世界を征する覇堺の拳   作:ガリアムス

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鬼灯(ほおづき) (てる)本物(ほんもの)ニ虎(にこ)、決着。

そして、新たな舞台へ。


第十三話 沖縄(おきなわ)

「むにゃむにゃ…へへ……」

 

五熊・某所。薄手の布団に抱かれ、少年が一人眠っていた。名前を氷室(ひむろ) (りょう)といい、ある人物の元で修行中の身に在る。

 

「てるぅ…すげぇだろ~…俺のりゅーせーは~…」

 

夢現(ゆめうつつ)、何を思う、氷室 涼。…照ならきっと、そんな事を言うのだろう。

 

「もーいっかーい…もーいっかーい…えへへ…」

 

 

ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

「うぉあぁあ!?!?!?!?!?」

 

そんな氷室を叩き起こすかのような、謎の爆発音。跳ね起きた少年は即座に臨戦態勢で構えを取り、周囲を警戒する。

 

「起きてるか!?」

 

一人の男が、氷室の様子を見に来た。彼は十鬼蛇 ニ虎、氷室ともう一人の少年の師にして、ニ虎流の使い手。其の顔はいつもなら在る筈の『余裕』が一切無い。

 

「ニコさん!!今の爆発は何!?」

 

「今話してる暇はねぇ!照は何処行った!?」

 

「分かんない!起きた時には居なかったよ!!」

 

《………嫌な予感がする、照。無事で居ろよ…!》

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

ニ虎区域・某所…

 

ドッ!ドッ!ドッ!と聴覚を害し、真剣を逆撫でするかのような嫌な音を響かせ、豹変した男は照へと言う。

 

「サァ…止めてみろ、照!」

 

《こいつ…本当に何なんだよ…!?これだけの殺意を、人が持てるのか!?》

 

目に見えるような、濃厚で絶大、そして比較出来ない殺意の大きさに、照の警戒心はMAXまで跳ね上がる。

 

極度の緊張で、口の中が異様なまでに乾いてゆく。

殺意に当てられたのか、呼吸も乱れ始める。

 

まさに照に起きた変化の隙を見逃さず、男は静寂を破り仕掛けた。

 

そして其の姿が、照の前から忽然と消える。

 

「え━━━━━━━」

 

直後、頭部右側を抉る鋭い。

 

否。『鋭過ぎる』打撃が、照の顔面を撃ち抜いた。

 

「!?!?!?!?」

 

殴られた事は分かる。ならば男は何処に行った?

 

思考の最中に再び打撃が襲い掛かる。

 

右足をローキックが一閃し、左腕を手刀(しゅとう)で叩かれ、左脇腹を三日月蹴(みかづきげ)りを貰った。

 

「ゴホッ…!!」

 

肝臓、肺、鼻、太腿、大胸骨…一撃一撃が重い。

 

蓄積して行くダメージ。口や鼻から血が流れ、意識が朦朧となってゆく。

 

《本当に…死ぬ━━━━━》

 

打たれる度に走馬灯のように思い出す、僅かな転生からのニ度目の人生。

 

《ニ虎、さん。俺は━━━━……………》

 

血で赤にぼやけ、霞む視界。

 

既に四肢は内出血で腫れ上がり、肋は十程折れただろう。

 

傀儡を使い、やっと動かせるかどうかまで消耗しきった身体。

 

全てが終わる…そんな思考が頭を過った時。

 

 

 

『照、お前は何で強さの深み(最強)()ろうとしてるんだ?』

 

 

 

ニ虎の言葉が、照の失われかけた意識と力を呼び戻した。

 

「━━━━そんな事…決まっているッ!!」

 

男の左前蹴りを、膝に僅かな力を入れ、縮地を併用して紙一重のラインで回避する。

 

《今のを躱わすか…!やはり『器』に見込まれただけの才覚はあるッ!》

 

「俺が最強になるのはッ…!

 

『俺』の『覇堺流(はかいりゅう)』こそが!

 

当世最強(いちばん)』だと!

 

此の世界に(とどろ)かせる為だァ!」

 

足を捕まえ、懐へ滑り込む。

 

飛んで来る鉄砕が、おでこに当たる。

 

《痛い?そんな事は分かっている。『此の瞬間』しか勝機は無いんだろ!!

