うーん。どうしたものか。
「ここが今日から行く保育園だよ。流転ちゃん、挨拶!」
「はじめまして、よろしくおねがいします!」
私は朗らかに挨拶をして、腰を90度に曲げた。保育士のお姉さんがにこやかに挨拶を返してくれた。
「ちゃんと挨拶できましたね!挨拶上手です。」
私は3歳になっている。名前は
今生の母は保育士さんと中身のない井戸端会議をしている。互いに話の内容が分かってなさそうだが、「ですよねー。」とか言って相槌を打っている。
と、
「あたらしいこがきたー」
教室から女の子が飛び出してきた。その子は私の手を引いて奥の部屋まで引っ張っていく。
「おかあさん、いってきまーす!」
「はーい!いってらっしゃい!」
慌てて母親にいってきますを言った。
「他の子に混ぜるの心配でしたが、すぐに慣れるものですね。仲良くしてくれる子がいるといいんですが。」
「大丈夫ですよ。あの子、千早ちゃんは凄く社交的な子ですから。」
私は手を引かれて、アップライトピアノのある教室に連れて行かれた。
「おうたすき?なっちゃんセンセーがピアノひいてくれるよ!」
女の子はそう言って、ポケットからマイク型のラムネ菓子の容器を取り出して、自慢げに見せつけて来た。
「はい!ええと、なにちゃんって言うの?」
「やぎゅうるてん」
「るてんちゃん!」
何が嬉しいのかピョンピョン跳ねる女の子、その子の名札を確認する。
「きさらぎちは…や?」
「そうだよ!」
「マジかよ…」
「?…マジとかそういうことばづかいはいけないんだよ!」
「あ、うん、ごめん」
普通に輪廻転生のあれかと思ったら、アニメ(ゲーム)の世界に飛んでたとか…マジかよ…如月千早か。これは優を助けろっていう啓示だな。そして、この世界には前世の曲は一つもない。これは前世の名曲達を世に出せば、ヒーロー、否!ヒロインになれる!…いや待て、お前!自分の曲を書かなくてどうする!だが35年の音楽人生で分かったはずだ。ギターはともかく、ボーカルもともかく、作曲のセンスが致命的にないことを、私は思い知っているはず。
「なっちゃんセンセーピアノひいてよ!」
「はいはーい。そんなに引っ張らなくても行きますよ。ん?あら、あたらしいお子さん?お名前は?」
「やぎゅうるてんです。なっちゃんセンセーピアノひけるの?」
「ナツコです。…まあ、そこそこ弾けますよ。」
「なっちゃんセンセー『アキアカネ』ひいて!」
「はいはい、」
ナツコ先生がピアノを弾き始めると、ちびっ子達が笑笑と寄って来た。千早は私の手を握って、メトロノームに合わせて頭でリズムをとっている。
今はこの幼児プレイを楽しむとしよう。今、4歳、名札の色から千早も同い年のはず。あと、4年の猶予がある。千早に取り入って、優君の死亡フラグをへし折る。原作ブレイクも優君の応援があれば、千早のストイックさこそなくなるかもしれないが、アイドルにはなれるだろう。その舵取りも私がどうにかすればいい。