生まれ損ないの天使   作:ラディスカル

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第6話「765プロ」

千早と話し合った流転はまず場数をこなすために、弱小プロダクションからオーディションを受けようと決めた。

 

大手プロダクションから順番に受けていったが、作曲者(本当は違うけど)である私だけ欲しいとか、紙の契約書がないだとか、印税が相場より安い。CD出してやるだの散々の結果だった。

 

無論緊張したふりしてパフォーマンスを下げたし、編集済みのCDを事前に送ったりもしなかった。散々落ちた結果がなければ765で千早を納得させる必然性が得られなかったからだ。

 

私は心の中で千早に謝った。

 

そして765プロ。オーディションは受け付けていなかったが、履歴書とCDを送りつけた。

 

ーーーーー

 

765

 

高木社長は上機嫌だった。

 

「音無くん、これを聞いてくれたまえ。」

 

「CDですか?」

 

茶封筒の中にはCD-Rと履歴書が入っている。

 

「今は秋月君のプロデュースだけで精一杯だから、オーディションとかやってないんだけどねえ。気が変わったよ。はっきり言って、人員もノウハウも余裕がないが、ここで逃したらプロデューサー失格だよ。」

 

「そんなにですか?」

 

「ああ、この子たちが6社も落ちたなんて見る目がないなあ。ティンときたどころじゃないよ。ドドドドガガガズガガガガッときたね。」

 

「はあ」

 

小鳥は履歴書に目を通す。柳生流転14歳、如月千早14歳。中学は同じ公立の共学校。「歌手志望で6社のオーディションを受けました。正直後がないかなと思います。これでダメだったらまた暫くは路上ライブとItubeで修行しようと思います。アイドルのことはよくわかりませんが、とにかく輝けるチャンスが欲しいです。」

 

「ふーん。そんなにアイドルやりたいってわけでもないんですね。正直あんまり印象よくないですかねえ?」

 

「よくも悪くも嘘がつけないということだろう。私は子供らしくて好ましいと思ったよ。それにチャンスはなんとしてでも掴もうっていうハングリー精神もあるね。まあ、もうちょっと上手い言い回しもあるだろうがね。CDを聴けば分かるよ。『美辞麗句なんて意味がない、歌を聴けば分かる』そういう熱いメッセージかもしれないね。」

 

小鳥はラジカセを準備していると、ジャージ姿の律子が事務所に入ってきた。

 

「はあ〜疲れた。もうダメ。」

 

ドタドタと駆け込むとソファーにダイブした。

 

「ちょうど良かった秋月君。君に後輩ができるよ。」

 

「後輩?あれ、オーディションは今、してないんですよね?」

 

汗ばんだ体を扇風機で冷やしながら怠そうにこたえる律子

 

「ふっふっふ。CDの持ち込みがあったのだよ。今から音無君と聞くところだったんだ。何でもオリジナルの曲らしい。」

 

「オリジナルぅ〜?ええっ!!作曲できる子なんですか?ていうか、採用決まってるんですね。」

 

「ドドドドガガガズガガガガッときたんだよ。」

 

「いつものティンじゃないんですね。」

 

社長の興奮度合いに俄然興味が湧いてきた律子。ソファーから飛び起きると小鳥のデスクに駆け寄ってきた。

 

「よし。それじゃあスタートぉ!」

 

ーーーーー

 

「それでは聞いてください『トライアングラー』[歌:坂本真綾;劇中歌ver.]」

 

「いつもそれでは聞いてくださいから始めるのね?今日は変えない?」

 

「じゃあ、千早がやってよ。」

 

「歌います。『トライアングラー』」

 

「変わんないじゃん。マイクパフォーマンスってのはねこうやるの。」

 

このハスキーな声が柳生流転だろう。瑞々しく澄んだ声の子は千早と呼ばれていた。

 

「あら、やって見せて?」

 

「765のみなさーん。今日はですね。カラオケボックスでの収録です!しょうがないですね、中学生にはお金がないんです。カラオケボックスでも死にます。今日はこの密室が暑すぎて一酸化炭素中毒で死んじゃうくらい盛り上げますよ!」

 

「せーの」

 

「「トライアングラー」」

 

三角関係を歌った歌。その力強い歌詞と、ダイナミックな曲。ボーカル2人とあなた(オーディエンス)との3角関係。サビのところでボーカル2人が「わたし?それとも「わたし?」」と畳み掛けるところは同性である律子・小鳥共に胸を打たれてしまった。

 

「バトンタッチよ流転」

 

「お、今度は私の曲行くぜ!『lies and trues』[L'Arc〜en〜Ciel]」

 

千早がメインだった歌から打って変わって、流転がメインになり、ロック調の曲に変わった。ポップスよりなものの、男性的だが、色気がある歌声。

 

これまたラブソングだが、今度はすれ違いや見方によっては失恋ソングにも聞こえる。恋い焦がれても完全に分かりあうことのできないもどかしさ。これが13歳の書く歌詞なのか。よほど耳年増なのか経験豊富なのだろう。それも、失恋かそうでなくとも非常に拗れた恋愛をしていそうだと思った小鳥。同時に羨ましくもある。

 

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