 

だったら、行け!行くしか無いんだ!!》

 

額から血が放たれ、眼球に掛かり、視界を赤く染める。

外したら負ける。此の一撃に、今の自分の全身全霊(ありったけ)を乗せて撃つ。

 

《覚悟を決めた目だ…良いだろう、お前に『神』を宿してやる。鬼灯 照!》

 

男の右手が貫手に変わって放たれた。狙いは心臓━━━自分と同じ『力』を、少年に宿す。そうすれば『器』は出来上がる。

 

 

 

 

ドンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

「ハァッ…ハァッ!…ハァッ、ハァッ…ハァッ!…ハァッ…!!」

 

「━━━━━『畏れ入ったぜ』、照」

 

けたたましい音が男から鳴り続ける戦場。呼吸を荒く、片膝を付いたまま動けない照。

 

一方の男は左腕から『大量の血を流していた』。だらりと垂れた其の腕からスプリンクラーのように、止めどなく流れ続けている。

傷口を見た後、男の身体は元の肌色へ、赤く充血した目も戻っていた。

 

照は男が、彼に力を宿すべく放った貫手を鳩尾に受けた瞬間、鬼鏖(きおう)の一連の動作を行いつつ、氷室との戦いで得た釘擊(くぎうち)(じん)の血液と筋肉の流動を加えた、新たな鬼鏖で男が差し込んだ左腕をブチ抜いたのである。

 

「アイツの奥義…糞だと嘗めたが、どうやら認識を改めにゃイカンらしいな」

 

腰帯を取り、傷口付近に固く強く縛り付け止血すると、不敵な笑みを浮かべつつ、照に対して言った。

 

「俺を退けた褒美だ…さっきのヒントを教えてやる。

 

平良(たいら) 厳山(げんざん)』、ソイツの元を訪ねて弟子入りすると良い。…んじゃな、鬼灯 照」

 

くるりと、何事も無かったように男は歩き去っていった。

 

《勝てた…のか、な━━━いや、勝て、た…訳じゃ、無い……………『負けた』…これが、正し━い━━━か……|》

 

振子投げ。釘擊。斧車。鬼鏖…男を驚かせ。手傷を与えられた技は、四つしかなかった。

 

《━━━━………遠い、なぁ。…最強へ、至る道程…っての━━━━━━━》

 

誰かの声が聴こえる。全身の倦怠感と許容量(キャパシティ)の限界で、照は意識を失う。

 

「照!照!!」

 

「ッ━━━重傷じゃねぇか…!医者ん所に急ぐぞ!!!!!」

 

ニ虎に抱えられ、照は運ばれて行く。氷室は血塗れの照を見、此の場で起きた出来事を想像しながら、ニ虎の背中を追い掛けたのだった。

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

ニ虎某所…闇病院一室。

 

「━━━━━…ッ、んぁ…?」

 

照が目を覚ました時、白のペンキに塗り染まったコンクリートの天井が視界に映る。次に気付いたのは、自分の身体中に包帯が巻かれ、身体には柔らかな布団が掛かっていた事だ。

 

「………此処、何処だ━━━━」

 

「あ!照!!………良かった、目が覚めたんだな」

 

聞き馴れた声。横に首を向けると、氷室が自分の顔を覗き込んでいる。其の表情は安堵の色があり、照の手を握っていたのだが、ハッとなって彼の手を放した。何故だ。

 

「起きたか、照」

 

壁に寄り掛かっていたニ虎が、氷室の隣に置かれた椅子に座り、照と視線を合わせた。

 

「回りくどいのは無しにしょう。照━━━━━━」

 

 

お前は誰と、戦っていた?

 

 

ニ虎の問い。

 

照は彼に対し、正直に。

 

そして━━━━素直に答えたのだった。

 

 

「其の人は………『本物のニ虎』、そう名乗っていました」

 

ニ虎の目が、驚愕と共に丸くなる。氷室は何の事だと疑問を浮かべたが、照は次々と自身が感じた疑問を投げ掛けた。

 

「ニ虎さん。…『ニ虎流』って一体何なんですか?彼は貴方と同門だとそう言っていました。それに、俺を『器』に相応しい男とも。

 

教えて下さい。…彼は」

 

「照」と、ニ虎の貫手が自分の首筋に触れていた。今までの殺意が生温い物だと思える程、本気で込められた其れに、照は息を飲むことも、言葉を発する事も出来なくなってしまう。

 

「━━━━そいつは『まだ』教えられねぇんだ。いずれ其の事は話す、だから…な?」

 

優しい言葉に関わらず、顔は一切笑っていない。氷室は腰を抜かしているし、照は微動だに出来ずにいた。

 

「照。氷室。数日前、十鬼蛇区に連れていく約束をしたが、予定を変えざるを得なくなった。

 

…これから『ニ年』、お前ら二人を『知人』に預けようと思う」

 

「えっ!じゃあ組手は!!組手出来なくなるじゃんか!」

 

組手で一度も良いところを見せられていない氷室が反発するも、ニ虎は頭を軽くポンッと叩き、こう言った。

 

「落ち着けぇぃ。其の知人は俺が今まで見てきた中でも『ダントツに強い』。正直言って、俺の師匠と『同格』のレベルに居るかもしんねぇ。

 

其の人の元で暫く修行して、自分の視界を少しでも広げておけ」

 

「…それで、何処に向かうんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………『沖縄(おきなわ)』、だ」

 

 

ニ虎が言った知人。俺と氷室、そして後に二人の弟弟子が世話になり。

 

後に、俺こと━━鬼灯 照の最強にして、最大の壁として立ちはだかる、ある人物との出逢いが待ち受けていた。

 

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