盾の勇者(盾を装備してるとは言ってない)   作:banjo-da

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里中「大変そうな職場ですね。それはそれとして私の就業時間は終わりなので、お先に失礼します。」

マインの意見を完全に無視し、関所を抜け草原へとやって来た淳。

彼に完全に振り回され、既に瞳から光を失いつつあるマイン。

 

だが、ここへ来てマインは淡い希望を抱き始めていた。

 

(そうよ…これだけ自信満々な態度で、実力が大した事無かった…なんて結果になったら、身の危険を理由にこのガキから離れれば良いんだわ!)

 

既に淳から離れる事が最優先目標になりつつある事に気付かないマイン。

それはさておき、『自分の実力を正しく計れず無茶な突撃と采配を繰り返した為、このまま同行しては命が幾つ有っても足りない』─────淳の傍を離れる上で、この理屈なら非難はされないだろう。

まさに完璧な作戦。とってもロジカルです!

 

 

 

───────そう思っていた時期が、彼女にも有りました。

 

 

 

「おっ…早速魔物はっけーん。マロン、あれは何て魔物?」

 

「栗じゃなくてマインです。あれはオレンジバルーン…とても弱い魔物ですが、かなり好戦的なので注意が必要です。」

 

「…とても弱いくせに好戦的って、生物としてどうなんだよ。」

 

草原を進む彼等の前に、マインの告げた名前まんまのオレンジ色の風船の様な魔物が現れる。

呆れた様に言い放つと、淳は面倒臭げにカードデッキを取り出し、その中から一枚のカードを引き抜く。

 

この時点で、マインには重大な誤算があった。

勇者達が召喚されたその場に居なかった彼女は、彼が伝承通りの盾の勇者だと思い込んでいたのだ。

 

「あの…勇者様、その札は…?」

 

「これ?実験だよ実験。流石にこんな雑魚相手じゃやる気出ないし…成功したら、暫く雑魚はコイツ(・・・)に任せようかなって。」

 

「コイツ…?」

 

不思議そうに首を傾げるマインを無視し、彼は道中で購入した手鏡を取り出した。

カードを手鏡へとかざす淳。すると、彼の目論見通り、耳障りな音と共に鏡の表面へ波紋が広がり始める。

 

「ビンゴ!さーて、どうなんだろうなこれは。」

 

手鏡をオレンジバルーンへと向ける淳に、マインは気でも触れたのかと一瞬可哀想なものを見る目を向け────。

 

「グオォォォ!!!」

 

「何事ですかぁぁ!?」

 

次の瞬間、突然鏡から飛び出した化物に腰を抜かしていた。

 

生物というより、機械人形(オートマタ)を思わせる無機物的なボディ。猛々しい一本角が特徴的なこの化物は、マインからすれば『二足歩行するサイの怪物』と呼ぶ他無い。

メタルゲラス。仮面ライダーガイの契約した、ミラーモンスターである。

メタルゲラスはまるで

 

「祝え!この世界にミラーモンスターが降臨した瞬間を!」

 

とでも言わんばかりに、その一本角を見せ付ける様に大きく咆哮すると。

 

そのままオレンジバルーン目掛けて突撃─────一撃で粉砕する。

哀れなオレンジバルーン。彼はマインらと出会って二分と持たず粉々になっていた。

 

「………?????」

 

唖然とするマイン。そんな彼女を無視して鳴り響く、「ピコン!」と軽快な効果音。

 

「おっ、やっぱメタルゲラスに狩らせても経験値入るのか。こりゃ楽で良いや。」

 

少し機嫌良さそうにステータスを見ていた淳と、オレンジバルーンの死体をむしゃむしゃし始めるメタルゲラス。

それに気付くと、淳は慌てて止めに入るものの。

どうやら一足遅く、メタルゲラスの足元はすっかり綺麗になっていた。

 

「何やってんだよ!ったく…素材集めようとしたのによー…。」

 

「……。(意訳:すまん。)」

 

「まあ良いや…お前が食えたって事は、餌代わりになるって事だし。ミラーモンスターが居ないから、最悪そこらの人間食わせようかと思ってたけど…契約危なくなったら、適当に雑魚狩って食わせれば何とかなるって分かった。」

 

「グオォ…。(意訳:せやで。必要経費やからしゃーないんですわ。堪忍や坊っちゃん。)」

 

無論、淳にメタルゲラスの意思は伝わってはいないが、幸いにも互いの考えは一致している。どうやら、一先ず淳が契約破棄で襲われる心配は無くなった。

 

「おーいマフィン。何ぼさっとしてんの。この程度の敵じゃ弱過ぎるから、もっと強い奴出る所に行こうぜ。」

 

