千早と仲良くなった私は、ほぼ毎日、私の家と千早の家に交互に泊まるくらいに仲良くなった。必然的に家族ぐるみの付き合いになったわけで、優君とも姉弟の関係になった。
そして千早が8つになった誕生日から、毎日優君と行動を共にしている。特に近くでお祭りがあるときは気が抜けない。外を歩くときは私が車道側で必ず手を繋いで歩いている。優君を真ん中に千早と私で挟む形で歩くのだ。これならば同級生からからかわれることもないだろう。それに、最初は千早のためだけに優君に近寄ったが、4年もの間、それこそオムツをしている時からの付き合いだ。情も移るというもの。
「るてんおねえちゃん、おおきくなったらけっこんしようね。」
「大人になったらね…」
尊い!
そうじゃない!
まあ、私は女色なんですけどねー。とは言うことも出来ず、お茶を濁すことしかできない。指切りまでさせられたのには驚いたが、殺人も15年で時効なのだ。子供の時の婚約なんてどうとでもなるし、この子も忘れるだろう。
「ええ!優はお姉ちゃんと結婚すればいいんだよ!」
「おねえちゃんとするよ?」
「ちがあう!わ、わたしとってことよ!」
千早が顔を真っ赤にして弟に告白してるのを、千早のお義父さんお義母さん。間違えた、千早のご両親たちと生暖かい目で見守っていた。
「近親むぐっ!」
「流転ちゃん。それ以上言ってはいけないよ!」
私は千早のお父さんに口を塞がれた。いけない。とんでもねー失言だった。反省。
「8歳児にこんなこと教えたのは誰だ!全く。」
「まあまあ、お父さん。大丈夫ですよ。優は流転ちゃんと結婚するんですから。」
「絶対に嫌だ。」と言うセリフは、千早のお父さんの大きな手に吸い込まれた。まあ、思っていても言わないが…。
千早のお父さんの手をポンポンと叩くと離してくれた。
「ほら、流転!ライブの時間だよ!」
千早に強引に手を引かれて子供部屋へと連行された。
優君は団扇に「ちはや」「るてん」と書かれた2つを持って応援の準備は万端だ。
「おねえちゃんはやく!」
しようがないな。ここが夢の舞台だ。原作で失われてしまった夢の…。私はこれを守らなければいけないんだ!
「「聞いてください!『手のひらを太陽に[作詞やなせたかし]』!」」
生命を賛美する歌。譜面は単音で書いたし、歌詞も幼い。血潮がちょっと大人びているが問題ないだろう。
この時千早母がホームカメラを回しているのに気がつかなかった私たち。
このビデオに助けられる日が来るとは誰も思わなかった。