ついにこの日が来た。
夏祭りの日である。この市で一番大きな祭りだ。まず間違いないだろう。事故を装って優君に怪我をさせる方法を考えたが、良心の呵責で実行に移せなかった。
情を移しすぎた。千早とだけ仲良くしていればよかった。後悔を幾らしてもしたりないが、行きたくないと私が喚いても、千早が連れて行って終わりだろう。だったら。
「オレ、もう小学生だよ!こんなのやだよ!」
「うるさい!こないだショッピングモールで迷子になったでしょ!」
ロープで優君の腰と自分の腰を繋いだ。長さは1m、切れないようにナイロンのしっかりしたやつだ。元は洗濯用のロープだが…。
「じゃないと手を繋いであげないよ!」
「ちぇー、しかたないな。」
「羨ましい…」
「千早も着ける?」
「え、やだ!かっこ悪いもん」
「?」
いつも通り優君を間に挟んで歩く。縁日で綿あめ買って、水風船を釣って、お面を残りのお小遣いを出し合って1枚だけ買った。優君の水風船が割れたときはフラグだと戦々恐々としたが、ガッチリとロープで固定された優君が飛び出すことはなかった。
ミッションコンプリート。
なんかもう、人生のゴールに着いた気分だ。念のため残りの小さなお祭りや、近隣の街の祭りにも注意しよう。あとは、私が千早をアイドルに導けばいい。
そっちの方が難しいが、前世の名曲ブーストで千早をドーピングすれば戦えるだろう。
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中学生になった私たちは、私がギタリスト兼ボーカル、千早をメインボーカルにしてストリートライブをしてステージの勘を養っていた。
いつも最前列には優君がいた。
最前列って言っても多くて20人も人が集まらないが…。
「じゃあ次は新曲行きますよ!『トライアングラー』[歌:坂本真綾;劇中歌ver]」
既にというか13歳にして166cmある私、最初こそ可愛い声だったが、かなりのハスキーボイスに育っていた。歌うとカッコイイし、色気のある声も出せるがアイドルっぽくないというか、「加藤登紀子 」でググってほしい。あんな感じだ。
ああ、うん。優君の拍手があればやっていける。
「すごいかっこよかったよ。流転さんもメインで歌えばいいのに。」
「私に遠慮しなくてもいいのよ。私が添え物になっちゃうとかそういうのは気にしなくても、足手まといにはなりたくないし、」
「うーん。仮歌聞いたと思うけど、私にこの曲は合わないって。千早の方がいいよ。」
「そうね。流転はロックとかの方が合うかも。」
「じゃあポップスはお姉ちゃんでロックは流転さんだね。」
ふむ。ロックか。いい曲を探すか…。どれがいいかな。