「焼き菓子じゃなくてマインです。……なら、もっと奥に行きましょうか。」

 

身の危険どころか、恐らく勇者達の中で一番強いのは彼なのだろう。自分の計画がまたも破綻した事を悟ったマインは、虚ろな目をして弱々しく歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後。オレンジバルーンよりは強い魔物を何体も討伐したものの、結局淳がやる気を出す程の敵とは出会えず。出会ってはメタルゲラスを突進させ、素材だけ集め、たまにメタルゲラスに餌として食わせの単純作業を繰り返した淳一行は、初日としてはえげつないまでの素材を手に町へと戻った。

 

「あの…私もお役に立ちたいので、武具を揃えたいのですが「要るの?」……ですよね。」

 

頑張って意見を述べてみたものの、一言で切り捨てられるマイン。哀れなり。

 

「素材はどっかで買い取ってくれんだっけ?」

 

「ええ、専門の買い取り業者が居ますね。」

 

「じゃ、そこでそれなりの稼ぎになったら考えとくよ。今日はもう宿屋行くぞー。」

 

「そうですね…初日からかなりの魔物を討伐しましたし、それが一番かと。」

 

相談というより独断で方針だけ押し付けてくる淳。だが、マインに異論は無い。

 

もう疲れた。正直戦闘は一切行っていないが、主に精神的に疲れきってしまった。

急遽ペアを組んだ勇者のせいで、マインの心はボドボドだ。

 

漸く今日という日から解放される。そして自分の計画通りに事が運べば…明日以降もこの男から解放される。

疲れきった重い体に鞭を打ち、最後の力を振り絞って宿屋へ向かうマイン。初日、それも草原で雑魚狩りをしただけだが、最早高難易度ダンジョンにでも潜ったかの様な疲労感だ。……まあ、高難易度ダンジョンなんて潜った事は無いけれども。

 

 

 

「いらっしゃいませ。一泊、一部屋銅貨さんじ…」

 

「二部屋お願い。」

 

宿屋へ辿り着いた淳とマイン。

ニコニコと出迎えた宿屋の主人の言葉を遮り、有無を言わさぬ勢いで銅貨60枚を差し出す。

元々ここも淳に集るつもりであったが、余計ないちゃもんを付けられて相部屋にでもされては敵わない。何の躊躇いも無く身銭を切るマインと、その勢いに気圧される店主と、流石に少し困惑した様子の淳。

 

「か、かしこまりました…。」

 

何とも言えない空気の流れる宿屋の受付。

こうして、マインの犀難…ではなく災難な一日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドンドン。

 

何だろう…うるさいなぁ…。

 

『……い。……きろ…ン。』

 

ドンドンドンドンドン。

 

人が気持ち良く寝てるのに…昨日は色々疲れたから、もう少し位休ませなさいよ…。

 

ドンドンドンドンドンドン!

 

「あー、もう!朝っぱらから何よ…!」

 

不快なノック音と、男性らしい人物の声で目を覚ましたマイン。

未だ寝惚けている頭で状況を整理すると、どうやら部屋の外から戸をノックしつつ呼び掛けているらし……。

 

「──────部屋の、外?」

 

状況を理解したマインの思考は、一瞬の内に覚醒する。

バッと勢い良くカーテンを開ければ、窓の外からは眩い程の日光が室内へ降り注いだ。

 

───────ああ、私…寝坊したのね。

 

酒が入ってるせいで、昨日の記憶が朧気になってる…けど、確か勇者に強姦魔の冤罪を着せる為に酒を勧めて……。

 

マインは思い出した。怪しまれぬ様に自身も少し酒を口にした事を。

 

マインは悟った。あの精神的に疲弊した状況で酒を飲んだというのが、どれ程の愚行だったかを。

 

そして───────。

 

 

 

「おい、いい加減にしろよマイン!まだ寝てんの?」

 

「…マインじゃなくて……あ、マインで合ってます。申し訳ありません、すぐに支度しますね…。」

 

マインは理解した。向こうが先に目覚め、支度まで済ませて彼女の部屋の外から呼び掛けてる以上、彼を罪人に仕立て上げる計画は破綻。

今日もこの男と同行せざるを得ない…ということを。




「世界中のダチを守る為に!」
「誰一人、見捨てない為に!」
「未来へ繋ぐ為に!」
「世界を守る為に!」
「人々の笑顔を取り戻す為に!」
「この力を使う!それが……。」

─────仮面ライダーだ!





マイン「その仮面ライダーの中から、何でよりによって彼が転生したのよ(白目)」
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