盾の勇者(盾を装備してるとは言ってない) 作:banjo-da
まだ変身はしません。
『クレーマー』という言葉を御存知だろうか?
接客業に就く者なら勿論、それ以外でも。例えば教師や保母さん等は、所謂モンスターペアレンツがそれに当たる。この様に、何処に居てもおかしくない……そして厄介な人達の事である。
勿論、中には真面目で少し細かいだけの人も居る。───── だが、単にいちゃもんを付けたがるだけの人が居るのもまた事実であり、その対処は非常に面倒である。
何が言いたいかと言うと
「おーうーさーまー?アンタ仲間集めとくつったじゃん。何これ?それでも王なの?ねぇ、やっぱ俺に王座譲った方が良くない???」
異世界に『勇者兼仮面ライダー兼悪質クレーマー』が出現していた。
◆
事の発端は、昨夜の出来事…メタな言い方すると本小説一話二話の翌朝。
朝食の後。四人の勇者は王から呼び出しを受け、謁見の間へと向かう。
「昨日の話からするに…王様が仲間を集めてくれたって事か?」
「もっきゅもっきゅ」
「…だろうな。ま、精々足手まといにならん事を願うが。」
「くっちゃくっちゃ」
「もしそうだとしたら、一晩で仲間を集めたって事だよな。あんなのでも、流石に王様って事か。」
「ねっちょねっちょ」
「そうですね。………淳さん、何処から突っ込めば良いのか分からないのでスルーしますけど、せめてスニッ○ーズ食べるならもう少し静かに食べて下さい。」
口では冷めた様子を装いながらも、何処か興奮した様子の三人と、割と本気で冷めながら某有名チョコ菓子をくっちゃくっちゃする一人。ちなみに○ニッカーズは偶々淳のポケットに入っていた。多分、あの浅倉達との戦闘前にポケットに入れっぱなしだったやつだろう。
そんなこんなで謁見の間へと辿り着いた四人は、目の前の光景に驚愕する。
そこには、様々な衣装に身を包んだ男女が大勢集まっていた。
「…12人か。」
「…うーん。殺し合いするには一人足りな「まさか昨日の今日でこれだけとは…流石に驚いたな。」
不穏な事を呟きかけた淳に、錬の言葉を被せるファインプレー。
当たり前の様に仁王立ちする淳以外の三人は王に頭を下げる。
「前日の件で勇者の同行者として共に進もうという者を募った。どうやら皆の者も、同行したい勇者が居るようじゃ。」
淳の態度には最早諦めた様子で触れない王。
それはさておき。どうやら集まった者達は均等に割り振られるのでは無く、各々が同行したい勇者を選ぶらしい。
王の一声で、自ら勇者の元へと歩み寄る仲間候補達。
そしてなんというか当然というか自業自得というか…淳の元には誰一人近付く者は居なかった。
そして冒頭の場面へと戻る。
「おーうーさーまー?アンタ仲間集めとくつったじゃん。何これ?それでも王なの?ねぇ、やっぱ俺に王座譲った方が良くない???」
「ぐっ…。」
勇者達は知る由も無いが、正直王自身がこの結果を仕組んだのは事実である。
元より、王がとある理由で盾の勇者を徹底的に貶めるつもりではあった…それは事実。そこに昨日の淳の態度で王の私怨もプラスされた。というか七割くらい王の『クソ生意気な盾の勇者』への私怨となっていた。
だが、現状の面倒臭さに冷静さを取り戻した王は、流石に浅はかだったと今更後悔していた。
「…流石にワシもこのような事態が起こるとは思いもせんかった。」
「人望がありませんな。」
割と本気で参った様子の王と、冷たく切り捨てる大臣。
だが、そんな大臣の態度が気に食わなかったのか、淳はなおも食って掛かる。
「あ?あんたら、昨日来たばかりの人間に人望期待してんの?馬鹿?」
─────至極真っ当な意見だが、お前の場合は既に色々やらかしてる…多分これが一月後だろうと一年後だろうとこの結果になるのでは…。
心の底で思いながらも、当然口には出せない王。
「誰か、盾の勇者の元へ行っても良いものはおらんか!…頼む、誰でも良いから…頼む。」
最早威厳すらかなぐり捨て、頭を抱える王。心なしか、この数分で一気に老け込んだ様にすら見える。
「あ、あの…私、盾の勇者様の元へ行っても良いですよ…。」
「『行っても良い?』」
「あ、いえ…行きたいなー…あはは…。」
恐らくこの場の全員が。というか彼女の本性を知る王や、何なら原作のこの先を知る者から見ても、今の状況では勇敢な決断と思うだろう。
赤いセミロングの髪が特徴的な一人の女冒険者が、心底引き攣った笑みで手を挙げた。
◆
「チッ…銀貨600枚ね…。シケてんなぁ…。」
「あの…かなりの高額だと思うんだけど…。」
あの後、勇者達とそのパーティーは解散し、淳は城下町へと繰り出していた。
王から授けられた支度金の入った袋を弄びながら愚痴る淳に、女冒険者はドン引きしながら意見を述べる。
「はぁ?態々異世界に無理矢理連れて来て、世界を守ってくれとか言いながら出してきたのがこの額だよ?せめて金貨位入れとけよ…ったく。」
「は、はぁ…。」
心底面倒臭い。早くも自分の選択を後悔する女冒険者。
ふと、そんな彼女に淳はどうでも良さげに問い掛ける。
「そーいや、アンタの名前は?」
「え?あ、えっと…私の名前はマイン=スフィアと申します。盾の勇者様、これからよろしくね。」
完全に虚を突かれ、慌てて取り繕った様な笑みを浮かべるマイン。
「おっ!マジかよ…魔法の杖とか売ってるじゃん!ハハハ、流石異世界おもしれー!」
─────聞けよ。
自分から名前を尋ねながら、最早マイン等眼中に無い淳。額に青筋を浮かべながら衝動的に握り締めた拳を、マインは慌てて解く。
─────コイツに付き合うのも今日だけだ…明日にはこのクソガキは破滅しているのだから。
そう必死に自分へと言い聞かせ、精一杯の猫撫声でマインは淳へと声を掛ける。
「勇者様。まずは装備を整えましょう!私のオススメの店へと案内しますね。」
だが、そんな彼女の努力も虚しく。
「ん?いや要らないから。全部持ってるし。」
「─────は?」
「そんな店より、案内するなら早く敵の居る所へ連れてってくれよ。ステータス見たけど、これレベル上げないといけないでしょ。ほら、早く。」
心底楽しそうに獰猛な笑みを浮かべ、淳はズカズカと歩みを進めるのだった。
マイン「♪きょっ・う・は!素敵な!旅立ちの日!
みっ・ん・な・の好きな!
♪ぼっちゃま!おめでとう!(白目)」