
ダクワ観るとIW序盤で亡くなったヘイムダルの有能さがすごいわかる。惜しい人がバッタバッタと死んでく。まぁ海外の映画って1で感動の再会した夫婦が2の序盤に事故で殺されたりするなんて超展開普通にあるからね、怖いね