生まれ損ないの天使   作:ラディスカル

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第5話「バケツアイスは今日限り」

如月家に着くと、千早の「おかえり」を無視して自室に駆け込んだ。少し心が痛んだが、挨拶を返す余裕もなかった。枕に顔を埋めて優は慟哭した。

 

「優?大丈夫?」

 

「放っておいてよ!」

 

本当は助けて欲しいが、情け無さと惨めさで訳が分からない。この疎外感、孤独感、失望を自分が孤独であるから、誰からも愛されないからだとこじつける。酸っぱいブドウと同じ合理化だ。傷ついた心には分かりやすい理由が必要なのだ。好きな人からの愛が得られないのは、誰も自分を愛してくれないからだ。あるいは、どうせ自分がダメでグズなやつだからだと自分を責める。

 

そうだ。まだ自分に原因があった方が望みがある。だからこその現実逃避だった。流転の前でこそ取り作ったが本当は泣きたかった。というか泣いた。

 

「放っておけないよ!ごめんね、入るよ。」

 

「ぐすぐす」

 

千早はベッドに腰掛けると、優の背をさすった。

 

「本当に大きくなったね?流転の家に行ってたんでしょう?喧嘩した?話して…聞いてあげる。」

 

「お姉ちゃんには分かんないよ!」

 

千早は大きな声に一瞬驚くが、優しく微笑むと、優を抱き締めた。

 

「そうだね。分からないよ。話したくなければ話さなくていいし、八つ当たりをしてもいいわ。その代わり私が傷ついたら、今度は優が受け止めて。」

 

「お姉ちゃん…」

 

優は千早に縋り付くと、小1時間ほど泣き喚いた。

 

「あのね、オレ…フラれたんだ…。」

 

「そう…。」

 

てっきり流転は優に気があるものだと思っていた千早は内心驚いていた。2人前は食べる優に餌付けしていたのは流転(とその母)だ。弟が冬眠前の熊のように肥えていくのを快く思っていないが、未来の嫁の趣味ならばと今まで許していたくらいだ。

 

「私と結婚したいなら痩せなさいって…。」

 

本当はもっとヤバい理由があるとは言えなかった。思い人の好きな人が目の前にいるのだ。それに最近は理解があるとはいえ、外聞が悪いことはアホな小学6年生でも分かった。

 

「っ!!」

 

優しかった千早の顔がみるみるうちに般若のようになる。何かマズイことを言ったかと考えるが

優には分からなかった。

 

「痩せなさい!」

 

「えっ?」

 

千早は今まで決して優の体型には触れなかった。両親が痩せろ痩せろとうるさい中、千早(と流転母娘)は可愛いと言ってくれた。「なら良いか」と今まで甘えてきたのだ。それが今日になって一斉に優をデブ扱いする。もはや、流転母しか味方がいなかった。

 

「これが優のラストチャンスなのよ!これを逃したらもう結婚なんて無理なんだから!こんなにブクブク太って!こんなのアメリカでも許されないんだから!」

 

「言い過ぎじゃね?」

 

千早の豹変にドン引きする優。あのお淑やかな姉からこんな暴言が飛び出すとは思わなかった。

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