生まれ損ないの天使   作:ラディスカル

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第1話「千早との出会い」

うーん。どうしたものか。

 

「ここが今日から行く保育園だよ。流転ちゃん、挨拶!」

 

「はじめまして、よろしくおねがいします!」

 

私は朗らかに挨拶をして、腰を90度に曲げた。保育士のお姉さんがにこやかに挨拶を返してくれた。

 

「ちゃんと挨拶できましたね!挨拶上手です。」

 

私は3歳になっている。名前は柳生流転(やぎゅう るてん)。ピッチピチの女の子。中身がおっさんどころかおじいちゃん…初老のジジイなのでピッチピチどころかビチビチに腹を下しそうだ。

 

今生の母は保育士さんと中身のない井戸端会議をしている。互いに話の内容が分かってなさそうだが、「ですよねー。」とか言って相槌を打っている。

 

と、

 

「あたらしいこがきたー」

 

教室から女の子が飛び出してきた。その子は私の手を引いて奥の部屋まで引っ張っていく。

 

「おかあさん、いってきまーす!」

 

「はーい!いってらっしゃい!」

 

慌てて母親にいってきますを言った。

 

「他の子に混ぜるの心配でしたが、すぐに慣れるものですね。仲良くしてくれる子がいるといいんですが。」

 

「大丈夫ですよ。あの子、千早ちゃんは凄く社交的な子ですから。」

 

私は手を引かれて、アップライトピアノのある教室に連れて行かれた。

 

「おうたすき?なっちゃんセンセーがピアノひいてくれるよ!」

 

女の子はそう言って、ポケットからマイク型のラムネ菓子の容器を取り出して、自慢げに見せつけて来た。

 

「はい!ええと、なにちゃんって言うの?」

 

「やぎゅうるてん」

 

「るてんちゃん!」

 

何が嬉しいのかピョンピョン跳ねる女の子、その子の名札を確認する。

 

「きさらぎちは…や?」

 

「そうだよ!」

 

「マジかよ…」

 

「?…マジとかそういうことばづかいはいけないんだよ!」

 

「あ、うん、ごめん」

 

普通に輪廻転生のあれかと思ったら、アニメ(ゲーム)の世界に飛んでたとか…マジかよ…如月千早か。これは優を助けろっていう啓示だな。そして、この世界には前世の曲は一つもない。これは前世の名曲達を世に出せば、ヒーロー、否!ヒロインになれる!…いや待て、お前!自分の曲を書かなくてどうする!だが35年の音楽人生で分かったはずだ。ギターはともかく、ボーカルもともかく、作曲のセンスが致命的にないことを、私は思い知っているはず。

 

「なっちゃんセンセーピアノひいてよ!」

 

「はいはーい。そんなに引っ張らなくても行きますよ。ん?あら、あたらしいお子さん?お名前は?」

 

「やぎゅうるてんです。なっちゃんセンセーピアノひけるの?」

 

「ナツコです。…まあ、そこそこ弾けますよ。」

 

「なっちゃんセンセー『アキアカネ』ひいて!」

 

「はいはい、」

 

ナツコ先生がピアノを弾き始めると、ちびっ子達が笑笑と寄って来た。千早は私の手を握って、メトロノームに合わせて頭でリズムをとっている。

 

今はこの幼児プレイを楽しむとしよう。今、4歳、名札の色から千早も同い年のはず。あと、4年の猶予がある。千早に取り入って、優君の死亡フラグをへし折る。原作ブレイクも優君の応援があれば、千早のストイックさこそなくなるかもしれないが、アイドルにはなれるだろう。その舵取りも私がどうにかすればいい。

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